BD Diagnostics Club 感染症クイズ Vol.10 次の症例概説から感染症名を推定してください 出題者:山中 喜代治 先生(前・大手前病院医療技術部長) 症例の概説 患者は61歳、女性、頻繁に下痢を訴え消化器内科外来に通院、増悪と寛解を繰り返 していた。 某日、頻回の水様性下痢と脱水状態により入院し、下痢便の微生物検査依頼があった。 入院初日の便は卵の黄身を溶かしたような黄色水様性であり、一般的培養検査の前に、 取り急ぎ生標本を作り鏡検した。 その結果、寄生虫(原虫)を認め、その特徴から既存原虫を推定し、某大学医学部に 精査を依頼した。同時に担当医に連絡し、広域臨床検査が行われた。尚、一般細菌 検査および抗酸菌検査からは病原性を示唆できるような成績は得られなかった。 ① 血液検査成績 RBC(367×10 4 /μL) WBC(30.5×10 2 /μL) Stab(11 %) Seg(27 %) Ly(18 %) Aty-Ly(43 %) LDH(198 IU/L) Ca(9.0 mg/dL) フェリチン(474.2 ng/mL) HTLV-1抗体(陽性) 可溶性IL-2R(16600 U/mL) ③ 未成熟オーシスト 内部に1個のスポロブラストを有す ② 入院時の下利便 (卵の黄身色水様) ④ 未成熟オーシスト 1個のスポロブラストが分裂し 2個になる ⑤ 成熟オーシスト スポロブラスト内部に各4個 のスポロゾイトを有す 答えは イソスポーラによる下痢症 下痢便の鏡検所見から原虫を検出し、Isospora belliと同定した。このことを踏まえ臨床精査の結果、 この患者はAdult T-cell leukemia(ATL)、およびHemophagocytic syndrome(HPS)であった。 イソスポーラ症について イソスポーラ症は水様下痢を主徴とし、健常者では一過性で自然治癒が多い。 しかし、AIDS、ATL など免疫不全患者では間欠的下痢が数カ月以上持続する。 この症例は、入院初日にイソスポーラ様原虫を認めたことから精査の結果 ATL、 HPSが判明した。感染症治療にはST合剤が用いられ、症状も軽減したことから 退院となったが、後日、ATL 症状悪化により永眠した。 以下に、提示症例の Isospora原虫各種染色鏡検像と骨髄穿刺所見を示した。 Isospora belli の染色像 ① 抗酸染色 ④ 骨髄穿刺所見 Promyelocyte Myelocyte Metamyelocyte Stab Seg Eosinophils Basophils Lymphocytes Atypi-Lymphocytes Monocyte Basophilic Polychromatic Orthophilic Megakaryocytes Plasma cells Reticulum cells ② UV励起観察 ③ UV励起観察≪拡大≫ flower cell 血球貪食細胞 1.2 % 8.0 % 8.8 % 20.2 % 10.2 % 1.6 % 0.2 % 5.4 % 32.6 % 1.4 % 0.8 % 7.6 % 0.8 % 0.1 % 0.2 % 0.9 % *BD、BDロゴおよびその他の商標はBecton, Dickinson and Companyが保有します。©2014 BD 日本ベクトン・ディッキンソン株式会社 BD Diagnostics - Diagnostic Systems www.bd.com/jp/ お問い合わせは カスタマーサービス 0120-8555-90 49-079-00 R0-1411
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