(別記第2号様式) 平成23年度 事後評価調書 機 関 名 研究責任者 研究担当者 課題番号 課題担当者 共同研究期間 (協力機関) 研 究 の 概 要 研 究 の 成 果 衛研一般2310 3 人 研究課題名 研究区分 北海道立衛生研究所 食品安全G主幹 田沢悌二郎 主査(遺伝子・アレルギー) 鈴木 智宏 食肉製品における肉種の検出定量に関する研究 研究 試験 調査 分析 研究期間 全体所要額 (千円) 20年度~ 22 年度 907 907 (一財 ) ○研究背景 ・研究のニーズ 近年、食品の原材料偽装や産地・品種偽装などの食の安心・信頼を揺るがす多くの事例が発覚している。食品の信頼を確保するためには、 食品表示の適正化を推進することが重要である。食肉などでは、原材料の肉種以外に他の肉種の混入を確認するために、肉種判別検査とし て、PCR法が汎用されている。この手法は肉種に特異的なDNA領域を標的としてPCRで増幅させ、電気泳動法によりその増幅させたPCR産物の有 無をバンドとして確認する手法である。PCR法では、極微量でも他の肉種混入の有無を確認することは可能であるが、どの程度の量が混入して いるのかという定量的な評価はできない。そこで、リアルタイムPCRにより食肉製品中の肉種とその割合を定量的に評価することは、食品表示 の適正化に寄与できると考え、リアルタイムPCRにより挽き肉中の牛、豚及び鶏肉の混入割合を定量する手法の確立を試みた。 ・道が取り組む必要性 道は、消費者に信頼される安全で安心な食品の生産と供給に寄与することを目的として「食の安全・安心条例」を制定している。その中で 科学的知見に基づき食の安全・安心を図るため、研究開発の推進及びその成果の普及その他の必要な措置(緊急の事態への対処等に関する体 制の整備等)を講ずることとしており、食の北海道ブランドを守るという観点からも率先して取り組むべき課題である。 ・関係機関等との連携・役割分担 当所単独で取り組む予定であるが、食品原材料の識別同定に関して先行的な研究を行っている国立医薬品食品衛生研究所から必要に応じて 情報を収集する。なお、成果の活用にあたっては保健福祉部健康安全局食品安全グループと連携する。 ・これまでの研究成果・知見、外部機関の知見等の活用の考え方 これまでに食肉種の定量に関する先行研究として複数の論文が報告されており、リアルタイムPCR法によって食肉中に含まれる肉種の定量が 可能となっている。しかし、製品表示以外の他の肉種を意図的に一定量混入させたのか、あるいは微量意図せずに混入したのかを明確に判定 するためには正確に1%の混入割合を定量する必要があるが、これら先行研究の技術・手法は食肉を含む加工品には適用が困難であったり、適 用の可否について検証されてない場合がほとんどである。 ○研究目的 食品表示を科学的に検証するために、リアルタイムPCRによる食肉製品や食肉を含む加工品中の肉種を同定し、さらに1%の混入割合を正確に 定量する方法を確立する。 ○研究内容(直近の中間評価で内容の変更があった場合は、その内容を記載する) リアルタイムPCRにより定量するためには純度が高く、かつ多くの鋳型DNAが必要となることから、食肉製品や食肉を含む加工品からそれら の条件を満たすDNA抽出法を選択し、さらに抽出条件の最適化を行って抽出方法を確立する。そして、抽出した鋳型DNA及び独自にあるいは先 行研究を参考にして設計したプライマーと蛍光プローブを用いて、リアルタイムPCRにより標的とした肉種の同定及び定量を行う。確立した方 法を市販の食肉製品及び食肉を含む加工品に適用して本法の精度や有用性等を評価する。 直近の研究課題評価結果 ○直近の研究課題評価における総合評価意見及びそれに対する取り組みの状況(直近評価に対する対応の適切性) 「本研究は、食肉製品の食品表示の監視に活用するため、製品中の肉種の同定及び定量する方法を確立する重要な 平成 20 年度 事前評価 研究課題であり、食の安全・安心の確保にも資することから、優先的に取り組む必要がある。なお、環境生活部や 【自己評価】 A B C 農政部等との連携にも努められたい」との評価を受け、研究を進めるに当たり関係機関と検査法、検査技術につい 【総合評価】 A B C て情報交換を行った。 ○研究開始後の事情変更の有無及び対応の状況(状況変化への対応の適切性) 特になし。 ○年次別目標とそれに対応する実績及び研究成果(目標の達成度) 食肉製品から高収量かつ高純度のDNAを抽出する方法及びミトコンドリアDNAシトクロームb遺伝子を標的とするプライマー及びプローブセッ トを用いた定量系を確立した。これらプライマー及びプローブセットの標的以外の肉種との交差反応を確認したところ、交差反応性は定量に 影響するほど高くはなく、実用的に許容できる程度であった。最終的に、食肉に使用されている原材料とその混入割合を正確に定量できるこ とを明らかにした。なお、成果については、北海道立衛生研究所報、第60集(2010)に発表した。 主な目標(項目)[年次] (直近評価時点におけ 研究目標に対する実績等 (事前評価時点) る変更点) (事後評価時点) (1)食肉製品及び食肉を含む加工品から精製度が高く、かつ効率的な 精製度が高くかつ効率的なDNA抽出法と設計 DNA抽出法を確立する。 したプライマー及び蛍光プローブによるリアルタ (2)プライマー及び蛍光プローブを設計し、抽出したDNAを鋳型としてリ イムPCRの定量系を確立した。 アルタイムPCRにより定量を行い、定量系を確立する。 確立したDNA抽出法及びリアルタイムPCRによる定量系を用いて市販の 確立したDNA抽出法及びリアルタイムPCRによ 食肉製品及び食肉を含む加工品からDNAを抽出して定量を行い、精度 る定量系を用いて定量を行い、良好な結果が得 等を評価する。 られた。 ○研究に係る資源配分の妥当性(研究資源配分の妥当性) 配当された経費で十分に研究を実施でき、当初の目的を達成できたことから研究資源の配分は妥当であった。 成 ○活用される分野及び具体的な活用方策(成果の活用の可能性) 果 (1)表示と異なる原材料の混入の有無など、食品表示の適切性に関する監視体制に活用される。 の (2)今後、当所が食肉遺伝子検査を実施する場合には応用可能である。 活 ○今後の対応 用 加工食品には多くの種類と量の夾雑物が含まれており、純度の高いDNAを抽出することは困難であるため、今回得られたDNA抽出技術の知見 策 を当所で行政検査として実施しているトウモロコシ加工食品における遺伝子組換え体の混入検査や加工食品中のアレルギー物質含有検査に応 用する。 【個別評価】 研究目的及び達成度 【 a 】 成果の活用の可能性 【 a 】 a・b・c 【自己評価】 【説 明】 リアルタイムPCRにより食肉の原材料とその混入割合を正確に定量できる方法を確立し、食肉遺伝子検査への活用が可能であるなど、十分な研 A・B・C 究成果が得られている。 【総合評価】 【意 見】 本研究は、食肉製品等の加工食品より高精度かつ効率的な遺伝子抽出法を確立し、加工食品における遺伝子組換え検査への応用も A・B・C 可能など、研究目標が達成され、一定の研究成果が得られている。 (A)優れている。 (B)良好、適切である。 (C)やや劣っている。見直しが必要。 (a)極めて高い、適切である。 (b)高い、適切である。 (c)低い、改善の余地がある。
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