物理学演習 IIB 問題 No.2 (量子力学 I) 2015 年 10 月 5 日 1. 電磁波はその波長によって次のように分類される。 種類 波長 (単位 m) γ線 X線 10−11 以下 10−12 ∼ 10−8 紫外線 10−8 ∼ 4 × 10−7 4 × 10−7 ∼ 8 × 10−7 可視光 赤外線 電波 8 × 10−7 ∼ 10−3 10−3 以上 それぞれについて, 対応する光子 1 個のエネルギーの範囲を eV を単位として求めよ。 2. 固体の結晶構造を解析するために, 固体に X 線や電子線を当てたときに起こる回折現象を利用 することができる。回折が起こるためには, 入射する X 線や電子線の波長が, 結晶の格子間隔 と同じ程度またはそれ以下でなければならない。格子間隔を 10−10 m 程度として, 必要な光子 および電子のエネルギーのおよその値を eV を単位として求めよ。 3. 静止した電子 (質量 m) に波長 λ の光を当てたときのコンプトン散乱を考える。光を粒子(光 子)と考え, 散乱前後のエネルギーと運動量の保存を使って, 入射方向に対して角度 θ の方向へ 散乱された光の波長 λ′ を求める。 (a) 相対論によると, 質量 m の自由粒子が運動量 p をもっているときのエネルギーは E= √ p2 c2 + m2 c4 (1) である。運動量が十分小さいとき (|p| ≪ mc のとき), このエネルギーが静止エネルギー mc2 とニュートン力学の運動エネルギー p2 /(2m) の和で近似できることを示せ。 (b) 光子のエネルギーと運動量の関係は, (1) で m = 0 とした式で与えられることを示せ。 (し たがって, 光子は質量ゼロの粒子である。) (c) 電子に対して相対論的なエネルギーと運動量の関係 (1) を使い, 散乱前後のエネルギーと 運動量の保存から λ′ を求めよ。 4. ニュートンの万有引力の法則 m1 m2 r2 に現れる万有引力定数 G は, 物体の間に働く重力の強さを決める定数である。 F =G (2) (a) 万有引力定数 G, 真空中の光の速さ c, プランク定数 ℏ = h/(2π) からつくった ℓP = Gα cβ ℏγ が長さの次元をもつように, べき α, β, γ を決定せよ。(この ℓP はプランク長とよばれる。) (b) プランク長 ℓP の値を, m を単位として求めよ。ℓP は陽子や中性子の大きさ (10−15 m 程 度) の何倍か。 (c) 問 (a) と同様に, G, c, ℏ からつくった EP = Gα cβ ℏγ がエネルギーの次元をもつように, べき α, β, γ を決定せよ。(この EP はプランクエネルギーとよばれる。) (d) プランクエネルギー EP の値を, GeV (= 109 eV) を単位として求めよ。EP は陽子や中性 子の静止エネルギー (1 GeV 程度) の何倍か。 1 5. 電磁場中の荷電粒子のラグランジアンは, L= 1 e m ṙ · ṙ − e ϕ(r, t) + ṙ · A(r, t) 2 c (3) で与えられる。m と e は荷電粒子の質量と電荷であり, ϕ(r, t) と A(r, t) は電磁場のスカラー・ ポテンシャルとベクトル・ポテンシャルである。 (a) ラグランジュの運動方程式が ( ) 1 mr̈ = e E + ṙ × B c (4) となることを確かめよ。ここで, E = −∇ϕ − 1 ∂A , c ∂t B =∇×A (5) は電場と磁場であり, (4) の右辺はローレンツ力を表している。 (b) 正準運動量 p を, r と ṙ を使って表せ。 (c) ハミルトニアン H(r, p) を求めよ。 (d) 一般に, 量子力学のシュレディンガー方程式は, ハミルトニアンの中の正準運動量 p を微 分演算子 −iℏ∇ に置き換えたハミルトニアン演算子 Ĥ = H(r, −iℏ∇) を使って, iℏ ∂ ψ(r, t) = Ĥψ(r, t) ∂t (6) で与えられる。ψ(r, t) は系の状態を表す波動関数である。電磁場中の荷電粒子のシュレ ディンガー方程式を具体的に書け。 6. 質量 m, 角振動数 ω の 1 次元調和振動子のラグランジアンは, L= 1 1 mẋ2 − mω 2 x2 2 2 (7) である。 (a) ラグランジュの運動方程式が, 単振動の方程式になることを確かめよ。 (b) 正準運動量を p として, ハミルトニアン H(x, p) を求めよ。 (c) 波動関数 ψ(x, t) に対するシュレディンガー方程式を求めよ。 (d) 関数 ψ1 (x, t) がこのシュレディンガー方程式の解であるとき, 関数 ψ2 (x, t) ≡ ψ1 (−x, t) も 解であることを示せ。 2 7. 1 次元の自由粒子のシュレディンガー方程式は, iℏ ∂ ℏ2 ∂ 2 ψ(x, t) = − ψ(x, t) ∂t 2m ∂x2 である。必要ならば積分の公式 √ ( ) ∫ ∞ β2 π −αx2 +iβx dx e = exp − α 4α −∞ (α, β は複素数, Re α > 0) (8) (9) を使って, 以下の問に答えよ。 (a) 決まった波数 k をもつ波 ψ(x, t) = eikx−iωt (10) が解になるように ω と k の関係 ω = ω(k) を求めよ。 (b) シュレディンガー方程式は線形な微分方程式なので, 問 (a) の形の解の重ね合わせ ∫ ∞ dk ψ(x, t) = f (k) eikx−iω(k)t −∞ 2π も解である。時刻 t = 0 における初期条件が ( ) 1 2 1 ik0 x − 2 x ψ(x, 0) = 1 exp 2a (πa2 ) 4 (k0 , a は実数定数) (11) (12) となるように f (k) を決定せよ。(ヒント:フーリエ逆変換せよ。) (c) 問 (b) で求めた f (k) を (11) に代入し, t > 0 における波動関数 ψ(x, t) を求めよ。 (d) 問 (c) で求めた波動関数から確率密度 ρ(x, t) = |ψ(x, t)|2 を求め, それが x の関数として ガウス分布になっていることを確かめよ。また, このガウス分布のピークの位置とそのま わりの広がりの幅が, 時間とともにどのように変化するかを述べよ。 3
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