MR血管撮影は脳血管障害 の診断にどこまで有用か 種々の限界はあるがスピンエコー法との併用で血管性病変の 半数以上に有用で、非侵襲的検査法として将来に有望 診 二愈G 正 睦 橋 高 はじめに MRI︶では、血流からは信号が得られないか︵巨o毛 磁気共鳴画像︵日濃器§おω9き8冒鋤笹轟H <o菖、ときに信号が増強される現象︵自o≦些色簿a Φ嘗き8ヨΦ旨︶のあることが、古くからよく知ら れていた。種々のテクニックを用いて血流からの 信号を周囲の動きのない組織と比べて、増強ない し低下させて、血管腔や血流を描出するのが、M R血管撮影である。本法に、通常のMRIに用い られているスピンエコー法を応用すると、撮像時 間が極めて長くなるので、短時間で撮像可能な高 速撮像法が応用されており、MR血管撮影の臨床 的有用性は、高速撮像法の進歩によって確立され てきたものである。最近では、中枢神経系のみで なく、腹部、四肢、胸部、心大血管などの血管撮 影にも応用されるようになった。 MR血管撮影の方法 MR血管撮影の方法には、 主として二つの方法 特集・脳血管障害の画像診断 39 CLINICIAN,91No.404 まで磁場の影響を受けたプロトンからは低い信号 ロトンからは高い信号が発生するのに反し、それ ばれる方法で、スライス面内に新しく流入するプ が応用されている。一つはニヨΦ亀旨讐貯法と呼 鼠8法︶を行うと、血管の信号を低下させること 側の信号を低下させてMR血管撮影︵冥①鐙ε轟− 一方、血管の上流側に一定の磁場を与え、下流 用いる場合が多い。 ることができ、3DFT法は静止した部の撮影に FT法は息止めの必要な部位の短時間撮影に用い ができ、賓Φ鋸9轟岳8をかけない血管と区別して ンを高信号 化 し 、 血 管 を 描 出 す る 方 法 で あ る 。 描出することが可能になる。 しか発生しないことを利用して、流血中のプロト もう一つの喜器①8昌轟雪法は、移動するプロ 血管像を得る2DFT法と、プロトンの情報をは の画像を数多く得て、それを積み重ねて三次元の いずれの方法で行う場合も、二次元の薄い筈8 のプロトンの信号のみを得ることが可能である。 わち、静止したプロトンの信号を0とし、流血中 静止した物体のプロトンの位相は0となる。すな トンは血流速度に応じて位相が変化するのに反し、 を二回加え、ω=げ貸霧鉱9を行うと、流血中のプロ 法である。反対の磁性を持つ自o薯雪88ひQ惹&Φ葺 を診断することが可能であり、鑑別診断上、有用 塞血管が描出でき、血管の閉塞部位、狭窄の程度 必要がある場合、MR血管撮影を併用すると、閉 ることが困難な場合や、閉塞した血管を同定する ても観察される。これらの病変を臨床的に鑑別す 浮腫、炎症性疾患、外傷による脳挫傷などによっ 像で高信号の所見が得られる。同様の所見は、脳 れ に よるMRI上、丁強調画像で低信号、丁強調画 急性、亜急性期の脳梗塞では、スピンエコー法 臨床的有用性 ることによって取り出し、MR血管撮影を行う方 トンの位相の変化をゆo≦窪8号鴨包8旨を加え じめから三 次 元 的 に 得 る 3 D F T 法 が あ る 。 2 D CLINICIAN,91No.404 40 (826) 左前頭葉の動静脈奇形(14歳、男性) A:スピンエコー法、T2強調画像、横断像。 左前頭葉下部に線状および斑点状のflow void昼:MR血管撮影・軸友向・ と不規則な高信号強度の病変が認められる。 則頭葉狂不規則な血管が認められ・中大脳動脈 および剛大脳動脈の分枝が拡張して、栄養に関 与している。血管の偏位は認められない。 (827) 性が高い。静脈洞血栓症の場合も同様であ り、血栓と副行路の描出をMR血管撮影で 動静脈奇形では、巳O仁ωと共に栄養動脈、 行うことが可能である。 導出静脈がよく描出される︵写真︶。℃お鐙蜜− 轟戯9を動脈側にかけることによって、導 出静脈のみを描出することも可能である。 栄養動脈の一本ずつに震霧讐ξ魯9をかけ 41 CLINICIAN,91No.404 て撮影すれば、栄養血管の支配領域、相互 C:Bより3cm高いMR血管撮影、軸方向。 前頭葉深部の異常血管がよく観察され、それを 栄養する前大脳動脈、中大脳動脈の分枝が拡張 しているのが認められる。 関係も理解することが可能になる。 脈瘤などの血管性病変で有用性の高い症例が多か 総じて閉塞性疾患、動静脈奇形、モヤモヤ病、動 の関係などが描出可能である。しかし、動脈瘤内 描出することができ、動脈瘤、頸部、正常血管と 従来の血管撮影が実施不可能な場合に実施すると、 ピンエコー法の撮影で鑑別診断が困難な場合や、 MR血管撮影の有用性および役割は、通常のス った。 動脈瘤の診断も、ウイルス輪、および、前、中、 の血流速 度 に よ っ て は 、 動 脈 瘤 の 内 腔 の 一 部 し か 有用な情報が得られることにある。本法を脳血管 後大脳動脈の近位部に発生するものでは、良好に 描出できない場合や、まったく描出できないこと 障害のωRΦΦ巳轟や集団検診に用いることは、現在 例は約五三・二%で、二六・六%は同様な情報が に加えて、MR血管撮影が有益な情報を与えた症 MR血管撮影では、スピンエコー法の画像の所見 われわれが現在までに実施した約一〇〇症例の ができる。 が施行してあれば、その開存状態も描出すること 状態がよく 観 察 さ れ る ほ か 、 S T A − M C A 吻 合 術 じること、空間分解能が低いこと、撮影野の末梢 いこと、渦流や複雑な流れの血流で信号欠損が生 情報が得られる。本法の欠点として、撮影野が狭 疾患などの血管性病変の半数以上の症例に有用な 動静脈奇形、動脈瘤、モヤモヤ病、静脈洞閉塞性 ピンエコー法と併用して実施すると、閉塞性疾患、 MR血管撮影には種々の限界が存在するが、ス まとめ の方法では時期尚早という意見が多い。 もある。動脈瘤内の血栓形成の状況も描出するこ とができる。 得られ、二〇・二%においては、MR血管撮影は や、遅い血流が描出困難なことなどがあげられる。 モヤモヤ病では閉塞血管と側副血行路の形成の スピンエコー法の画像よりも劣っていた。しかし、 CLINICIAN,91 No.404 42 (828) MR血管撮影は今後の技術的進歩によって、頭蓋 的な検査法となり、神経放射線診断で果たす役割 内、および頸部血管に関する情報を与える非侵襲 が大きくなることが予測される。 ︵熊本大学 教授 放射線医学︶ (829) 43 CLINICIAN,91No.404
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