2016 年 4 ⽉ 18 ⽇ 作成 第 63 号 成⻑戦略のここに注⽬-賃上げ率は 3 年連続の 2%超え 大和住銀投信投資顧問 経済調査部 部長 門司 総一郎 賃上げも成長戦略の 1 つです。今年の賃上げについては、昨年を下回る水準に止まることが確実な ことから批判的な報道が目立ちますが、評価できる点もいくつもあります。今回は今年の賃上げのど ういった点が評価できるかについて考えてみます 連合によれば、会社側回答の第 1 回集計の賃上げ率は 2.08%、昨年の 2.43%や 2.16%を下回るもので す。これが今回の賃上げに対して否定的に見る向きの根拠となっています。 春闘の会社側回答における賃上げ 率 消費者物価指数( 除く生鮮食品、前年比) 2.5% 4% 2.43% 3% 2.16% 2.0% 1.94% 2.08% 1.87% 2% 1.78% 1.79% 1.74% 1% 1.5% 0% 1.0% 2009年 2011年 2013年 ‐1% 14年1月 2015年 出所:連合ホームページより作成、毎年第1回集計時点 14年7月 15年1月 15年7月 16年1月 出所:リクルートジョブズホームページより作成、三大都市圏 前年の水準を下回ったからといって、それでただちに今年の賃上げが否定されるべきとは思いませ ん。このままの水準で着地すればアベノミクス開始以降の春闘としては 3 年連続の 2%超え、またベー スアップ(ベア)も 3 年連続です。これらはアベノミクスの効果として評価すべきでしょう。 賃上げ率低下の主因はインフレ率の低下です。組合は賃上げの要求を策定するにあたってインフレ の水準を考慮します。これはインフレによる実質賃金の目減りを回避するためです。昨年の 1-3 月は 消費税率引き上げの影響が残っており、消費者物価指数(除く生鮮食品)は前年比で 2%程度上昇してい ました。しかし今年の 1-3 月はほぼ横ばい。そのため組合は控えめな要求を出さざるを得なくなり、 会社側の回答も低いものとなりました。 昨年は消費の弱さが議論された時、一部からは「名目で賃金が増えても実質で増えてないことが理 由」との指摘がありました。それが正しいのであれば、今年は逆に名目では増えてなくても実質で増 えていることになります。実質ベースが正しいという訳ではありませんが、こうした観点から今年の 本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点における当社の判断に 基づくもので、今後予告なしに変更されることがあります。投資に関する最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げ ます。 1 市場のここに注⽬! 2016 年 4 ⽉ 18 ⽇ 賃上げを評価することも可能でしょう。 アルバイト/パー トの平均時給( 前年比) 派遣スタッ フ の平均時給( 前年比) 2.5% 5% 2.0% 4% 1.5% 3% 1.0% 2% 0.5% 1% 0.0% 14年1月 14年7月 15年1月 15年7月 0% 14年1月 16年1月 出所:リクルートジョブズホームページより作成、三大都市圏 14年7月 15年1月 15年7月 16年1月 出所:リクルートジョブズホームページより作成、三大都市圏 春闘とは直接関係ありませんが、非正規労働者の賃金は正規労働者以上に上昇しています。リクル ートジョブズによれば、三大都市圏の今年 2 月のアルバイトやパートの平均時給は前年同月比で 2.2% の上昇。上昇ペースの加速が続いています。 また派遣スタッフの時給は 3.7%上昇。1 月の 4.0%から低下しましたが、3-4%と高い水準の伸びが続 いています。非正規労働者の賃金は正規労働者に比べて足元の労働需給に敏感に反応します。したが って高い時給の上昇率は、それだけ足元の労働需給が逼迫していることを示しています。 その他では初任給引き上げの動きも注目されます。三井物産や伊藤忠など大手商社は 8 年ぶりに初 任給の引き上げを決めました。2016 年入社の新入社員の給与は 15 年入社のそれに比べて 20%弱引上げ られるとのことです。またホンダ、JR 東日本、日立などについても初任給の引き上げが報じられてい ます。 以上を踏まえて、今年の賃上げは伸び率こそは昨年を下回るものの、評価できるものであると考え ています。非正規社員の時給の伸びと合わせて、個人消費を下支えする効果が期待できるとの見方で す。 先月米国や東南アジアを訪問して現地の投資家と日本株の見通しについて議論しましたが、一部に は賃金が減ると思っている投資家もいました。賃上げに関する批判的な報道がこういう誤解を招いた ものと思いますが、誤解が払しょくされれば、消費に対する過度の弱気な見方が修正され、日本株に とってのプラス要因になると考えています。 以上 本資料は投資判断の参考となる情報提供を目的としたもので、当社が信頼できると判断した情報源からの情報に基づき作成したもので す。情報の正確性、完全性を保証するものではありません。本資料に記載された意見、予測等は、資料作成時点における当社の判断に 基づくもので、今後予告なしに変更されることがあります。投資に関する最終決定は、投資家ご自身の判断で行うようお願い申し上げ ます。 2
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