BD Diagnostics Club 感染症クイズ Vol.8

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感染症クイズ Vol.8
次の症例概説から感染症名を推定してください
出題者:山中 喜代治先生(前・大手前病院医療技術部長)
症例の概説
患者は 1 歳女児、発熱はなく、爆発性で staccato 様の咳発作が 5 日間続いた。
その咳発作は、特に夜間に多発し、努力性吸気があり、顔面紅潮、結膜充血、涙
と鼻水を出し脈拍も増加傾向にあった。この様な症状にて外来受診し、頸部静脈
怒張、若干の鼻出血を認め、直ちに血液検査を実施した。その結果白血球数
17,000/μL、正常リンパ球 75%、貧血は見られなかった。
これらの臨床症状と検査結果を基に、鼻咽腔粘液と咽頭粘液を採取しボルデージャ
ングー(BG) 培地にて培養検査を行った。
検体採取法別にみた培養72 時間後のBG 培地所見
①鼻咽腔粘液採取とBG 培地培養所見
②咽頭粘液採取とBG 培地培養所見
直径1㎜、円形で灰白色真珠様集落を多数認め、
弱いβ溶血も認められ特定菌種が推定できた。
鼻腔内常在菌はごく僅かであった。
多種多様の口腔内常在菌が旺盛に発育し、
灰白色真珠様集落はごく僅かであり、判別
困難であった。
答えは
百日咳
BG培地72時間培養後の灰白色真珠様集落は、百日咳の原因菌Bordetella pertussisを同定した。
百日咳症
1970年代、我が国ではDPTワクチン接種事故のため、DTワクチンに変更し、その結果百日
咳の蔓延をみることになった。百日咳の臨床症状は、鼻汁、くしゃみの先行から呼気スタカッ
ト性の咳、そして努力性の吸気(ヒユーと言う音)、顔面紅斑などがみられ、末梢白血球
数の増加(正常リンパ球が大半を占める)が特徴的である。ただし、確定診断は原因菌
Bordetella pertussisの存在証明であったが、当時は遺伝子検査など迅速検査が望めず、BG
培地による培養同定に頼るのみであった。しかし、培養検査は困難であり、私達もチャレ
ンジ当初の分離頻度は極めて低率であった。そこで各種検討実験と応用を実践し、早期臨
床判断と鼻咽腔粘液採取法(鼻腔から綿棒を挿入する方法)が功を奏する実感を得た(資
料①)。さらに直接蛍光抗体法により検体から直接B. pertussis抗原を証明する迅速検査法
を採用するに至った。
BG培地発育のB. pertussis推定株はグラム陰性球状桿菌(資料②)であること、BG培地発育、
血液寒天培地非発育(資料③)および特異免疫血清凝集性(資料④)で同定する。
患者検体からの直接蛍光抗体法(資料⑤)は迅速診断に有用であったが、最近では遺伝子
検査用研究試薬が利用できるようになった。
① Bordetella pertu s sis 分離194 例の材料別陽性率比較
鼻咽腔粘液採取法
179 / 194
( 92.2 %)
80 / 194
( 41.2%) 咽頭粘液採取法
②グラム陰性球状の小桿菌
③ BG 培地 と ウサギ血液 HI 寒天培地 発育試験 イ
ロ
イ
ロ
二
ハ
二
ハ
(イ)∼(ハ)がB. perutusisの疑い菌株であり、
(ニ)はStaphylococcus epidermidisであった。
④ B. pertussis 免疫血清凝集試験
左はコントロール 右が免疫血清(陽性)
⑤直接蛍光抗体染色で、黄色蛍光を発する
小桿菌を認め迅速診断できた症例
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