週次レポート 平成 27年 9月 14日 ドル上値に重さも欧州・資源通貨の持ち直し焦点 日米中銀会合、株価と資源動向、中国政策にらむ 今週の為替相場はドルの上値の重さが意識される一方、欧州通貨や資源国通貨の持ち直しが焦点になろう。 週間予想はドル/円が 118. 00-1 22.00円、ユーロ/円が 135.00-1 38.50円。米 FRBの利上げが焦点となる 1 6 -17日の FOMCが最大の注目材料となるが、すでに 1回の利上げとその後の様子見に対する織り込みも進み、 ドル高の勢いが減退してきた。裏表で欧州通貨や資源国通貨が持ち直しており、日々の材料でリスク選好と なればクロス円主導での円安、リスク回避となれば円全面高という手探り相場が想定される。 ポンドやユーロが対ドル反発、ユーロ/円も節目回復 「4日の米 8月 NFPL (非農業部門雇用者数)は前月比+17.3万人増と弱い数字となったが、前月分までの 上方修正で 8月までの平均増加数が正常化目安(20万人増)を上回っている。このまま金融資本市場の高ボ ラテリィティーが小康を辿るようなら、米 FRBは 16 -17日の FOMCで 9年振り利上げに踏み切る可能性が高 まってきた」――。 ある有力な在米金融筋はこのような見通しを示す。実際に 17日の FOMCで利上げとなれば、短期的なドル 高を促す一方、声明や議長会見では今後の様子見姿勢が強調される可能性があり、 「利上げ材料の出尽くし」 によってドルが反落する可能性をはらむ。 もっとも 17日の利上げ後、しばらく利上げがないとなれば、米国株は一時的な株安後にリバウンドが見込 まれる。その場合はドル安と裏表の欧州通貨高(ユーロ、ポンド、スイス・フランなど)や資源国通貨高( 豪ド ル、NZドル、カナダ・ドルなど)などもあり、クロス円でのこうした通貨の上昇と円安の余地が残されてい る。 一方、17日に利上げが見送りとなり、1 0-12月の利上げ予告が強調されると、短期的にはドル安材料とな る反面、先行きの利上げ余地がドルをサポートしていく。米国株は利上げ見送りで一旦は上昇するが、利上 げ警戒が残ることで「アク抜け」が遅延。根深い中国不安などもあり、戻り売りに押されるリスクがある。 その場合はクロス円の主導により、リスク回避の円全面高が警戒されそうだ。 ただし、17日の米利上げ有無にかかわらず、 「1回の利上げ後は来年にかけて様子見」というシナリオが織 り込まれ始めた。それがドルの上値を重くさせている。すでに週足テクニカルでは、ポンド/ドルで 2014年 11月以来となる一目均衡表の雲の下限 1.5 278ドル前後を上抜け突破してきた(ポンド高・ドル安)。 ユーロ/ ドルは、2014年 8月以来となる雲の下限 1.13 3 4ドル前後のユーロ上抜けに直面。連動する形でユ ーロ/円は、今年 1月以来となる雲の下限 135 .09円前後を上抜け回復してきた。さらに資源国通貨に関して も、1)資源相場の需要減退と供給過剰の最悪ピークの織り込み、2)中国の 13日指標悪化を踏まえた政策期待、 3)米 FRBの 1回の利上げ織り込み――などにより、資源相場と同様に一旦の底入れムードにある。 もっとも米利上げの一回の織り込み進展や、資源相場の持ち直しは、リスク回避による世界株安と円全面 高の圧力を和らげていく。このまま日本で株安・円高が激化するようなら、日銀による追加緩和も現実味を 増す。最近では 2 013年後半に全般的なドル安の一方、クロス円主導で円安が進んだ局面もあり、足元の投機 ポジションでの円ショート( 売り持ち)大幅整理とあいまって、円ショート再拡大の伸びシロは残されている。 その他の注目ポイントは以下の通り。 <日銀金融政策決定会合> 14-15日の日銀金融政策決定会合では現状維持の可能性が高く、15日の結果発表や総裁会見までは「失望」 や「緩和催促」の円高・株安が警戒されそうだ。ただし、日銀の黒田東彦総裁は「市場に追い込まれての後 手対応を忌み嫌う」 (財務省 OB筋)タイプと目されている。その意味で 15日の会見で今後の株式 ETF (上場 投信)購入枠拡大や、 「2年で物価目標 2 %達成」という時間軸の延長などの検討示唆には注意を要しよう。 場合によっては、サプライズ追加緩和の可能性も完全には無視できない。 <米国の経済指標> 米国の経済指標では、8月からの株安や中国を始めとした世界減速懸念の影響度合いが焦点となる。最新 9 月指標となる 15日の NY連銀製造業景況指数、16日の NAHB住宅市場指数、17日のフィラデルフィア連銀製 造業景況指数などは、それぞれ下振れが警戒されやすい。16日の消費者物価指数(CP I)は資源下落、17日 の住宅着工件数は前月の 8年ぶり高水準からの反動減速が重石となる。 その一方、15日の 8月小売売上高や鉱工業生産に関しては、同月の自動車販売が約 10年ぶりの高水準に なったことなどが支援材料となりそうだ。 <中国の政策対応> リスク回避の震源地となっている中国では、前週末 13日に鉱工業生産、固定資産投資などで改めて景気の 減速が確認された。22日からは習近平主席の米国訪問が予定されており、それまでには人民元の切り下げと いった外需依存ではない、内需刺激型の財政出動や構造改革が注目されよう。中国の崔天凱駐米大使はこの ほど「習主席訪米の準備作業は現在大々的に進められている。訪米日程は全てが目玉であり、 『驚喜』すべき 成果があると信じている」と表明した。 <リスク回避尺度の VIX指数> リスク回避のバロメーターであり、米株投資家の不安心理を示すシカゴ・ オプション取引所(CB OE)のボ ラティリティー・インデックス(VI X)は、高止まりが続いている。VI Xは 8月 2 4日に前日の 2 8.03から一 時 53.2 9へと急上昇し、20 09年 1月以来の高水準に跳ね上がった。その後は低下に転じているものの、9月 11日終値は 23. 15となり、安定化を示す 20割れまでには修復されていない。 過去に VIXが 20の節目を超えるリスク回避局面は、 「1 5-20営業日」で狼狽混乱が一服となるパターンが 観測されてきた。最近では今年 1月 2日に 20を突破したが、20営業日後の 2月 2日に 22.81をつけたあと、 20割れへと安定化している。また、欧州債務危機に揺れた 2011年 7-8月には 23営業日後、2 011年 2-3月 は 16営業日後、2 010年 4 -5月は 20営業日後にそれぞれ一旦の上昇ピークをつけて、その後はリスク回避 の後退、あるいは小休止へと向かっている。 今回の場合、VIXの 20超えは 8月 21日から始まった。9月 11日時点で 14営業日目となっているが、日柄 面でいえば 1 6-17日の FO MCなどが一旦の「アク抜け」材料として注視されよう。 <ドル/円の週足テクニカル> ドル/ 円の中期トレンド判断で参考になる週足テクニカルでは、一目均衡表の基準線 120.97円前後、転換 線 120.68円前後、52週移動平均線 119 .18円などに絡み合う横這い化に移行してきた。雲の上限 116.47円 前後からの上方乖離状態が続いており、8月 28日週に続いて雲上限との乖離を修正する「ドル 2番底トライ」 の可能性は消えていない。 ただし現状で 5 2週線の方向性は、まだ上向き化を維持したままだ。雲の上限は来年 2月にかけて 122. 43 円方向に位置しており、調整ドル安を経ながらも緩やかにドルが下値を切り上げていく可能性は残されてい る。 お客様は、本レポートに表示されている情報をお客様自身のためにのみご利用するものとし、第三者への提供、再 配信を行うこと、独自に加工すること、複写もしくは加工したものを第三者に譲渡または使用させることは出来ません。 情報の内容については万全を期しておりますが、その内容を保証するものではありません。また、これらの情報によ って生じたいかなる損害についても、当社および本情報提供者は一切の責任を負いません。本レポートの内容は、 投資一般に関する情報の提供を目的としたものであり、勧誘を目的としたものではありません。投資にあたっての最 終判断はお客様ご自身でお願いします。 ---------------------------------Japan Economic Pulse Co.,Ltd. ----------------------------------
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