Vol.81 いざ利上げ。どうなる新興国?

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いざ利上げ。どうなる新興国?
投資のミカタ Vol.81 | 2015年7月6日
債券
今 回 の ミ カ タ
 米国の利上げに伴う今後の新興国債券市場の見通しについ
て、債券運用の専門家に聞いてみました。
 過去の利上げ局面と比較し、今回の利上げによって生じ得る
市場環境見通しについて整理しています。
新興国経済の見通しは?
②2004年6月から2006年6月(裏面の図②)
先進国の経済成長は改善に向かっており、新興国にお
実際の利上げ開始前には米国債との利回り格差が拡大
いても緩やかに景気は回復しています。特に先進国への
しましたが、 FRBは緩やかに利上げを進めたことからその
輸出を行う製造業主体の国々は、今後その恩恵を受けや
後は縮小に転じ、債券価格は上昇しました。
すいと思われます。一方で、資源価格には依然として下押
し圧力がかかりやすく、資源を輸出する新興国には逆風
になると見込まれます。従って、新興国の経済成長は、全
体としては力強さを欠くものの、緩やかな景気回復が継続
すると見ています。
今後の利上げについて、現段階では②の利上げ局面に
近いものになると予想しています。9月に利上げが実施さ
れるとすると、利上げ前の7-9月期には債券価格は横ばい
で推移、あるいは若干の下落となると考えていますが、最
初の利上げを経て10月以降に新興国債券投資の好機が
訪れる可能性があると考えています。
米国の利上げが実施されても新興国は大丈夫?
グローバル債券を運用する立場から見ると、FRB(米連
魅力的な投資対象および注意すべき点を教えてください
邦準備制度理事会)による最初の利上げは9月に実施さ
新興国債券の中では、ドル建て債券に相対的に魅力が
れると見ていますが、経済の動向を見極めながら慎重に
あると考えています。ブラジルレアル建てなど、現地通貨
利上げを進めていくものと考えています。 2013年に米国
建て債券についても利回り面での投資妙味は高まってい
の量的緩和縮小が懸念された時には、新興国から急速に
るものの、依然としてドル高が進む余地が残っており、注
資金が流出し、通貨、債券が大きく売られる局面もありま
意が必要と見ています。
した。しかしそれ以来、多くの新興国では経常収支や財政
注意すべき点としては、FRBが過去の例①のように予想
規律の改善に取り組んでいることから、今回の利上げのタ
を上回るペースで利上げを行うようなことがあれば、新興
イミングで新興国の通貨や債券が大きく売られるような事
国から資金が流出する可能性もあると考えています。また、
態が再来する可能性は低いと見ています。
今後の中国経済の動向にも注意が必要です。中国経済が
急速に減速するようなことがあれば、新興国経済や債券
過去の利上げ局面ではどうでしたか?
市場にとっての下落要因と捉えています。
過去の米国利上げの事例を2つご紹介いたします。
①1994年2月から1995年2月(裏面の図①)
FRBが急速に金融引き締めを行ったことが、新興国に流
動性危機をもたらす要因となり、利回り格差は急拡大(債
券価格は下落)しました。
執筆者
シニア・プロダクト・マネジャー
中尾 健也(なかお けんや)
本資料のデータ・分析等は過去の実績や将来の予測、作成時点における当社グループのグローバル債券運用部門の判断を示したものであり、将来の投資成果およ
び市場環境の変動等を示唆・保証するものではありません。
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投資の ヒ ン ト

米国の利上げは緩やかなペースで実施され、新興国への影響は限定的と考えられます。

ただし、利上げが予想以上に急速なペースで実施された場合は注意が必要です。
味
見 方
【図】過去のFRBの利上げ局面における新興国債券市場の動向
新興国債券(米ドル建て)と米国債券の利回り格差<左軸>
(%)
米国の政策金利<右軸>
(%)
25
7
①急速な金融引き締め
②緩やかな利上げ
6
20
債券価格下落
15
5
4
債券価格上昇
10
3
2
5
1
0
0
1993年6月
1995年6月
1997年6月
1999年6月
2001年6月
出所:Bloomberg、J.P. Morgan Asset Management
2003年6月
2005年6月
2007年6月
2009年6月
2011年6月
2013年6月
*期間:1993年6月~2015年5月
【ご留意事項】お客様の投資判断において重要な情報ですので必ずお読みください。
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