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本校のいじめ撲滅に向けた取組
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生徒会の活性化と小学校・中学校・地域の連携を通して
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藤岡市立東中学校
校長
1
西澤
恭順
主題設定の理由
今日、いじめによる痛ましい事件が各地で起こるなど「いじめの撲滅」は喫緊の課題となってい
る。本校では以前より、「いじめの未然防止」(本校では、生徒にもわかりやすいように「いじめ
撲滅」と呼んでいる)に向けて取り組んできていた。
しかし、今までの取組は、教師主導の学校としての取組が多く、「いじめはダメだ、いじめはダ
メだ」と頭ごなしに生徒に押しつけている指導が多かった。これだけでは生徒は、ただ言われたこ
とをこなしているだけで、心から「いじめはしないようにしよう」と考えるまでには至らなかった。
学校としての取組を充実させるとともに、いじめは自分たち自身の問題であると捉え、「どうした
らいじめはなくなるのか?」自分たちの頭で考え、実際に行動していくなど、生徒の活動を中心と
した取組を展開していかなければ根本的な解決にはならないと考えた。
そこで、一昨年度より生徒会活動を「いじめ」という視点で見直し、活性化させることにした。
一方、いじめ問題は小学校時代の問題を引きずっていることも多い。小学校時代から「いじめはし
ない」「させない」「許さない」という意識を育てていかなければならない。そのためには小学校
との連携も図る必要がある。
また、生徒の周りの大人の考えが、生徒に与える影響も大きい。そこで、地域も巻き込んで、生
徒を取り巻く環境全体で「いじめ撲滅」に向けて取り組んでいきたいと考え、本主題を設定した。
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実践内容
いじめ撲滅には、生徒が主体となった取組が大切であるとはいえ、教師が主体となった学校とし
ての取組をしっかりした上で、生徒の主体的な取組を充実させることが大切である。学校としての
取組や生徒の活動を中心とした取組と小学校・地域との連携のバランスを取りながら実践した。
(1)学校としての取組
①
人権集中学習旬間
本校の統計から、いじめの起こりやすい6月と12月及び3月の年3回「人権集中学習旬間」
を設定している。この期間中、人権について改めて考え直す機会としている。校長講話や道徳、
学級活動、各教科等を通して、考えたことや感じたことを記録し、2週間で1冊の冊子にする。
そして、それを各学年ごとにまとめ、全校生徒の前で発表し合い、互いに啓発し合っている。
②
生活アンケート及びQUテストの実施
「学級が楽しいか」、「いじめられている人はいないか」等9項目にわたる「生活アンケート」
を毎月1回実施して実態把握に努めている。5月と12月については、このアンケートの代わ
りに「QUテスト」を実施して、生徒の客観的な実態把握に努めている。
③
三者面談
夏休みに入るとすぐに全員を対象とした三者面談を行っている。「1学期を終えて学校生活
はどうだったか?」、「困っている事はないか?」、「悩んでいることはないか?」等、担任と保
護者と生徒が直接面と向き合って話し合いを持っている。
④
教育相談月間
いじめが起こりやすくなる11月下旬から12上旬にかけて、6校時をカットし、時間をし
っかりと確保して、担任と生徒で教育相談を行い、悩み等の把握に努めている。
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⑤
各種会議
いじめ問題は迅速に、そして学校として同一歩調で取り組むことが大切である。そこで、情
報の共有化と指導方針の確認のため校時表に位置づけて学年主任会議、生徒指導部会、教育相
談部会、個別の指導会議等を定期的に実施している。
(2)生徒の活動を中心とした取組
①
あいさつ運動(資料1)
毎日生活委員会を中心としてあいさつ運動を行っている。「人と人とのふれあいはまずあい
さつから」このことを基本に全校生徒が明るいあいさつができように取り組んだ。
また、「毎月14日は1年4組の日」などとクラスごとに日にちを設定したり、学期末には
部活動単位で参加したりするなど「拡大あいさつ運動」も実施している。
②
アルミ缶回収(資料2)
「アルミ缶回収30万缶」を目標にアルミ缶回収を行っている。この収益金で地域の3つの
老人福祉施設や被災地の福島県南相馬市立鹿島小学校に支援を行っている。老人福祉施設には、
平成8年度から毎年車椅子を贈るなどの支援を行ってきていたが、平成23年の東日本大震災
に関わって鹿島小から転校生があったことをきっかけに鹿島小にも支援が始まった。平成23
年度には長縄8本を贈った。平成24年度からはもっと支援をしようと回収目標を30万缶と
定め取り組んでいる。 平成24年度は目標の30万缶を大きく上回る36万缶を集めること
ができた。この収益金を使い老人福祉施設に歩行器4台とデジタルカメラ2台を、鹿島小にサ
ッカーボール13個、ソフトバレーボール14個など計46個のボールを贈った。
平成25年度も36万缶を集めることができ、老人福祉施設には車椅子1台とラジオカセッ
トデッキ2台を、鹿島小には運動会用万国旗一式と走り高跳びセット一式を贈った。生徒たち
は、これら支援に対して涙するお年寄りたちや満面の笑みで喜んでいる児童の姿を目の当たり
にし、「人の役に立つ喜び」を感じることができた。
③
人権の花いっぱい運動(資料3)
ア、夏のマリーゴールド
夏にはマリーゴールドを人権の花と決め、草花を育てることを通して「思いやりの心」や
「責任感」等を育んでいる。マリーゴールドを一人3鉢種から育て、1学期末に人権メッセ
ージとともに家庭に持ち帰っている。1鉢は自宅に植え、残りの2鉢は隣近所に配り、中学
生の取組を知ってもらうとともに、人権について考えていただく機会としている。
イ、冬のパンジー
地元の藤岡北高校と連携をし、パンジーを種から栽培している。ある程度大きくなった時
点でクラスごとに校庭周りの花壇約400mに一人1苗ずつ定植している。そして、クラス
ごとに人権スローガンを掲げ、人権意識を持たせながら大切に育てている。
④
絆リボン(資料4)
12月の人権集中学習旬間では、保健委員会と生活委員会が協力し、「絆リボン」に取り組ん
でいる。絆リボンとは、エイズ撲滅のレッドリボンにいじめ撲滅のイエローリボンを重ねたも
のである。この期間中は全員が胸に付けて「差別をしない、いじめをしない」とみんなで意識
の高揚を図っている。
⑤
人権の輪(資料5)
12月の人権集中学習旬間の最後には、体育館で「人権の輪」を行っている。隣同士で手を
つなぎ「人権の輪」のかけ声とともに一斉に両手を挙げるものである。スペースの関係できれ
いな円ではできないが、誰もいやがらずにみんな手をつないで一斉に手を挙げている。
⑥
募金活動(ハッピースキャンペーン)(資料6)
3学期には、「東北をハッピーに、日本にピースを」を合い言葉に募金活動「ハッピースキ
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ャンペーン」をJRC委員会が行っている。6万円以上の寄付金が集まり南相馬市に寄付した。
(3) 小学校及び地域と連携した取組
①
子どもサミットの開催(資料7)
毎年夏休み中に本校で子どもサミットを開催している。東中校区のいじめ撲滅スローガン「な
・か・ま」(「な」・・・なくそう
いじめ、「か」・・・かわそう
あいさつ、「ま」・・
・
学ぼうみんなで)に沿って様々な取組を考え、いじめをなくすために、この1年間ど のよう
な取組を実施していくかを話し合っている。すべての取組は、この話し合いの内容に沿って1
年間実施されていく。この論文に書かれている取組はすべてこの会議で決まったものである。
②
ガッチュウレンジャーの上演(資料8)
いじめ撲滅のメッセンジャーとして「ガッチュウレンジャー」によるいじめ問題に関わる劇
を小学校で上演している。「ガッチュウレンジャー」とはいわゆる戦隊ものであり、「ガッチ
ュウ」とは東中に親しみを込めて呼ぶ際の愛称である。この正義の味方ガッチュウレンジ ャー
が各小学校に出向き、劇を通していじめ撲滅を呼びかけている。昨年度は各小学校で「いじめ
ダメゼッタイ」など、2回ずつ上演した。台本や配役もすべて生徒たちが考え上演している。
また、模造紙大のポスターも生徒自身がPCで作成し、各小学校に掲示して啓発を図った。
③
4校連携新聞「つながり」の発行と「生徒会インフォメーション in ラジオ」の放送(資料 9)
生徒会本部役員が中心となり、4校連携新聞「つながり」を発行したり、「生徒会インフォメー
ション in ラジオ」というラジオ形式の校内放送を行ったりしている。これは、各学校で取り組ん
でいるいじめ撲滅のための取組を紹介し合い、お互いの学校の様子を知るとともに、よい点はま
ねをしながらよりよい学校にしていくことを目的に実施している。
④
地域でふれあうあいさつ運動(資料10)
「あいさつで明るい校区を創ろう」を合い言葉に、年3回各1週間ずつ地域の方々と一緒に
なって中学生が、出身小学校であいさつ運動を行っている。この取り組みには地域の方々にも
協力をいただき、区長、児童民生委員、更生保護女性会、交通指導員、PTA役員の皆様方な
ど大勢の地域の方々に参加してもらっている。地域をあげてあいさつ運動に取り組んでいる。
⑤
人権の花いっぱい運動(資料11)
冬の人権の花パンジーの取組では、小学校にも配り、校区をあげて人権の花として育ててい
る。そして、中学校の卒業式にはお祝いのメッセージを付けて贈ってくれ、通路を飾っている。
小学校の卒業式には、中学校から倍にして贈り返し、同様に卒業式会場の通路を飾っている。
最後に、4校で育てたプランターのパンジーをすべて本校に集め、約300鉢のプランター
で花文字「和」を作成した。「和」は4校で協力できた、和やかにいられた、を象徴している。
3
成果と課題
成果:これらの取組を始めてからこの東中校区では大きないじめ問題は起こっていない。また、
12月に行われたQUテストの結果を見ると、学級満足群が、全国平均値35%のところを、
1年72%、2年65%、3年68%と自分の学級に満足している生徒が多いことがわかった。
さらに、これらの活動を通して、生徒たちは自分たちのやっていることに自信を持つようにな
り、自分の学校に誇りを持つようになってきた。卒業時には多くの生徒が「東中学校大好き」、
「東中学校でよかった」等々言ってくれるようになった。小学生は、「早く中学校に行きたい」、
「自分も中学生になったら先輩のように活躍してみたい」と言ってくれるようになってきた。
課題:生徒が中心となった活動をマンネリ化から形骸化させることなく、常に生徒や児童が「自
分たちで考えてやっているんだ」という意識で取り組めるようにする必要がある。
そのためには、今やっていることは何のためにやっているのか等、目的を常に見直すことや
教師が生徒や児童に取り組ませる時間と手間を惜しまないこと、等が大切である。
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