演題:琉球大学付属病院におけるPanton-Valentine leukocidin 産生

演題:琉球大学付属病院における Panton-Valentine leukocidin 産生 Staphylococcus aureus の疫学調査
所属:琉球大学医学部附属病院検査部
発表者:宮城 郁乃
指導教官:仲宗根 勇, 山根 誠久
【目的】Methicillin Resistant Staphylococcus aureus (MRSA)は院内感染の原因菌種として広く知られている。しかし近年,通院歴,
既往歴,入院や透析などの経験が無い健康な市井の人々からも MRSA が分離されてきており,これらの MRSA のことを市中感染
型 MRSA(community acquired -MRSA;CA-MRSA)
,院内で分離される MRSA を院内感染型 MRSA(hospital-acquired MRSA;
HA-MRSA)と区別されている。CA-MRSA は PVL(Panton-Valentine leukocidin:白血球破壊毒素)を高頻度に産生する株が多いと
されており, HA-MRSA と比較して病原性が高く世界的に注目を集めている。しかし我が国における CA-MRSA についての報告
は非常に少ない。今回, 琉球大学付属病院で分離された S. aureus の PVL 産生株の検出と,その疫学調査を行った。
2005 年から 2009 年 8 月までに琉球大学医学部付属病院に保存された各種臨床検体より分離・同定された S. aureus 656
【対象・方法】
株と関連病院株 11 株計 667 株を試験対象とした。試験対象株について PVL 遺伝子を確認した。PVL 産生株についてパルスフィー
ルド電気泳動による菌株間の相同性を確認した。さらに diversilab を用い, 米国流行株との比較解析と PCR 法による SCC mec type
を確認した。
【結果】試験対象とした 2005 年から 2007 年には PVL 産生株は認めなかった。2008 年 3 月に初めて検出され,2009 年 8 月現在ま
でに 15 株(MRSA)が検出された。皮膚膿など膿由来からの検出が多く(11 株)カテーテル先端,膣分泌液,気管支内痰,鼻腔分
泌液からそれぞれ 1 株ずつ検出された。PVL 産生株は外来由来 7 株,入院由来 8 株で同数検出された。他院の膿外来由来からも 1
株 PVL 産生株が確認された。PFGE による PVL 産生 16 株の遺伝子解析の結果(相同性 95%以上)は 3 パターンに分類された。
琉球大株は 2 パターンであり, 院内伝播と考えられる。米国株との比較解析では SCC mec type Ⅳで USA300 と高い相同性を認め
た。
【考察】今回の調査から,琉球大学病院および沖縄県内でも PVL 産生 S. aureus が出現を確認した。PVL 産生 MRSA は, その高い
病原性から入院患者, 特に院内感染・拡散が危惧されていたが, 琉球大学病院では, 既に院内感染・拡散が起こっている。また, こ
れらの株は米国流行株と高い相同性を有する菌株であった。今後も疫学調査を含め, PVL 産生 MRSA の監視が必要である。