小児患者の搬送にかかわる医師における意識調査

HP 公開用説明文書
研究課題:
小児患者の搬送にかかわる医師における意識調査
(Self Assessment of Medical Doctors, who are engaged in the transportation of pediatric patients)
研究の趣旨と目的:
先行研究によると,先進諸国に比して本邦では,大規模医療施設よりも中小規模医療施設における小児死亡症例の
割合が多いとされます。また特に 1〜4 歳の乳幼児死亡率は,先進諸国に比して高いとされます。
この理由のひとつとして,本邦では重症の小児患者を加療するための施設(小児専門集中治療室(PICU)など)の整
備が,欧米と比べて極めて未発達である背景が挙げられます。このことにより,重症小児患者が大規模施設に十分に
集約されませんし,また,独自の専門性が確立した「搬送チーム」の形成も不十分です。
この状況が認識されて以降,各地で PICU を整備する政策がすすめられています。しかしながら,ここに収容される
べき「重症」患者の選定,更にそれら患者を他院から搬送する方法論など,運用面の整備は残念ながら十分とはいえま
せん。
愛知県を中心とした多施設研究によって,入院管理中に心肺蘇生がなされた小児患者の多くが,一般病院の小児
(一般)病棟で急変事象に至ったことが明らかになりました。また愛知県の別の調査では,死亡に至る重症小児患者の
殆どは,病床数の多い医療施設で加療されていたものの,施設内の ICU には収容されなかったことも明らかになりまし
た。欧米の先行研究では,小児患者の急変の多くは小児専門施設で,また集中治療室(ICU)で発生していると報告さ
れるのとは様相が異なります。このため我が国,少なくとも当地域の,重症小児患者に対する診療体制を確立するため
には,欧米諸国とは異なるアプローチを考察することが必要です。
上記の急変患者の多くは,急変事象の数時間前にバイタルサインの増悪,あるいは新たな臨床徴候の発生など,状
態の変化を呈していたことが明らかになりました。従って,状態の変化を察知された小児患者が,重症小児患者の診療
体制の整った施設に安全に搬送されれば,集学的管理を享受でき,よい転機を得られる可能性が示唆されます。
前述の愛知県調査では,小児患者の転院搬送は平成 25 年の 1 年間で 807 件が抽出されました(有効回答率 59.8%)。
しかし,その詳しい実態調査は,現在までに行われたことがありません。
そこで本研究では,小児科医が重症小児患者の搬送業務に関わる現状を明らかにし,小児搬送医療における潜在
的な問題点を抽出することを目的として,小児科医に対する調査票による調査を行います。これにより,前述の重症小
児患者に対する診療体制を確立するための基礎資料が提供できるを期待しています。
研究の対象:
名古屋大学小児科医局に所属したことがあり,同医局の運営するメーリングリストに登録している医師を対象として,
本調査への協力依頼を電子メールで行います。これを受領し,本調査に関心を持ち,ご自身でアンケートのためのホ
ームページにアクセスした者のうち,アンケート前文の十分な説明を読んで納得し,回答を続けることに同意した者を対
象とします。
本研究は無記名調査であり,完全に自由意志で回答を行う形態であることから,回答を電磁的に送付するボタンを押
下することで,本調査に同意をしたものとみなします。
研究の方法:
本研究は、当院救急・集中治療医学講座を事務局として行います。
① 上述のメーリングリストに,アンケートへの協力依頼のメールを発信する。もともとメーリングリストに登録され,このメ
ールを受領し,本文を読んで理解・納得を得られた者を被験者として,Web ページ上のアンケートに回答して頂きます。
なお回答は,無記名・連結不可能匿名化の状態で,サーバに順次蓄積されます。
アンケートは,以下の 4 部門 50 問から構成されます。
(1) 回答者の職環境・職経験に関する項目:
勤務施設の規模,医師免許取得後年数,小児科医としての経験年数など
(2) 回答者の搬送経験に関する項目:
小児搬送の経験数(総数,項目別の数)
(3) 搬送の知識と教育経験に関する項目:
今までに回答者の経験した学習内容,回答者の研修に対するニーズ
(4) 小児の搬送における小児科医の役割についての項目:
複数項目(各種条件下の小児搬送について)に関して,小児科医が役割を担うことに関する意見
② おおむね 1 週間ごとにサーバ上の回答を確認し,結果を事務局内のコンピューターに適時ダウンロードします。ま
たサーバ上のデータは適時消去します。調査票の収集期間終了(2015 年 7 月末日)まで,必要に応じて協力依頼のメ
ールの発信を繰り返し,目標例数(100 例)が集まるのを待ちます。
③ 本研究の主要評価項目を,小児科医による小児患者の搬送経験の抽出とします。副次評価項目を,小児科医の
職環境・職経験による,搬送経験の差異の抽出,および搬送医学に関する研修の要望・必要性の差異を検討すること
とします。
④ 将来,今回の調査対象以外の小児科医および他の小児診療に従事する医師にも調査対象を拡充することが望ま
しいと判断されましたら,必要に応じて多施設共同研究を立案し,別途研究計画をします。また何らかの政策立案等に
よる介入がなされれば,将来,これにより小児重症患者の搬送あるいは受療行動に変化が生じたかの調査が望ましい
と判断される場合が想定されますので,これについても別途研究計画を立案するものとします。
連絡先:
本研究に関する連絡先は以下のとおりです。本研究は匿名化データのみを使用し個人情報を一切含有しませんの
で,上記のとおり個人情報漏洩の危険はありません。ご不明な点,あるいは個人情報の取扱等に関する問い合わせや
苦情の申し立てがありましたら,下記までご連絡ください。
名古屋大学大学院医学系研究科 総務課
電話:(052)744-1901
名古屋大学医学部附属病院救急科 担当:沼口 敦
電話: (052) 744-2659 (救急部医局)