Title 初期学習における経験と発達のメカニズム( Abstract_要旨 ) Author

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初期学習における経験と発達のメカニズム( Abstract_要旨
)
三谷, 恵一
Kyoto University (京都大学)
1972-05-23
http://hdl.handle.net/2433/213932
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
亡 5】
み
谷
たに
恵
けい
いち
学 位 の 種 類
文
学
博
士
学 位 記 番 号
論
学位授与 の 目付
昭 和 47 年 5 月 23 日
学位授与 の要件
学 位 規 則 第
学位論文題目
初 期 学 習 にお け る経 験 と発 達 の メカ ニ ズ ム
論 文 調 査 委員
教
氏
名
文
博
第 7
6号
5粂
第 2項 該 当
(主 査)
授 園 原 太 郎
教
授
野 田文 夫
教
授
池 田義祐
J
論
文
内
容
の
要
旨
本論文は 3部 よ りな り, 第 1部ではシ ロネズ ミを用いた実験 によって初期学習 の効果 の存在が示 され,
第 2 部では この初期学習効果 の メカニズムが多数 の実験 によって検討 され, これに基づいて第 3 部 で経験
と発達 の相互関係が考察 され る。
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msの回 り道問題群を用いて, 動物 (シ ロネズ ミ) を幼少時か ら 1ケ月間隔で 4回テス トを
経験 させ ると, 各回毎 に有意 にエ ラーが減少 し, 学習 の効果が示 され るに反 し, 3ケ月間休止 された動物
群では, この効果が消失 し, 成熟後始めてテス トされた群 では却 ってエ ラーが増加 し, 通説的に言われて
いる成熟効果 は示 されなか った (実験 1 )。
この実験 1 に示 された経験効果が何 によるかを多 くの実験 によって吟味 した結果, 障害物 の背後 に回 る
とい う視覚運動的経験 (- ニイ型潜在学習) が重要 な効果 を もつ とともに, 問題箱の上 の透 明ガラス上を
走行す るだけの視覚的経験のみで も, 前者 よ りは劣 るけれ ども潜在学習効果 のあることが確かめられ, 且
この- ニイ塑潜在学習や視覚的潜在学習が, 新 らしい回 り道問題 に対す る汎化 を促進す ることが証せ られ
た。 ブロックの形態 の差その ものは必 らず L も有意な効果 の差 を示す ものではないが, 刺激 の型が多様 に
変わ り, 特 に動物 の運動に対応 して多様 に変化す ることが効果 を もち, 斯 る効果 は短時間の経験 において
も作用す るが, その消失 を防 ぐためには持続が必要であ り, 従 って初期経験が効果 を もつためには長期 に
反復 され ることが必要であると考える。
潜在学習 に際 しての行動の綿密な検討が, 探索行動, 注意, 制止, 情緒的反応, 一般的活動性 にわた っ
て分析 され, 諸家の理論 に照合 して検討 され る。 探索行動や情動性 とは夫 々それだけで潜在学習効果 を説
明す るには不十分 であ り, 注意, 制止, 一般的活動性が経験 と共 に急激 に高 まることか ら, 潜在学習効果
は, 認知説 と刺激反応説 との中間に位置づけられ, 積極的 に第 3の定式化の必要があ り, 著者は, 刺激一
反応, 刺激一刺激, 反応一刺激, 反応- 反応 の諸セ ッ トが相互関係的に学習 の構 えの うちに形成 され る こ
とを仮定すべ きであるとい う。 そ して, 成長 と初期経験, それ以後の諸学習が発達的編成 をなしてゆ くこ
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とを論考 している。
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
本論文は極 めて周到 な配慮 の下 に, 実験 に介入す る人工的偶然的因子を統制 し, 必要 な場合には これ ら
人工的因子を実験変数 とした比較実験 を行 な うなどして,
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tにおけるシ ロ
ネズ ミの初期経験効果 の存在 を明示 し, 従来 この t
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tにおいては経験効果 は現われない とい う通説 を正
した。 且 この初期学習 における経験効果 の メカニズムを探求す る中で, 問題箱 の上 のガラス越 しの走行に
おける視覚的経験のみが, シ ロネズ ミにおいて も潜在学習的効果 を もつ ことを証 したことは新 らしい知見
であ って, 注 目に価す る。 初期経験効果 としての- ニイ型潜在学習 とこの視覚的潜在学習の確認 に基づい
て, 従来視覚剥奪実験 をもととして立論 されていた経験効果 についての学説 に新 らしい積極的な視点を加
え, 行動の発達的編成 のメカニズムに対す る刺激変化 の もつ機能 を一層 明確 にした ことは, 重要 な寄与 と
して評価 され る。
よって, 本論文は文学博士の学位論文 として価値 あるものと認 める。
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