No.17 2006 年 10 月

アピ シリーズは世界の標準法として細菌同定検査をリードしていきます
No.17
2006 年 10 月
いつも弊社アピ製品をご愛顧いただきありがとうございます。「api news」では、日頃アピ製品をご利用のお客様
に細菌検査に関する情報をご紹介させていただいております。今回は、
Staphylococcus 属 について特集致
します。
◆Staphylococcus 属
ブドウ球菌属は自然界に広く分布し、あるものはヒトや動物の皮膚および粘膜の正常細菌叢を構成し、あるもの
は化膿・膿瘍形成および化膿性疾患の原因となり、致命的な敗血症を起こします。また、ある種のブドウ球菌は耐
熱性のエンテロトキシンを産生し、食中毒の原因にもなります。他にも、多種の抗生物質に対して耐性を獲得し、
治療上困難な問題を提起しているのもブドウ球菌属の特徴です。
ブドウ球菌属は直径 0.5∼1.5μm の球菌で、寒天培地に発育した菌はブドウの
房状の配列を示しますが、液体培地に発育したものや病巣材料中のものでは集塊
も小さく、しばしば単在したり、二連状、四連状、または短連鎖配列したものも見ら
れます。ブドウ球菌は本来グラム陽性菌ですが、培養が古いものはグラム陰性に染
色されることがあるので注意が必要です。
寒天培地上では黄色・白色・レモン色等のコロニーを形成しますが、色素産生能
は変異しやすく、時には継代培養によって失われることがあります。また、ブドウ球菌
は嫌気培養下では色素を産生せず、菌株の多くは 5∼15%の高濃度の食塩存在
<ブドウ球菌の顕微鏡写真>
下で増殖可能です。
◆分布
S. epidermidis、S. hominis、S. aureus など多くの Staphylococcus 属は主にヒトの皮膚から分離されます。
一方、S. hyicus や S. intermedius はこれまでは家畜等の動物の病原菌として知られていましたが、最近ではヒト
からの分離報告例もあり、問題視されているようです。
◆コアグラーゼ coagulase
コアグラーゼは、ヒトや動物の血漿を凝固させる酵素様物質です。S. aureus、S. intermedius、S. hyicus な
どの一部がコアグラーゼを産生することが知られています。ヒトより分離されるコアグラーゼ陽性ブドウ球菌は S.
aureus のみとして認識されていましたが、近年 S. aureus でもコアグラーゼ陰性株が存在することが報告されていま
す。
コアグラーゼには、遊離コアグラーゼと結合コアグラーゼの 2 種類があり、遊離コアグラーゼは、ヒトや動物の血漿中
に存在するプロトロンビンに類似した CRF(coagulase reacting factor)と呼ばれる物質に作用して、トロンビン様
物質に活性化し、その結果フィブリノーゲンがフィブリンとなって血漿凝固が起こると考えられています。
一方、結合コアグラーゼ(クランピングファクター)は菌体表面に存在し、遊離コアグラーゼ陽性株の大部分が結合
コアグラーゼも陽性になります。
ベアードパーカー寒天培地+RPF(品番 44003)
培地に含まれるウサギ血漿と牛由来フィブリノーゲンにより、コアグラーゼ
陽性菌のコロニーは半透明のハローを形成します。
左側 コアグラーゼ陽性菌
右側 コアグラーゼ陰性菌
◆リパーゼ lipase
S. aureus が産生するフォスホリポプロテインリパーゼは、リポビテリン(卵黄の脂質蛋白成分)からリポイド部分を
分離し、卵黄加寒天平板上に発育したコロニーの周囲に乳混濁帯(卵黄反応)を生じさせます。これは S. aureus
の特徴的性状の1つです。
◆MRSA(Methicillin-resistant Staphylococcus aureus)
MRSAはβラクタム系抗生物質(メチシリン・ペニシリン・オキサシリン・セファゾリンなど)に耐性を持つS. aureusの
総称です。MRSAは薬剤の使用が多い病院内や医療関係施設から主に分離され、免疫力が低下した患者が感
染すると、肺炎や尿路感染症や敗血症など重篤な症状を引き起こし、院内感染原因菌として問題視されてきまし
た。ところが、最近では、入院や透析等の経験が無い健康な人々からもMRSA(CA-MRSA)が分離され、ごく一
般的な感染症の起因菌として街中に広がっている事が知られてきています。
また、CNSのなかでもMRSAと同じようにmecA遺伝子を保有する菌株が確認されています。入院患者より分離
されるmecA遺伝子保有CNSはCNS全体の74.1%と高い保有率を占めており、また家畜などからも分離されてい
ることから、病院内外おいて常在菌化が進行する可能性があり、十分な注意が必要です。
◆CA-MRSA(community-associated MRSA)
CA-MRSA は 、 市 中 感 染 MRSA と も 呼 ば れ 、 粘 着 因 子 と し て コ ラ ー ゲ ン 結 合 蛋 白 質 を も ち 、
Panton-Vatentine ロイコシジン(白血球破壊毒素, PVL)を産生する特徴をもっています。そのため、従来の医療
機関から分離された MRSA と比較して、感染力が強く、皮膚疾患を起こしやすい傾向があります。また、耐性度が
低く、増殖が速い特徴をもっています。市中感染 MRSA の多くは小児や青年期の皮膚・軟部組織疾患から分離
されます。感染分布では、米国、南米、ヨーロッパ、アフリカ、オセアニア、アジアなど世界各地で分離され、また、わが
国においても 2003 年に生後 11 ヶ月のとびひ患者や 2004 年に 18 歳の女性から報告されています。
MRSA に汚染された物体や皮膚の直接接触などから感染拡大し、多人数で暮らす住環境や不衛生な環境か
ら多く分離されるため、CDC(Centers for Disease Control and Prevention)では以下のような注意を喚起し、
CA-MRSA の感染予防を呼びかけています。
•
石鹸や消毒剤などで手指をよく洗い、清潔に保つこと。
•
切り傷や擦り傷は完治するまで絆創膏を貼ること。
•
他人の傷や絆創膏に接触しないようにすること。
•
タオルや剃刀などは個々に使用して、他人と共有しないこと。
◆API 製品では
Staphylococcus 属はアピスタフプレート(品番 20500)または ID32 スタフアピ(品番 32500)にて同定が可能で
す。
アピスタフプレート
V4.1 Profile: 6736153
Staphylococcus aureus
%id=97.8, T=1.0
※参考文献※
1) 清水晃:食品有用・腐敗細菌の性質と検査法 5 Staphylococcus 属細菌. 日本防菌防黴学会誌 30(7),455-463 2002.
2) Community-Associated Methicillin Resistant Staphylococcus aureus (CA-MRSA).CDC Infection Control in
Healthcare (http://www.cdc.gov/ncidod/dhqp/ar_mrsa_ca.html)
3) Management of Methicillin-Resistant Staphylococcus aureus(MRSA) Infections, Federal Bureau of
Prisons-Clinical Practice Guidelinens, Ausgust,2005.(http://www.bop.gov/news/PDFs/mrsa.pdf)
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