Title カスガマイシンの合成( Abstract_要旨 )

Title
Author(s)
Citation
Issue Date
URL
カスガマイシンの合成( Abstract_要旨 )
北原, 克彦
Kyoto University (京都大学)
1972-03-23
http://hdl.handle.net/2433/213894
Right
Type
Textversion
Thesis or Dissertation
none
Kyoto University
氏
北
名
きた
原
はら
克
彦)
かつ
ひこ
博
士
学 位 の 種 奨
農
学 位 記 番 号
論 農 博 第 361 号
学位授与 の日付
昭 和 4
7年 3 月 2
3日
学位授与 の要件
学 位 規 則 第 5条 第 2項 該 当
学位論文題目
カ ス ガ マ イシ ンの合 成
論 文 調 査 委員
教 授 中 島
学
(主 査)
論
文
稔
内
教 授 小 野寺幸 之進
容
の
要
教 授 深 海
浩
旨
カスガマイシンは St
r
e
pt
o
myc
e
skas
u
gae
ns
i
sの生産す る含糖抗生物質で,
イネイモチ病 に対 してす ぐ
れた防除効果 を示す ことか ら, 現在農業用抗生物質 として広 く用い られている。
a に示す如 く一種 のア ミノ配糖体 である。 これを熱バ リタ水で加水分解す る
カスガマイシンの構造 は I
とカスガノビオサ ミソ (
I
b) が得 られ, また I
b を oxa
l
i
mi
di
ca
c
i
ddi
e
t
hyle
s
t
e
r と反応 させた後, 希塩
酸で加水分解す ると, カスガマイシンの塩酸塩が得 られ ることはすでに報告 されてい る。 そ こで著者はま
ず カスガ ミソ (
2,4
-di
ami
n0
-2,3,4,6
-t
et
r
a
deo
xy-D-ar
ab
i
no
hexopyr
a
no
s
e
) を合成 し, ベ ンゼングラ
c
hi
r
a-i
no
s
i
t
o
lと縮合 させて I
b お よびそのジアステレオマーを合成, さらに
イコールか ら合成 した DLこれ らの化合物 を, それぞれ カスガマイシンお よびそのジアステレオマーに導いて, イモチ菌 に対す る抗
菌性を調べた。 本論文はその研究成果 をまとめた もので, その概要はつ ぎの通 りである。
D-gl
uc
os
eか ら 5段階の反 応 を経 て me
t
hy14,6
-0be
n-z
yl
i
de
ne
-2
-0チ-t
o
l
yl
s
ul
f
o
nyl
13
-deoxy-αDgl
uc
opyr
a
nos
i
de を合成 し, DMF 中 NaN3 と加熱還流す ると,
ワルデン反転 を ともなって対応す る
アジ ド化合物 を得た。 つづいて酸化白金触媒 で接触還元 したのちアセチル化 し希硫酸 で脱ベ ンジ リデンし
I
a を得 た。 Ⅰ
I
a の C-6位 の水酸基を選択的 に トシル化 し, NaIで ヨウ素化 したのち還元 して Ⅰ
Ib
てⅠ
を得た。 ついで Ⅰ
Ib の C-4位 の水酸基 を酸化 してケ トンとし, これ を酸化白金触媒 で接触還元 して Ⅰ
Ic
を得た。 Ⅰ
Ic をアジ ド化 したのち接触還元 しアセチル化す ると, me
t
hy12,4
di
-a
c
etami
d0
2,3,4,6
-
ar
abi
no
he
xopyr
a
no
s
i
deが得 られ, これをカスガマイシンか ら導かれた me
t
hylN,
Nt
e
t
r
a
deo
xy-α-Ddi
a
c
e
t
yLα-ka
s
ugami
ni
deと同定 した. ついで これを加水分解後塩酸で処理 して N,
N-di
ac
et
y1
-1
-c
hl
o
r
o
ns
k
ugami
ne に導 き,
これを c
i
s
be
nz
e
negl
yc
o
lより合成 した 1
,2:5,6
di
-0-i
s
opr
opyl
i
de
ne
c
hi
r
o
-
i
nos
i
t
o
lとクロロホル ム中炭酸銀, 過塩素酸銀, 無水硫酸 カル シウムの存在下で縮合 させた。 そして縮合
A)
はカスガマイシンか ら
生成物 を酢酸エチル- - キサ ンで処理 して結 晶h )と非結晶成分(B)とに分離 した。(
誘導 した N,Ndi
a
c
e
t
y1
-di
-0-i
s
o
pr
opyl
i
de
neka
s
uga
no
bi
os
ami
ne と同定 し, (B)はそのジアステレオマ
ー8
91-
- であることを証 明 した。
(
A)
,(
B)
をそれぞれ飽和バ リタ水 で加水分解後,o
Xa
l
i
mi
di
cac
i
ddi
e
t
hyle
s
t
F
r と反応 させ,(
A)
か らカス
ガマイシンを,(
B
)
か らそのジアステ レオマーを合成 して, イネイモチ菌 に対 して抗菌性 を調べた所, 前者
は強 い活性 を示 したが, 後者は不活性であ った。
s
us
a
no
bi
o
s
a
mi
ne か ら, Dc
hi
r
p
i
no
s
i
t
o
lの代 りに al
l
o
i
no
s
i
t
o
lを構成成分 とす るカ
著者 はさらに ka
スガマイシン類縁化合物 を合成 し, イモチ菌 に対 する抗菌性 を調べたが全 く活性 を示 さなか った。
la
H
H
R = -C -CO
Ib
R= H
N
O
H
Ⅰ
Ia R1
-OH;R2=H;Ⅹ-OH
I
Ib R1
-OH;R2 -H;Ⅹ-H
I
Ic Rl
-H;R2-OH;Ⅹ-H
論 文 審 査 の 結 果 の 要 旨
イネに最大 の病害 を もた らす イモチ病 に対 しては, 従来有機水銀剤が用 い られす ぐれた防除効果 をあげ
て きたが, 人畜 に対す る慢性毒性 のおそれがあるため近年使用禁止 とな った。 そ こで これ に代 るべ き薬剤
の開発研究が盛 んに行 なわれ, その結果発見 されたのが含糖抗生物質 の一種 であるカスガ マ イ シ ン で あ
る。
カスガマイシンは人畜 にはほ とん ど無害であるが, イネイモチ菌や緑膿菌 に対 しては強 い発育阻止効果
を示 し, 現在 イモチ病防除 のため多量 に使用 されている重要 な農薬 である。
)
c
hi
r
o
-i
no
s
i
t
o
lとカスガ ミソと称す るア ミノ糖 を構成成分 とし, 天然 には珍 らしい
カスガマイシンは I
c
a
r
bo
xyf
o
r
mi
mi
doyl基 を もつ ア ミノ配糖体抗生物質で, これ まで誰 も全合成 に成功 していなか った。
著者 は Dgl
uc
o
s
e を出発物質 として多 くの反応段階 を経 て カスガ ミソを初めて合成 し,
これを DL-
c
hi
r
o
-i
no
s
i
t
olと縮合 させ て ka
s
uga
no
bi
os
a
mi
neとそのジアステ レオマーを合成, さらに前者か らカスガ
マイシンを, 後者か らそのジアステ レオマーを合成す ることに成功 した ことはす ぐれた業績 といえ よう。
s
uga
no
bi
os
a
mi
neか ら allo
-i
no
s
i
t
olを構成成分 とす るカスガマイシン類縁化合物 を も合成
著者 はまた ka
し, これ ら化合物 のイネイモチ菌 に対す る抗菌性 を調べた結果, カスガマイシン以外 はいずれ も活性 を示
c
hi
r
o
i
no
s
i
t
o
lが重要 な役割 を演 じてい ることを明 らか にした
さず, 抗菌性発現 にはアグ リコンとして Dことは誠 に興味深い。
-8
9
2-
このように本論文は農薬化学や天然物化学 の分野 に貢献す るところが大 きい。
よって, 本論文は農学博士 の学位論文 として価値 あるもの と認める。
- 893-