HTLV-1と関連疾患について

FAQ(免疫)
HTLV-1と関連疾患について
Q HTLV-1とはどのようなウイルスでしょうか。また、関連する疾患には何があります
か。
A
【HTLV-1について】
HTLV-1は、Human T-cell Lymphotropic Virus type 1の略で、ヒトTリンパ球性ウイルス1型のことで
す。レトロウイルス(RNAウイルス類の中で、逆転写酵素を持つもの)の1種で、一度感染すると、逆
転写されて細胞のDNAに組み込まれ、ヒトゲノムと一緒に排除されずに存在し続けます。これをプロウ
イルスと呼びます。HTLV-1とHTLV-2があり、HTLV-1キャリアは地域偏在性が認められ、日本(九州、
沖縄を中心とした西南地方に多く、紀伊半島、三陸海岸、北海道に散在し、約120万人と推定)、中央
アフリカ、カリブ海沿岸、中南米などに存在し、世界全体のキャリア数は1千万~2千万人と言われて
います。HTLV-1とHTLV-2は核酸レベルで70%の相同性があり、そのウイルス学的特性も極めて類似し
ていますが、HTLV-1が成人T細胞白血病の原因ウイルスであるのに対して、HTLV-2の白血病への関与
を示す証拠は得られていません。感染経路は母子感染、性交感染、輸血ですが、献血者の抗体スクリー
ニングが開始されて以降は母子感染が主要な感染経路と考えられています。
【HTLV-1関連疾患について】
HTLV-1が原因ウイルスである疾患としては、ATL(成人T細胞白血病)、HAM(HTLV-1関連脊髄
症)、HU(HTLV-1関連ぶどう膜炎)などがあります。ATLはHTLV-1感染から長い潜伏期間を経て、国
内統計では男性で約6%、女性で約2%が発症し、平均発症年齢は55歳です。感染者の大多数が終生無症
候性キャリアです。ATLの急性型、リンパ種型、急性転化型は化学療法や骨髄移植による治療を行い
完全寛解を目指しますが、30~70%の患者さんは寛解しますが多くは再発し完治はごく一部と言われて
います。キャリアに対する臓器移植後のATL発症が多数報告されていることは宿主免疫能の低下がATLの
発症リスクとなることを示しています。HAMやHUの発症率はATLの数分の一程度と考えられています。
なお、HTLV-1の感染を防止するワクチンはありません。
参考文献
菱澤方勝.成人T細胞白血病(ATL)とHTLV-1.医学のあゆみ.2008;224(9):665-668.