発表 5-1 学びと実生活を結び付ける道徳の授業の研究 -道徳シートの活用を通して- 長期研修生 横 田 賢 治 1 研究の目的 道徳教育は、自立した一人の人間として人生を他者と共によりよく生きる人格を形成することを目指すもの であり、教育の根本に据えられるべきものである。また、「小学校学習指導要領解説道徳編」において、道徳 的実践力と道徳的実践の指導が相互に響き合う道徳教育を行うことで、一人一人の道徳性を高めていかなけれ ばならないとされている。そこで、学校教育において、児童の道徳的実践力を育成する充実した道徳の時間を 展開するとともに、学習した道徳的価値について継続的に振り返る機会を児童の生活の中に設けることが必要 であると考えた。 本研究では、道徳の時間の学びを実生活の中で道徳的実践につなげていくための手立てとして道徳シートを 開発し、その活用を通して学びと実生活を結び付ける道徳の授業を行い、その有効性を検証することとした。 2 研究の内容 ⑴ 文献等による研究 充実した道徳の時間の実践に向けて、文献等によりこれまでの道徳の時間の成果と課題を整理した。 ⑵ 道徳シートの開発 ア 児童の実態調査 児童の実態調査の結果、対象学級では、自分の考えをまとめたり発表したりすることに苦手意識を持っ ている児童が複数いることや、道徳の時間に学んだことを生活の中で行動につなげようとする意識を持っ ている児童が多いことが分かった。しかし、学級担任の行動観察から意識と行為のつながりが弱いことが 分かった。 イ 道徳シート活用のねらい 児童が、道徳の時間で主体的に学び、学んだことを実生活に結び付けることができれば、児童の道徳的 実践につながるのではないかと考え、道徳シートを開発した。道徳シートは、道徳の時間の充実、意識の 継続化、家庭との連携強化の3点をねらいとした。 ウ 道徳シートの構成 道徳シートは、道徳的実践への意識を高められるよう、授業の前後を含めた活用場面を想定した4部構 成とし、3回の実践を通して改善を図った。 ⑶ 道徳シートの活用 ア 道徳の時間の充実 児童が主体的に学習に取り組むためには、自分の考えをしっかりと表現できることが大切だと考えた。 そこで、児童が道徳的価値について主体的に考え、表現できるよう道徳シートを用いた実践を行った。 イ 意識の継続化 児童に学んだことを継続的に意識させ、道徳的実践へつなげたいと考えた。そこで、授業後の1週間、 生活の中での気付きや考えを記入させることにした。 ウ 家庭との連携の強化 家庭と連携することで、より充実した道徳教育が行えると考えた。そこで、児童が生活の中での道徳的 行為に気付いたり、家庭で道徳的価値について考えたりできるよう、家庭からの協力を依頼した。 3 研究のまとめ 道徳シートを活用することで、児童が、考えをまとめたり、話合いを深めたりすることができ、道徳の時間 の充実につながった。また、道徳シートを用いて1週間の記録をしたり、家庭と連携した道徳教育に取り組ん だりしたことで、児童が、学んだことを実生活の中で意識することができていた。 今後、他の資料での道徳シートを開発し充実させていくとともに、個人差に対応した支援の在り方や児童の 道徳性を高めていくための活用方法を更に工夫していく必要がある。
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