Title 知能発達の基本構造( Abstract_要旨 )

Title
Author(s)
Citation
Issue Date
URL
知能発達の基本構造( Abstract_要旨 )
生沢, 雅夫
Kyoto University (京都大学)
1972-05-23
http://hdl.handle.net/2433/213931
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
夫
名
沢
ざわ
生
雅
まさ
士
いく
お
氏
学 位 の 種 類
文
博
学 位 記 番 号
論
学位授与 の 目付
昭 和 4
7年 5 月 23 日
学位授与 の要件
学 位 規 則 第 5粂 第 2 項 該 当
学位論文題目
知 能 発達 の基 本 構 造
論 文 調 査 委員
教 授 因 原 太 郎
学
文
博
第 7
5号
(主 査)
教 授 野 田又 夫
教 授 池 田 義 祐
丁
零璽塾
論
文
内
容
の
要
旨
本論文は知能測定 に基づ く発達研究 を主 として方法論的観点か ら検討 し, 知能の発達的変化 の様相 を明
らかにす るには, ビネ一式知能検査やその延長上 にある乳幼児発達検査 の構成上 の長所 を生か して潜在 ク
5
,
6
歳 に至 る
ラス分析 を適用す るのが合理的であるとし, 尤大 な検査資料 を この方法で解析 し, 乳児か ら1
までの知能の発達 に極 めて安定 した段階区分 を検出す るのに成功 した研究 である。
著者は ビネ検査 の構成原理 とその歴史的変遷, この種の検査法 による横断的縦断的諸研究 を審 さに検討
している。 ビネの知能検査 はその構成原理か ら, 夫 々の問題 の特質 を十分考慮す るならば知能発達 の経過
について重要 な情報 を もたらす ものであるに もかかわ らず, 測定尺度 として尺度論的に整備 されて くるう
Q として表示 され, 数多い発達研究 で もこれ による分析が主 とな った。 勿論
ちに, 合成得点が MA や I
各年齢毎の問題 について因子分析 による研究 も少な くないが, その結果 は, 分析法の不統一, 被験者群へ
の考慮の不備 のため区々である。 且各年齢水準で別 々に抽出された一般因子が相互 に等 しいか どうかは不
Q の相関即ち検査一再検査相関の因子分析 についての研究 も彩 しいが,
明であ った. 又異 なる年齢間の I
Q の検査一再検査相関は結局合格問題数 の相関で
変化の時期については明 らかでない といえる。 著者は I
Q の検査一再検査相関
あ り, 合格問題数は一般因子の近似的な因子評点 とみなされ るか ら, ビネ検査 の I
Q の標準偏差 に
は各年齢毎の検査問題 の一般因子評点の相関 と近似的に等 しい と考 えられ るとし, 一方 I
年齢的な変動のあることに注 目し, この両者を統合 して発達的変化 のお こる時期 を検 出す る方法を提案 し,
,
5
,
6歳 ごろと 9,
1
0
,
1
1歳 ごろとに変化点のあることを指
過去 における代表的 な追跡的研究 を点検 して, 4
摘す る。 しか し合成得点 による解析は限界 を もち, ビネ検査 の もつ情報 を十分生かすのは広 い範囲の問題
を用い, 広い年齢層 に亘 って, その潜在構造 を探索す ることにあるとす る。
1
)
3歳- 7歳,1
,
0
8
0名
著者が試みた潜在構造分析は潜在 クラスモデルによる分析 である。 その資料 は (
2
)
6歳∼1
5
歳の ビネ検査 の追跡的資料延 2 ,
3
1
3名 (3)生後4
1日か ら 3歳児 までの乳児発
の ビネ検査結果 (
,
1
5
0名で, この資料 は他か ら提供 された ものであ る。 検査 の時期が異 なるため 3種 の資料 は別個
達検査 2
- 9-
に分析 された。 分析 の計算は著者が プログラムした Gr
e
e
n 解 によっている。
潜在 クラスモデルをこの種の資料 に適用 したのは, 著者が初めてであ ったが, 極 めてよ く適合 し, 被験
者 の折半, 問題 のぬ きとり, 年齢層 の極端 なかたよ り等 によって偶然性のチニ ックを行 なったけれ ども,
何れに於いて も分析結果は変 らなか った。 3歳 までに少 な くとも 4段階 の, 3歳か ら 7歳 までの間に 3段
階 の, 6歳か ら1
5歳 までの間には 5段階 の発達段階が区分 され, これ らは Pi
a
ge
tの発達段階 と対比 した
とき, かな りよ く整合 しているといえた。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
発達 における質的変化 を予想す る段階区分は, 発達研究 の基本的課題 の一つであ り, 従来 も諸家によっ
て様 々な区分原理 と時期 とが提案 されてきた。 近時 これを客観的な手法 によって明確 にしようとい う試み
が起 ってきたのであるが, その多 くは因子分析法の模索的適用であ り, 著者が本論文 において も詳 し く検
討 してい う如 く, 技法的に も不確実であ り, 結果的に も暖味である。 著者が ビネ知能検査 の構成原理 を新
らしい視点で再評価 し, この検査法 の もつ情報 を十分 に生かす方法 として滞在 クラス分析 を重視 し, これ
を適用 して極 めて安定 した段階区分 に成功 したのは, 決 して偶然ではな く知能発達 に対す る深い洞察 と,
分析技法の基本への透徹があったか らである。 勿論, 潜在 クラスモデルの根本前提が機能 の発達連関 と如
何 に理論的に融和す るかの問題 は残 っているo L 示 しモデルの適用はその適合性が事実 に於いて示 され る
場合, 一応成功 とみ られ るべ きであろ う。 数多い諸研究 に対す る独 自の創意的な批判 とともに, 発達研究
に新 らしい基盤 を もたらした本研究 の成果は, 高 く評価 され るべ きである。
よって, 本論文は文学博士 の学位論文 として価値 あるものと認 める。
- 1
0-