【2015.1月号】No.425

月刊
第37巻第1号通巻425号2015年1月1日発行(毎月1回1日発行)1980年10月23日第3種郵便物認可
1
2015年
実行する年に
◆新春特集 2015年を迎えて
(一財)経済広報センター 副会長
アサヒグループホールディングス
(株)相談役 荻田 伍
◆第30回「企業広報賞」受賞者インタビュー ダイキン工業(株)取締役会長兼グローバルグループ代表執行役員 井上礼之
◆企業広報研究
活発な議論と多様性を是とする姿勢で
グローバルな社内コミュニケーションを展開
1000人、100万人、10億人を動かすには
ブルーカレント・ジャパン
(株)社長/CEO 本田哲也
LINE(株)上級執行役員 法人ビジネス担当 田端信太郎
共同通信社の組織・取材体制と企業報道
◆マスコミ事情
(一社)共同通信社 経済部長 谷口 誠
425
January
今 月 の 表 紙
味の素グループが連携して行う、東北応援
「ふれあいの
赤いエプロンプロジェクト」
(仮設住宅などにおける移動
式料理教室を中心とする活動)
。2011年10月に開始し、
2014年10月末現在で、岩手・宮城・福島の3県44市町
村で約1000回開催し、延べ約1万7000名が参加
新春特集 2015年を迎えて
2015年1月号目次
実行する年に
荻田 伍((一財)経済広報センター 副会長/アサヒグループホールディングス(株) 相談役)
2
第30回
「企業広報賞」
受賞者インタビュー
活発な議論と多様性を是とする姿勢で
グローバルな社内コミュニケーションを展開
4
井上礼之(ダイキン工業(株) 取締役会長兼グローバルグループ代表執行役員)
企業広報研究
1000人、100万人、10億人を動かすには
本田哲也(ブルーカレント・ジャパン(株) 社長/CEO)
田端信太郎(LINE(株) 上級執行役員 法人ビジネス担当)
7
マスコミ事情
共同通信社の組織・取材体制と企業報道
谷口 誠((一社)共同通信社 経済部長)
『経済広報』では、裏表紙に関連する写真・イラストを表紙に
掲載しています。
10
グループ広報研究⑥
現場を巻き込むインナーコミュニケーションで
グループの一体感を醸成
12
明治ホールディングス(株)
ANGLE
TOSSが取り組む社会貢献活動
向山洋一(TOSS 代表)
15
経済広報センター活動報告
1
「福島医療ケアサービス都市」
プロジェクト現地報告
~未来都市モデルプロジェクト~
16
メディアに聞く
月の動き
国内
広報は未来を創る原動力
東 英弥(事業構想大学院大学 理事長/(株)宣伝会議 会長)
21
技術広報研究③
9日
2014年11月の景気動向指数速報
(内閣府)
13日
11月の国際収支速報
(財務省)
12月の景気ウォッチャー調査
(内閣府)
19日
12月の消費動向調査結果
(内閣府)
20 ~ 21日
日銀の金融政策決定会合
26日
2014年と12月の貿易統計
(財務省)
30日
2014年と12月の失業率
(総務省)
2014年と12月の有効求人倍率
(厚生労働省)
海外
7日
2014年11月の米貿易収支
(米商務省)
9日
12月の米雇用統計
(米労働省)
14日
12月の米小売売上高
(米商務省)
21日
12月の米住宅着工件数
(米商務省)
21 ~ 24日
ダボス会議(世界経済フォーラム年次総会)
(スイス・ダボス)
22日
ECB
(欧州中央銀行)
定例理事会
(ドイツ・フランクフルト)
27 ~ 28日
FOMC
(米連邦公開市場委員会)
(米FRB
(連邦準備制度理事会)
)
30日
10 ~ 12月期の米GDP
(国内総生産)
速報
(米商務省)
研究・技術開発力を戦略的広報で伝える
東レ
(株)
22
広報管理職講座⑤
危機管理と広報管理職
篠崎良一(PR総研 所長/広報の学校 学校長)
23
連載
経済広報センター NEWS
企業広報ニュース(統合報告書/教育支援/広報トピックス/ Book)
企業・団体のCSR活動(味の素
(株)
)
1月の動き
18
24
裏表紙
表紙裏
発行/一般財団法人経済広報センター 国内広報部
東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館 TEL:03-6741-0021
印刷/三葉株式会社 TEL:03-3294-4751
※本誌掲載の記事・写真・イラスト・図版の無断掲載を禁じます。
2015年1月号〔経済広報〕
1
新春
特集 2015 年を迎えて
新春
2015 年を迎えて 特集
実行する年に
荻 田 伍(おぎた・ひとし)
(一財)経済広報センター 副会長
アサヒグループホールディングス(株) 相談役
日本経済が新しい発展に向けて、動き始めていま
が、長続きはしません。景気に一喜一憂しない、地
す。この動きをさらに加速させ、次なるステージに
域に根付いた産業を発展させていくことが求められ
上がるためには、多くの課題を解決していかなけれ
ばなりません。日本は課題先進国といわれてはいま
ンに繋がるような連携を進める視点も必要です。グ
ます。そういった人たちへのきっかけとして、
「住み
ローバル化が進む中、自前主義では難しい部分もあ
やすさ」も大きなPRポイントになるのではないで
り、日本の総合力を発揮していくべきではないで
しょうか。職住近接、ゆとりある住環境、豊かな自
しょうか。
然での子育てと、地方での住みやすさは、出生率の
女性の活躍推進
向上にも繋がっていくはずです。
また、地方での人口減少を現実として受け止め、
街をコンパクトにすることも進めていく必要があり
最後に、女性の活躍推進を中心としたダイバーシ
ティについてです。
ます。コンパクトシティ化で地域のサービス業務の
男性中心の経営から脱皮し、女性を積極的に登用
効率化を進め、消費密度を高めるなど、人口の減少
していくことは、日本経済の強い競争力を生むこと
が避けられない中、いかにその減少率を下げるか、
に繋がるはずです。女性の活躍推進はダイバーシ
そしていかに住みやすい地域をつくるかを考えると
ティ経営の一分野ではありますが、特に少子化を踏
同時に、人口を増やすための種まきを考える時で
まえて、眠れる資源である女性の活躍を推進するこ
す。
とは、日本の持続的な成長になくてはならないもの
起業支援
であると考えます。
女性だけでなく高齢者や障がい者、そして外国人
次に、起業支援について触れたいと思います。
など、自分と違う経験や価値観を持つ人との協業が
ているのではないでしょうか。人、技術、自然など
ベンチャーは経済活動のエンジンですが、日本で
企業を活性化させていきます。誰もが活き活きと働
の地域資源をフルに活用していくには、それぞれの
はその支援や活動は、まだまだ低調であると言わざ
ける社会の実現に向け、経営者は覚悟を決めて環境
すが、その課題を一つひとつ解決していくことで、
地域に合ったオーダーメイドの処方箋をつくり、そ
るを得ません。米国の新興企業の時価総額は日本の
を整備していく必要があります。
国は強くなっていきます。課題を解決していくこと
の処方箋通りに地域がイニシアチブを持って実行に
10倍であり、雇用の1割がベンチャー企業からも
それぞれの違いを受け入れると同時に、その違い
は、新しい挑戦ともいえます。地方創生や起業支
移すことが重要です。地方の潜在力を引き出すよう
たらされているといいます。日本ですぐにそのレベ
を活かしていくことも重要です。多様性の融合が化
援、そして女性の活躍推進などに前向きに取り組む
な優遇措置もあっていいと思います。
ルになれるかというと、これまでの土壌が違います
学反応を起こし、イノベーションに繋がります。も
から簡単にはいきませんが、ポイントを外さずに取
ちろん、多様な価値観の人と仕事をする中では、こ
り組めば、効果も早く出てくると思います。
れまでとは違った様々な変化に対応していかなくて
ことにより、若い人たちが将来に希望を持てるよう
従来のような国主導のトップダウンの施策では画
な国にしていくことは、私たちの責務だと考えてい
一的なものとなり、これまでの失敗を繰り返すこと
ます。
が危惧されます。当初の計画から大きく変わり、凡
地方創生
2
も、地方へ移住したいと思っている人も多いと聞き
地方創生にも繋がることですが、地方版のベン
はなりませんが、その壁を乗り越えることで、新し
庸な施策になってしまうケースもあるでしょうし、
チャー支援を検討していくのも一計です。ネット社
い世界も拓けてくるはずです。日本の競争力を高
結果的にバラマキになってしまうケースも過去には
会である現代においては、所在地が東京でなければ
め、持続的な成長に繋げるためにも、誰もが活き活
地方の創生、活性化は待ったなしであるといえま
ありました。そこで、PDCA管理をしていくこと
ならない理由はありません。地方での起業を支援す
きと働ける社会をつくることは次代への責任である
す。日本が直面している人口減少、超高齢化社会へ
が肝要になります。同じ轍を踏まないよう、しっか
る仕組みをつくり、資金力のないベンチャーをコス
と考えます。
の対策には、東京一極集中の是正が必要であり、国
りPDCAを回していかなくてはなりません。
ト面でメリットのある地方に呼び込むことは、地方
土の均衡ある発展のために地方創生は喫緊の課題で
東京などの大都市圏への若者の流出により、地方
す。政府も「まち・ひと・しごと創生本部」を立ち上
では人口の再生産能力が喪失されており、人口減
また、リスクを取るのがベンチャーとはいえ、一
げましたが、まさに地域の課題を解決し、若い人が
少の大きな要因となっています。少子化対策と共
方で失敗した際に再チャレンジできる体制も必要で
失敗を恐れず挑戦するベンチャー企業を応援してイ
安心して仕事に取り組め、子育てができる環境をつ
に、この東京一極集中の現実を私たちも認識する必
す。失敗は成功のもと。経験やノウハウを次に活か
ノベーションを推進し、そして女性をはじめとした
くり、東京一極集中に歯止めをかけていかなくては
要があります。そして、若者を地方に繋ぎ止めるに
せるチャンスは必要です。失敗を恐れず再チャレン
全ての人々が活躍できる環境を創っていくことが求
なりません。
は仕事をつくると同時に、
「住みやすさ」
を追求して
ジできる環境整備も求められています。
められています。2015年は、有言実行の年。これ
の活性化に繋がっていくと思います。
そのためにはまず、「仕事」をつくる必要がありま
いくことも必要です。具体的には、子育てへの支援
そして大企業にとっても、ベンチャーを資金面で
す。ただし、これまでのような企業の工場誘致など
です。保育所の整備や安心できる医療環境と豊かな
サポートすることに加え、企業の人材・技術とベン
では、その地域は一時的に良くなるかもしれません
自然があれば、人は集います。都市に住む人の中で
チャー企業の発想が融合して、新たなイノベーショ
〔経済広報〕2015年1月号
日本が持続的に成長し、若い人たちが将来に夢や
希望を持てる国にするためには、地方を元気にし、
まで議論してきたことを実行に移していく年にして
いきましょう。 k
2015年1月号〔経済広報〕
3
第¦30¦回¦企¦業¦広¦報¦賞
受賞者インタビュー
受賞者インタビュー
活発な議論と多様性を
是とする姿勢で
グローバルな社内
コミュニケーションを展開
井 上 礼 之(いのうえ・のりゆき)
ダイキン工業
(株)
取締役会長兼グローバルグループ代表執行役員
■聞き手:中山 洋 経済広報センター 常務理事・事務局長
第30回
「企業広報賞」の表彰式が2014年9月2日に開催された。今月号では、企業広報経営者賞を受賞さ
れたダイキン工業の井上礼之取締役会長兼グローバルグループ代表執行役員のインタビューを掲載する。
井上 特にリーマンショック以降は、世の中で急激
なパラダイムシフトが起きています。このような状
況の中、主に2つのキーワードを重視しています。
1つは、リーダーには「六分四分の理」で決断する
勇気が必要です。戦略が六分出来上がっていれば決
断し、あとは実行しながら軌道修正をしていけばよ
い、という考え方です。過去の成功体験が通用しな
くなっている昨今、考えても答えのないところに答
えを出すことが、リーダーには求められています。
例えば当社の場合、技術開発を自社でやるのか、他
女性の活躍推進にも力を入れています。中でも障が
社と連携・提携するのか、M&A
(企業の合併・買
い者雇用では、淀川製作所のある大阪府摂津市に第
収)を実行するのかなどの線引きの判断を、経営者
3セクター(府・市・当社)として設立した
「ダイキ
として迫られる場面が多々あります。難しい判断で
ンサンライズ摂津」という、障がい者が中心に働く
あっても、時代の変化に対応し、競合他社に先手を
工場があります。この工場は、社会貢献を目的とし
打つためには、この「六分四分の理」で決断し、実行
たものではなく、きちんと収益を生み出すことを前
に移すことが重要です。
提に設置されました。この工場でも社員の自主性を
2つ目は「現場主義」です。リーダーが、答えのな
いものに対して決断を下すためには、先見性や経験
侃々諤々の議論による納得感の醸成
■御社では「人を基軸に置いた経営」として、議論の
重んじたマネジメントが実施されており、結果とし
て多くの利益を生み出しています。
に基づく動物的なカンが必要です。このカンを養う
一方で、多様性を受け入れるだけでは組織として
ために、私自身も「現場主義」をモットーにしていま
の一体感は醸成されないため、経営理念やフィロソ
徹底的な議論を経て決定された戦略は、「フラッ
す。会議室で上がってくる情報を待つばかりではな
フィーを浸透させていくことが必要です。
ト&スピード」という考え方で実行されます。これ
く、現地に出向き、第一線のナマの情報を仕入れる
活性化を非常に重要視されていると伺いました。
は、年齢や役職に関係ないフラットな組織で、ス
ことで、適切かつスピーディーな判断が可能になり
どのようなお考えに基づいているのでしょうか。
ピーディーに戦略を実行することを意味します。こ
ます。このため、海外の拠点には年10回以上訪問
井上 社内コミュニケーションが重要なのはどの企
の
「フラット&スピード」
を実現するために、当社で
しています。
業でも共通ですが、当社では、社内での徹底的な議
はコアマン&サポーターという制度を導入していま
論で納得感を醸成することを非常に重視しており、
す。例えば、入社5年目であっても、特定の分野に
それが当社の強みである「実行に次ぐ実行」に繋がる
秀でていたり、並外れた熱意を持った社員であれば
■多国籍企業として、ダイバーシティマネジメント
思を徹底していくことは、常に取り組まなければな
実行力を高める土壌になると考えています。
多様な価値観を是とする
「現場主義」に基づく
海外とのコミュニケーション
■海外の拠点やグループ会社にはどのようなコミュ
ニケーションを実施していますか。
井上 多国籍に広がるグループ会社に日本本社の意
プロジェクトのコアマンに指名し、部長職と同等の
については、どのようなことを心掛けていらっ
らない課題です。当社では、世界を6極に分け、日
異なる言葉、宗教、文化、生活習慣や、多彩な価
権限を与えます。周囲の管理職はサポーターとし
しゃいますか。
本の経営幹部が現地を訪問することに取り組んでい
値観を持つ人たちの活用など、社員がチームで仕事
て、その社員を支援します。この制度は世界各国の
井上 当社の社員は2014年6月時点で6万人を超
ます。訪問した際には、日本本社の経営理念やノ
をする際には、意見の対立は避けられません。最終
グループ企業でも実施されています。
えますが、日本人は2割程度で、残りは外国人が占
ウハウ、マネジメントに対する考え方をフェース・
めています。現地会社に事業を委託している国も含
ツー・フェースで伝えることはもちろん、現地の話
めると、現在145カ国で事業展開しています。
を聞き取ることも重要な目的です。先ほど
「現場主
的にはリーダーの“衆議独裁”で決断を下す必要があ
社員が働き続けたいと思えるような職場環境をつ
りますが、互いに意見を言い合う侃々諤々の議論の
くることは経営陣の最大の使命ですが、議論を重視
場を大切にすることで、導き出された結論に対する
する当社の考え方やコアマン&サポーターの制度
このような多国籍かつ多様な社員を束ねるため
義」というキーワードを挙げましたが、訪問先で詳
社員の納得感が高まります。そのため、当社の取締
は、自由な気風と自主性を重視した組織風土を生み
に、当社では、同質化を求めるのではなく、違う価
細な報告を聞いた上で、決断すべきことは日本に持
役会などは終了予定時刻がなく、朝から夕方まで議
出していると考えています。人材マネジメントにお
値観を是とする考え方を大切にしています。この考
ち帰らず、その場で決定しています。これは、日本
論が続くことも珍しくありません。
いても、性善説に基づき、社員の可能性を信じるこ
え方は私が社長に就任する以前から、変わらず受け
に持ち帰ってあらためて検討すると、現地の泥水の
とを徹底しています。
継がれているものです。アジア地域などは国によっ
情報が本社に上がってくる過程で真水になってしま
て言語、価値観、生活習慣、文化が大きく異なりま
い、現地の正確な現状を把握できず間違った判断を
すが、組織が多様な人材で構成されているからこ
する恐れがあるためです。また、現地の部分最適の
そ、多様な価値観や人種に対応した商品開発や組織
意向を踏まえつつ、全体最適の視点から、会社の限
運営が可能となると考えています。
られた資源をどのように配分すべきか、現地の社員
また、議論から決定までのプロセスの透明度を高
めることも重要です。幹部が決定事項を社員に伝達
する際には、どのような議論が行われたのか、どの
4
ともあります。
第¦30¦回¦企¦業¦広¦報¦賞
リーダーは
「六分四分の理」
で決断を
ような考え方に基づいて結論が導かれたのか、など
■会長ご自身がリーダーとして大切にされてきたこ
の背景を伝えることを徹底しています。労使交渉に
との中で、昨今特に重視している考え方やキー
おいても、取締役会で用いた資料をそのまま渡すこ
ワードはどのようなことでしょうか。
〔経済広報〕2015年1月号
また、外国人だけではなく、障がい者や高齢者、
と徹底的に議論することを心掛けています。
2015年1月号〔経済広報〕
5
第¦30¦回¦企¦業¦広¦報¦賞
しかし、国が違えば想定外の出来事は日常茶飯事
力」も保つ必要があります。多様化した組織の求心
で、それらへの対応は現在でも課題です。例えば、
力を維持し、高めていくには、経営理念を組織内に
海外のある工場では一度に多数の技術者が辞職して
共有・浸透させることが重要です。多国籍化・多様
しまったことがありました。日本国内では想定でき
化した組織では、
「暗黙知」
だけではマネジメントで
ないようなケースが海外では多々起こります。
きないため、組織運営において形式知化できる部分
また、中国での優秀な人材獲得も課題のひとつで
はきちんと形式知化し、組織内で共有することも不
す。当社では、上海に研究開発センターを設立し、
可欠だと思います。ノウハウを現地に提供すること
日本に次ぐ開発拠点としたいと考えていますが、優
により、生活習慣や言語、宗教が異なる人々を、生
秀な人材を獲得するための競争は熾烈です。欧米企
産の効率化や高度化といった共通の目的で束ねるこ
業は優秀な人材を獲得するために、給与や待遇面で
とができます。多国籍なグループ企業をまとめ上げ
明確なキャリアパスを用意しています。日本企業
るためにも非常に重視しています。
は、採用時の初任給や福利厚生は欧米企業に劣りま
この戦略を実現する上で最も重要なのは、役員、
せんが、明確なキャリアパスを示す欧米企業に魅力
部課長、担当者、それぞれの層での「ブリッジパー
を感じる人材が多く、日本企業の今後の対応が問わ
ソンの育成」です。彼らには、本社を含めた関係者
れています。
と密に情報を共有し、現地化の視点と全体最適の視
「遠心力」と「求心力」
の強化
■御社の実践する、日本的経営の良さと欧米流を融
合した独自の経営スタイルとはどのようなもので
しょうか。また、御社が今後、多国籍企業として
さらに飛躍していくために、どのようなビジョン
と課題認識をお持ちでしょうか。
井上 私自身の経験に基づいた話しかできません
点を兼ね備えた上での判断や、本社やトップの意向
を正確に伝達することが求められます。今後、こう
した人材をさらに育成できるかどうかが、真の多国
籍企業となれるかどうかのカギとなるでしょう。
1000人、100万人、
10億人を動かすには
本 田 哲 也(ほんだ・てつや)
ブルーカレント・ジャパン(株) 社長/CEO
田 端 信 太 郎(たばた・しんたろう)
LINE(株) 上級執行役員 法人ビジネス担当
■聞き手:佐桑 徹 経済広報センター 国内広報部長
インターネットやソーシャルメディアの普及により、テレビコマーシャルをはじめとする旧来型の広告手
法の効果が低下している。情報過多時代における効果的な人の動かし方とはどのようなものか。SNS
(ソー
シャル・ネットワーキング・サービス)との付き合い方も交え、
「戦略PR」の第一人者である本田哲也氏、
「L
INE」の仕掛け人である田端信太郎氏に聞いた。
対象者に動いてもらうことはできる。ただ、舞台装
社内外の声を聞き取る意識
企業が「動かす」時代から、消費者が「動く」時代へ
■最後に、企業にとって広報の役割はどのようなも
■広報部門の重要な役割に、企業イメージやレピュ
費者に役者のように動いてもらおうとしても、その
テーションの向上があるが、SNSなどが普及し
魂胆は見透かされ、逆に消費者は動かない。動いて
のとお考えでしょうか。
置から小物に至るまで、全てを企業側が用意し、消
が、日本的経営の良さ、例えば、社員のロイヤル
井上 広報活動は、その企業の考え方や行動を広く
た現代において、以前よりも人を動かすことが容
もらうための道筋を考え、きっかけを与えることは
ティーやチームワーク、中長期経営計画に基づく投
発信し、理解を得るという、事業戦略の重要な柱の
易になっているのか、それとも難しくなっている
必要だが、全てをコントロールしようとする考えは
資や人材育成など、欧米企業が取り入れるべき点は
ひとつです。しかし、情報を発信する一方で、当社
のか。
改めるべきだ。
多々あると思います。一方、日本的経営の悪いとこ
に対する社会からの評価を聞き取る広聴活動にも、
本田 両方の側面がある。従来はマス広告などで全
ろは同質を好むこと、閉鎖社会、透明性の不足、根
同じウエートで取り組むべきだと考えています。そ
てコントロールできたが、インターネットの比重が
回しの文化などです。そうした点は欧米企業の良さ
のため、当社では年に数回、マスコミの方々との懇
拡大したことで、コントロールできない領域が増え
を取り入れることで、グローバルに通用する経営ス
親の場を設け、当社の事業を説明したり、質問を受
てきた。その意味では難しくなってきたといえる。
するのは、もうあきらめなさい。』には、
「広告やメ
タイルを確立できると考えています。透明性や説明
ける機会としています。同時に、当社の事業が社会
一方で、1000人程度の小規模な人数なら、1人で
ディアだけでは大ヒットは生み出せない」とある
能力の高いコーポレートガバナンス、ステークホル
にどのように受け止められているのか、ヒアリング
動かせるという側面もある。大企業が大きな予算を
が。
ダーに対する考え方、株式価値の向上、ROE(自
とフォローを徹底し、忌憚なく苦言を呈してもらえ
かけなければ動かせなかった時代に比べ、人を動か
本田 人を動かすことをテーマとした書籍は多数発
己資本利益率)を含めた率の経営、人材の流動性の
る信頼関係を築き上げることに尽力しています。
す可能性が上がったともいえる。
行されているが、その多くは広告やPR、SNSな
また、企業の広報活動は、広報部門だけではな
田端 企業が人を「動かす」時代から、消費者が自発
どの手段論となっている。私たちは、「人の数」とい
促進など、欧米企業から学ぶべき点は多くありま
1000人、100万人、10億人が動くメカニズム
■お二人の共著
『広告やメディアで人を動かそうと
く、役員を含めた全社員が広報担当者として取り組
的に「動く」時代になってきた。インターネットの進
う観点から考察し、対象となる人数の規模によっ
当社が真の多国籍企業として今後も発展し続け
むべきものです。特に、社内外の声を聞き取る意識
化がメディア環境の前提条件を大きく変え、主導権
て、人が動く理由が異なることを伝えたかった。
るには、「遠心力」と「求心力」のさらなる強化が重要
は役職が上がるほど重要です。部下との対話の場面
は消費者サイドへ移っていることを認識する必要が
■では、その人数規模ごとの人の動かし方について
です。当社は、新興国でのM&Aなども多いのです
でも、9割は部下の言うことを聞き、こちらの発言
ある。企業が動かそうと思って動くものではない
が、多国籍企業としてのコーポレートガバナンスに
は1割程度に抑えることを心掛けています。もちろ
が、動く時には勝手にどんどん動いてしまう。この
本田 まず、インターネットを通じて広く呼び掛け
は課題が残ります。現地への権限委譲を進め、地域
ん、自分自身の発言に沿って誠心・誠意を持って対
点に難しさがある。
ても、必ずしも人が動くとは限らない。そもそも人
に密着したビジネスを推進できる「遠心力」を強化す
応する、
「言行一致」
の心構えが重要なのは言うまで
■企業の思惑通りに人は動かないということであれ
を動かすには、自発的な行動を促す
「何か」が必要
るためには、現地での優秀な人材育成が必要です。
もありません。 す。
一方で、多様な価値観をまとめるためには
「求心
6
企業広報研究
受賞者インタビュー
〔経済広報〕2015年1月号
k
(文責:国内広報部主任研究員 鈴木恵理)
ば、企業はどう仕掛けていけばいいのか。
本田 企業が意図的に仕掛け、結果として消費者や
伺いたい。
で、そのために発信者側が汗をかくことが重要だ。
田端 汗をかくというのは、対象に情熱を注ぐとい
2015年1月号〔経済広報〕
7
企業広報研究
企業広報研究
登壇者が暗記した完璧な回答をしたとしたら、無意
るが、そうでない場合も多い。しかもこの情報は、
識のうちに皆に見抜かれ、かえってマイナスイメー
企業自身が発信する情報よりも「信憑性が高い」と判
なら誰しも持っている本能に訴え掛けるという条件
ジになるのではないか。
断される。今後、このアンコントロールな領域はま
が外せなくなる。
本田 社長ブランディングやイメージコンサルティ
すます増えてくると思う。
かなくなる。だからこそ、やるべきことが分かりや
本田 この規模になると、
「生活習慣」
や
「恒例行事」
ングの時代といわれているが、コンサルタントが入
■企業はLINEとはどう付き合っていけばよいか。
すく、情熱がストレートに伝わるようなシンプルな
を前提とした啓発的なコミュニケーションが重要に
ること自体が公になっている時代だ。教えられた通
田端 LINEはほか
モデルが適している。これが1万人や10万人に増
なる。異なる人種を排除しない寛容さや、言語の壁
りの「いかにも」な立ち居振る舞いだけでなく、自分
のSNSよりもコント
えてくると、ピュアな思いを発信するだけでは、人
を超える工夫も必要だ。LINEのユーザー数は世
自身の言葉で伝えることを意識すべきだ。よく、リ
ロールしやすいと考え
はさすがに動かない。代わって「連帯感」や「共犯意
界で4億7000万人を突破した。これはスタンプと
スクマネジメントとして「これを言ってはいけない」
ている。企業の公式ア
識」といった人間的な本音に訴え掛ける必要が出て
いう非言語コンテンツを取り入れて、言語の壁を超
というメディアトレーニングがあるが、社長自身の
カウントだけでも既に
えた領域に踏み込んだことによる成功例だ。
言葉がないと、どんどん色のない会社になってしま
200近くあり、通常の情
う。そちらの方がリスクである。
報発信ツールとしての
■本田さんの前著『戦略PR』に従えば、広報の仕事
活用方法は多くあるの
うことだ。1000人規模であれば、自然発生的に人
「信仰」
や
「コミュニケーション欲求」
といった、人間
必要はない。ピュアな情熱だけで人は動かせる。半
面、ネガティブなものが透けて見えた瞬間、人は動
くる。
本田 この時、情報を
拡散し、対象者のモチ
人を動かすことを「入れ子」の構造で考える
ベーションを増幅する
田端 人数規模ごとに、人が動く背景とメカニズム
は、企業イメージやレピュテーションといった空
ではないか。プレスリ
装置として、インター
を説明したが、重要なことはそれらが入れ子の構造
気づくりが重要になるということか。
リースを送る記者専用
ネットの存在感が大き
になっていることだ。ロシアのマトリョーシカ人形
本田 人を動かすのはマーケティングの役割で、広
のアカウントを作ったり、現在はファクスやメーリ
くなる。ただし、大量
のように、10億人が動いた行動は、1億人が動い
報は企業の評判を守る、関係性を維持することが仕
ングリストを使っているものを、LINEに代えて
のDMを送るという
た行動から繋がり、その内側には1000万人、100万
事だと考えている人も多い。しかし、企業イメージ
もいい。ユーストリームのような動画共有もできる
よ う な 手 法 で は な く、
人が動く構造がある。対象人数が変われば全て変わ
やレピュテーションの向上は人の心が動いた結果で
ので、新商品の発表会をLINEの公式アカウント
ソーシャルメディアの
田端信太郎氏
るという話ではない。だからこそ、10億人を動か
あり、広報はステークホルダー、生活者、社会と
からライブで配信してもいい。今はあくまでもツー
活用など、発信者の顔が見える行動によって、潜在
そうと考えている人も、まずは目の前の1000人と、
いった幅広い対象者の心を動かす仕事だというマイ
ルの域にとどまっており、どう使うかはもう一工夫
的な需要を掘り起こすことが重要だ。情報を拡散す
動かせる範囲から動かしていくことが大切だ。大規
ンドを持たなければならない。
必要だが、まだまだ研究、開発の余地があると思う。
るに当たり、実際に人が動いた具体的な数字を発表
模な人数を動かすといっても、すごいマジックがあ
することも効果的だ。また、このくらいの人数規模
るわけではない。
から、発信者がコントロールし切れない「お祭り心」
本田 企業広報、特に広告主導できた日本企業は、
のような欲求が混入し、コミュニティーの構造化が
どちらかといえば
「まず網をかけよ」
という発想にな
始まる。そして100万人とさらに拡大すると、構造
る。多くの人にアプローチすることから始め、だん
化がいっそう進み、連帯できる限界を超える。そう
だん小規模になり、結果この程度の人数が買うだろ
田端 放っておけば、いずれ欠席裁判になってしま
ルは、使っていいか悪いかというよりも、関係性を
すると、「虚栄心」や「承認欲求」を満たす要素が重要
うと。しかし、これまで広告主導でやってきたマー
う。なかったことにはできない。そういう意味で
築くためのものだ。記者との距離が縮まるのであれ
になり、1000万人規模になれば「横並び」の意識も
方がうまくい
ケットも、これからは
「隗より始める」
は、何かしら関わった方がいいだろう。望み通りの
ば使えばいい。
加わってくる。この辺りからようやく「マス」の概念
く時代になった。私は企業広報から、レピュテー
結果が得られるとは限らないが。
田端 LINEの公式アカウントも、フェイスブッ
が登場し、広告やPRといった、たくさんの人に
ションを上げたいと相談される場合があるが、まず
■主導権は会社側にはない、ということか。
クもそうだが、法人がメガホンとして使うツールと
知ってもらうための「技」が必要になる。対象者の欲
は従業員向けインナーPRのプログラムを提案する
本田 主導権は会社だけが持っているものではな
いう側面と、個人と個人がどう繋がるかという側面
求を満たすための固有の世界観を持った質の高いコ
ことがある。
い、ということだ。編集権と編成権は生活者に移っ
がある。お互いが企業とメディアという看板を背
ている。これは大きな変化であり、日本の広報人が
負って付き合うのであればそこまでの繋がりだろう
大事にしてきたメディアや記者との関係、
「ここから
し、そういった看板を外して、個人と個人で付き合
物事を動かそう」という思惑が通じなくなっている。
うことも可能だ。ただ、お互いの距離感がずれてい
本田哲也氏
ンテンツも求められる。
田端 100万人規模では、メディア越しに「流行っ
ているらしい」と知る程度にとどまるが、1000万人
かい
広報は人の心を動かす仕事
■対象の人数に関係なく、人を動かすキーワードの
ようなものはあるか。
広報人は「不易」を大切に
■時代が変化したから、とにかくSNSを利用しな
ければと考える広報担当者もいる。
■SNSの普及により、企業の関与していないとこ
本田 以前、企業の広報担当者から、記者とのやり
ろで話が広がる現象があるが、企業はどの程度関
取りでフェイスブックを積極的に使うべきかと質問
わっていくべきか。
を受けたことがある。本来コミュニケーションツー
ここ数年、広報人は企業でもメディアでもないとこ
るとお互いが不幸になる。
本田 数十万人から100万人規模になると、魅力
田端 個人としての属人性は非常に重要だ。社長が
ろから発信される情報に戸惑っているように感じ
本田 新しい広報ツールが登場したので使った方が
的なラベリング
(特定のグループや行動に名前を付
広報部門の書いた原稿をそのまま読んでいるようで
る。日本の場合、メディアリレーション=広報で、
いい、といった流行に乗っただけの利用はいかがな
けること)をすることも有効だ。自身が所属するコ
は、広報として機能しないのではないか。広報が裏
企業が発信者となり、自分たちが伝えたいことを伝
ものか。広報はむしろ、
「流行りの中でも変わらない
ミュニティーがラベリングされることによって帰属
方の仕事をする時は、その人ならではの属人性、代
えてきた。この部分はもちろんコントロール可能
もの」
、松尾芭蕉が提起した
「不易流行」でいう不易
意識が高まり、報道やクチコミに乗りやすくなる。
替不可能なものをどれだけ引き出せるかが重要だ。
だ。一方で、「自分たちでない誰か」が発信する情報
の部分が重要だ。その点を忘れてはならない。 k
田端 1億人以上が動くレベルは、その行動がもは
記者会見などで、広報が想定問答集を完璧に作り、
は、企業の言いたいことを代弁してくれることもあ
規模になると、身近なところで目撃するようになる。
8
や「習慣」になるということだ。10億人ともなると、
の動きが生まれるため、マーケティングで仕掛ける
〔経済広報〕2015年1月号
(文責:国内広報部主任研究員 大野祥子)
2015年1月号〔経済広報〕
9
マスコミ事情
マスコミ事情
共同通信社の組織・
取材体制と企業報道
な記事でも、地方紙では一面トップにくることもよ
くある。そのニュースを欲しているのがたとえ1社
だけであっても、地方の要望に応えていくことは
我々の重要な役割である。
3つ目は、「社論」を持たない姿勢だ。昨今、新聞
社の社論がはっきり表れる傾向が見られるが、紙面
谷 口 誠
(たにぐち・まこと)
(一社)
共同通信社 経済部長
経済広報センターは2014年9月9日、都内で「企業広報講座」を開催した。共同通信社の谷口誠経済部長
が、通信社の役割や企業の広報部に求めることについて講演した。参加者は93人。
経済部の組織体制
最後に、現在共同通信が企業に求めている情報を
お伝えしたい。
●「グローバル」+「ローカル」な情報
1つは、地方紙の取材が手薄になりがちな東京発
置くことなく、功罪両面をきちんと押さえた記事と
の地方ニュースと海外の情報だ。安倍政権の掲げる
するように心掛けている。ここが、新聞社と最も異
地方創生と人口維持は、地方の重要な課題であり、
なる部分ではないかと思う。
関心度が高い。例えば、地方の工場や営業拠点の統
企業広報と報道の関係
企業広報の方々への要望を、報道に携わる者とし
1つは、メディアの特性に合わせた広報をお願い
したい。一般紙や通信社は、中学生が一読して分か
廃合に関する情報も、地方の雇用に大きな影響を及
ぼす。できる限り具体的に、どこの拠点かなどの情
報を提供していただきたい。同時に、東京と地方拠
点との情報連携を緊密に行い、地方紙が取材しやす
い体制を築いていただくことをお願いしたい。
また、新興国に結び付くニュースも関心が高い。
共同通信は、加盟社である約50の全国紙、約150
共同通信は東京・大阪・名古屋に経済部を置いて
るような記事の作成を目指しているが、専門的で難
例えば、
「インドに輸出する新商品は国内の○○工場
のテレビ・ラジオ局に向けてニュースを配信してい
いる。東京は記者が約50人、デスクが15人の体制
解なリリースの文章を見掛けることがある。伝えた
で生産している」といった
「グローバル」+
「ローカ
る。取材から記事を作成するプロセスは一般紙と同
だ。東京に重点的に人員を置いており、大阪・名古
い内容を常に頭の中で整理しておき、問い合わせを
ル」な情報は、弊社にとって非常に価値がある。
様だが、紙媒体を持たない点が通信社の大きな特徴
屋の人数は少ない。
受けた際には、相手の知識レベルに合わせて、伝え
●視覚に訴える写真や図解
だ。
経済部のほかに、経済データ部という組織がある
ることを心掛けていただきたい。記者は誤報を最も
最近の大手紙を見ても分かると思うが、難しい内
通信社の報道では、ニュースをいち早く加盟社に
ことが弊社の特徴のひとつだ。経済データ部は市況
恐れているので、理解できた部分だけを書いたり、
容を分かりやすくするために、写真や図解を用いる
向けて配信する速報性が重視される。締め切りはな
面を扱っており、データは大手全国紙にも活用され
最悪の場合は記事にならない可能性もある。
紙面が増えている。面白い写真や分かりやすい図解
く、状況が変化すれば原稿を差し替えていく。ま
ている。そのほか、多メディアサービスという、デ
た、多数のメディアに記事を配信するため、正確性
も非常に重視している。
昨今は、従来の新聞・テレビ・ラジオに加え、イ
2つ目は、経営トップと常に意思疎通を図り、モ
が加わることで、小さなベタ記事が経済面のトップに
ジタルメディアなどに対応する10人ほどの組織や、
ノを言える広報であってほしい。特に不祥事や事故
くるような場合もあるため、積極的に写真・図解を提
海外の経済ニュースを専門に扱う外国経済デスクを
などの危機発生時に、経営トップの判断にモノが言
供してほしい。この点は、加盟社からの要望も強い。
9人置いている。
えずに、対応を誤るケースもあると聞く。常日ごろ
●企業の新戦略を独自コンテンツで
ンターネット上のデジタルメディアへもニュースを
ま た、 海 外 特 派 員 は ロ ン ド ン、 ワ シ ン ト ン、
から、社外の視点を社内に取り込み、経営トップに
経済部では、企業の新戦略の背景や考え方を掘り
配信している。インターネットの影響力に我々も注
ニューヨーク、上海や、ムンバイにも置いている。
進言することと、経営トップの考えを把握しておく
下げ、インターネット向けの独自コンテンツとする
目しており、今後は独自のコンテンツの開発にも取
ムンバイに特派員を置く国内メディアはまだ少な
ことが重要だと感じる。
ことを検討している。字数制限がないという利点を
り組む方針だ。
く、弊社に強みがある地域である。 新聞の紙面と違い、インターネット上では、重大
共同通信の経済報道
なニュースとそうではないニュースが同じ大きさに
3つ目は、目的を明確にして発表を行ってほし
生かし、通常の紙面には掲載し切れないような深掘
い。単に事実を伝えるだけではなく、それによりど
りした企画を、企業と連携することで実現していき
のような効果や影響を見込んでいるかなどについて
たい。電話でも構わないので、経営トップや役員の
並べられ、記事の重要性がとても分かりにくい。そ
経済報道で重視していることは、大きく3つあ
踏み込んで説明いただけると、記者がニュースの価
インタビューにはぜひ積極的に応じていただきたい。
のため、価値のあるニュースを取捨選択しながら記
る。1つは、暮らしへの影響に対する意識だ。1つ
値を判断する際に役に立つ。発表文の工夫や、常日
●キーワードを意識した情報発信
事を提供していく必要性も日々感じている。
の事実が人々の生活にどのような影響を与えるの
ごろの記者とのコミュニケーションの段階から、そ
か、という視点を常に持つよう、記者に指導してい
うしたことを心掛けている広報は非常に強いと思う。
一方で、インターネットから情報を収集すること
現在、経済部で重視しているキーワードは、人
口減少と高齢化、日中関係、ROE
(自己資本利益
も、業務のひとつとなりつつある。弊社には、イン
る。また、分かりやすくニュースを伝えるために、
4つ目は、記者との信頼関係の構築に努めてほし
率)
、消費税増税などである。中でも特に、人口減
ターネット上でどのようなニュース、情報が大きく
難解な専門用語やシステム、経済の動向などは、で
い。特に、記者が特ダネやスクープを書こうとして
少と高齢化は地方にとって大きな問題であり、弊社
扱われているかを分析する、3名ほどのチームを置
きる限り平易な言葉に書き換えることを念頭に置い
広報に情報を確認する際のミスリードは避けてほし
の通年の重要なテーマとしている。また、女性の活
いている。分析によって得られた情報は、政治部や
ている。 い。広報の立場はこちらも重々承知しているが、例
躍推進やベアの動きなども取材対象となる話題だろ
経済部、社会部などの出稿部に連携され、その情報
をもとに各部が取材を行うこともある。
10
共同通信が求める情報
を持たない通信社としては、どちらか一方に軸足を
ての立場から大きく4つお伝えしたい。
通信社の役割
なくなり、誤報のリスクが高まる。
〔経済広報〕2015年1月号
2つ目は、地方への情報発信だ。弊社の加盟社は
えば、事実に対して「全く根も葉もない話」などと対
う。こうしたキーワードを常に意識した広報戦略を
地方紙や地方テレビ・ラジオ局が多く、
「東京発の地
応されると、情報の確認先として広報が信頼できな
実施することで、企業の対外発信力が強化される。k
方ニュース」の需要が非常に高い。全国紙では小さ
くなる。そうすると、次回から広報に情報を確認し
(文責:国内広報部主任研究員 鈴木恵理)
2015年1月号〔経済広報〕
11
グループ広報研究⑥
グループ広報研究⑥
現場を巻き込むインナーコミュニケーション
でグループの一体感を醸成
明治ホールディングス(株)
の広報部とホールディングスのIR広報部も出席
ホールディングスのIR広報部が管理しており、各
し、重要度や緊急度に応じて対応策を議論し、タイ
事業会社のページは事業会社ごとに統括している。
ムリーに経営層に伝わる仕組みとなっている。品質
さらに事業会社のウェブサイトには膨大な量の製品
に関するトラブルのメディア対応は、基本的には事
ブランドのページがあり、それらは各事業部と宣伝
業会社の広報部とし、製品回収の社告なども事業会
部が連携して制作している。
社名で出す場合が多いが、グループ全体に関わるリ
●ソーシャルメディアへの対応
スクや重要度に応じては、ホールディングスが前面
明治ホールディングスは経営統合と事業再編を経て、食品事業を担う
「
(株)明治」と薬品事業を担う
「Meiji
Seika ファルマ(株)」の2社を中核事業会社とするが、統合後に強化されたインナーコミュニケーションの取
活用したコミュニケーション活動には現在取り組ん
また、地域でのメディア対応には厳密にルールを
でいないが、事業会社の事業部や製品ブランドごと
設けて、誤情報の流出を防いでいる。トラブルの起
のページは設けられている。これらのページは事業
きた地域の拠点や工場に取材依頼が入った場合に
部ごとに運営されているため、ソーシャルメディア
は、現地の判断で対応せず、必ず事業会社の広報部
の使用ルールや注意事項の徹底に注力している。具
Meiji Seika ファルマは事業の特性もあって年間の
に連絡を入れることをルール化している。事業会社
体的には、事業会社の情報システム部門が主導し、
明治ホールディングスは、2009年4月に明治製
リリース件数がそれほど多くないことから、同社の
の広報部では、寄せられた問い合わせに対して、広
不用意な情報発信や炎上などのリスクに備えたルー
菓と明治乳業の経営統合により設立された。その
経営企画部内に広報担当兼務者を3人置いている。
報部で対応するか現地で対応するかを仕分けし、対
ルを徹底している。社員からの情報発信を含め、
後、2011年4月には競争環境や事業サイクル、諸
●社内の情報連携体制 り組みや、危機発生時のスピーディーな情報連携体制について聞いた。
事業再編と組織体制
の企業情報サイト管理なども行っている。
応が複雑な場合や特に注意が必要な案件は広報部が
ソーシャルメディアやインターネット上のトラブル
規制などが異なる「食品」
「薬品」それぞれの事業アイ
事業会社2社とホールディングスは、毎月1回開
すべてのメディアに対して一元的に対応することと
に対応したリスク対策を今後もさらに強化する必要
デンティティーを明確化することを目的に事業再編
かれる広報連絡会で、その月の活動結果と今後の予
している。現地に対応を依頼する場合でも、文面や
があると感じているという。
を行い、菓子・乳製品・健康栄養分野を中心とする
「
(株)明治」と医療用医薬品事業・動物薬・農薬を中
そ
ご
定を報告し、3社間で密に情報と課題を共有してい
情報開示の範囲などを具体的に指示し、齟齬が生じ
る。
ないよう徹底している。
●平時より危機意識とルールを徹底
ブランドスローガンと
グループ理念の実現に向けて
心とする「Meiji Seika ファルマ(株)」の2社を中核事
事業会社単独でリリースを行う際は、事前にホー
業会社とする体制で、さらなる統合効果の創出を目
ルディングスに情報を連絡する体制になっており、
グループ全体のリスク管理やコンプライアンスの
同グループでは、明治グループ理念体系として
指している。
また、明治傘下のグループ会社が、地域のメディア
方針は、ホールディングスと事業会社の総務部門が
「グループ理念」
「経営姿勢」
「行動指針」の3本柱に加
から取材を受ける際には、取材内容に応じて事業会
打ち出している。その方針に沿って、事業会社ごと
え「企業行動憲章」をホールディングスの経営企画部
社の広報部がサポートする。
に傘下グループ企業への落とし込みや、ルールの徹
で策定し、社員に向けて浸透施策を実施している。
底を図っている。
例えば、経営統合後から実施している
「motto活動」
事業再編に伴い、ホールディングスと事業会社の
広報の役割も整理した。ホールディングスにはIR
広報部を設置し、11人でIR活動、広報活動、C
また、明治においては現在グローバルな広報体制
SR
(企業の社会的責任)活動、グループ報制作を担
の構築が課題となっており、広報部と本社海外部門
危機発生時の情報伝達の経路については、対策委
という取り組みでは、年に数回、職場単位で経営理
当している。ホールディングスはIR活動を中心と
と現地子会社の3者における連携体制の整備やルー
員会で定められたものを、事業会社だけではなく、
念や経営方針に関するディスカッションの場を設け
し、広報活動はM&A(企業の合併・買収)や設備投
ルづくりを進めている。
傘下のグループ企業にも適用されるルールとして徹
ている。実施した内容は経営企画部にレポートで提
底し、意識を高めている。明治では毎年、役員と全
出することとなっており、経営理念を実現するため
国の部長とグループ企業の社長を本社に集め、危機
の職場ごとの取り組みが明確化され、社員の自分ゴ
資など、グループ全体の経営戦略や、適時開示に関
わるような案件に限られている。
スピーディーな対応を可能とする
危機管理体制
管理セミナーを開催している。そのほかにも、様々
ト化に繋がっているという。また、経営理念がどの
ディアリレーションを担うグループと、消費者との
同グループでは、危機発生時の情報伝達の経路が
な会議を通じて、グループ会社の危機意識の醸成と
程度社員に浸透しているかを定点観測するアンケー
ダイレクトコミュニケーションを担うグループに分
確立されており、スピーディーに対応することがで
リスクマネジメントのレベルアップに取り組んでい
トを、3年に1度実施している。
かれている。メディアリレーションは主に製品関連
きる体制を構築している。発生し得る主なリスクと
る。
の広報活動が中心だが、重要度に応じて、経営戦略
しては、製品に関する品質トラブルなどを想定して
に関わる案件にもホールディングスと連携しながら
いる。
事 業 会 社 の 明 治 の 広 報 部 は18人 の 体 制 で、 メ
12
に出る。
明治グループ全体としてはソーシャルメディアを
ウェブサイトの管理と
ソーシャルメディアへの対応
現場も巻き込む
インナーコミュニケーション
●グループ報『あ・うん』
対応している。また、消費者とのダイレクトコミュ
例えば、明治の工場で品質トラブルが発生した場
ニケーションは、食育支援活動として全国の小・中
合には、工場から明治の品質保証部に一報が入り、
学校向けの出前授業や、全国6カ所の工場で実施し
即座に事務局によって対策委員会のメンバーが招集
のページと各事業会社のページに分かれており、相
を発行し、全従業員約1万8000人とOB約3000人
ている工場見学の対応・管理、さらにホームページ
される。その対策委員会には、言うまでもなく明治
互にアクセスできる。ホールディングスのページは
に配布している。
『あ・うん』は2009年の経営統合後
〔経済広報〕2015年1月号
同グループのウェブサイトは、ホールディングス
同グループでは年4回、グループ報『あ・うん』
2015年1月号〔経済広報〕
13
グループ広報研究⑥
ANGLE
から発行している
報や社内の規定集が掲載されているほか、事業部ご
が、明治製菓と明
とのページも設けられている。また、毎月1回、社長
治乳業が「あうん
から社員に向けて直接メッセージが発信されている。
の呼吸で統合し
明治のイントラネットで特に好評なのは、
「ホット
た」、という意味
ニュース」という、地方の工場や拠点での取り組み
が込められてい
をタイムリーに紹介するコーナーだ。例えば、工場
る。ホールディン
で実施しているちょっとした取り組みや、イベント
グスのIR広報部
などの情報を掲載している。こうした情報は、広報
にいるグループ報
がエリアごとに任命した各地の編集委員を通じて収
編集者と各事業会
集されている。編集委員は通常業務に追加する形で
社の編集委員が連
ボランティアとして取り組んでいるが、拠点の責任
携し、企画会議を
者や上司にも編集委員の役割をきちんと説明し、理
経て制作されている。編集者が地方の工場や拠点に
解と協力を促している。そのため、広報部には年間
直接取材に行くことも珍しくないという。また、広
を通じ、地方からの情報が絶えず寄せられていると
報担当者の社内のネットワークを生かした情報の収
いう。
集にも努めており、広報部全体が関わってグループ
報の制作に力を入れている。
また、ダイバーシティ推進の一環として、
「CHEER
FOR WOMEN」というコーナーを新設した。これは
経営統合した当初は、事業会社の職場紹介や製品
人事部が立ち上げたページで、各地で活躍する女性
紹介など、お互いの理解を深めることを目的とした
社員にスポットを当て、隔月で2人ずつ紹介してい
内容が中心だったが、現在はグループ全体の経営方
る。こうした情報の発信を通して女性に声援を送る
針や食育支援活動をはじめとするCSR活動、海外
ことを目的としている。そのほか、出産・育児など
拠点やグループ会社の紹介に力を入れている。ま
のライフイベントに関わる会社の制度概要や、キャ
た、社員の職場や1日の仕事の流れなどを紹介する
リアアップのための講座情報、先輩女性社員の声な
企画も好評だ。
ど、女性にとって役に立つ情報を併せて掲載してい
2015年度からは、年2回海外版を制作する予定
となっている。これは、海外グループ企業のマネー
る。このような取り組みはMeiji Seika ファルマでも
実施されている。
T
OSS
(Teachers’ Organization
らも子どもたちが楽しく活動する様
of Skill Sharing)は、 教 育 技
子が目に浮かびます。今後は地域を
術を共有化しようという教育研究団
飛び出し、日本の素晴らしさを、世
体です。すべての都道府県に約600
界に向けて発信することでしょう。
サークルがあり、様々な活動をして
さらに、TOSSが全国的に取り
おやもりうた
います。参加者はおよそ1万人です。
組んでいるものに
「親守詩」がありま
教師としての授業技量を上げ、よ
す。親守詩は、子どもが五・七・五
り良い授業の構築を目指しながら、
の上の句を、親が七・七の下の句を
各地域で社会貢献活動にも取り組ん
作ります。
「 感謝」と
「親心」を表現す
でいます。
そのひとつとして「観光・まちづ
くり教育」があります。全国各地で
の実践活動が認められ、TOSSは
2014年10月1日に観光庁長官賞を
頂きました。第1回静岡大会からス
タートし、兵庫、神奈川、福島、千
葉、2014年は、第6回愛知大会と
各地の応援を頂きながら、子どもた
向山洋一
る世界にたったひとつの家族の短歌
(むこうやま・よういち)
TOSS 代表
1943年東京生まれ。1968年東京学芸
大学卒業。長年、小学校の教員を務
め、2000年3月東京都大田区立多摩
川小学校を退職。全国の小・中学校
の教室から成功した授業の具体的事
例や優れた教育技術・方法を集め、
教師相互の
「財産」として利用してい
く
「教育技術法則化運動」
(TOSS)
の代表を務める。主な著書に
『学校の
失敗』
『学級崩壊からの生還』
『いじめ
は必ず解決できる』
『取り戻せ!教育
力』
など。
です。最近の受賞作品はこんな感じ
です。
◆全国大会受賞
(子)お母さん やっぱりこの手が 大
すきよ
(親)あなたをたくさん だいた手だ
もの
◆山口県大会・安倍晋三賞
ジャー層が対象で、単に日本語版を英訳するのでは
イントラネットは、工場にいる社員もパソコンか
ちが自分たちの住むまちの良さを見
なく、海外に向けて独自の企画やコンテンツを準備
らアクセス可能となっているが、パソコン環境が整
つける活動を進めています。総務
し、情報を発信する予定だ。海外のグループ企業と
備されていない場合もある。そのため、工場によっ
省、文部科学省、農林水産省、観光庁をはじめ、全
のコミュニケーションをこれまでも課題としてきた
てはイントラネットの内容を掲示版に張り出してい
国各地の県教委、市教委、町教委に応援を頂き、そ
が、グループ報制作を通じて情報発信や経営理念の
るところもあるという。
れぞれから学習実践事例を称揚され教育賞が与えら
(子)お父さん 長生きしてね おねがいね
徹底を図り、明治グループのブランド力を強化する
●トップと社員のコミュニケーション
れています。
(親)そろそろ禁煙 してみようかな
各事業会社の経営層は、イントラネットでメッ
折しも、地域の活性化が日本の方針にもなってい
セージを発信するほか、フェース・ツー・フェース
ます。教育現場で、子どもたちが自ら地域の良さを
イントラネットはホールディングスと事業会社2
のコミュニケーションにも積極的に取り組んでい
発見し、発信し、交流しています。
社それぞれのものを設けている。ホールディングス
る。具体的には、若手社員とのディスカッションや
第6回大会「観光・まちづくり教育賞」の受賞作品
のイントラネットはホールディングス内での情報共
懇親会を実施しており、今後も継続していく予定
は、総務大臣賞は
「自分のまちが大好き! 発信大好
有を主目的とし、各事業会社のリリースや人事情報
で、社内の活発なコミュニケーションの促進に取り
き! とよた子ども観光大使」
(愛知)、文部科学大臣
などを掲載している。
組む方針だ。
方針だ。
●イントラネットによるタイムリーな発信 k
事業会社のイントラネットは、各社が制作してい
る。明治のイントラネットでは、製品のリリース情
14
TOSSが取り組む
社会貢献活動
〔経済広報〕2015年1月号
賞は「写真文章俳句で世界遺産【知床】を発信しよう」
(北海道)
、観光庁長官賞は
「ゆるキャラにアピール
(文:国内広報部主任研究員 鈴木恵理)
させるぞ! 福井県!!」
(福井)でした。タイトルか
(子)お母さん ケンカしてても 話し
たい
(親)同じ気持ちで 思っているよ
◆山口県大会・向山洋一賞
子育てがよく話題に上りますが、日本の素晴らし
い伝統的な子育ては脈々と受け継がれています。全
都道府県で取り組んでいる親守詩は、親子の絆を深
めるきっかけとなることでしょう。
TOSSはこのほか、
「郵便教育」や
「五色百人一
首」にも取り組んでおり、今後は、2019年ラグビー
ワールドカップ、2020年東京オリンピック・パラ
リンピックに向けても活動していきます。
k
2015年1月号〔経済広報〕
15
経済広報センター活動報告
経済広報センター活動報告
「福島医療ケアサービス都市」
プロジェクト現地報告
~未来都市モデルプロジェクト~
経団連は、全国の11都市・地域に、日本企業が有する、医療、農業、環境・エネルギーなどの分野の最先
端の技術を結集し、革新的な製品、技術、システムを開発、世界に先駆け社会的課題の解決を目指す「未来都
市モデルプロジェクト」を実施している。経済広報センターは、同プロジェクトの理解促進を図るため、各地
ひのえまたむら
で見学会などを開催してきたが、
「福島医療ケアサービス都市」
(福島県南会津郡檜枝岐村)
プロジェクトは、都
石本浩一校長は
「確かにICTは教育の幅を広げ、
各家庭のテレビ電話のモニターで毎日の変化を確認
生徒の学習意欲も向上した。しかしICTはあくま
することができる。取材時、健康データを登録した
でツールである。従来の紙を使った宿題もテストも
住民に、保健師が直接テレビ電話をかける場面に立
ある。教師と生徒が面と向かい合った授業も必要と
ち会うことができた。保健師は住民の顔色、表情や
考え、黒板に教師が自らの手で字を書く授業も行っ
住民の後ろの家の様子などを確認することで総合的
ている。ICTの活用の目的はITリテラシーの向
な健康状態を把握し、住民は保健師と健康データに
上ではなく、生徒の心を育てる授業や人間としての
ついて話し合い、アドバイスを受け、自らの健康状
教育の助けにすること」と言う。
態に対する理解を深めていた。血糖値も家庭で簡単
に測定でき、データ登録できるシステムが導入さ
れ、運用されている。
プロジェクトの成果と今後
本プロジェ
市部からの遠隔地である山深い村での事業であるため見学会の開催に適していないことから、当センター事
現在この「地域健康支援ネットワーク」に登録して
ク ト は、 医 療
いる住民は68人で、檜枝岐村のおよそ1割に当た
ケアサービス
務局が現地を取材した。
る。毎日の変化が目に見えて分かるため、体操や
として保健セ
当日は、日本電信電話(株)研究企画部門の是川幸士部長と林真理子課長、東日本電信電話(株)ビジネス&
ウォーキングなどの運動への動機付けに繋がり健康
ンターを中心
オフィス営業推進本部福島法人営業部門の石田秀樹主査の案内により、檜枝岐村役場、保健センター、檜枝
意識が高まっている。歩くことで血圧が落ち着いて
に進められた。
岐村立檜枝岐小・中学校などを取材した。
きた、体重が低下したなど、具体的な健康増進が実
光ネットワー
際に表れ始めている。
「多くの方が歩数計などを使う
クは各家庭を
ようになったので、健康データに登録する方をさら
結んでいるた
どかかる。村としては「若年層にも魅力的で、高齢
に増やしたい。今後は握力を測定し、システム上で
め、その活用はテレビ電話による回覧板やICT教
福島医療ケアサービス都市
プロジェクトの成果を語る星光祥村長
者も安心して暮らせる」
地域づくりが必要であった。
データを管理し筋力の状態、変化についても把握し
育、さらには防犯・防災システムにまで広がってい
「福島医療ケアサービス都市」プロジェクトは、医
東日本電信電話では、檜枝岐村の光ネットワーク
て住民の健康支援をさらに充実させたい」と檜枝岐
る。星光祥村長は
「プロジェクトによる村の一番大
療・介護の分野で、住民の健康増進、健康な高齢者
敷設などの過程で村の現状を把握し、ICTによっ
村役場住民課の橘まゆみ主幹(保健師)は語る。
きな変化は、住民が目に見えて健康づくりを始めた
を増やすことで医療費削減を目指すとともに、都市
て村の取り組みへの支援を考え、経団連の「未来都
部と同等の医療提供が可能な仕組みづくりやICT
市モデルプロジェクト」実証実験地として檜枝岐村
(情報通信技術)を活用した魅力ある地域づくりを推
進している。
を推薦、本プロジェクトの実施に繋がった。
地域健康支援ネットワークの視察
ICTのさらなる活用例(ICT教育)の視察
ことである。保健師が健康づくりの教室を始める
と、通っている方が仲間を誘う。その映像をテレビ
檜枝岐村では、ICTを活用した魅力ある地域づ
電話で流すと、それを見て歩く人が増えるという流
くりの一環として光ネットワークを教育にも活用し
れも生まれ、村民が見る見る健康になってきたとい
ている。具体的には学校の教室すべてに電子黒板と
う実感がある」と語る。村長自身も自宅と役場を毎
での健康相談「地域健康支援ネットワーク」、ICT
「地域健康支
デジタル教科書を備えており、小学校3年生以上の
日歩いて健康になった実感があるとした上で、
「これ
を活用し村にいながら遠隔地の専門医から診療支援
援ネットワー
児童に1人1台のタブレット端末を配布して授業や
までICTを活用して病気にならない健康な身体づ
が受けられる「遠隔サポート診療」、テレビ電話に災
ク 」の 拠 点 で
自宅学習に使用している。また、中学校では、学校
くりに取り組んできたが、今後は、介護にも活用し
害情報や村からのお知らせが届く「光みんなの回覧
ある保健セン
教師による授業だけでなく、英語と数学の授業の一
ていきたい。さらにICTによる見守りをすること
板」などを2011年度から2013年度の3年間にわたっ
ターは檜枝岐
部を大手通信教育会社に委託し、ICTを使ったラ
で防災にも生かし、より安全な滞在を観光客に提供
て実施した。
村の村役場に
イブ授業を実施している。このライブ授業は一方向
したい」と話していた。
隣 接 し、 I C
の授業ではなく双方向の授業であり、教師と生徒間
プロジェクトを進めてきた日本電信電話として
Tの活用によ
のオンデマンドの会話が可能である。このようなI
も、檜枝岐村における光ネットワークを使ったIC
テレビ電話と血圧計などの計測器
CTの活用に
Tの実証実験の意義は大きい。
「
『福島医療ケアサー
積の約98%を林野が占めている。尾瀬国立公園の福
を支援している。保健センターと各家庭はテレビ電
より生徒は勉
ビス都市』プロジェクトを通じて、檜枝岐村で先行
島県側の玄関口で、東北最高峰の燧ケ岳や会津駒ケ
話で繋がっていて、住民は体重などの健康データを
強意欲を刺激
的なICT活用のトライアルを進めてきた。檜枝岐
岳など2000メートル級の山々に囲まれた山村であ
簡単に登録することができる。登録された健康デー
さ れ、 授 業 に
村の皆さまの多大なご協力もあり、成功を収めるこ
り、豪雪地帯としても知られる。また、65歳以上
タは住民と保健センターの保健師、診療所の医師で
対 す る 興 味・
とができた。今後は、さらにサービスの拡張に努め
が人口の約3割
(2010年 国勢調査結果)を占め、高
共有される。
関心が高まっ
るとともに、このノウハウを活用して予防・介護
サービスを各地で展開していきたい」と日本電信電
特に、テレビ電話などの情報端末を利用した遠隔
檜枝岐村の背景とプロジェクト
檜枝岐村は、福島県の西南端に位置し、その面
ひうちがたけ
16
よう工夫されている。登録データはグラフ化され、
り住民の健康
齢化が著しい。村内には内科医師が1名常駐する村
この仕組みを実現するため、簡単に測定できる歩
て い る。 檜 枝
営の診療所が1カ所あるが、それ以外の診療には近
数計、体組成計、血圧計が集会所や家庭に導入さ
岐村立檜枝岐
隣の総合病院、専門病院まで車で往復2~4時間ほ
れ、通信装置のボタンひとつでデータが登録できる
小・ 中 学 校 の
〔経済広報〕2015年1月号
話の是川部長は語っていた。
ICTを活用したライブ授業
k
(文:国内広報部主任研究員 磯部 勤)
2015年1月号〔経済広報〕
17
9月6日~
5月17日~6月15日
10月27日
NEWS
Keizai Koho Center News
9
/
7
9
/
9
る
「 第59回 最 新 環 境 教 育
が東京都千代田区で開催され、約
業 人 派 遣 講 座 」を 実 施 し
社会部に所属する記者など60名、
県川崎市)で開催し、社会広聴会
術院創造理工学部社会文化領域教
た。
( テーマ:
「日本企業の国内外
企業側からは広報実務担当者など
員20名が参加した。
授博士)
における利益獲得競争の最前線~
123名が参加した。
オリエンテーション」
、講師:高
同社および川崎工場の概要につ
同通信社の組織・取材体制と企業
いて説明を受けた後、川崎工場で
報道」をテーマに講演した。
( 詳細
洗剤などの製造ラインを間近で見
9
/
30
は、本誌10ページを参照)
学した。
秋号(No.60)』を発行した。
「 東京
社会広聴活動を取りま
瀬 浩一 早稲田大学 商学学術院教
とめた『ネットワーク通信
授)
10
/
8
早稲田大学商学部で「企
業 人 派 遣 講 座 」を 実 施 し
た。
( テーマ:
「日本企業の国内外
「生活者の企業施設見学
契機とした観光立国に関するアン
10
/
3
会」を竹中工務店の竹中大
ケート」調査結果や、コスモ石油、
のケビン・クロリッキ日本編集局長、
工道具館
(兵庫県神戸市)
で開催し、
協和発酵キリンにおける
「企業と
ウィリアム・マラード同副編集局長
社会広聴会員23名が参加した。
生活者懇談会」の模様などについ
を招き、企業広報担当者と
「ロイ
「第105回事業企画委員
竹中大工道具館の概要について
て掲載した。
ター日本編集局長との懇談会」を
10
/
8
開催した。参加者は約40名。
施した。
( テーマ:
「科学技術特論
オリンピック・パラリンピックを
日本経済新聞に「将来を
担う子どもたちのために」
と題する「意見広告」を掲載した。
80名の教員が参加した。
9
/
26
ト ム ソ ン・ ロ イ タ ー・
における利益獲得競争の最前線」、
マーケッツロイター編集局
講師:宮芝 望 住友化学 健康・農
業関連事業業務室部長)
東京工業大学・大学院
8~ 12日の日程で、世
9
/
18
会を開催」(委員長:内田
説明を受けた後、館内を見学し
界的に影響力のある英国
章 東レ常務取締役)を開催し、米
た。館内は、
「歴史の旅へ」
「棟梁に
メディアの対日理解促進を目的と
国企業広報調査の派遣や欧州研究
学ぶ」
「道具と手仕事」
といった7
9
/
30
する
「英国ジャーナリスト招聘プ
者招聘プログラムの実施など5件
つの展示構成となっており、参加
業人派遣講座」を実施した。
( テー
10
/
7
ログラム」を実施し、12日にはシ
について検討し、了承された。ま
者は各コーナーで、大工道具の種
マ:
「21世 紀 の 企 業 の 挑 戦 ~ ブ
業人派遣講座」を実施した。
( テー
ンポジウム
「欧州・英国経済の実
た、2014年度企業人派遣講座
(後
類や仕組み、使い方などを、各時
ロードバンド時代のビジネス戦略
マ:
「21世 紀 の 企 業 の 挑 戦 ~ ブ
情と日本」
を開催した。
期・秋学期)の内容など7件につ
代の背景も交えながら学んだ。ま
~ガイダンス」
、講師:小澤 太郎
ロードバンド時代のビジネス戦略
『サンデー・テレグラフ』
紙、
『フィ
いて報告した。
た木工室で、宮大工による鉋削り
慶應義塾大学 総合政策学部教授)
~情報通信産業のトレンド」
、講
10
/
9
師:清水 憲人 情報通信総合研究
査結果を公表」と題する
「意見広
テレビ東京報道局
「ガイ
所 グローバル研究グループ主任
告」
を掲載した。
アの夜明け」チーフ・プロ
研究員)
9
/
8
ナンシャル・タイムズ』
紙、
『タイム
が、
「ユーロ圏経済の過ち―日本の
轍を踏むか」
「日本の食品・飲料業
シェーデ教授の来日の機会を捉
界の海外ビジネスチャンス」
といっ
え、講演会
「日本のかっこいい経
たテーマでそれぞれの知見をもと
営」
を開催した。参加者は約100名。
議論した。参加者は約80名。
〔経済広報〕2015年1月号
学部・環境情報学部で「企
米カリフォルニア大学
体験し、木を削った際の香りや大
サンディエゴ校のウリケ・
工道具の面白さなどについて理解
10
/
1
を深めた。
デューサーの野口雄史氏とテレビ
9
/
25
で「企業人派遣講座」を実
~エネルギー・環境技術の最先
慶應義塾大学総合政策
端と将来展望~ガイダンス」
、講
学部・環境情報学部で「企
師:奥野 喜裕 東京工業大学 大学
院総合理工学研究科教授)
マスコミと企業・団体
10
/
10
日本経済新聞に
「新卒採
用に関するアンケート調
東京工業大学・大学院
9 早稲田大学理工学部で
/
29「企業人派遣講座」を実施
よるトーク形式の講演会「『ガイア
10
/
7
の広報実務担当者との懇
施した。
( テーマ:
「科学技術特論
の夜明け』の作り方」を開催した。
談の場として
「広報実務担当者と
~エネルギー・環境技術の最先端
「企業と生活者懇談会」
した。
( テーマ:「21世紀における
参加者は約100名。
マスコミとの懇親会」
を開催した。
と将来展望~自動車業界における
を花王の川崎工場(神奈川
科学技術と社会~情報通信技術の
マスコミ側からは新聞、経済
エネルギー・環境先端技術」
、講
に発言した後、日本経済新聞の菅
野幹雄経済部長をモデレーターに
かんな
慶應義塾大学総合政策
の実演を見学したほか、鉋削りを
9
/
18
ズ』紙の有力ジャーナリスト4 名
18
誌、テレビ局の経済部、文化部、
東京会場)
」を開催し、共
同通信社の谷口誠経済部長が
「共
9
/
9
早稲田大学商学部で「企
「企業広報講座
(第3回
当センターが後援す
(CO₂等)に関わる教育セミナー」
師:綾部 広則 早稲田大学 理工学
10
/
1
展望~オリエンテーション」
、講
東京アナウンサーの塩田真弓氏に
で「企業人派遣講座」を実
2015年1月号〔経済広報〕
19
メディアに聞く
9月6日~
5月17日~6月15日
10月27日
NEWS
Keizai Koho Center News
10
/
15
早稲田大学商学部で「企
た。
( テーマ:「日本企業の国内外
業 人 派 遣 講 座 」を 実 施 し
における利益獲得競争の最前線」
、
た。
( テーマ:「日本企業の国内外
講師:田中 利弘 JFEスチール
■宣伝会議の事業はどのようなものか。
における利益獲得競争の最前線」
、
経営企画部企画室長
(理事)
)
東 月刊
『宣伝会議』は、1954(昭和29)年に創刊さ
講師:芝山 浩二 住友商事 青果流
通事業部部長)
れた。まだ戦後の混迷下、経済成長に向けて社会の
10
/
22
東 英弥(あずま・ひでや)
東京工業大学・大学院
中でいち早く、宣伝・広告をはじめ、マーケティン
で
「企業人派遣講座」を実
グ的な考え方、そして広報の重要性を欧米から取り
10 早稲田大学理工学部で
/
20「企業人派遣講座」を実施
施した。
( テーマ:「科学技術特論
入れて考えるケースを誌面で紹介し、同時に大手企
の誌面づくりと同時に、全国での講座に大変重要性
~エネルギー・環境技術の最先端
10
/
13「企業人派遣講座」を実施
した。
( テーマ:「21世紀における
と将来展望~エネルギーと気候変
業やメディア、協会、団体と、研究会などを共同で
を感じている。広報に関わる情報は、大手のみなら
科学技術と社会~情報通信技術の
動」
、講師:中山 寿美枝 電源開
行った歴史がある。その2年後の1956年には、そ
ず、中堅・中小の企業においても、ソリューション
した。
( テーマ:
「21世紀における
展望~ソーシャルメディア」
、講
発 経営企画部審議役)
の職業すらまだ知られていなかった日本で、
「コピー
と共に、企業が社会の一翼を担う位置付けを検討・
科学技術と社会~情報通信技術
師:刀禰 太輔 カプコン 第二開発
ライター」
講座を開いた。
「ネーミング」
という言葉を日
検証するものとして注視される。広報の基本的な考
の展望~ウェアラブル端末」、講
部第二開発事業管理室室長)
本に紹介したのは、創業者の久保田孝氏である。
え方、ケースを分析して落とし込むこと、広報の根
師:大野 栄嗣 トヨタ自動車 環境
部担当部長)
早稲田大学理工学部で
師:竹林 一 ドコモ・ヘルスケア
代表取締役社長)
10
/
14
10
/
21
10
/
27
「インナーコミュニケー
ション」をテーマに「企業
慶應義塾大学総合政策
広報講座
(第4回東京会場)」をK
学部・環境情報学部で「企
DDIホールで開催した。
慶應義塾大学総合政策
業人派遣講座」を実施した。
( テー
アステラス製薬の芦沢祐子広報
学部・環境情報学部で「企
マ:「21世 紀 の 企 業 の 挑 戦 ~ ブ
部コミュニケーショングループ課
業人派遣講座」を実施した。
( テー
ロードバンド時代のビジネス戦略
長が
「アステラス製薬のインナー
マ:
「21世 紀 の 企 業 の 挑 戦 ~ ブ
~ライフネット生命の挑戦 ~正
コミュニケーション」について、
ロードバンド時代のビジネス戦略
直にわかりやすく、安くて、便利
ソニーの寺尾徳郎広報・CSR部
~NTTドコモのスマートライフ
に~」、講師:出口 治明 ライフ
ゼネラルマネージャーが、
「ソニー
戦略~ともに、生きるをデザイン
ネット生命保険 代表取締役会長
グループの新たな付加価値を創出
する~」
、講師:中山 俊樹 NT
兼CEO)
するインターナルコミュニケー
Tドコモ 取締役常務執行役員ス
マートライフビジネス本部長ライ
フサポートビジネス推進部長)
ションの取り組み」のテーマで講
10
/
22
早稲田大学商学部で「企
業 人 派 遣 講 座 」を 実 施 し
PR・IR・危機管理
2月号
定価:1300円
(税込)
編集・発行
株式会社宣伝会議
購読申込
月刊「広報会議」読者サービスセンター
TEL:03-6418-3328
インターネットからもお申し込みいただけます。
http://sendenkaigi.com/
20
広報は未来を創る原動力
〔経済広報〕2015年1月号
演した。参加者は67名。
k
(国内広報部 岡本清美)
[巻頭特集]
「攻め」
の広報・PR 実践企業を大調査
2015年「広報力」で
企業は変わる
[海外レポート]
米国・アジアパシフィックの潮流を読む
グローバルPRビジネス 大予測
[シリーズ]
デジタル広報再入門
顧客と「対話」する ソーシャルメディア活用
事業構想大学院大学 理事長
(株)
宣伝会議 会長
私が宣伝会議を引き受けたのは、1993年で、今
幹に関わる企業理念(哲学)の理解と社会視点、生活
から22年前。マーケティングとクリエイティブを
者視点での発信は、社会での企業の存在価値や役割
あらゆる業種・業態、そして全国に広げるという目
を定めるからだ。広報は事業およびプロジェクトデ
標を掲げ、月刊『宣伝会議』と先のコピーライター養
ザインそのものであり、未来を創る原動力だ。
成講座を中心に、大阪、名古屋、福岡、札幌、仙
■文部科学大臣の認可を得て「事業構想大学院大学」
台、広島に展開し、現在では定期的に沖縄でも、各
を設立したと聞いたが。
講座をはじめ、セミナー、フォーラムを実施してい
東 幾つかの会社を創業し、引き継ぎ、マーケティ
る。宣伝会議を引き受けるに当たり、複雑化する広
ングおよびクリエイティブの編集・出版、広報の知
告界(企業・メディア・広告業・クリエイター)を月
識も得る中で、多様な主体が社会の一翼を担いなが
刊
『宣伝会議』で網羅するのは難しいのではと考え、
ら継続していくには、新規事業を開発し、同時に社
クリエイティブの月刊
『ブレーン』
、セールスプロ
内外に広報を通してコミュニケーションを充実させ
モーションの月刊『販促会議』、企業のコミュニケー
ていくことの重要性を感じた。そのために経営資源
ション活動の要となる広報活動のための月刊
『広報
を見つけ出し、ビジネスモデルを作成して実行で
会議』
、社会そのものを見つめ、未来を考える哲学
きる人材が必要と考え、2012年、東京・表参道に、
誌の
『人間会議』『環境会議』を創刊した。これによ
事業構想大学院大学を開学した。修了生は早速、新
り、マーケティングコミュニケーションの全体を網
規事業を成功させたり、経営トップに就任するな
羅する、広告、広報、販促、クリエイティブのメ
ど、手応えを感じている。 ディアが揃い、メディアによる情報発信と同時に各
誌と連動した講座を、幅広い企業、行政、自治体、
組織などに提供できるようになった。
■広報の専門誌『広報会議』を発行する狙いは。
東 デジタル化、グローバル化が進行し、ますます
複雑化する現代社会では、社会と企業、人と企業の
関係を築き、維持、発展していくための広義の広報
が必要不可欠であり、特に月刊『広報会議』は、雑誌
k
(聞き手:国内広報部長 佐桑 徹)
宣伝会議会長。学校法人東教育研究団 事業構想大学院大学
理事長。博士
(商学)
。1978年からこれまでに11社起業し、
現在(株)宣伝会議を含む12社を経営。事業の傍ら、東京大
学大学院新領域創成科学研究科などで学び、理論と実務の
融合を実践する。2012年より事業構想大学院大学理事長。
日本広報学会理事、地域活性学会理事など公職多数。著書
に
『統合型ブランドコミュニケーション』
(早稲田大学出版、
2008年度日本広報学会 教育・実践貢献賞受賞)
ほか。
2015年1月号〔経済広報〕
21
広報管理職講座5
技 術 広 報
研 究
東レ(株)
3
研究・技術開発力を戦略的広報で伝える
東レでは技術に関する広報活動を、研究・技術開発の戦略的広報と呼んでいる。同社のグローバルに展開
する事業を支える戦略的広報はどのようなものか。
危機管理と
広報管理職
同社では「技術センター」が研究本部、エンジニアリング部門、開発担当部門および生産本部の技術関係部
署などを横串で束ねて、分断されていない「ひとかたまりの組織」として総合力を発揮し、全社の研究・技術
篠崎良一(しのざき・りょういち) 開発体制を推進している。
PR総研 所長/広報の学校 学校長
者(IR室兼務者)が記者の反応を見ながら、研究
戦略的広報を始めた経緯
者・技術者が話した内容を理解しやすい表現に置き
東レが研究・技術開発に関して戦略的広報を強く
意識し始めたのは、2002年4月にスタートした経
している。
営改革プログラム「プロジェクトNew TORAY21」
(N
戦略的広報の特徴
T21)に伴う研究・技術開発の改革に着手したころ
だ。
広報管理職の真価・実力が試されるのは、危機管
理の現場である。重大な危機が発生した時の対応、
とりわけメディア対応に失敗すれば、ネガティブ報
道によるレピュテーション悪化という重大な二次被
同社では年度の初めに年間の広報計画を策定して
当時の役員が、東レは研究・技術開発に立脚した
いる。昨年度の積み残し案件も含め、本年度に新た
い。メディアとの強いネットワークがあり、考え方
を理解している広報管理職こそが最も正しく、客観
的、冷静に状況が認識できる。危機時は、法律より
も顧客や従業員、行政、地域社会といったステーク
ホルダーを重視しなければならないことも多い。
重要なのはリスク評価と対策
危機管理で最も重要なのは問題が発生した時に、
害を派生させ、企業の存続すら危ぶまれる状況に陥
そのリスクがどれほど重大か、どこに波及し、どう
る事例が後を絶たない。今の時代は、危機管理の失
拡大していくのかというリスクの評価と波及予測で
敗で会社がつぶれる時代である。
ある。ここでミスをすると必ず失敗する。このリス
ク評価をするのに最適かつ優れた能力を持つのが広
会社であり、戦略的なIR・広報をする上でも技術
に広報すべき案件について研究・技術開発担当部署
重大リスクの発生時に最も重要なことは、ネガ
の分かる人材が当該組織に必要と考え、2002年10
からの提案を募り、各案件について重要度などを吟
ティブなメディア報道からいかに自社のブランドを
月より研究・開発企画部からIR室に兼務者を出
味し、早く発表すべき、あるいは逆に発表時期を遅
守るかである。多くのステークホルダーが事故・事
リスク評価の次のプロセスは対策を考えることだ
し、戦略的広報を開始した。以来、IR室にとどま
らせるべきなど、タイミングについても計画し、期
件を知るのはメディアの報道経由である。問題なの
が、危機管理でよく失敗するのは、自社にとって楽
らず広報室、宣伝室とも連携し、トータルで東レの
初に申請する。
は、強い企業批判の報道は単にブランドを毀損する
観的な状況だけを想定した甘い対策しか考えない
だけでなく、他のダメージをさらに拡大させてしま
ケースだ。思いも寄らない危機が発生した時、人は
うことだ。危機発生後、スピーディーで適切な対応
パニックに陥り、冷静で客観的な判断ができなくな
ができず後手後手に回った結果のメディアのバッシ
る。集団的心理として「悪く考えたくないから考え
研究・技術開発力を発信している。
戦略的広報担当者は、研究本部の毎月の会議に出
席し、広報計画の進捗状態や新たな案件についての
誰に向けての戦略的広報か
広報活動の進め方などを議論している。
報である。
ング報道が、被害者の訴訟提起や、社長の辞任、不
ない」「自分に都合よく楽観的に考える」という流れ
同社では、戦略的広報活動の主な対象は全てのス
また年度末に研究本部では、戦略的広報を評価
買運動などを引き起こし、評判だけでなく、物理的
をつくってしまう。リスク評価をするポイントは、
テークホルダーと考えているが、新聞(一般紙、専
し、優れた広報案件を
「戦略的広報賞」
として本部長
ダメージがさらに大きくなってしまう。企業は問題
世論をつくるメディアの見方に立って報道の流れを
が表彰している。
を起こしたことよりも、起こした後にどう対応した
読むことだ。企業に影響を与えるステークホルダー
これは対象年度の広報案件の中から研究成果の革
かで非難される。危機時は、問題発生に対していか
の動きを予測することも必要だ。例えば、監督官庁
新性などが正しく掲載されている記事を総合的に判
に企業が必死に適切な対策を迅速に取っているかを
や地元自治体がどう動くか、工場事故の場合、近隣
積極的にメディアに発表することが不可欠だ。だ
住民はどういうアクションを取るか、被害者が集団
が、こうした局面で社内からは法的リスク重視でひ
訴訟を提起するかなどである。こうした動きがメ
たすら口を閉ざして、嵐をやり過ごそうという声が
ディアの報道に大きな影響を与えるからだ。常に外
出てくる。広報管理職のセンサー・ナビゲーター機
部のステークホルダーのアクションを予測した上
能が最も必要とされるのはこうした局面である。
で、それを踏まえて自社の行動を考えなければ、危
門紙)とテレビはその影響度の大きさから特に注力
している。
記者発表や取材対応時の表現のレベルは、一般紙
やテレビに対しては、高校生が理解できる程度まで
断して賞を授与する仕組みである。
同社技術センター企画室主幹兼IR室主幹の松田
内容をかみ砕くようにしている。
業界紙などの専門紙相手の場合は、記者の理解度
良夫氏は「このような賞を設けることで、加点主義
を勘案しながら専門用語を用いて、専門家に特化し
による社員のモチベーションの向上だけでなく、関
た情報を中心に提供している。
係部門の戦略的広報への関心の喚起、そして戦略的
そしゃく
一般紙でも理系出身の記者もいるので、咀嚼能力
が高い記者には専門用語の平易な言葉への変換を任
せるが、そうでない場合は、上述の戦略的広報担当
22
換えて話すといったフォローも欠かさないよう配慮
二次被害を起こさない
を社内に置いている人はそのこと自体が分からな
〔経済広報〕2015年1月号
「会社の常識は社会の非常識」といわれるが、軸足
機管理は失敗する。 k
広報の重要性の理解促進にも役立っている」
と語る。
k
(文:国内広報部主任研究員 磯部 勤)
早稲田大学卒。出版社を経て、共同ピーアール入社、取締役、常務取締役、取締役副社長を経て現職。企業・団体の広報・危機管理
コンサルティング、広報・危機管理研修担当。2003年5月「広報の学校」を開校。2013年1月「PR総研」を設立。著書に『実戦企業広
報マニュアル』
『会社を守る!もしものときのメディア対応策』
『広報・PR概論』
(共著)
『広報・PR実務』
、
(監修)
など。
2015年1月号〔経済広報〕
23
企業広報ニュース
企業広報ニュース
住友理工は、社名変更の2014年10月1日に
PR会社の共同ピーアールが全国の働く男女460人を対象に行った、企業の情報漏えい対策
合
合わせ、グループ初となる統合報告書
『アニュ
広 報
報 告 書
アルレポート 2014』を発行した。日本語、英
トピックス
統
語、中国語の3カ国語に対応し、冊子での配
ポレートサイトでも公開している。
住友理工は10月1日付で、「東海ゴム工業株
式会社」から「住友理工株式会社」へと社名を変
更。既存事業の拡充はもちろん、新市場・新
領域への進出を加速させ、2020年代初頭の連結売上高1兆円の達成と、その先の持続的な成
長を後押しする強固なブランド力の創出を推し進めており、今回のアニュアルレポートもその
一環として位置付けている。
本レポートには、投資家の皆さまを中心とした幅広いステークホルダーに対し、投資活動に
資する有益な情報を提供するため、財務情報に加え、社名変更の意義をトップ自らの言葉で語
る「トップメッセージ」や、
「高分子材料技術」
「総合評価技術」
をコアコンピタンスとし、“Global
Excellent Manufacturing Company”を目指す
「ビジネスモデル」など、多くの非財務情報を掲
載。当社グループの今を伝えるツールとなっている。
適時に適切な情報を開示する当社の姿勢を示すものとして、2015年度も、より質の高い情
報を提供し、ブランド価値向上への取り組みを続けていく所存である。 k
共同ピーアール「企業の情報漏え
い対策に関するアンケート調査」
住友理工がグループ初の
統合報告書を発行
布のほか、日本語版、英語版についてはコー
(住友理工
(株)
広報部長 岩代二朗)
教育支援
大学に派遣する「企業人派遣講座」を開設している。1986年度に早稲田大学国際部
(現・国際教
後期・秋学期は、早稲田大学商学部、早稲田大学基幹理工学部・創造理工学部・先進理工学
部、慶應義塾大学総合政策学部・環境情報学部共通
(京都大学、広島市立大学に同時配信)
、東
京工業大学大学院共通で開講中だ。
大学側や学生からは、日本経済や企業の実態、技術の最先端に触れることができる貴重な機
会であると高い評価を得ている。また、企業側の講師からも、学生に産業や企業について理解
してもらえる良い機会であるとの前向きな声が寄せられている。
産学連携による本講座は、大学と企業とが出合い、産業界で活躍できる人材を育てる場のひ
とつとして重要な意義があり、今後も期待に応えるため、多様な
「人材」
と
「企業」
が交流できる
機会の提供を目指す考えだ。 k
〔経済広報〕2015年1月号
『間メディア社会の
〈ジャーナリズム〉
コマツ、ソニーなどの企業人による講義が実施された。
ソーシャルメディアは公共性を変えるか』
大学と企業の交流を
深める「企業人派遣講座」
2014年度は、前期・春学期に、早稲田大学国際教養学部、慶應義塾大学商学部、同志社大
学経済学部、横浜国立大学大学院都市イノベーション学府で、東レや三菱自動車、野村HD、
(国内広報部主任研究員 杉山佳子)
24
Book
養学部)で開始して以来、延べ10大学で開催し、これまで多彩な企業人たちが、特色ある事業
などについて最新のトピックスを交えながら学生たちに語り掛けてきた。
回答者は、「経営者・役員」
「部長・課長・係長」
「一般社員・契約社員・派遣社員」の3つの層
に分類されている。
「会社の情報漏えい対策として重要と思うのは」という問い(複数回答)に対し、全体の1位は
「一人ひとりの意識」
(72.8%)で、ほかの項目を大きく引き離した。2位以下は、
「情報管理シス
テム強化」
(48.7%)
「
、業務用PCの管理」
(39.8%)
「
、サイバー攻撃対策」
(34.1%)
「
、USBなど外
部メモリの管理」
(32.8%)、
「モバイル端末の管理」
(24.3%)とハード・設備面の回答が続く。そ
れ以降は、
「経営者からの意識付け」
(18.0%)、
「マニュアルや社内報」
(18.0%)、
「職場の勉強会」
(17.6%)、「外部委託先の管理」
(16.3%)となっている。2位以下の各項目について、「経営者・
役員」層は全体に比べ10ポイント以上低い回答もあり、ほかの層と大きな開きがある。
会社の情報漏えい対策について「非常に心配」「やや心配」と答えた比率は、「部長・課長・係
長」が62.7%と最も多く、
「一般社員・契約社員・派遣社員」が45.8%、
「経営者・役員」が45.3%
の順となった。
「経営者・役員」は、
「全く心配ではない」という回答が12.0%、
「あまり心配ではな
い」
「関心を持ったことがない」を加えた比率も54.7%と、3層の中で最も多く、この調査結果
から、同社は、「組織の中で相対的に、やや楽観視している可能性が明らかになった」と指摘し
ている。 経済広報センターは、次世代を担う大学生に最新の経済動向や産業の実態などを、実感を
もって理解してもらう目的で、企業経営者や第一線で働く経営幹部、技術者などを講師として
と従業員の不安に関するアンケート調査の結果が昨年10月発表された。
k
(国内広報部主任研究員 伊藤貴範)
ソーシャルメディアの普及により、インターネットを使える
誰もが情報の発信者となり得る環境になった。その結果、私た
ちを取り巻くメディア環境は、新聞・テレビなどの既存マスメ
ディアとインターネットの情報利用の連携・融合により多様化
を続けている。同書では、多様なメディアが相互に影響し合う
社会を「間メディア社会」と呼ぶ。
同書は、間メディア社会におけるジャーナリズムの諸問題と
倫理について、その形成過程を踏まえ考察している。ソーシャ
ルメディアの普及・拡大に合わせ、その書き込みや出来事を情
報源とするミドルメディアが登場した。これらは内容の話題
性、速報性から、既存マスメディアの情報源となったが、この
逆流現象により、情報発信者である個人が突然注目され、批判
や倫理的な問題に直面する事態が生じている。また、既存マス 遠藤 薫 編著、
メディアがソーシャルメディアのリアルタイム性に引っ張ら 東京電機大学出版局
れ、情報確認が不十分となり、誤報に繋がった事例もある。
2014年10月発行、
(税別)
同書は、このような事態に対して、情報を発信することを前 3600円
提としたメディアリテラシー教育の必要性と、個人情報やプラ
イバシーについての新たな制度設計を提言している。
さらに、今後のジャーナリズムの展望として、社会の間メディア化がさらに進むことによる
コンテンツ制作の構造的変化、記事の内容の緻密化などについて述べている。 k
(国内広報部主任研究員 大野祥子)
2015年1月号〔経済広報〕
25
2015
1
企業・団体のCSR活動
味の素グループ 東北応援
「ふれあいの赤いエプロンプロジェクト」
味の素(株)
お問い合わせ先
CSR部
TEL:03-5250-8165 FAX:03-5250-8314
HP
http://www.ajinomoto.com/jp/activity/csr/earthquake/
http://www.kkc.or.jp/
平成
昭和
年 月 日発行
(毎月 回 日発行)
第
年 月 日第 種郵便物認可
55 27
10 1
23 1
3
1
1
「ふれあいの赤いエプロンプロジェクト」スタート時のメンバー。
岩手県山田町にて、2012年撮影
活動で東日本大震災
することに起因する健康・栄養面の問題、コミュニ
復興のお手伝いをし
ティーの崩壊による
「語らいの場」
の減少などの課題
たいとの考えに基づ
が顕在化しており、これらの問題の解決を目指して
き、2011年10月、「ふ
スタートした。
れあいの赤いエプロンプロジェクト」を開始した。
参加者からは、
「みんなで手を動かしながら調理が
従業員ボランティアは、「赤いエプロン」を着用する
できて楽しい」「毎回、この日が来るのが待ち遠し
ことで、被災地域の人々への「誠実な緊張感」と「あ
い」
などといった声が寄せられている。
たたかな気持ち」を共有している。
中心的な活動である「健康・栄養セミナー」は、東
岩手県遠野市、宮城県仙台市に加え、2014年8
月には福島県いわき市が新たな活動拠点となった。
北3県
(岩手、宮城、福島)の仮設住宅などで、行政
東日本大震災から3年以上経過した現在も、仮設住
や大学などと連携して実施されている。このセミ
宅での生活を余儀なくされる人が多数おり、高齢化
ナーは、移動式調理台(通称「どこでもキッチーン」)
や孤立化などの課題はますます深刻化している。そ
を活用して、地元の旬の食材を使った簡単で栄養バ
の一方、現地での企業やNPOなどの支援者数が減
ランスの良い料理を仮設住宅の住民と一緒に調理
少していることから、被災地域へのさらにきめ細か
し、出来上がった料理を囲んで語り合い、健康や栄
い対応が必要と考えたからだ。
「 どこでもキッチー
養についての情報交換などを行うというものだ。
ン」や調理器具などを運搬する専用トラックを新た
仮設住宅では、買い物の不便さやキッチンの使い
に1台導入し、今までよりさらに広い地域からの
「健康・栄養セミナー」
開催の要望に応えて活動して
いる。
味の素グループは、復興の足取りが確かなものに
なるまで、
「食」
を通じて
「心と体の健康づくり」
を応
援する活動を今後も地道に続けていくという。被災
地域に寄り添った息の長い取り組みが、人々が一歩
一歩、未来を築いていくための支えとなると期待さ
福島県いわき市に設置された新拠点(写真は開所式)。3県3拠点
体制で、さらに地域に寄り添った活動を目指す
発行:一般財団法人 経済広報センター
れる。
k
(国内広報部主任研究員 杉山佳子)
Printed in Japan
1
425
発行人/中山 洋 編集人/佐桑 徹 [ ISSN 0918–4600
]
東京都千代田区大手町一 三
(本体価格三〇〇円+税)
- 二
- 経団連会館 電話〇三 六
- 七四一 〇
- 〇 二 一 〒一〇〇 〇
- 〇〇四 ( 送料別、賛助会員の購読料は会費に含む)
と自体がおっくうになり、品数・調理頻度が減少
号
「食」を通じた様々な
37
号通巻
プロジェクトのロゴマーク
づらさなどの様々な理由によって、料理をするこ
巻第
味の素グループは、
従業員ボランティアはセミナーに参加した人たちとの「ふれあ
い」を大切にしている