医療・公衆衛生が直面する諸問題をさぐる

医 療 ・公 衆 衛 生 が直 面 する諸 問 題 をさぐる
―新医協・しなのじ集会開く―
去る十月二五日午後五時から、
「 新 医 協 し な の じ 集 会 」と 銘 打 っ て 研 究 集 会 が 開 か れ ま し た 。前
回は二〇〇〇年に「関東甲信越ブロック集会」が長野市内で行われましたが、今回は県内の会員
を 中 心 に 新 装 な っ た あ お ぞ ら 診 療 所 で の 開 催 と な り ま し た 。望 月 峻 成 医 師( 長 野 中 央 病 院 )、河 原
田和夫医師(あおぞら診療所所長)が世話人となり、医師研修問題、医療労働者の労働実態、S
ARS問題そして糖尿病の実態などのテーマで発表討論が行われました。
最初のテーマは新任医師研修問題。長野赤十字病院の清水公男救急部長から来年度から医師の
卒後研修制度が大きく変わる状況について報告されました。一九六八年(昭和四三年)にインタ
ーン制度は廃止になり、現在の臨床研修制度になったが、既に形骸化して約70%の研修医は大
学病院に残り専門領域だけ研修し、医療事故の原因等とも言われている。来年から二年間の医師
の 臨 床 研 修 を 内 科 、救 急 、小 児 科 、産 婦 人 科 、精 神 科 、地 域 医 療 の 各 科 必 修 に な る 。
「そのため研
修医は大学病院よりも、一般病院を選ぶ傾向が増えると予想され、大学と地域の病院が提携して
一般医と専門医を養成すればいい結果を生む」ことを期待されるとし、長野赤十字病院では小川
村、鬼無里村、戸隠村に診療所と提携して地域医療を研修する場所の確保に努めている。総体と
し て「 こ の 研 修 制 度 で 地 方 の 医 師 不 足 を ふ く め て す べ て が 解 決 す る と は 思 え な い が 期 待 し て い る 」
との評価でした。
北 長 野 医 院 に勤 務 するインドネシアの女 性 医 師 のロッシュさんは、自 国 では 総 合 医 学 部 四
年 卒 業 後 研 修 三 年 間 、その後 は 専 門 医 学 部 でさらに四 年 間 学 ぶか、そのまま医 師 として働 く
かに分 かれており、また五 年 ごとに免 許 の 更 新 があるとのことです。
二番目の話題提供は働くルール問題。長野中央病院の阿部文枝看護師から報告があり、医療機
関で働く労働者の半分近くが毎日サービス残業があるとアンケートに答えている。また年休や生
理 休 暇 も 取 得 し に く く な っ て い る 。ど う 改 善 す る か が 、医 療 の 中 身 に も か か わ る の で 大 き な 問 題 。
厚労省も五月にサービス残業をなくす方針を出しているが、労基法や派遣法が改悪されている中
で労働組合の役割が重要であることを強調されました。
三番目はSARS問題。長野赤十字病院の清水公男救急部長から、SARS対策は県衛生部の
指示による緊急に有効な体制をとることが必要である。また特養に勤務した高橋奉子看護師から
は、インフルエンザがあっという間に広がる実例とともに感染予防マニュアルの実践的見直しや
考察について話されました。
四番目は糖尿病についての報告。望月医師は高脂血症を合併した糖尿病の症例を取り上げ、高
血糖のうえに、コレステロールが異常に高いことが紹介されました。入院により栄養指導などを
行って改善されたが、退院後食事が以前の傾向に戻り再入院した例示から、個人の生活の特徴を
十分把握しながら継続した指導の必要性を強調されました。そして武石村役場の北沢良子保健師
からは、国保加入者のうち予想外に糖尿病が多く、合併症(網膜症、脳血管障害等)では全国平
均 を 大 き く 上 回 っ て い る 。さ ら に 医 療 費 も 高 額 に な っ て い る と 報 告 。
「 健 康 日 本 2 1 」が 推 進 さ れ
て い る が 、住 民 の 健 康 悪 化 の 背 景 を 生 活 の 面 か ら し っ か り 捉 え る 公 衆 衛 生 の 大 切 さ が 指 摘 さ れ た 。
短時間でありながら、盛りだくさんの内容できわめて効果的な学習会でした。その後、アルコ
ールなしの軽食パーティーが開かれ、自己紹介をしながら和やかな懇談が行われました。
(あおぞら診療所
松澤秀紀)
(「 新 医 協 新 聞 」 03 年 12 月 )