2 成人の重症患者に対して許容される低栄養と標準的経腸栄養の比較

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成人の重症患者に対して許容される低栄養と標準的経腸栄養の比較
Permissive Underfeeding or Standard Enteral Feeding in Critically Ill Adults
Yaseen M. Arabi et al. N ENGL J MED 2015; 372: 2398-2408
【背景】成人重症患者にとって適切なカロリーの目標は明らかではない。非蛋白カロリーを制限した許容低栄養
と標準的経腸栄養を比較し、両方ともに推奨される量の蛋白質を与えたうえで、重症成人患者における90日後
の死亡率を評価した。
【方法】7つの施設で内科、外科、外傷に分け、894 人の患者に対して許容低栄養と(カロリー量 40%-60%)と標準
的経腸栄養(70-100%)を 14 日間行った。蛋白量は両方とも同程度で続けられ、90 日後の死亡率を主要評価項
目とした。
【結果】2群は同じような特徴であり、96.8%の患者が人工換気であった。介入期間中、許容低栄養の群は 835±
297kcal/day、標準的経腸栄養の群は 1299±467kcal/day を投与された。蛋白量は同程度であった。90 日後の
死亡率は同程度であり、許容低栄養の群で 445 人中 121 人(27.2%)、標準的経腸栄養の群で 440 人中 127 人
(28.9%)であった。(許容低栄養群の相対リスク 0.94; 95%CI 0.76-1.16; P=0.58)重篤な有害事象はなかった。栄養
不耐性、下痢、ICU 内感染、ICU 入院日数において有意差はなかった。
【結論】成人重症患者で非蛋白カロリーを制限した経腸栄養投与を行っても、標準的経腸栄養より死亡率が低く
なるという結果は得られなかった。
【Discussion】
この研究では、カロリー摂取が多いならば蛋白の異化を弱めるという仮説の立場をとらない。なぜならば、二つ
の群は窒素のバランス、プレアルブミン、トランスフェリン、尿中窒素排泄が同等であったからだ。しかしながら
ICU の患者でこれらの指標を見る場合、例えばプレアルブミンやトランスフェリンは炎症や鉄減少に影響されるし、
窒素バランスは下痢などの尿中排泄以外の窒素減少を考慮できていない。また ICU 感染があった患者に対して
も、それぞれの群で違いは見られなかった。これは他の研究でもそのような結果が出ている。
特定の部分母集団によって結果が変わるかも検討された。外傷による脳損傷の患者 82 人に対して行われた
研究では、高カロリー摂取であることによって3か月後の神経学的なアウトカムが改善したというものがある。しか
しその研究の中でも6か月後のアウトカムや死亡率では有意差はなかった。同様に私たちの研究における脳損
傷患者 118 人においても死亡率に有意差は得られなかった。特定の部分母集団に対して許容低栄養と標準的
経腸栄養を比較した場合でもアウトカムに違いはみられなかった。しかしながら部分母集団の数自体が少ない
ために過小評価されている可能性がある。
【感想】
読み進めながら、APACHEⅡスコアや SOFA スコアなど、重症度評価の指標をしらなかったので、調べながら
勉強をしていきました。
(研修医 平田 直子)