最先端研究探訪 研究の最先端を臨床の最前線へ 医工連携

[取材]
より優れた医療機器の研究
開発に取り組む
先端技術を医療現場に届ける方
法のひとつに、治療や診断に役立
す。そこで工程を自動化し、さら
に大量の腹水処理が可能な新しい
CART 用 装 置 の 開 発 が 望 ま れ
ています。
岡久先生は、この課題を解決す
るために、従来の製品や技術に研
究成果 (副作用の原因解明、目詰り対
策、LED 光殺菌・細胞制御技術など)
携することによって、これからの
入にチャレンジする中小企業が連
ような、大学と医療分野の新規参
「下町ロケット」というドラマの
今回紹介するのは、まるで昨年の
され、3年間で2億円をかけての
平成 年に「課題解決型医療機
器 等 開 発 事 業 ( 経 産 省 )」 に 採 択
発・製品化に取り組んでいます。
医療機器とその周辺機器の研究開
できる、安価な新しいモバイル型
つ医療機器の研究開発があります。 や工夫を加え、安全で簡単に使用
先進医療を支えていくアフェレシ
新しい装置開発が始まりました。
癌細胞の癌ワクチンへの応用の可
救命効果があることや、採取した
や手術との併用によって末期癌の
点滴する治療法です。抗癌剤治療
成分や細菌を除去して、濃縮して
水を体外へ排液し、濾過器で細胞
癌や肝硬変によって溜まった胸腹
良県)と出会いました。
連企業である(株)タカトリ (奈
EDバレイ徳島構想
は沢山の企業を模索する中、「L
有する企業との連携でした。先生
に取り組む、高度な技術と人材を
研究開発に不可欠なのが、大学
と連携して医療機器開発に積極的
コンソーシアムの結成
能性が報告され、これからの癌治
同社は、LED半導体や液晶な
どの製造分野で、世界の9割以上
(※1)
ス装置の研究開発を行っているプ
ロジェクトです。
アフェレシス (分離するという意
味)療法の一つに胸腹水濾過濃縮
療を支える治療法としての必要性
のシェアを占める機器を製造販売
で、人工臓器の父と言われた能勢
医科大学人工臓器開発センター」
生が留学していた「米国ベイラー
発室を構えました。これは岡久先
徳島大学藤井節郎記念医科学セ
ンター内に、集中研方式の研究開
す。
と、先生は感慨深く思い返されま
ました」
うに良いパートナーとなっていき
がら次第に理解も深まり、ほんと
ンサルなど有識者の指導を受けな
く出向いて行って、事業の伴走コ
したが、とにかくフットワーク軽
「激しい議論になることもありま
の考え方の違いもあり、
のです。また研究者の立場、企業
や事業化の知識と経験がなかった
であったため、医療機器の法規制
タカトリは医療分野新規参入企業
に短縮しました」
メンバーとの打合せ時間が1/
ピング (試作品製作)により、企業
などを使ったラピッドプロトタイ
まれました。また、ダンボール箱
とする『マルチリング方式』が生
1個のポンプで全ての処理を可能
科 省 )に 加 わ っ て 学 ん だ イ ノ ベ ー
創出強化支援事業 (平成 年度、文
さらに、徳島大学産学官連携
推進部の大学等シーズ・ニーズ
能となりました」
(※3)を応用。
ムースになって、迅速な開発が可
や人間関係の構築と情報交換がス
る機会にもなり、診療科との連携
研究開発メンバーが医療現場を知
研究開発を行うもので、工学系の
開発者や大学院生が一つの部屋で
業 ・ 工 学 部 )の 医 工 連 携 で 、 研 究
けて完成した新しいCART用装
力のもと、チームの力で3年間か
徳島大学消化器内科、呼吸器膠
原病内科、婦人科と関連病院の協
ことが必要です」
関係を築き、うまく連携していく
「今までとは異なった着想により、 十分に理解し、双方のためになる
ション対話ツール
置は、さらに臨床評価と改良が進
す。大学と企業がお互いの立場を
に企業が中心となって行うもので
器開発は、正当な利潤を得るため
いう熱い思いです。また、医療機
んの命と家族の幸せを守りたいと
「医療機器開発の原点は、患者さ
されています。
出、人材育成機能の強化が必要と
ローバル化、イノベーションの創
大学も強み・特色の重点化、グ
入超過が続いており、日本の優れ
きない病院や施設も多いそうで
雑 で あ る こ と が 原 因 で、 施 行 で
しかし濾過濃縮する手技が煩
と、今後の抱負を熱く語ってくだ
す」
業が活性化することを願っていま
一人でも増え、日本の医療機器産
我々の役割です。今後も、医療機
ミアの立場で広めていくことが
して、学会や論文を通してアカデ
て医療現場に届け、教育にも活用
研究成果のプラットフォームとし
の将来ニーズを抽出し、大学での
に終わらせることなく、医療現場
医療機器開発を単なるものづくり
は、研究、教育、地域貢献です。
生まれてきました。大学の
の気持ちが芽生え、次第に活気が
( 愛 媛 県 四 国 中 央 市 )に も 創 意 工 夫
公立学校共済組合四国中央病院
れていない状況にあります。また、 らいました。また、診療支援先の
たものづくり技術が十分に活かさ
さいました。
ポスターセッションで優秀賞をも
科3年生が日本人工臓器学会萌芽
ばならないハードルがありました。
小会社でした。しかし越えなけれ
している、高い技術力を持った中
本柱
之 彦 ( 1 9 3 2 ~ 2 0 1 1 )先 生 に
められる予定です。
学んだものです。
医療機器開発は誰のためか
な対話の手法・手順
を高めるための、
ワークショップにおける具体的
※3 イノベーション対話ツール 多様な参加
者の対話に基づきノベーションを創出する確率
として策定した構想
※2 LEDバレイ構想 徳島県にLED を
利用する光関連産業の集積を図ることを目的
10
世界の医療機器市場は拡大傾向
にあります。しかし国内市場は輸
にも取り入れ、研究室配属の医学
「医療機器の研究開発を学生教育
(※2)」の関
が高まってきています。
再 静 注 法 (CART)が あ り ま す。
25
最先端研究 探 訪
岡久 稔也 (おかひさとしや)
大学院医歯薬学研究部 地域総合医療学分野 特任教授
※1 コンソーシアム 異なる分野の人や団体
が一つのテーマ・目的のために集まること
研究の最先端を臨床の最前線へ
医工連携によるモバイル型アフェレシス装置の開発
26
器開発の素晴らしさを知った人が
3
15
16
「 医 学 ( 医 学 部 ・ 病 院 )と 工 学 ( 企
ベイラー医科大学留学中に能勢之彦先生
(右)
と