2015年9月号掲載

経済広報センター活動報告
経済広報センター活動報告
日本・台湾連携で
グローバル社会を打ち勝つ
経済広報センターは、6月24日、経団連の東亜経済人会議日本委員会の協賛を得て、台湾経済研究院
の江丙坤董事長(会長に相当)、林建甫院長を招き、「日本・台湾連携でグローバル社会を打ち勝つ」をテー
マに講演会を開催した。
台湾経済研究院は、台湾最大の民間シンクタンクのひとつで、江董事長は日本と台湾の経済交流への多
大な貢献により、今年春、旭日重光章の叙勲を受けた。また、林院長は、経済・金融と中国との両岸交流
の専門家として知られている。
当日は、ASEAN地域などにおける日台企業の連携の可能性について、発言があった。
件のうち、日本からの技術導入は2483件と全体の
期 間 で の 投 資 累 計 金 額 は24億5700万 ド ル、 件 数
日台産業の相互補完による
東南アジア新興市場共同開発の
ビジネスチャンス
では2772件となっている。さらに、JETROの
林 建甫(リン・ケンポ)
2014年度調査では、台湾の日系企業の81.8%が黒
台湾経済研究院 院長
59.2%を占める。また、2009年から2014年までの
字となっており、国別に外資系企業を比較した場
日台産業界が抱える課題
合、黒字企業の比率が最も高い。外資系企業の原材
料・部品の現地調達率を見ると、日系は54.2%で中
日本では、重要な技
国系企業に次ぎ、第2位となっている。
術を保有する中小企業
●中台の経済関係
が後継者不足に悩んで
1979年から2014年の間、台湾の中国に対する投
いる。その上、国際的
資は4万1397件を数え、総投資額は1473億ドルで、
な経験が不足している
台湾の全対外投資の61.4%を占める。
中小企業も多く、生産
台湾の活発な対中投資の背景には、1987年の蒋
拠点の海外展開に課題
経国総統による台湾老兵たちの中国大陸への親族訪
問解禁、1992年に行われた海峡交流基金会(台湾側)
挨拶
日本・台湾企業の
ウイン・ウイン関係強化を
槍田松瑩(うつだ・しょうえい)
経団連 東亜経済人会議日本委員会 委員長
一方、台湾の場合も、
と海峡両岸関係協会(中国側)による経済・文化交流
OEMで成長を続けて
既に多くの企業が
の合意がある。その後、両岸間の正式ルートの接
きた企業は、今日の国際競争激化の中で、付加価値
連携し成功を収めて
触・対話が中断された時期もあったが、2005年以
を高める必要性に直面している。加えて、台湾は、
いるが、本日はあら
降は頻繁な接触がなされ、2010年にはECFA
(両
ためて日本と台湾の
岸経済協力枠組協定)を締結するに至った。
企業がウイン・ウイ
日台関係の現状と経済面での連携の可能性
RCEP
(東アジア地域包括的経済連携)
、TPP
(環太平洋経済連携協定)といった地域の重要な経済
統合の動きに参加できていない。日台の協力は、そ
れぞれがこのような課題をクリアにするチャンスを
今年春の叙勲で江丙坤董事長が旭日重光章を受け
ンの関係を強化して
られたことをお祝い申し上げる。日本と台湾は強い
いく上で、有意義な
信頼の下、極めて良好な関係を築いており、経済関
お話が伺えるものと
日本との関係を
「特別パートナーシップ」と位置づ
係も順調である。
期待している。
け、日本との友好関係や経済・貿易関係などをさら
台湾企業は、近年ASEAN諸国を域内ならびに
に発展させる考えを表明した。これを背景とし、現
第三国向けの重要な海外生産拠点として位置づけて
在の日台は過去40年間で最良の関係にある。事実
いる。現地生産品は、域内市場で特に韓国企業と競
として、東日本大震災後には、台湾から日本への義
合関係にある。
2008年5月に就任した馬英九総統は、同年9月、
講演
日台中経済関係と台湾経済
江 丙坤(コウ・ヘイコン)
台湾経済研究院 董事長
日本、台湾、中国の関係
14
を抱えている。
●台湾の経済発展と日本の役割
与えてくれる。
●日台協力の可能性
ASEAN主要国は、概して右肩上がりの経済成
援金・救援物資の提供や救援隊の派遣がなされ、こ
れを契機に日台の友好感情が国民の間で高まった。
長を実現しており、今後、ポテンシャルの大きな内
8.2 % で あ り、 日 本、
また、「台北国立故宮博物院展」が日本で初めて開催
需消費市場に転換する可能性がある。そして、RC
韓国、フィリピンを
された。加えて、政府間では日台間でのオープンス
EPやTPPは、ASEAN域内の産業分業モデル
凌ぐ。台湾の経済成
カイ協定や民間漁業取り決めなどが締結された。
に影響を与えるものと見られる。この中で、相互補
1953年 か ら2000年 の 台 湾 の 年 率 平 均 成 長 率 は
1890年代から現在に至るまでの歴史的・地理的
長 に 関 し て は、 日
日本企業が中国やASEANに進出する場合に
完性の高い日台の企業が、協力体制を強化できれ
な関係から日本、台湾、中国は切っても切れない関
本の役割が特に大き
は、台湾企業との連携が有効だ。台湾企業は豊富な
ば、大きな成功を収めることができよう。また、A
係にある。また貿易に関して、長年、日本から台湾
い。 例 え ば、1952年
海外ビジネス経験を有し、様々なノウハウを保有し
SEAN以外にも、国際的に大きなインフラ需要が
に部品を輸出し、台湾で加工、中国で組み立てた
から1995年の各国か
ている。
あり、ここにも日台協力のチャンスが存在する。 後、日本に輸出するという三角貿易が三者の経済成
らの技術提携許可件
長を支えてきた。
数 を 見 る と、 全4196
〔経済広報〕2015年8月号
k
(文責:国際広報部主任研究員 藤原慎二)
2015年8月号〔経済広報〕
15