MR血管撮影は脳血管障害の診断にどこまで有用か - e

MR血管撮影は脳血管障害
の診断にどこまで有用か
種々の限界はあるがスピンエコー法との併用で血管性病変の
半数以上に有用で、非侵襲的検査法として将来に有望
診
二愈G
正
睦
橋
高
はじめに
MRI︶では、血流からは信号が得られないか︵巨o毛
磁気共鳴画像︵日濃器§おω9き8冒鋤笹轟H
<o菖、ときに信号が増強される現象︵自o≦些色簿a
Φ嘗き8ヨΦ旨︶のあることが、古くからよく知ら
れていた。種々のテクニックを用いて血流からの
信号を周囲の動きのない組織と比べて、増強ない
し低下させて、血管腔や血流を描出するのが、M
R血管撮影である。本法に、通常のMRIに用い
られているスピンエコー法を応用すると、撮像時
間が極めて長くなるので、短時間で撮像可能な高
速撮像法が応用されており、MR血管撮影の臨床
的有用性は、高速撮像法の進歩によって確立され
てきたものである。最近では、中枢神経系のみで
なく、腹部、四肢、胸部、心大血管などの血管撮
影にも応用されるようになった。
MR血管撮影の方法
MR血管撮影の方法には、 主として二つの方法
特集・脳血管障害の画像診断
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まで磁場の影響を受けたプロトンからは低い信号
ロトンからは高い信号が発生するのに反し、それ
ばれる方法で、スライス面内に新しく流入するプ
が応用されている。一つはニヨΦ亀旨讐貯法と呼
鼠8法︶を行うと、血管の信号を低下させること
側の信号を低下させてMR血管撮影︵冥①鐙ε轟−
一方、血管の上流側に一定の磁場を与え、下流
用いる場合が多い。
ることができ、3DFT法は静止した部の撮影に
FT法は息止めの必要な部位の短時間撮影に用い
ができ、賓Φ鋸9轟岳8をかけない血管と区別して
ンを高信号 化 し 、 血 管 を 描 出 す る 方 法 で あ る 。
描出することが可能になる。
しか発生しないことを利用して、流血中のプロト
もう一つの喜器①8昌轟雪法は、移動するプロ
血管像を得る2DFT法と、プロトンの情報をは
の画像を数多く得て、それを積み重ねて三次元の
いずれの方法で行う場合も、二次元の薄い筈8
のプロトンの信号のみを得ることが可能である。
わち、静止したプロトンの信号を0とし、流血中
静止した物体のプロトンの位相は0となる。すな
トンは血流速度に応じて位相が変化するのに反し、
を二回加え、ω=げ貸霧鉱9を行うと、流血中のプロ
法である。反対の磁性を持つ自o薯雪88ひQ惹&Φ葺
を診断することが可能であり、鑑別診断上、有用
塞血管が描出でき、血管の閉塞部位、狭窄の程度
必要がある場合、MR血管撮影を併用すると、閉
ることが困難な場合や、閉塞した血管を同定する
ても観察される。これらの病変を臨床的に鑑別す
浮腫、炎症性疾患、外傷による脳挫傷などによっ
像で高信号の所見が得られる。同様の所見は、脳
れ に
よるMRI上、丁強調画像で低信号、丁強調画
急性、亜急性期の脳梗塞では、スピンエコー法
臨床的有用性
ることによって取り出し、MR血管撮影を行う方
トンの位相の変化をゆo≦窪8号鴨包8旨を加え
じめから三 次 元 的 に 得 る 3 D F T 法 が あ る 。 2 D
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左前頭葉の動静脈奇形(14歳、男性)
A:スピンエコー法、T2強調画像、横断像。 左前頭葉下部に線状および斑点状のflow void昼:MR血管撮影・軸友向・
と不規則な高信号強度の病変が認められる。 則頭葉狂不規則な血管が認められ・中大脳動脈
および剛大脳動脈の分枝が拡張して、栄養に関
与している。血管の偏位は認められない。
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性が高い。静脈洞血栓症の場合も同様であ
り、血栓と副行路の描出をMR血管撮影で
動静脈奇形では、巳O仁ωと共に栄養動脈、
行うことが可能である。
導出静脈がよく描出される︵写真︶。℃お鐙蜜−
轟戯9を動脈側にかけることによって、導
出静脈のみを描出することも可能である。
栄養動脈の一本ずつに震霧讐ξ魯9をかけ
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て撮影すれば、栄養血管の支配領域、相互
C:Bより3cm高いMR血管撮影、軸方向。
前頭葉深部の異常血管がよく観察され、それを
栄養する前大脳動脈、中大脳動脈の分枝が拡張
しているのが認められる。
関係も理解することが可能になる。
脈瘤などの血管性病変で有用性の高い症例が多か
総じて閉塞性疾患、動静脈奇形、モヤモヤ病、動
の関係などが描出可能である。しかし、動脈瘤内
描出することができ、動脈瘤、頸部、正常血管と
従来の血管撮影が実施不可能な場合に実施すると、
ピンエコー法の撮影で鑑別診断が困難な場合や、
MR血管撮影の有用性および役割は、通常のス
った。
動脈瘤の診断も、ウイルス輪、および、前、中、
の血流速 度 に よ っ て は 、 動 脈 瘤 の 内 腔 の 一 部 し か
有用な情報が得られることにある。本法を脳血管
後大脳動脈の近位部に発生するものでは、良好に
描出できない場合や、まったく描出できないこと
障害のωRΦΦ巳轟や集団検診に用いることは、現在
例は約五三・二%で、二六・六%は同様な情報が
に加えて、MR血管撮影が有益な情報を与えた症
MR血管撮影では、スピンエコー法の画像の所見
われわれが現在までに実施した約一〇〇症例の
ができる。
が施行してあれば、その開存状態も描出すること
状態がよく 観 察 さ れ る ほ か 、 S T A − M C A 吻 合 術
じること、空間分解能が低いこと、撮影野の末梢
いこと、渦流や複雑な流れの血流で信号欠損が生
情報が得られる。本法の欠点として、撮影野が狭
疾患などの血管性病変の半数以上の症例に有用な
動静脈奇形、動脈瘤、モヤモヤ病、静脈洞閉塞性
ピンエコー法と併用して実施すると、閉塞性疾患、
MR血管撮影には種々の限界が存在するが、ス
まとめ
の方法では時期尚早という意見が多い。
もある。動脈瘤内の血栓形成の状況も描出するこ
とができる。
得られ、二〇・二%においては、MR血管撮影は
や、遅い血流が描出困難なことなどがあげられる。
モヤモヤ病では閉塞血管と側副血行路の形成の
スピンエコー法の画像よりも劣っていた。しかし、
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MR血管撮影は今後の技術的進歩によって、頭蓋
的な検査法となり、神経放射線診断で果たす役割
内、および頸部血管に関する情報を与える非侵襲
が大きくなることが予測される。
︵熊本大学 教授 放射線医学︶
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