2016年に向けたRBA金融政策と豪ドル相場の注目点

2015年12月4日
投資情報室
オーストラリアレポート
2016年に向けたRBA金融政策と豪ドル相場の注目点
 豪州準備銀行は政策金利据え置きを決定。雇用環境改善などに支えられた緩やかな景気拡大が政策判断の背景。
 低インフレ見通しを背景に、RBAは追加利下げの可能性に含み残す。
インドが追加利下げ 今年4回目
 足元の豪ドル相場は対米ドルで安定推移、対円では緩やかに上昇。海外投資家の証券投資は7-9月期も流入継続。
 相対的な高利回りに着目した海外投資家からの資金流入は、今後も豪ドル相場の下支え役になると期待される。
豪州準備銀行は7会合連続で政策金利据え置き
豪州準備銀行(RBA)は12月1日の金融政策理事会にお
いて、7会合連続で政策金利を2.00%で据え置く決定を下
しました(図1)。
図1:豪州準備銀行(RBA)の政策金利とインフレ率
(%)
5.0
豪州準備銀行の政策金利
(キャッシュ・レート)
4.5
スティーブンスRBA総裁の声明では、「鉱業部門での設備
投資の大幅な減少に直面する中、豪州経済は緩やかな拡
大を続けている」との景気判断が示されました。総裁は景気
判断の根拠として、①実質GDP成長率は長期平均を幾分下
回る傾向にあるものの、企業景況感は非資源部門の緩やか
な改善を示していること、②底堅い雇用増と失業率安定の
傾向がみられること、を指摘しました。
4.0
その労働市場ですが、2015年10月の雇用者数が前月比
+5.86万人の大幅増となり、失業率も9月の6.2%から5.9%
へ低下するなど、足元で豪州の雇用環境は底堅さを増しつ
つあるようです(図2)。
1.5
3.0
2.5
2.0
インフレ目標
レンジ(2~3%)
09
足元の豪州景気は「低迷する資源部門」と「比較的底堅い
内需部門」で二極化しつつあり、今後は内需主導の雇用回
復が継続するかが2016年の金融政策の先行きを左右する
ポイントになると考えられます。
尚、ブルームバーグ集計の市場コンセンサスでは、引き続
きRBAは2016年6月までに0.25%の追加利下げを実施する
との見方が大勢となっています。
10
11
2.00%
12
13
14
15
(年)
(出所)豪州準備銀行(RBA)、豪州政府統計局(ABS)
(期間)基調インフレ率:2009年1-3月期~2015年7-9月期
政策金利:2009年1月1日~2015年12月1日
(注)基調インフレ率は消費者物価指数(CPI)のトリム平均値と加重中央
値の平均により算出。
RBAは追加利下げの可能性に含み残す
金融政策に関しては、声明文では「経済環境の改善見通
しが過去数か月にわたって確かとなったことから、政策金利
の据え置きが適切と判断した」との従来通りの言及がなされ
ました。一方、RBA総裁は「低水準のインフレ見通しを背景に、
景気下支えの必要があれば追加利下げの余地は残されて
いる」と述べるなど、追加利下げの可能性にも依然として含
みを残しています。
2015年7-9月期
2.2%
基調インフレ率
(前年比)
3.5
(千人)
60
図2:豪州の政策金利と雇用関連指標
(%)
8
豪州準備銀行の政策金利(右軸)
50
7
失業率(右軸)
40
6
30
5
20
4
10
3
0
2
雇用者数前月比増減
(3ヵ月移動平均、左軸)
‐10
1
‐20
07
08
09
10
11
12
13
14
15
0
(年)
(出所)RBA、ABS
(期間)2007年1月~2015年10月(政策金利は2015年12月1日時点)
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きると考えられる情報に基づいて作成しておりますが、情報の正確性、完全性を保証するものではありません。●当資料の
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境の変動等を保証するものではありません。
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〈審査確認番号H27-TB141)
オーストラリアレポート
豪ドルは対米ドルで安定、対円では緩やかに上昇
2015年9月以降の豪ドル相場は、対米ドルでは1豪ドル=
0.72米ドル前後での安定した推移が続いている一方、対円
では足元で1豪ドル=88円台まで緩やかな豪ドル高・円安
図3:豪ドル相場の推移(対円、対米ドル)
(円)
105
(米ドル)
1.00
対円レート(左軸)
100
0.95
95
0.90
90
0.85
が進行しています(図3)。
0.80
85
海外投資家の対豪証券投資の流入が続く
12月1日に公表された国際収支統計によれば、2015年
7-9月期の海外投資家による豪州への証券投資(フロー)
は112億豪ドル(約9,500億円*)の流入となりました(うち債
券投資が83億豪ドル、株式投資が29億豪ドル)。証券投
豪ドル高
80
0.75
対米ドルレート(右軸)
75
0.70
豪ドル安
70
14年1月
0.65
14年7月
15年1月
15年7月
(出所)ブルームバーグ (期間)2014年1月1日~2015年11月30日
資の流入額は4-6月期の171億豪ドル(約1兆4,500億円
図4:海外投資家の豪州への証券投資残高
*)から縮小したものの、海外投資家の資金流入は2012年
7-9月期から13四半期連続となりました。
一方、2015年9月末時点の海外投資家による対豪証券
投資の残高(ストック)は、債券投資が1兆1,220億豪ドル
(約95兆円*)、株式投資が4,737億豪ドル(約40兆円*)と
いずれも過去最高に近い水準に拡大しています(図4)。株
式・債券を合計した証券投資残高は1兆5,957億豪ドル
(約135兆円*)と、豪州の名目GDP(1.6兆豪ドル、2014
年)とほぼ同規模にあります。
(*)為替換算レート:1豪ドル=85円。
(10億豪ドル)
1,200
1兆1,220億豪ドル
1,000
800
海外投資家の債券投資残高
600
4,737億豪ドル
400
200
海外投資家の株式投資残高
0
90
相対的高水準を維持する豪株式・債券の利回り
92
94
96
98
00
02
04
06
08
10
12
14 (年)
(出所)ABS (期間)1990年3月末~2015年9月末
海外投資家による証券投資の要因として、豪州国債利
回りや豪州株の予想配当利回りの高さが考えられます。近
図5:豪州株の予想配当利回りと10年国債利回り
年は豪州でも国債の低利回り化が進んでいるものの、11月
30日時点で豪10年国債利回りは2.86%と米国(2.21%)
やドイツ(0.47%)を上回る水準を維持しています(図5)。
(%)
6.0
豪州株式(S&P/ASX200指数) 予想配当利回り
5.04%
5.0
また、豪州株式の予想配当利回りは足元でも5%前後の
水準にあり、豪長期金利との利回り格差も拡大傾向にあり
4.0
ます。
3.0
2016年は米国の緩やかな利上げが見込まれる一方、欧
州や日本では金融緩和継続が予想されるなど、世界の金
融環境は緩和状態が続くと考えられます。こうした中、利回
りに着目した海外投資家による証券投資は、今後も豪ドル
相場の下支え役になると期待されます。
豪州10年国債利回り
2.86%
2.21%
2.0
米10年国債利回り
1.0
独10年国債利回り
0.0
13年1月
13年7月
14年1月
14年7月
0.47%
15年1月
15年7月
(出所)ブルームバーグ (期間)2013年1月1日~2015年11月30日
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