Methicillin-resistant Staphylococcus aureus感染局所治療剤としての

Methicillin-resistant
Staphylococcus
aureus感
染局所治療剤としての
各種色素剤の抗菌効果に関する検討
田口
桜子1)・佐
大薗
治
守1)・向坂
元秀2)・葉山
(平成5年3月3日
受付・平成5年6月2日
褥瘡などの皮膚感染病巣からのmethicillin-resistant
を目的として,6種
修陽S)
英一3)・内山喜一郎4)・星
健二5)・大国
寿士6)
1)日本医科大学付属第一病院薬剤科*
,2)同
中央検査室
3)日本医科大学内科学第二講座
,4)同
外科学第二講座
5)同皮膚科学講座
,6)同
老人病研究所免疫部門
受理)
Staphylococcus
類の色素剤をその薬剤として選択し,ま
aureus(S.aureus),Pseudaromonas
ず3種
aureus(MRSA)除
aeruginosa(P.aeruginorna),Escherichia
coli(E.coli)を
用いてその抗菌活性につき検討した。その結果,triphenylmethane系
aeruginosa,E.coliに
S.aureusは
mum
対して他系の色素剤に比し,際
いずれにも高い感受性を示し,な
bactericidal
菌
の標準菌Staphylococcus
の3種
類の色素剤はP.
立った抗菌作用は認められないものの,
かでもgentianvioletは
concentration;MBC)が0.0025%と,も
最小殺菌濃度(mini-
っとも強い殺菌効果が認められ
た。さらに臨床分離菌を用いた感受性の測定においても,gentianvioletはMRSAを
aureusに対してMBCが
止濃度(minimum
5%の
≦0.0025%∼0.08%の
inhibitory
含むS.
値を示した。またgentianvioletを
concentration;MIC)0.00032%∼0.00064%含
割合で添加した培地にて,54時
最小発育阻
み,ヒ
ト血清を
間継続培養してもMRSAの
発育は認められず,持続し
た抗菌効果が認められた。以上のことよりgentianvioletはMRSAに
対して低濃度で臨床使
用が可能であることが想定され,褥
瘡などのMRSA感
染皮膚病巣に有効な薬剤となりうるこ
とが示唆された。
Key
words:
色素剤,MRSA,gentian
最近,褥瘡からのmethicillin-resistant
aureus(MRSA)の
violet
Staphylococcus
分離頻度は増加傾向にあり,MRSA
I.材
1.使
による褥瘡感染創が直接的,間接的に院内感染源になるこ
とが示唆されている1.2)。
しかし,褥瘡などのMRSA感
染
病巣に対して,抗生物質による治療は必ずしも満足すべき
gentian
liant
(試薬特級)は
ethacridine
て,臨床的に使用されてきた。
我々はMRSA感
去に,あ
るいは現在でも臨床上使用されているtriphenyl-
methane,phenothiazine,azoま
6種類の塩基性色素を選択し,そ
礎的検討を行ったので報告する。
たはacridine系
に属する
の抗菌活性についての基
薬特級),bril-
薬特級)な
green(試
薬特
らびにmethylene
blue
それぞれ和光純薬より購入した。また
(Acrinol,日
ら,povidone-iodineは
本薬局方)は
日本新薬か
明治製薬よりそれぞれ購入し
た。
2.使
染病巣治療剤の検索を目的として,過
blue,試
薬特級),malachite
級),chrysoidin(試
で,血清蛋白の存在下においても,その効果の減弱は少な
く,さらに収敷作用と生体組織に対し刺激が少ないなどの
と方法
violet(Pyoktanin
green(試
効果を上げていない。一方,色素剤の抗菌効果は深達性
特徴を有することから,これまでにある種の感染症におい
料
用薬剤
用菌株
Staphylococcus
Pseudomonas
aureus(S.aureus)ATCC6538,
aeruginosa(P.aeruginosa)NCTC
10490,Escherichia
coli(E.coli)ATCC2716を
ぞれ抗生物質の検定用標準菌株として用い,ま
1989年5月
から1992年6月
それ
た
における日本医科大学付
属第一病院細菌検査室において各種臨床材料から分離
*東京都千代田区飯田橋3 -5-5
CHEMOTHERAPY
936
した臨床分離株S,aureus
115株,そ
のうちmethicil-
lin-sensitive S.aureus(MSSA)45株gMRSA
株,Paeruginosa
25株,E.coli
70
52株
をそれぞれ実
分)ヒ
ト血清(1ml)を
18mlに
混釈(血
板培地を作製し
被験菌液100μl(108CFU/
接種し,37℃,18時
間培養後,血
ミュラーヒントン液体培地(Difco)お
よびミュラ
ーヒントン寒天培地(Difco)を
増菌ならびに薬剤感
ても菌の発育が認められない場合,さ
受性測定用培地に使用した。また,per
発育の有無を経時的に観察した。
oxacillinと2%のNaClを
ml
4μgの
行い,36時
色素剤の抗菌活性
bactericidal
gentian
violet,brimant
chrysoidin,methylene
green,malachite
blue,ethacridineの
を標準菌S.aureus(ATCC
(NCTC
10490)お
green,
抗菌活性
果
Table
1に示すごとく,Triphenylmethane系
violet,brilliant
10490)に
%∼0.16%で
2716)な
らび
6538)に
%∼0.0050%で
じMBCを
の菌種株に対して,そ
く少量の滅菌精製水で完全に溶解後,滅
菌
あり,3菌
色素であるchrysoidinは3種
iazine系
のmethylene
り,これを被験液とした。各被験菌株は液体培地に接
6538)に
対し0.16%濃
種し,37℃18時
P.aeruginosa(NCTC
間培養後,こ
れを菌液として用いた。
ming
unit(CFU)の
て,37℃,18時
for加え
の培養液より各々100μl
ュラーヒントン寒天培地に接種し37℃,
18時間培養後,菌
の発育がまったく認められない薬
剤の最小濃度をMBCと
2)gentian
MRSAに
108 colony
菌液1ml(10℃FU)を
間培養後,そ
を採取し,ミ
ml
violetお
よびpovidone-iodineの
対するMinimum
は,0.32%濃
inhibitory concentration
(MIC):
方acridine系
測定は薬剤の色による影響から,液体培地
10490),E.coli(ATCC
対するMBCは,0.04%濃
(ATCC2716)に
対するMBCは0.08%濃
(ATCC
6538)に
2)gentian
violetの臨床分離菌に対するMBC
violetは0.0025%濃
%,MRSAの47%を
度以下でMSSAの51
殺菌し(Fig.1),0.08%な
amusの
作成し,そ
の2mlを
平板を作り,そ
希釈系列を
普通寒天培地18mlに
混釈して,
の20%(5/25),E.coliは
間培養液
52)が
(108CFU/ml)100μlを
接種し,37℃,18時
間培養,
letの0.08%濃
度では,P.aeruginosaは
おいて,P.aeruginosaの
は殺菌されず,ま
MICと
(13/52)は
3)gentian
violetおよびpovidone-iodineのMIC
におけるヒト血清の影響:
MIC測
定後,gentian
vio-
全被験菌株
全被験菌株の7.7%(4/
殺菌されたが,gentian
菌の発育がまったく見られなかった最小薬剤濃度を
した。
いし
70菌株を含むS
全被験菌株を殺菌した。また,gentian
菌精製水で2倍
の平板にMRSAの18時
度にお
いても殺菌効果は観察されなかった。
法6)を用いた。すなわちgentian
violet,povidone-
度であり,
対しては0.32%濃
はそれ以下の濃度において,MRSA
各々秤量後,滅
度で全被験色
素剤中でもっとも高い感受性を示したものの,E.coliだ
希釈法による測定が困難であったため,寒天平板希釈
iodineを
2716)
のethacridineはP.aeruginosa(NCT
C 10490)に
gentian
MICの
blueはS.aureus(ATCC
度で殺菌効果が認められたが,
度でも殺菌効果は認められなかった。一
S.aureus
した。
類
のMBCは0.16%∼0.32%で
種とも同程度の感受性を示した。phenoth-
ミュラーヒントン液体培地を用いて2倍希釈系列を作
2倍希釈系列の被験液9mlにper
対するMBCは,0.0025
あり,これら色素剤に対し顕著な感受
性を示した。azo系
測定することにより検討した。各色素剤を
各々0.02∼0.04%,0.08
あった。
に上記の臨床分離株を用いて,液体培地希釈法5)に準
秤量後,ご
色素
green,malachite
2716),P.aeruginosa(NCT
対するMBCは
S.aureus(ATCC
6538),P.aeruginosa
よびE.coli(ATCC
C
間後における菌の
準菌株に対する色索剤のMBC
greenの,E.coli(ATCC
(MBC):
間後におい
らに継続培養を
1)標
であるgentian
concentration
間後,72時
II.結
出培地として使用した3,4)。
1)Minimum
間後,54時
含有するミュラーヒントン
液体培地をMRSA検
4.各
清による抗
菌効果におよぼす影響を検討した。18時
用培地
1993
ミュラーヒントン寒天培地
清濃度5%)し,平
た。その平板にMRSAの
ml)を
験に供した。
3.使
SEPT.
violetの0.32%濃
度}こ
全被験株の44%(11/25)
た,E.ocliの
全被験株の25%
殺菌されなかった(Fig.1)。
3)gentian
violetとpovidone-iodineのMICと
その持続性におよぼすヒト血清の影響
violet,povidone-iodineを
被験菌として,MRSA臨
培地中で,各々最終濃度が最小発育阻止濃度含有する
れらの菌に対するgentian
ように調製した被験液(1ml)と,非
のMICを
働化(56℃,30
測定し,あ
床分離株4株
を選び,こ
violet,povidone-iodine
わせてMICに
おける菌の発育
色素剤のMRSA感
VOL. 41 NO. 9
Table 1, Minimum bactericidal
Staphylococcus
A
two-fold
dilute
bacterial
solution
The
counted.
nosa
was
plate
The
(NCTC
(9ml)
with
of
respective
10490)
for
reference
and
for
Mueller-Hinton
incubated
E.
coli
(MBC) of various dyes on
Psoudomonas
(103CFU/ml)
mixed
was
concentration
aureus,
solution
suspension
937
染局所治療剤としての検討
18
aeruginosa
each
dye
18h
agar
h
at
strains
(ATCC
on
37•Ž,
incubated
37•Ž.
Then,
with
1ml
100ƒÊl
of
of
this
a plate.
and
of S.
2716)
was
at
and Escherichia coli
the
number
aureus
were
(ATCC
of colonies
6538),
P.
was
aerugi-
tested.
阻止作用の持続性に対するヒト血清添加による影響に
ついても検討した。Table
violetに対して4菌
2が示すごとく,gentian
株とも異なった値を示し,そ
MICは0.00032%∼0.00064%を
tianvioletを
の
示した。また,geル
最小発育阻止濃度を含み,5%の
ヒト血
清を含有するミュラーヒントン寒天平板培地に4菌株
を接種後,37℃,18時
間の培養においても菌の発育
は観察されなかったけれども,さ
36時間,52時
間,72時
らに培養を継続し,
間後における菌の発育を観察
したところ,MRSA-2,MRSA-16に
認められなかったが,54時
was incubated with 1ml of bacterial suspension (108CFU/ml) for 18 h at 37°C. Then 100
p1 of this solution was mixed with MuellerHinton agar on a plate. The plate was incubated for 18h at 3TC, and the number of colonies
was counted. MRSA (70 strains), MSSA (45
strains), P. aeruginosa (25 strains) and E. coli
(52 strains) were tested.
間後にMRSA-8,72時
間
後にMRSA-12に
菌の発育が認められた。一方,
povidone-iodineに
おいては全被験菌株ともMICは
0.5%濃
Fig. 1. The minimum bactericidal concentrations (MBCs) of gentian violet against Staphylococcus aureus (MRSA, MSSA), Pseudomonas aeruginosa and Escherichia coli. A two
-fold dilute solution (9ml) of gentian violet
は菌の発育は
度と一定値を示し,ま
たpovidone-iodineを
最小発育阻止濃度含有し,5%の
ヒト血清を含む培地
においては,菌接種後,37℃,18時
間の培養で,全
被験菌株とも発育が認められた。
III.考
近年,入
察
院患者の褥瘡からのMRSA分
離頻度は増
加する傾向にあり,褥瘡が長引くとともにその検出頻
度は著しく高まる。一方MRSA局
生物質による治療は,必
ていない。現在,抗
がMRSA感
所感染に対し,抗
ずしも満足すべき効果をあげ
生物質以外ではpovidone-iodine
染病巣に消毒剤および治療剤として広く
使用されている7)。我々はいくつかの色素剤が抗菌効
果を持ち,深達性で,血
清蛋白の存在においてもその
効果の減弱が少なく,さ
らに収敷作用と生体組織に刺
激性が少ないなどの特徴を有することに注目し,色素
SEPT.1993
CHEMOTHERAPY
938
Table
2. Influence of whole human serum on the anti-bacterial
of gentian violet and povidone-iodine
Four
A
strains
of MRSA
solution
serum
(1ml)
(1ml)
Agar
were
plates
and
the
Colonies
on
Duration
of
containing
2) Duration
the
to
plate
MIC
from
with
100
were
37t
p1
for
clinical
violet
of Mueller-Hinton
at
of
and
agar
bacterial
18 h,
isolates.
whole
human
on
suspension
36 h,
inactivated
plates.
(106
54 h and
CFU/m1),
72 h.
counted.
shows
of povidone-iodine
random
gentian
18 ml
incubated
agar
the
at
of
that
1)
the MIC
of gentian
of the MIC
shows
MIC
系薬剤の中からMRSAに
MIC
inoculated
were
the
selected
the
added
were
plates
were
of
effect
on MRSA
bacteria
violet
with
that
bacteria
with
serum
対し局所治療剤としての効
did
serum
grew
was
not
grow
when
was
incubated
when
the agar
incubated
for •…18
the
for
plate
agar
plate
54 h.
containing
h.
に相違はあるものの,MBCは
≦0.0025%∼0.08%を
果を持つものを検索することを目的として,基礎的検
示した。しかしP.aeruginosaに
討を行った。いくつかの色素剤は古くから臨床的に使
度においても全被験菌株の44%(11/25)は
用されているものの,近
ず,Ecoliに
年その抗菌効果に関する報告
は少ない。我々は過去に,あ
るいは現在においても臨
おいては,0.32%濃
おいても0.32%濃
殺菌され
度において,全被験
菌株の25%(13/52)は
殺菌されなかった。日本薬局
床的に使用されている6種類の色素剤を選択し,褥瘡
方8)によれば,gentian
violetは
部より分離頻度の高いS.aureus,P.aeruginosa,E.
ブドウ球菌、ジフテリア菌および緑膿菌に対して殺菌
coliの3種
類の標準菌株を用いて,まずそれら色素剤
の抗菌活性を検討した。その結果,acridine系
acridineがP.aeruginosaに
のeth-
対してはMBCが0.04%
作用があるが,グ
ラム陰性菌に対して無効であるとし
ている。しかし我々のin
aureusに
グラム陽性菌、特に
vitroでの実験においてS
対しては著効な殺菌作用を示すものの、P
を示し,この色素剤に対し本菌は高い感受性を示した
aeruginosaに
が,S.aureusはMBCが0.32%以
りむしろ弱い殺菌作用しか示さず、日本薬局方の記載
上であり,この色
素剤に対し感受性はきわめて低かった。3種
phenylmethane系
0.0025%∼0.0050%で
色素剤はS.aureusに
あり,これら3種類の色素剤に
対し,いずれもS.aureusは
にgentian
高い感受性を示した。特
violetはS.aureusに
対しMBCが0。0025
%であり,全被験色素剤のうちgentian
SmreUsが
類のtri-
対しMBCが
violetに対し
もっとも高い感受性を示した。gentian
対してはグラム陰性菌であるE.coliよ
とは異なった結果を得た。
gentian
S.aureusに
が,次
violetが低濃度において,MRSAを
含む
殺菌効果を有することが明らかにされた
にgentian
violetの抗菌効果に対するヒト血清
の影響とその効果の持続性をpovidone-iodineを
対照
に検討した。
MRSA臨
床分離菌4株
を用いてpovidone-iodine
violetは古くから塩化メチルロザニリンとして日本薬
の抗菌活性を検討すると,MICは0.5%で
あり4株
局方に記載されているが,最
共変わらぬ値を示したが,ヒ
割合で加
近の臨床分離菌に対する
効果に関しては十分な検討がなされていない。
えた場合では,37℃,18時
我々は臨床分離菌S.aureus,P.aeruginoSa,E.coli
の菌株を用いて,gentian
討した。MRSAを
が認められ,血
violetの抗菌活性につき検
含むS.aureus(115株)は
菌株間
た。一方gentian
ト血清を5%の
間培養において菌の発育
清による抗菌効果に減弱が認められ
violetのMRSAの
するMICは,0.00032%∼0.00064%と
被験菌4株
に対
菌株により多
VOL.41
NO.9
色素剤のMRSA感
少異なった値を示したが,ヒ
えた場合において,54時
ト血清を5%の
染局所治療剤としての検討
割合で加
します。
間継続培養後も菌の発育が
認められなかったことは,gentian
Violetが血清存在
文
1)
その効果が比較的持続することを示している。しかし
の発育
で口腔内潰瘍が
生じたという報告9)や0.5%∼1%液
かし1%
gentian
2)
巨島文子, 増田義重, 深山牧子, 稲松孝思, 畑山
3)
勤, 柴崎公子: 褥瘡感染におけるMRSAの
意表。
感染症誌66: 211, 1992
抗菌薬感受性測定法検討委員会: 微量液体希釈によ
で陰嚢や外陰部
に壊死を伴う潰癌が生じたという報告1。)がある。し
violet水溶液を用いたパッチテスト
るMIC測
定法 (微量液体希釈法)。Chemotherapy
38: 103∼105, 1990
の結果,皮膚障害はほとんどないとの報告11)もなさ
れているが,一
0.1%,水
応その安全域濃度は,含
溶液では,皮
0.3%で
膚で0.5%,粘
油性軟膏で
膜で0.2%∼
ある報告がされている12)。
我々はgentian
violetをMRSA感
染局所(褥
瘡,
4)
菅野治重: 細菌検査におけるMRSAの
5)
最新医学44: 2510∼2514, 1989
五島瑳智子, 金子康子: 薬剤感受性測定法。臨床検
6)
査27: 1403, 1983
日本化学療法学会MIC小
7)
(MIC) 測定法 (改訂)。Chemotherapy
29: 76∼79,
1981
新谷洋三: MRSAの
院内感染防止対策と消毒剤。医
8)
薬ジャーナル26: 262∼283, 1990
日本公定書協会: 塩化メチルロザニリン。第十二改
熱傷)治療剤として臨床的に用いる場合には,安全域
濃度より低濃度で有効であることを経験しており,ま
た今回の実験からgentian
violetの最小発育阻止濃度
を含む培地にヒト血清(5%)を
も抗菌効果が54時
加えた場合において
間持続することが明らかにされ,
したがって浸出液のあるMRSA感
も,1日1回
の単純塗布で十分な治療効果が発揮され
生体消毒剤をMRSA感
染局所治療剤として用いる
場合には,手指の消毒および含嗽を目的とした使用と
は異なり,短時間での殺菌効果より,む
Horsfield P, Logan F A, Newey J A: Oral irritation with gentian violet. Br. Med. J. 2: 529, 1976
10) Bjornberg A, Mobacken H: Necrotic skin reaction caused by 1% gentian violet and brilliant
green. Acta Derma tovener (Stockholm) 52: 55
∼60
11)
violetは,ご
に劣るものの,MRSAはpovidone-iodine
より持続するように思われる。また,Moats
violetのS.aureusに
はグラム陰性菌であるSalmonella
Enterobacter
pHに
aerogenesに
12)
17)によ
るいは
14)
Haley
and
Drugs
11
Publishers.
cos-
ed:
286•`
Amsterdam.
高木
修,
岩崎
隆,
服部怜美,
本田光
reaction
385∼389,
1987
C
E,
Cason
Clin.
17)
agents.
Smith
Am.
J
resistant
21:
for
use
J.
W,
activity
Luby
of
J
P,
antisep-
Staphylococcus
991•`992,
of
Infect.
1985
topical
antimi-
Control
16: 253•`
1988
Mycock
Moats
M,
Microbal.
E: Guideline
G:
phylococcus
稿を終わるにあたり,御指導御校閲を賜りました日
M
Bactericidal
methicillin
J.
Larson
266,
16)
P A:
against
crobal
を示唆していよう。
彰郎教授に深謝いた
of
小林寛伊, 都築正和, 細渕和成: メチシリン耐性黄色
aureus.
染治療剤としてきわめて有用な治療剤となりえること
本医科大学内科学第二講座,赫
湖山里美,
tic
所感
辞
Science
Mackowiak
15)
謝
drugs
effect
ブドウ球菌に対する消毒剤の効果。手術医学会誌8:
よる影響を受けにくく,安定であるとしてい
violetがMRSA局
side
Elsevier
477∼480,
対する抗菌効果に比べ,
る。これらの結果はgentian
Dermatological
1975
13)
対する抗菌効果
anatumあ
G:
芳: ピオクタニンによる皮膚障害-Irritant
from
pyoktanin-。
皮膚科の臨床17:
らに血
り抗菌効果が
N
Meyler's
1988
16)より
violetに対し強力な感受性を示し,さ
清存在下においてもpovidon-iodineよ
れば,gentian
M
296
く短時間での殺菌効果13,14)と
抗菌スペクトルの範囲15)においてはpovidone-iodine
gentian
, 1972
Dukes
metics.
必要であると思われる。
gentian
廣川書店, 東京,
9)
しろ病巣から
の浸出液で減弱されにくく,かつ持続した抗菌効果が
判定基準。
委員会: 最小発育阻止濃度
正日本薬局方解説書: 375∼379,
1991
染病巣において
るのではないかと思われる。
献
毅, 松本慶蔵。宍戸春美, 宇塚善雄, 山本真
性肺炎と褥瘡感染の起炎菌に関する検討 (第1報)
― 院内感染菌としてのMRSA―
。Chemotherapy
34: 240∼249, 1986
が観察されるようになった。
一般にgentian violetは ,きわめて毒性の低い消毒
剤と考えられているが,0.5%∼1%液
永武
志, 田口幹雄, 力富直人, 吉田俊昭, 降杉正和, 高橋
淳, 大石和徳, 坂本靖, 屋富祖夏樹, 鈴木寛, ム
バキ・ンシアラ。渡辺貴和雄: 老人病院における細菌
下における抗菌効果の発揮の上でそれほど減弱せず,
72時間以上さらに培養を継続していくと,菌
939
Meticillin/antiseptic
aureus.
W
A,
Maddox
Lancet
resistant
26:
S
949•`950,
E: Effect
of
Sta1985
pH
on
the
CHEMOTHERAPY
940
antimicrobial
activity
of some
Studies
dyes. Can. J. Microbiol 24: 658--661, 1978
triphenylmethane
of the selective
bactericidal
preparations
Sakurako
Naoaki
SEP7.1993
Taguchi",
Hayama",
effects
of various
dye
on MRSA
Mamoru
Saji",
Motohide Sakisaka2),
Eiichi Ohzone,
Kiichiro Uchiyame,
Kenji Hoshib) and Hisashi Ohkunie)
1)Pharmaceutical section and 2)Clinical Laboratory Section , the First Hospital of Nippon
Medical School, Tokyo, Japan
3)The Second Department of Internal Medicine, 4)The Second Department of Surgery,
5)Department of Dermatology , and 3)Division of Immunology, Institute of Gerontology,
Nippon Medical School
Methicillin-resistant
as
decubitus
hospital
Staphylococcus
ulcers
via
such
eradicate
MRSA
including
6 dye
from
on
MRSA
gentian
addition
incubating
gentian
However,
infected
series
from
was
violet
on
gentian
violet
may
more
was
between
violet
for
a useful
(5%)
54
h at
drug
0.08%.
0.00032%
to
37•Ž
in the
the
in
the
most
possessed
than
a significant
and
medium.
0.00064%
Inhibitory
medium
treatment
of
skin
the
serum
lesions
dye
effect
was
was
(5%)
infected
with
violet
(MIC)
destroyed
. This
suggests
MRSA.
the
on MRSA
uninfluenced
not
series,
Gentian
of gentian
concentration
MIC
a
not
of
series.
bactericidal
activity
containing
other
(MBC)
such
does
preparations
of the
inhibitory
, and
antiseptics
dye
concentration
minimum
lesions,
throughout
of 4 different
The
those
skin
widely
and
effects
species.
bactericidal
from
spreads
antibiotics
bactericidal
S. aureus
The
isolated
MRSA
bacterial
against
minimum
and
serum
studied
series,
The
0.0025%
human
be
We
that
with
3 different
effective
is frequently
possibility
treatment
triphenylmethane
MRSA
(MRSA)
the
local
wounds.
specimens.
between
of whole
is
against
were
of the
clinical
aureus
There
preparations,
a member
isolated
burns.
lesions.
triphenylmethane
violet,
and
by
even
of
the
by
that

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