Title 宿主に対する同種血清アルブミンの不適合性に関する臨 床的

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宿主に対する同種血清アルブミンの不適合性に関する臨
床的ならびに基礎的研究( Abstract_要旨 )
加藤, 康夫
Kyoto University (京都大学)
1967-07-24
http://hdl.handle.net/2433/212268
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
夫
康
藤
加
お士
即博
rL 学
か医
氏
【8
7】
早
9
0
3
学 位 の 種 類
学 位 記 番 号
医
学位授与 の 日付
2年 7 月 2
4日
昭 和 4
学位授与 の要件
学 位 規 則 第 5条 第 1項 該 当
研 究 科 ・専 攻
医 学 研 究 科 外 科 系 専 攻
学位論文題 目
宿主 に対 す る同種 血清 ア ルブ ミンの不適 合性 に 関す る
博
第
臨床的な らび に基礎 的研究
(主
査)
教 授 長 石 忠 三
論 文 調 査 委員
論
文
内
教 授 木 村 忠 司
容
の
要
教 授 本 庄 -
夫
旨
ある程度以上 の出血 が あると, それ に見 合 った巌 の輸血 が行 なわれた場合で も, 術後 に一過性 の低 アル
ブ ミン血症 が招来 され る。 その原 因については, 種 々の考 え方 が あるが, 寺松 は, 各種 の実験結果 か ら,
輸血 され た血液 中のアル ブ ミンには宿主 に対す る不適合性, す なわち個体特異性 ともい うべ き も の が あ
り, これが術後 に低 アル ブ ミン血症 を招来す る主 な る原 因で はなか ろ うか と考 えて い る。
加藤 は, この点を確かめ る目的で, 以下 の臨床 的な らび に基礎 的実験 を行 な った。
第 1 篇で は, 臨床 的に,
術後 に招来 され る一過性 の低 アル ブ ミン血症 の原 因について,
生化学的に, 特
に血清 アル ブ ミンの細分 画像 の動態を 中心 として検 討 した。
また, 第 2 篇で は, 蛍光色素標識 アル ブ ミンを用 い, これを元 の動物 および他 の動物の静脈 内にそれぞ
れ別個 に注入 し, 静注 されたアル ブ ミンが宿主 の体 内で どのよ うに処理 され るかについて検討 した。
以上 の諸実験 の成績 について考察 した結果, 以下 の結 論をえた。
(
i
) 2,
0
0
0
c
c以上 の出血 が あると, 適 量輸血 が行 なわれ た場合で も, 大多数 において一過性 の低 アル ブ
ミン血症 が招来 され る。
す なわち, 血 清中のアル ブ ミン量は術後 1 日目か ら 8日目まで は次第 に減少 し, そ の後 1か月以 内に正
常値 に復帰す る。
(2) 同時に行 な った, - イ ドロオキ シル アパ タイ ト・ カ ラムクロマ トグ ラフィーによる血清 アル ブ ミン
組分 画の成績で は, 燐酸緩衝液 0
.
0
7
M,pH6.
8で溶 出 され る Fr
.Ⅱは, 術後 8-1
5日冒まで は減少 しつ
づ げ, その後除 々に回復 してほぼ 1 か月で術前値 に復帰す る。
すなわち, 血清 アル ブ ミン墓の回復 と血清 アル ブ ミン細分画像 の回復 との問 には, 時間的なずれがみ と
め られ る。
(
3
) つ ぎに, 実験 的に蛍光色素 FI
TC 標識 アル ブ ミン液 を静注 した後, 血清 中か らす る FI
TC の消失
過程をみ ると, 他家アル ブ ミン静注群 の方 が 自家 アル ブ ミン静注群 の場合 に比べてよ り短期間 に 消 槌 す
- 237-
る。
(4) 加藤 の作成 した標識 アル ブ ミン波 は
Fr.王 をよ り多 く含 んで お り,
この関係か ら, 静注後 におけ
る宿主 の血清 アル ブ ミンもまた Fr.Ⅰ を多 く含んで い る。 時間の経過 とともに, Fr
.Ⅰ は減少 し, これ
に対応 して Fr
.Ⅱ が増加す る。
(
5) 以上 の諸成績 か ら, 少 な くと も他家 アル ブ ミンの細分 画中 u
jFr
.Ⅰ には宿主不適合性が あると考
えて差支 えない。
(
6
) 主 として Fr.Ⅰ か らな る標識 アル ブ ミンの血管 内か ら舶 繊 中へ の流出状況 について蛍光顕微鏡 を
用 いて組織学的に検討 した結果で は, 標識 アル ブ ミンと思われ る蛍光物質 は, 血管 内における生化学 的な
濃度 に比例 して, 細血管 内や組織液 内に存在 して お り 他家 アル ブ ミンが異物 として と くに細胞 に会喰せ
,
られ, 分解 されて いるとい う証拠 は認 め られない。 また, 組織 の栄養蛋 白 と して利用 されて いるという所
見 も認め られない。
(7) 以上 の諸成績 か ら Fr.Ⅰ は生化学的には比較的安定で, 組 織蛋 白と して も利用 されがたい もので
あるが, Fr.
Ⅱ は生化学的に も不安定で, 活性 も高 く臓器 の栄養蛋 白 として生体 内で絶 えず合成 され る も
の と考 え られ る
。
(8) 以上を他家血輸血 によ ってはアル ブ ミン細分画 中 の Fr
.Ⅱ が補充 され難 いとい う第 1 篇 の結 論 に
併せ考察 した結果, 同種他家血清 アル ブ ミンの細分画で は宿主不適合性 は, Fr.Ⅰ よ りも Fr.
Ⅱ の方 に
は るかに高 い事 を知 った。
論 文 審 査 の 結 果 の 要
旨
大 量出血後 の低蛋 白血症 は, 主 として低 アル ブ ミン血症 によ る もので あ り, 出血 に見合 った輸血を行 な
って もなお, これを防 ぎえない ことは, 寺松 らによ りすで に指摘 されて いるところで ある。
著者 は, そ の原 因を明 らか に しよ うとして, 臨床的な らびに実験 的に検討 した。
臨床 的検討 によ り, この種 の低 アル ブ ミン血症 が宿主 に対す る他 家輸血 の不適合性 による もの と推定 さ
れたので, 蛍光色素 FI
TC で標識 された家兎 の血清 アル ブ ミンを用 いて, さ らに実験的に検 討 した .(
1
)
,
脱血 によ り, 血清 アル ブ ミン細分画 の F r.Ⅱ が減少す る。 (2) F r.Ⅱ は他家 血輸 血で は補 いえない。 (3).
静注 された他家血消 アル ブ ミンは, 自家血清アル ブ ミンに比べて
血中か らよ り早 く消失す る
。
(
4
)
.Fr.Ⅰ
の減少 は, 自家血清 アル ブ ミンの場合 に比べて, 他家血清 アル ブ ミンの方 がやや早 く, その度合 も大で あ
り, 二次的に宿主 の F r.
Ⅱ の合成 が促進 され る。
以上 によ り, 著者 は, 他 家 血清 中には宿主不適合性 のアル ブ ミン細分画が存在 して お り,
Fr
.Ⅰ よ り
もFr
.Ⅱ の方 には るか に多 く含 まれて いる ことを知 った。
本研究 は, 輸血 に関す る重要事項 を明 らかに した もので あ り医学博士 の学位論 文 として価値 あるもの と
認定す る。
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