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法
中
毒
中毒の一般的事項
毒 物: 生体に作用して健康に有害な影響を与える
外来性化学物 (ウイルス,微生物,体内産生
毒素などが含まれない)
動物,植物性毒物が含まれる
中 毒: 薬毒物の摂取や暴露による生体の機能障害,
死亡の場合を中毒死という
中毒死の鑑定
問題点
特有の死体所見に乏しく,病死と誤診されやすい
薬毒物の種類はきわめて多く,すべての毒物検査
をすることは困難である
死体から薬毒物が検出され,服用した事実が
あっても,必ずしも,中毒死とはいえない
検出薬毒物量が致死量以下でも死亡すること
がある
死亡者の身体的素因
医薬品によるアナフィラキシーショック死
心臓病
死因の競合
焼死における急性一酸化炭素中毒
薬毒物の検出自体が重要なことがある
犯法的薬毒物: 薬物乱用
アルコール: 飲酒運転
偶発的な事件
飲酒中の突然死
薬毒物療法中の交通事故
医療事故
中毒鑑定注意事項
死因が明らかでない死体では,中毒死の可能性
を常に考える
中毒死が疑われたら,かならず解剖
中毒死以外の死因がないことを確認
適切な検査試料の採取による薬毒物の証明
中毒死の発生要因
自 殺 (服毒自殺)
入手しやすい薬毒物が用いられる
その時代の流行がある
一般にCO,農薬,睡眠薬が多い
事故・災害
職業中毒
生活中毒
農薬中毒
薬毒物乱用: 覚せい剤,シンナー,ブタン
治療薬の多量投与
他殺 (無理心中を含む)
薬毒物の分類
化学的分類: 揮発性薬毒物,金属性毒物
臨床的分類: 腐蝕毒,血液毒,神経毒など
中毒発生因子
薬毒物側の因子
摂取量
中毒量: 中毒を起こす最少量
致死量: 中毒死する最少量
摂取方法
注射か,服用か
薬毒物の相互作用
中毒者側の因子
年齢,性別,体格などの相違
環境因子
湿度,温度の影響
急性中毒と慢性中毒
急性中毒: 薬毒物摂取から中毒発現までの経過
が急激で短時間
慢性中毒: 微量の薬毒物を長時間,数回も摂取
して中毒が発現,経過もゆっくり
薬毒物の代謝
中毒死の診断,検査試料の採取,分析,検査結果
の評価などに重要
未変化で体外に排出される: 嘔吐,下痢,胃洗浄
吸収後: 局所の組織に蓄積
血中にはいり,全身を循環する
代謝されて→無毒化(有毒化): 多くは肝臓
特定の臓器から体外に排泄: 多くは腎臓
薬毒物の摂取方法
経口摂取が多い
麻薬・覚せい剤は注射が多い
職業中毒,皮膚経由
摂取方法により毒性の異なることがある
Hg経口摂取は無毒,蒸気の吸入は劇毒
中毒死の診断
死亡時の状況
現場の観察(検証)
現場での資料収集
死者に関する情報の収集
臨床症状
死体所見
外表所見
剖検所見
薬毒物の証明 (薬毒物分析)
死亡時の状況
現場の観察
中毒であるかどうか,中毒発生の原因,自他殺
事故死の判別
現場での資料収集
遺書,残存薬毒物,注射器,吐物
(薬毒物検査の試料として重要)
死亡者に関する情報の収集
既往歴,死亡直前の薬毒物使用の有無,職業
(毒物の入手の可能性)
遺書の有無,遺書の偽造であるかどうかを確認する
臨床症状
臨床症状のみから中毒死の確定診断は困難
臨床症状の組合せから,中毒死の予測,検査試料
の採取方針の決定が可能
家族や関係者,担当医師への問診が重要
主要な臨床症状と代表的薬毒物の把握
死体所見
腐食: 口周囲の皮膚,口唇,口腔粘膜
強酸,強アルカリなどの腐食毒によるもの皮膚や
粘膜の凝固壊死や融解
死斑の色調: 血液 (ヘモグロビン) の色調
鮮赤色調: CO中毒
一酸化炭素ヘモグロビンが鮮赤色で,診断的価値が高い
凍死や低温で保存死体でも赤色調
青酸中毒
チョコレート色
メトヘモグロビン形成毒 (塩素酸カリ,白髪染め液)
緑色調 硫化ヘモグロビン形成毒 (硫化水素)
発疹,水疱 (中毒疹,薬疹)
摂取後2~3日生存した場合に目立つ
バルビタール (Holzer水疱)
足関節や膝関節内側に発生しやすい
ピリン疹
精神安定剤,抗うつ剤,抗痙攣剤など
歯肉の変色: 慢性中毒
歯ぎん部口腔粘膜に黒色調~青色調の色素沈着
疑われる中毒物質: 鉛,銀,銅,水銀などの重金属
眼の所見
散瞳: 死後の死体現象として診断的意義は低い
縮瞳: 有機リン,サリン,急性モルヒネ中毒
臭い
異臭があれば,中毒死の疑
注射痕
覚せい剤,麻薬
塩酸による腐蝕
青酸化合物中毒
青酸化合物中毒
石灰硫黄合剤中毒
硫化ヘモグロビン形成
石灰硫黄合剤中毒
一般剖検例
クレゾール中毒
クレゾール中毒
ホルマリン中毒
中毒疹 (薬疹)
ピリン疹
ペニシリン疹
中毒疹 (薬疹)
インドメタシン疹
バルビタール疹 (Holzer水疱)
注射痕
剖検所見
重要性
薬毒物によって剖検により始めて中毒死が疑わ
れるものもある
他の死因の除外
中毒検査試料の採取
血液,尿の採取が最も重要
その他: 胃内容,髄液,胆汁,組織,注射瘢痕の
組織,毛髪,爪
薬毒物の証明 (薬毒物分析)
重要性
中毒死と診断するために死体由来の試料から薬毒物の
存在と量を化学的に証明する必要
必ず定性,定量分析の両者を行う
死体では死亡までの薬毒物の分解,排泄や死後拡散の
ために定量された概算値は摂取量よりも低い
定量分析の重要性
CO中毒やエタノールは生前,死後ともに体内で産生
複数の薬毒物を摂取した時に致死的薬毒物の特定が
必要
証明すべき薬毒物の絞り込み
中毒死が疑われてもすべての薬毒物を検査することは困難
検査試料の採取
試料の特殊性
代替性がない: 反復採取ができない
血液と尿当時に採取
不均質性: 採取した死体の条件により試料の状態
はさまざまである (死後変化の影響)
公共性がある: 検査結果が衛生行政,犯罪捜査,
個人の人権に関連している
試料採取の基本的事項
目的とする薬毒物の性状,代謝,摂取方法を考慮
して決定する
分析するものは未変化体か,代謝産物か
吐物中のものは未変化体,尿中は代謝産物が多い
どの組織に分布しているか
摂取方法はどれか
摂取量はどれ位か: 剖検時の試料の採取量決定的
参考となる
どのように保存するか
薬毒物分析スクリニング
目的
試料中に薬毒物が存在するかどうか
定性試験 (試料; 尿)
中毒であるか
中毒物質は何か
定量試験 (試料; 血液)
薬毒物の量はどの位か
中毒レベルであるかどうか
薬毒物分析の基本的な手順
抽出,分離・精製,定性,定量の順で行われている
主要な分析法
定性試験: 薄層クロマトグラフィー (TLC)
免疫測定キット
定量試験: ガスクロマトグラティー (GC)
高速液体クロマトグラフィー (HPLC)
原子吸光分析法
蛍光X線法
診断上の注意事項
薬毒物が検出された場合
薬毒物が検出されても,直ちに中毒死と診断することは
できない
生前の症状,死体所見などと矛盾しないか
死亡者が検出された薬毒物を入手可能か
生前に用いられていた医薬品ではないか
生理的人体構成成分との鑑別
内因性かどうか: 内因性COなど
職業上での体内への蓄積かどうか
中毒量や致死量に達しているかどうか
薬毒物が検出されなかった場合
中毒であっても,死体から薬毒物が化学的に検出
されるとは限らない
薬毒物が代謝・排泄されて証明できない
生存時間長い場合
微量で中毒死し,分解・排泄が早い
検出方法が確立されていない未知の薬毒物
毒物毒,植物毒,化学兵器
死後変化による分解
救急医療による急速排泄
輸液,透析,高圧酸素療法などによる
医療事故の場合に重要
人為的原因
試料の採取部位,採取量不適切である
保存法が不適切である
試料を取り違える
検査者の技術的未熟
アルコール中毒
法医学的重要性
多量摂取による急性中毒死
酩酊による事故死
墜落死,転落,凍死,吐物吸引による急性窒息死,
交通事故死など
殺人や傷害致死事件の加害者や被害者になりやすい
慢性アルコール中毒
臓器および精神的障害
医療事故と酩酊
酩酊により診療が十分に行われない.
アルコールと酩酊
酩酊
アルコールの飲用による人体への一般的身体的,精神
的影響
普通 (単純) 酩酊
飲酒量に応じた一般的な酩酊状態
異常酩酊
複雑酩酊 (量的異常) と病的酩酊 (質的異常) がある
病的酩酊: 飲酒量が少ないにもかかわらず,
強い意識障害,感情の動揺,運動失調
などがみられる
アルコールと酩酊
酩酊
アルコールの飲用による人体への一般的身体的,精神
的影響
普通 (単純) 酩酊
飲酒量に応じた一般的な酩酊状態
異常酩酊
複雑酩酊 (量的異常) と病的酩酊 (質的異常) がある
病的酩酊: 飲酒量が少ないにもかかわらず,
強い意識障害,感情の動揺,運動失調
などがみられる
アルコール濃度
分 布
体内に摂取されたアルコールは含水量の多い臓器,
組織に分布する.
よく分布する組織: 血液,脊髄液,尿,唾液,肝臓,脳など
ほとんど分布しない組織: 脂肪組織,骨,毛髪,爪,皮膚など
体内分布係数γ
体重70kgの人が70gのアルコールを摂取した場合,身体が
水でできていると仮定すれば,1g/kg体重の割合で分布する.実際には,
ほとんど分布しない組織があり,その割合は個体によって異なる.
日本人の平均γ値は男性0.704,女性0.61
γ値大きい人ほど酔いにくく,小さいほど酔いやすい
主要臓器や体液のアルコール濃度
血中アルコール濃度曲線
血液および尿アルコール濃度から吸収期か排泄期かが判別可能
減少率β
単位時間内に代謝されるアルコールの量
日本人平均β値は0.15 mg/ml
血中アルコール濃度と酩酊度
普通酩酊の酩酊度は血中アルコール濃度に依存する
酩酊度の個体差
アルコールの吸収,代謝などの個体差が著しいので,
血中アルコール濃度と酩酊度は必ずしも相関しない
飲酒量と血中濃度の関係
空腹時,清酒1.8 lを1時間半以内で飲むと死亡する.
日本人成人男子(体重60kg)が空腹時に30分以内で飲酒
した場合の最高血中アルコール濃度
清酒
200 ml / 飲酒後30分で
400 ml / 飲酒後1時間で
800 ml / 飲酒後2時間で
1200 ml/ 飲酒後3時間で
0.5
1.0
2.0
3.0
mg/ml
mg/ml
mg/ml
mg/ml
清酒の代わりにウイスキーなら1/4,ビールなら4.4倍
アルコールの薬理作用
局所的
高濃度では脱水,タンパク変性
全身的
アルコール自身の作用と,代謝産物であるアヒトアルデヒド
の作用
中枢神経系
非選択的な抑制作用
飲酒後,一見興奮性,刺激的なのは高位中枢の抑制が
解除されたためである
アルコールの脳への作用
血中アルコール濃度と酩酊
飲酒と交通事故
血中アルコール濃度の上昇に伴い交通事故発生率
が増加する
日本の道路交通法で酒帯運転の判定基準
血中濃度0.25 mg/ml,呼気中濃度0.125 mg/l
酒酔い運転: 言動,歩行,直立能力などから警察
官が正常な運転ができないと判定し
た場合
中枢神経系の障害
中枢神経系の障害
↑
①アルコール・アセトアルデヒド・混入した化学物質による中毒
+
②欠食やアンバランスな食事によるビタミン欠乏・電解質異常
+
③肝障害・糖尿病・胃腸障害による直接・間接影響
+
④繰り返される頭部外傷
中枢神経系の障害
・
・
・
・
・
・
・
アルコ-ル性健忘症状群
コルサコフ精神病
ウエルニッケ脳症
アルコ-ル性痴呆
アルコ-ル性肝性脳症
ペラグラ脳症
アルコ-ル性小脳変性症
末梢神経障害
・ アルコ-ル性多発神経炎
・ アルコ-ル筋炎(ミオパチー)
肝臓の障害
・
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・
・
アルコ-ル性脂肪肝
アルコ-ル性肝炎
アルコ-ル性肝硬変症
アルコール・ウイルス性肝障害
消化器系の障害
・
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・
アルコ-ル性急性膵炎
アルコ-ル性慢性膵炎(→糖尿病)
アルコ-ル性食道炎・胃炎
食道静脈瘤
マロリーワイス症候群
心 臓 の 障 害
長期間,多量の飲酒を続けた場合にみられる
アルコール自体によるものか断定されていない
アルコ-ル性心筋炎→心不全
アルコール性心筋症 (ビール心)
突然死の原因となる
剖検所見
拡張型心肥大,間質内の線維増殖
冠状動脈硬化症は発生しにくい