【2015.3月号】No.427

月刊
第37巻第3号通巻427号2015年3月1日発行(毎月1回1日発行)1980年10月23日第3種郵便物認可
3
2015年
◆企業広報研究
企業広報功労・奨励賞を受賞して
仲間と共に、最善を尽くす
~西武ホールディングス広報部の現場から~
(株)西武ホールディングス 取締役上席執行役員広報部長
西山隆一郎
西武鉄道(株)取締役上席執行役員広報部長 ◆海外広報事情
◆経団連ビジョン
「豊かで活力ある日本」
の再生
◆ANGLE
427
March
社員は、影響力が大きいアクティビスト
~米国企業のインターナルコミュニケーションを調査~
~経団連ビジョン~
日本理科教育支援センター 代表
小森栄治
TOSS 向山・小森型理科研究会代表 今 月 の 表 紙
現地社会の発展に貢献することはアフリカで事業を展
開する企業の社会的責任と考える豊田通商は、各国の
社会事情に応じた社会貢献活動に積極的に取り組んで
いる。奨学金制度を通じた子どもたちの就学支援もそ
のひとつ。写真はコートジボワールでの奨学金授与式
『経済広報』では、裏表紙に関連する写真・イラストを表紙に
掲載しています。
3
月の動き
国内
6日
1月の景気動向指数速報
(内閣府)
9日
1月の国際収支速報
(財務省)
2月の景気ウォッチャー調査
(内閣府)
12日
2月の消費動向調査結果
(内閣府)
16 ~ 17日
日銀の金融政策決定会合
18日
2月の貿易統計
(財務省)
27日
2月の有効求人倍率
(厚生労働省)
2月の失業率
(総務省)
海外
5日
ECB
(欧州中央銀行)
定例理事会
(キプロス)
6日
1月の米貿易収支
(米商務省)
2月の米雇用統計
(米労働省)
12日
2月の米小売売上高
(米商務省)
17日
2月の米住宅着工件数
(米商務省)
17 ~ 18日
FOMC(米連邦公開市場委員会)
(米FRB(連邦準備制度理事会))
企業広報研究
2015年3月号目次
企業広報功労・奨励賞を受賞して
仲間と共に、最善を尽くす
〜西武ホールディングス広報部の現場から〜
(
(株)
西武ホールディングス 取締役上席執行役員広報部長
西武鉄道
(株) 取締役上席執行役員広報部長
西山隆一郎
2
)
ANGLE
理科教育とイノベーション
小森栄治(日本理科教育支援センター 代表/TOSS 向山・小森型理科研究会代表)
5
海外広報事情
社員は、影響力が大きいアクティビスト
~米国企業のインターナルコミュニケーションを調査~
6
グループ広報研究⑧
ホールディングスで各社の広報対応を集約
(株)りそなホールディングス
10
経済広報センター活動報告
ASEANメディアとどう付き合うか
~経済広報センター初のバンコクでのセミナーおよび
懇談会開催~
国民を幸福にするエネルギー政策を考える
山本隆三(常葉大学 経営学部教授)
13
16
経団連ビジョン
「豊かで活力ある日本」の再生
~経団連ビジョン~
18
技術広報研究④
ブランド価値の向上に繋げる技術広報
キリン
(株)
21
連載
経済広報センター NEWS
企業広報ニュース(ウェブサイト/教育支援/広報トピックス/ Book)
企業・団体のCSR活動
(豊田通商
(株)
)
3月の動き
22
24
裏表紙
表紙裏
発行/一般財団法人経済広報センター 国内広報部
東京都千代田区大手町1-3-2 経団連会館 TEL:03-6741-0021
印刷/三葉株式会社 TEL:03-3294-4751
※本誌掲載の記事・写真・イラスト・図版の無断掲載を禁じます。
2015年3月号〔経済広報〕
1
企業広報研究
企業広報功労・奨励賞を受賞して
仲間と共に、
最善を尽くす
~西武ホールディングス広報部の現場から~
西 山 隆 一 郎(にしやま・りゅういちろう)
(株)
西武ホールディングス 取締役上席執行役員広報部長
西武鉄道
(株)
取締役上席執行役員広報部長
第30回「企業広報賞」で企業広報功労・奨励賞を、西武ホールディングスの西山隆一郎取締役上席執行役員
広報部長と、日産自動車の濱口貞行国内企業・商品広報部長が受賞した。今月号では、西武ホールディング
スの西山隆一郎取締役上席執行役員広報部長に話を伺った。
西武グループの広報体制
西武ホールディングスは、西武グループの持株会
社として2006年2月に設立され、西武鉄道、プリ
ンスホテルを中核とする54の事業会社を統括して
いる。広報は、社内報、SNS(ソーシャル・ネッ
がサポートし、会見対応や、プレスリリースの作成
に至るまで、我々が確認した上で対応することとし
ている。
まず広報の基本的な役割を理解する
トワーキング・サービス)を含めたウェブ、ブラン
当社は、3年ほど前に広報部の全業務を部内でマ
ディング、マスコミ対応などがうまく連携して完結
ニュアル化した。広報はマニュアルよりも、臨機応
するが、今回はマスコミ対応に絞った話をする。西
変な判断・対応が要求される業務ではあるが、人事
武ホールディングスの広報部は現在9人で、管理職
異動などで新任が着任した際に、できるだけ早く広
を含めて、うち4人が専任のマスコミ担当だ。事業
報という仕事を理解してもらうため、また、中堅、
会社の広報体制は様々で、専任の担当がいる会社も
ベテランがいつでも原則に立ち戻ることができるよ
あれば、総務、管理部門などと兼任している会社も
うにしたかった。そのマニュアルにおいて、マス
ある。
コミ対応の「はじめに」の中で、広報はマスコミ(媒
月に1度、西武ホールディングスと事業会社十数
体、人)を通じて正確に情報を収集・発信し、西武
社の広報担当が集まる場を設けている。ここでは広
グループを社会に理解してもらい、さらに社員を適
報に関するグループの方針、ノウハウ、情報、人脈
切に牽引して会社の存続、発展に寄与していくこと
などを共有し、グループとしての一体感を醸成して
だ、と触れている。新任の広報担当には、まずこの
いる。また、その機会を活用して危機発生時のメ
役割をしっかり理解してもらうようにしている。
ディアトレーニングを行うこともある。
事業会社との関わり方だが、前向きな広報案件に
ついては、大きなイベントや、グループ横断的な案
件を除き、基本的に各社の裁量に任せている。一方
2
で、危機管理案件は原則全て西武ホールディングス
〔経済広報〕2015年3月号
広報部の基本的行動指針
~原則を忘れないために
広報がその役割を果たすために、原則を定め、そ
企業広報研究
れを徹底することにした。広報が失敗するのは、大
方原則から外れた対応をした時だ。当社では、広報
部の基本的行動指針として、次の4点を挙げた。
1.公平性の原則
2.社会一体化の原則
3.大局観の原則
4.仲間を大切に、自分を大切に
要だ。
正確な記事を出すためには、記者との強い信頼関
係も必要だ。ただし、記者と接する際は、節度を大
切にし、相手の年齢などにかかわらず、どんなに親
しくなっても基本的な礼儀は尽くさなければならな
い。言葉遣いにも気を付けるようにしている。ま
た、堅苦しかったり、当社側の主張ばかりでは信頼
情報開示は会見やリリース発信およびウェブへの
関係は築けない。気楽に、本音で話し合える関係を
掲出を原則とし、マスコミにはできる限り公平に対
大切にしたい。記者には一匹狼タイプも多く、強さ
応するようにしている。もちろん、コントロールで
と繊細さを持ち合わせているので、敬意と優しさを
きないことがあるのは当然で、結果的に公平になら
持って接したい。
ないこともあるが、指針として徹底しておくことが
危機発生時の広報の役割
必要だと思っている。
次に、お茶の間感覚を大切にすることだ。広報対
最 近 の 事 例 を 2 つ 挙 げ る と、 当 グ ル ー プ は、
応の採点者はお茶の間(社会)であり、会社の常識は
2013年に食品表示の問題とTOBに直面し、総力
社会の非常識というスタンスで、情報をしっかり咀
を結集して対応した。この2件は同時期に発生した
嚼し、正しく発信することを意識している。また、
ため、当時のマスコミ対応は非常に厳しいものだっ
マスコミを通じた世の中の声をきちんと経営に伝え
たが、当グループの状況や取り組みを正確かつタイ
ることも重要だ。
ムリーに伝えることに努めた。
危機対応が発生した際は、広報は社会のレピュ
2013年5月、一部のプリンスホテルをご利用い
テーションや要望を把握して社内に伝え、社内部門
ただいたお客さまから「メニュー表示と違う食品が
間のコミュニケーションにも積極的に関与する。事
出された」というメールが届いた。メール到着後、
案の全体像をつかみ、社内外の橋渡しをする役割は
ただちにプリンスホテル本社、西武ホールディング
重く、気概を持って臨まなければならない。
スが事案を把握、即日調査を始め、速やかに関係当
最後に、広報活動で疑問や不安を感じた時は、早
局へ届け出て、まずは発生したエリアの調査結果を
めに仲間に相談することだ。私はよく、“匹夫の勇”
公表した。この時はグループ内で定めている危機管
になるなと言っている。一人で密かに行動し、会社
理規程が機能し、速やかな初動に繋げることができ
を守るという行動も否定はしないが、それは例外
た。
だ。一人で無用なリスクを取ることはせず、広報部
その後、全社レベルでの調査、結果の公表に至る
の仲間の人的財産を大切にしたい。また、持株会社
わけだが、実は当グループは、過去に別件の食品
の性質上、事業会社54社全てが仲間であり、仲間
の問題で、いったん調査結果を速やかに公表した
のために汗を流し貢献しようという気持ちが大切
ものの、調査が不十分でリリースを後日追加して
だ。
いくなど、厳しい対応を迫られた苦い経験があっ
媒体の特性を生かし、
ニュースの流れをつくる
た。今回はその反省を踏まえ、徹底した調査の上で
公表した。公表まで時間をかけ過ぎることもできな
いため、関係部門、現場も危機感を持って
「速く、
広報戦略として、全ての媒体が重要であるが、突
正確に」との気持ちを共有し、対応に当たった。ま
発的な事象が発生した際には、通信社やテレビの影
た、お客さま対応においては、発覚当初より全額返
響が大きい。広報案件の中には、見方の角度によっ
金を明示した。危機発生時には、速やかな事実確認
て捉えられ方が異なりそうなニュースもある。これ
と当局への報告、公表、誠意ある対応、これら全て
らの媒体は、広く多くの人に対して瞬時に発信する
が求められる。広報は社外のレピュテーションを把
ので、第一報がその後のニュースの流れを大きく左
握し、社内外に対応するという非常に重要な役割を
右することから、迅速かつ慎重に対応することが肝
担っている。
2015年3月号〔経済広報〕
3
企業広報研究
困難を乗り越え、成長する
TOBに関する広報対応で、強く意識したのは情
所属する記者は数年で異動するが、担当が代わる際
報公開のタイミングと公平性だ。状況が刻々と変化
には、担当期間の長短にかかわらず、感謝の気持ち
し、日々報道が過熱していく中で、とにかく原則に
を忘れてはいけない。人はまためぐり会うもので、
基づき、情報はトップの会見やぶら下がり対応、リ
以前担当だった記者がキャップやデスクとして戻っ
リースで発信することにこだわった。
てきたり、違う案件の担当になったりすることもあ
TOBが公表されたのは2013年3月だったが、
る。別の媒体に転職していて、取材で再会すること
その前年の12月ごろから、一部のメディアに当社
もある。また、情報誌編集者、フリージャーナリス
に関するネガティブな報道が出始めた。
ト、外国報道機関の中には、西武ウォッチャーとし
その後、所沢にある本社に記者からの電話や訪問
て長年ご指導いただいてきた人もいる。記者も人間
が相次ぐようになり、対応は連日多忙を極めた。初
である以上、その関係で結果が左右されることもあ
めて当社を取材する記者も多く、理解を得るために
ると思う。
は、西武鉄道が上場廃止してから今に至る経緯につ
一方、危機対応時には、面識のない記者から電話
いて詳しく説明する必要がある。1人の記者に1時
取材を受けることもある。短い時間の声だけのやり
間半、2時間とかかったが、とにかく全員に丁寧に
とりで記事の扱いが決まるケースも多く、ここでは
対応した。2、3カ月ぐらいすると、沿線の住民の
全身全霊で1件1件の電話に臨む。記者・広報間で
皆さまや自治体のお力添えもあり、世論が当社に理
「どこまで知っているか」
といった腹を探り合うよう
解を示してくれるようになった。その流れを大切に
なことはせず、事前に最大限、どこまでを事実とし
して、丁寧な対応を続けた。
て開示できるかを突き詰めた上で、その姿勢が伝わ
本件は非常に困難な事案であったが、良いことも
るよう、淡々と、力強く、かつ丁寧に説明する。最
あった。経営者の強いリーダーシップの下で、関係
初から責め立ててくる記者もいるが、その姿勢を変
部門・現場が一丸となったことと、若手の成長だ。
えることはない。結果、報道が誤っている場合は、
特に若手の成長についていえば、連日の記者対応の
内容にもよるが、必ず電話や訪問をして、なんらか
際、私やほかの管理職は若手の担当者を同席させて
の対応をするようにしている。
いた。電話照会に対しても対応が仲間に聞こえるよ
私は銀行に入行し、6年前に転職して今に至る。
うに大きな声で話した。特に指示していたわけでは
銀行から、鉄道、ホテル・レジャー業界へと、異
ないが、若手は私たちが記者へ説明する複雑な内容
なる業種で通算15年半ほど広報を経験しているが、
や間合いを覚え、同様に説明ができるよう努力して
広報担当が守るべき原則や求められる力は、業種・
いた。最初はコピーでも、説明を繰り返すうちに自
業界にかかわらず同じだと感じている。広報の世界
分流になる。事案が佳境に入ったころには、難しい
に決まったルール、手続きはあまりなく、その分、
記者対応を安心して任せられるようになった。若手
活躍の場は広い。情報は生ものであり、危険であ
が短期間で急成長してくれたことは、その後の大き
り、だからこそ魅力がある。マスコミをコントロー
な財産となった。
ルすることはできないが、そのことに甘えてしまう
広報担当に必要な力、気持ちとは
と広報の存在価値すら問われかねない。原則に基づ
き、戦略を練り、管理職、担当がそれぞれ最善を尽
当グループが直面した危機対応について説明した
くす。うまくいかないこともあるが、最善を尽くし
が、私は広報担当が自身の役割を果たすためには、
たのだから誰も責めない。我々は組織人だ。困難に
次の力、気持ちが必要だと考えている。
直面したら、一人で抱え込まずに同僚や上司に相談
1.持久力
2.瞬発力
3.好奇心
4.仲間意識
4
持久力というのは、記者とは長い付き合いを前提
に接するべきということだ。例えば、記者クラブに
〔経済広報〕2015年3月号
し、一緒に乗り越えていくことができる。今後も仲
間と共に、西武グループの発展に貢献していきた
い。
k
(文責:国内広報部主任研究員 大野祥子)
ANGLE
理科教育とイノベーション
O
ECD(経済協力開発機構)
RIまで載っている。
の生徒のPISA(学習到
教育研究団体TOSSでは、経済
達度調査)や国際教育到達度評価学
広報センターと協力して
「最新環境
会のTIMSS
(国際数学・理科教
教育授業テキスト」を作成し、日本
育動向調査)で、日本の子どもたち
の様々な業界の最新省エネ技術を紹
は常に上位にいる。人口1億人規模
介している。
の国で上位にいるのは日本だけ。日
その自動車テキストでは、ハイブ
本では学習指導要領や検定教科書、
リッド自動車の原理を実験で確かめ
教師により、全国すみずみまで高い
教育レベルが保たれていることにな
る。
一方、TIMSS2011の質問紙
調査で、
「理科を使うことが含まれる
職業につきたい」という生徒の割合
は20%で、国際平均の56%より大
幅に低い。
その原因のひとつとして考えられ
るのは、日本の初等理科教育では理
学的な内容が中心で、工学的な内容
が少ないことである。
る。小学6年で「発電と蓄電」につい
小森栄治
(こもり・えいじ)
日本理科教育支援センター 代表/
TOSS 向山・小森型理科研究会代表
1956年 埼 玉 県 生 ま れ。1980年 東 京
大学工学部大学院修士課程修了。28
年 間、 埼 玉 県 内 の 公 立 中 学 校 に 勤
務。
「 理 科 は 感 動 だ 」を モ ッ ト ー に、
ユニークな理科室経営と理科授業を
行 っ た。 文 部 科 学 省、 県 立 教 育 セ
ンターなどの委員、講師を務める。
2008年 4 月、 理 科 教 育 コ ン サ ル タ
ント業を開始。現在、埼玉大学で理
科指導法を担当するほか、保育園で
の科学遊び講座、教師向け理科セミ
ナーで、理科の楽しさを幅広く全国
に伝えている。
て学ぶが、その応用であるハイブ
リッド自動車については、教科書で
はコラムに載っている程度である。
実際に手回し発電機とコンデンサー
を使い、ブレーキをかける際に発
電と蓄電が行われることを体感する
と、子どもだけでなく教師からも歓
声が上がる。
「ハイブリッド自動車に
乗っているが、今日初めて原理が分
かった」
という感想もあった。
日本の理科、技術家庭科、保健体
私は中学校の理科教師を28年間務めたが、出身
育には共通する内容があるにもかかわらず、バラバ
は工学部工業化学科である。ある講義で「理学は真
ラに教えられている。英国の中学校理科教科書に
理の追究、工学は価値の創造」という言葉を聞き、
は、エネルギー単元にダイエットが載っている。エ
なるほどと今でも心に残っている。
ネルギーのインプットとアウトプットの収支で、太
日本では理科の時間に、真理の追究の仕方を学習
る、痩せるを説明している。ちなみにピーナツ1粒
するが、その真理を応用して価値あるものを作る、
のエネルギーを消費するには、サッカーやテニス程
社会にどう役立てるかという学習が少ない。
度の運動を1分間しなくてはならない。
シンガポールで使われている小学校・中学年の理
日常生活での活用や健康に関わる内容を包括する
科教科書のある分冊は全部磁石のみ。その半分を磁
ような理科教育により、科学技術立国日本を支える
石の利用の紹介に充てている。ハードディスクやM
子どもたちを育てていきたい。 k
2015年3月号〔経済広報〕
5
海外広報事情
社員は、影響力が大きい
アクティビスト
~米国企業のインターナルコミュニケーションを調査~
経済広報センターでは、これまでほぼ毎年、欧米で企業広報調査を実施している。とりわけ広報先進国で
ある米国では、当時は日本では馴染みが薄かったメディア対応(メディアトレーニング、ストーリーテリング
など)やソーシャルメディア対応(フェイスブックやリンクドイン、セカンドライフ、ツイッター)など、最先
端のヒアリングを行うことができた。
今年度は、2014年11月11日から16日にかけて(調査自体は12、13、14日の3日間)
、インターナル
コミュニケーションをテーマに、米国・ニューヨークで調査した。
はじめに
企業広報担当者7名が参加した。
日本企業でも、近年、社員に
「企業理念や経営方
日本企業では、最近、企業の求心力低下や帰属意
針を踏まえて自分には何ができるかを考え、行動し
識の希薄化、価値観の多様化、縦割りの進行に加
てもらう」という“自分ゴト化”に関心が集まってい
え、企業理念の浸透、危機管理・コンプライアンス
る。また、日本でも、しばしば
「広報部門はストー
の徹底、インターナルブランディング推進、社内の
リーテラーになれ」
といわれるようになっている。
活性化が課題になるなど、様々な観点からインター
ナルコミュニケーションが注目されている。
ネットワーキング・サービス)
などを活用し、
「発言
一方、米国企業では言うまでもなく、日本企業に
してほしい社員」
に
「発言してほしい情報を伝え、積
比べ、人種・思想など多様な社員を抱え、日本以上
極的に発信する」
よう促している。そして、
「ストー
にインターナルコミュニケーションを重視し、様々
リーを語るだけでなく、いかにシェアするか(ス
な工夫・取り組みを実施している。
トーリーシェアリング)
」
に関心が持たれている。そ
米国企業のインターナルコミュニケーションの全
のために、イントラネットに外部へ発信しやすくす
体像やトレンドについては、PRコンサルタント会
る仕組みを用意したり、社員が会社のアンバサダー
社
(エデルマン、ウェーバー・シャンドウィック)や
として情報発信できるようにトレーニングを実施し
調査機関(カンファレンスボード)、具体的な取り組
ている。
みについては個別企業(ファイザー、ジョンソン・
エンド・ジョンソン)からヒアリングを行った。ま
た、訪問を予定していたハートフォード生命は急
6
こ れ に 対 し、 米 国 で は、 S N S
( ソ ー シ ャ ル・
各社からのヒアリング結果
きょ都合がつかなくなったため、後日、文書で回答
人材の発掘・育成に加え人材維持に注力
<カンファレンスボード>
を得た。今回の調査には、当センター2名のほか、
調査機関であるカンファレンスボードでは、各
〔経済広報〕2015年3月号
海外広報事情
国のCEOの懸念事項や関心事項を調べているが、
できるような
「スナック・コンテンツ」
の発信に努め
2014年度の結果では、1位は「Human capital(人的
るべきだとの指摘があった。ツイッターに文章のみ
資源)」であった。特に流動性の高い米国の労働市場
を投稿するのではなく、テキストよりも情報量の多
においては、人材を発掘・育成するだけではなく、
い、画像や動画を効果的に用いることが、ソーシャ
その人材の維持にも注力する必要があり、企業のレ
ルメディアを活用する上で重要である。
ピュテーションや社員のエンゲージメントが重要な
要素となることが分かった。
BtoIと「スナック・コンテンツ」
<エデルマン>
ストーリーシェアリングへ
<エデルマン>
「ブランドシェアとエンプロイーエンゲージメン
ト」については、企業がブランドの姿を消費者に伝
えていくために、
「ストーリーテリング&シェアリン
グ」がひとつの重要な視点となる、との指摘があっ
た。ストーリーの受け手側である消費者にシェアし
てもらうことで、そのブランドに対するエンゲージ
メントをより深めることができる。
同社の調査結果によると、米国企業で働く社員の
58%が自社のミッション・バリューを把握してお
ニューヨークでは、エデルマンを2度訪問した。
エデルマンでのヒアリングのテーマは2つ。
「 ソー
シャルメディアを活用した広報活動」と「ブランド
シェアとエンプロイーエンゲージメント」だった。
らず、70%が企業に積極的にエンゲージしていな
い。
日本では、企業理念を自分の問題として落とし込
む
“自分ゴト化”
に関心が持たれているが、米国では
「ソーシャルメディアを活用した広報活動」では
社員に企業理念の
“自分ゴト化”
を求めるだけではな
BtoI(Individual)の 視 点 が 非 常 に 有 効 だ と い う
く、その企業のアンバサダーとなり、社外に向けて
指摘があった。ソーシャルメディアはコストをか
情報を発信することを期待している。ペプシコやD
けずにターゲットに直接情報を届けることができ
ELLでは、企業のアンバサダーを育成するための
る。 こ の 性 質 を 生 か し、 情 報 を 届 け る べ き 個 人
社内トレーニングを導入している。
(Individual)に積極的に発信している企業として、
P w Cというコンサルティングファームの事例が紹
介された。
アクティビストである社員を巻き込む
<ウェーバー・シャンドウィック>
P w Cでは、調査結果などの複雑なデータを分か
ウェーバー・シャンドウィックは、社員は企業の
りやすくアニメーションにまとめ、企業のCEOに
レピュテーションに大きな影響力を持つ「アクティ
ターゲットを絞り込み、情報を発信している。ク
ビスト(活動家)」である、と定義している。SNS
リック数などを追跡調査することで、効率の良い効
が普及した昨今、アクティビストである社員をうま
果測定も可能となる。
く巻き込むことで、会社を批判から守り、オンライ
また、ソーシャルメディアに発信する際には、ス
ナックのように軽くつまめて、手持ち無沙汰を解消
ン・オフライン上で自社の理念やメッセージを発信
してくれる存在にしていくことが重要だという。
2015年3月号〔経済広報〕
7
海外広報事情
News Edition」の ほ か、 社 内 の ソ ー シ ャ ル メ デ ィ
アプラットフォームである
「My World」
、社員が
制 作・ 投 稿 し た ビ デ オ を 社 内 で 共 有 で き る「My
Channel」などのイントラメディアを社内コミュニ
ケーションに活用している。
「My World」は社内版
フェイスブックのようなもので、社員同士のタテ、
ヨコ、ナナメのコミュニケーションを活性化させて
同社の調査によると、社員がどの程度のアクティ
いる。
ビストかは6段階に分類される(下図)。例えば、プ
また、
「なぜファイザーで働くのか」
について語る
ロアクティビストという、会社をサポートするポジ
場を社員に提供し、会社に対する社員のエンゲージ
ティブな発言を積極的にしてくれる社員は21%存
メントを高めている。同社では、ファイザーで働く
在しているが、全く関与しようとしないインアク
やりがいを感じた出来事などのストーリーを社員か
ティブ層も22%存在する。企業は、いかに積極的
ら募集している。ストーリーは本社で選定され、イ
なアクティビストを増やし、無関心な層や批判的な
ントラネット上の
「365daily update」
というコーナー
層を減らすかを考える必要がある。
で1日1本ずつ紹介されている。掲載されたストー
社員をアクティビストとして活用する企業の事例
リーの下にはソーシャルメディアへのシェアボタン
としては、ペプシコが紹介された。イントラネット
が付けられており、社外に発信することも可能だ。
上に掲載している社内ニュースにソーシャルメディ
アのシェアボタンを付けており、社外に向けて社内
ニュースを簡単に発信することができる。この機能
「我が信条」
の浸透と一貫したメッセージの発信
<ジョンソン・エンド・ジョンソン>
を使い、社員の66%が友人や家族に社内ニュース
ジョンソン・エンド・ジョンソン社からは、全世
をシェアしている。
界に12万6000人いる社員に向けて、一貫したメッ
セージを伝えるための取り組みを聞くことができ
た。
同社には全世界に約400名のコミュニケーショ
ンおよびパブリックアフェアーズの担当者がいる。
社員のエンゲージメントを高めることもコミュニ
ケーション担当者の重要な役割である。コミュニ
ケーション部門の業務の半分はインターナルコミュ
ニケーションであり、社外に向けたコミュニケー
ション活動と同様に、多くの経営資源と人員を割
いている。コミュニケーション部門では、同社の
「なぜファイザーで働くのか」を語り合い社員の
エンゲージメントを高める
<ファイザー>
グローバル戦略であるJ&J Enterprise Strategic
ファイザーでは、ワールドワイドに社内ニュー
「Our Credo(我が信条)
」
や
「Growth Drivers(成長の
スを共有するイントラネット「Pfizer World Global
8
〔経済広報〕2015年3月号
Framework(全社戦略的フレームワーク)に基づき、
原動力)
」
の浸透を図っている。
海外広報事情
「Our Credo」の70周年を記念した施策では、社員
サダーとなり、日常的な社員とのコミュニケーショ
が上司や同僚と「Our Credo」のテーマで対話する取
ンの中で企業の方針を伝えることにより、社員のエ
り組みを全社的に実施し、その様子を専用のウェ
ンゲージメントを高めている。
ブサイトに写真や映像で掲載した。同時に、「Our
社内の情報伝達のプラットフォームとしては、イ
Credo」に対するコミットメントを示す社員の署名
ントラネットを重点的に活用している。イントラ
を、ウェブ上で集めた。これらの施策には14カ月
ネットではピアツーピアの交流、気付きや対話を促
間で社員の80%が参画したという。
進しており、ソーシャルメディアの機能も利用する
また、CEOの意向を12万6000人の社員に伝え
ことができる。同社は社員へのダイレクトEメール
るために、各国のグローバルリーダーを集めてリー
を削減するなど、コミュニケーション戦略の大部分
ダーズ会合を開催している。バイスプレジデント以
を
「プッシュ」
型から
「プル」
型へと移行している。
上には、社員とのコミュニケーションに活用できる
同社はビジョンを社員に浸透させるために、使用
資料やツールが入った情報のワン・ストップ・チャ
する文言や作成する資料の中でメッセージを常に強
ネルである「リーダーズリソースセンター」をウェブ
調している。ビジョンステートメントを同社の建物
上に展開している。
のアートワークの一部にしているほか、目立つ場所
加えて、CEOのブログとウェブマガジンを通じ
にビジョンを大きく掲げている。
て、社員に直接情報を届けている。ブログとウェブ
また、ビジョンに合致する企業目標を策定し、そ
マガジンの多くはビデオメッセージで構成されて
の目標を年次業績管理システムに組み込んでいる。
おり、CEOは年に約80本のビデオメッセージを、
社員一人ひとりが設定する目標は、こうした計測可
本社に備え付けられたスタジオで撮影している。
能な目標と結び付いている。
終わりに
マネージャー層を起点とするコミュニケーション
戦略
<ハートフォード生命>
報告書は3月末までに発行する予定。なお、経済
今回の調査では、ハートフォード生命も訪問を予
広報センターでは、インターナルコミュニケーショ
定していたが、急きょ都合がつかなくなったため、
ンに続き、その延長線上にあるグループ内外向け広
書面での回答となった。
報の事例調査を実施した。その事例調査をまとめた
同社のコミュニケーション戦略は、マネージャー
とのコミュニケーションに重点を置いている。重要
な情報を持つマネージャーが企業を代表するアンバ
小冊子も3月に発行予定。
k (文:国内広報部長 佐桑 徹、
国内広報部主任研究員 鈴木恵理)
米国企業広報調査 参加者 (敬称略)
篠崎直之 花王(株) コーポレートコミュニケーション部門広報部課長 加藤信子 ジョンソン・エンド・ジョンソン(株)
コミュニケーション部ディレクター 谷口卓哉 全日本空輸(株) 広報部スーパーバイザー
東浦秀年 東レ(株) 広報室コミュニケーショングループ課長 岡田 誠 丸紅(株) 広報部副部長 竹田玲子 三菱商事(株) 広報部課長
松山真弓 (株)りそなホールディングス コーポレートコミュニケーション部マネージャー 佐桑 徹 (一財)経済広報センター 国内広報部長 鈴木恵理 (一財)経済広報センター 国内広報部主任研究員 2015年3月号〔経済広報〕
9
グループ広報研究⑧
ホールディングスで
各社の広報対応を集約
(株)
りそなホールディングス
りそなホールディングスは傘下にりそな銀行、埼玉りそな銀行、近畿大阪銀行の3行を抱える銀行グルー
プで、国内には約600カ所の有人店舗を有する。グループ従業員の意識を高めるブランド戦略とソーシャル
メディアの活用について聞いた。
組織体制
りそなホールディングスのコーポレートコミュニ
ケーション部は、社内外の広報活動を担当する広報
グループ、ブランド戦略を担当するブランドグルー
グループで好事例を共有する
ブランド表彰制度
●ブランド宣言
プ、株主総会などの株主対応を担う株主サービスグ
同グループは2006年2月に
「ブランド宣言」を発
ループ、CSR(企業の社会的責任)活動を管轄する
表し、
「“満足を超える感動”を創造する金融サービス
CSR推進室の4グループから成る。商品・サービ
グループを目指す」ことをグループブランドビジョ
スの広告宣伝とIR(投資家対応)以外のステークホ
ンとして宣言した。同時に、このビジョンを実現す
ルダーとのコミュニケーション活動が、コーポレー
るために、従業員一人ひとりが「お客さまの期待と
トコミュニケーション部に集約されている。
信頼にお応えするために、自ら気付き、考え、行動
広報グループの社外広報担当は、東京本社に3
する」ことを定めたグループブランドプロミスと、
人、埼玉りそな銀行本社に1人、大阪本社に2人が
グループブランドスローガン
「新しいクオリティへ、
常駐し、合計6人の体制で全グループの社外広報対
新しいスピードで。
」
を制定した。公的資金注入によ
応を担っている。大阪本社の2人は、関西エリアの
り傷ついた企業ブランドを、プラスの方向に改革を
りそな銀行と近畿大阪銀行を管轄している。
進めることで、再生から飛躍に向けた挑戦を本格化
対外広報は、各銀行やグループ会社で発生した事
させるためのブランド戦略だ。
柄でも、「りそなグループ」として問い合わせを受け
このブランド宣言を発表する際、お客さまにどう
ることが多い。そのため、ホールディングスのコー
したら“満足を超える感動”を感じてもらえるか、従
ポレートコミュニケーション部が、全グループ会社
業員が“自ら気付き、考え、行動する”とは具体的に
の情報を一元的に把握する体制を取っている。例え
どのようなことか、社内で議論が起きたという。そ
ば、関西エリアの支店で何かが発生した場合には、
こで、2006年6月より、グループ各社で取り組ん
大阪本社の広報担当者に連絡が入り、即座に東京本
でいる
「りそなブランド宣言」
を具現化する気付きや
社に情報が連携される。また、クレジットカードや
工夫点を共有するための
「ブランド表彰制度」がス
信用保証などのグループ会社には広報の連絡窓口を
タートした。
置き、メディアからの取材依頼などは、グループ会
●ブランド表彰制度
社から連絡を受けて、コーポレートコミュニケー
ション部の広報グループが対応している。
10
質な対応をすることを最も心掛けているという。
ブランド表彰制度では、このブランド宣言を具現
化するために、従業員が自ら気付き、考え、行動し
関西地区の事案でも東京本社に問い合わせがくる
た事例を全グループ会社から募集している。平均し
場合も多く、担当者全員が常に同じ情報を持ち、均
て月100件、多い時には300件ほどのエントリーの
〔経済広報〕2015年3月号
グループ広報研究⑧
中から、金・銀・銅の月間賞をホールディングスの
心」などのイメージが大きく影響しているという。
東和浩代表執行役社長が選考している。例えば、電
その
「信頼」
や
「安心」
は銀行の資金量や店舗数などの
子納税のPay-easyで、キャッシュカードを使った自
規模から連想されるが、従来の商品やサービスごと
動引き落としのサービスが顧客になかなか浸透して
に異なるビジュアルを用いた広告展開は、グループ
いなかったため、ある支店で、地方公共団体にのみ
600カ店の存在感やネットワーク力の視認性を高め
設置されていた自動引き落としを設定できる機械を
るものではなかった。このような課題を解決するた
借りて、支店に設置した。
めにも、りそなグループのあらゆる広告物のビジュ
この取り組みにより、顧客は自動引き落としの手
続きを簡単に行えるようになり、銀行も書類での手
アルに横串を通す、統一されたコミュニケーション
キャラクターの
「りそにゃ」
が開発された。
続きが軽減され、双方にメリットをもたらした。現
現在、
「りそにゃ」
を使った広告ポスターがりそな
在は、導入できる全ての支店でこの好事例が採用さ
グループの全支店に掲示されているほか、ツイッ
れている。 ターやユーチューブなどのソーシャルメディアを通
また、近畿大阪銀行からは、優先ATMの設置と
いう好事例が挙げられた。ATMの混雑時に、高齢
者やベビーカーを利用している人にも広々とATM
を使ってもらいたい、という従業員の気付きから開
じたコミュニケーションにも活用されている。
積極的なソーシャルメディアの活用
同グループでは、フェイスブック、ツイッター、
始された取り組みだ。現在では優先ATMはグルー
ユーチューブ、LINEなどのソーシャルメディア
プ全店に浸透している。
を積極的に活用し、ステークホルダーとのコミュニ
表彰制度では、半年に1度、月間賞の中から全グ
ループ従業員の投票により、ブランド大賞を選定し
ている。月間賞で集まった好事例を、全グループ従
ケーションを図っている。
●フェイスブック
フェイスブックでは、
業員に共有する役割も果たしており、好事例を積極
「りそなグループ」と
「り
的に自分の職場に取り入れてもらうことと、新たな
そなキッズマネーアカデ
気付きに繋げる狙いがある。ブランド大賞は、個人
ミー」の2つのアカウン
営業部門や店頭サービス部門、社会貢献部門など、
トを運営している。
「りそ
部門ごとに決定する。また、それぞれの部門のブラ
なグループ」のアカウン
ンド大賞の中から役員投票で、りそなホールディン
トでは、CSR活動など
グスの前会長名を付した「細谷英二賞」も選考されて
世の中の人に共感しても
いる。
らえるような取り組みや
ブランド表彰制度を通じ、従来の慣習にとらわれ
メッセージを発信してい
ず、新しいことに取り組む企業風土が一層醸成さ
る。 投 稿 内 容 や 写 真 に
れているという。経営層も、従業員の“自ら気付き、
よって、
「いいね!」
の数やファンへのリーチ数が大
考え、行動する”チャレンジ精神を奨励しており、
きく異なるため、一人称で想いを語ることを特に重
グループ一丸となってブランド宣言の具現化に取り
視しているという。
組んでいる。
●コミュニケーションキャラクター「りそにゃ」
「りそなキッズマネーアカデミー」
は、社員が講師
となり、子どもに金融や経済の知識を楽しみながら
同グループはこれまで、商品・サービスごとに
身に付けてもらうことを目的に、全国の支店で開催
別々のイメージ戦略を展開していたが、2013年に
している教室だ。フェイスブックでは、各支店で実
コミュニケーションブランドを開発し、グループで
施された様子を写真と共に紹介している。
統一されたイメージが醸成されるよう、社外に向け
●ツイッター
た取り組みを行っている。
顧客が銀行を選ぶ際、
「距離」を除くと「信頼」や「安
ツイッターでは
「りそなPR」
「りそなグループ災
害時連絡」
「りそにゃ【公式】
」の3つを運用してい
2015年3月号〔経済広報〕
11
グループ広報研究⑧
る。
「りそなPR」はキャンペーン、イベントの告知
用している。取材や編集もすべて社内報担当者が自
やユーチューブで公開している情報番組「りそなび
前で行っているという。
げーしょん」の紹介、支店で実施した社会貢献活動
●ビデオニュース
などを投稿している。
「りそなグループ災害時連絡」
同グループでは映像社内報として月2回、約8分
は、災害発生時の店舗営業時間やATM稼働状況
のビデオニュースを配信している。りそな銀行の各
などを知らせるものだ。
「りそにゃ【公式】」では、コ
支店にはテレビ会議システムが設置されており、ビ
ミュニケーションキャラクターのりそにゃが、ユ
デオニュースはチャンネルを合わせれば、いつでも
ニークなつぶやきを投稿している。
見ることができる。朝会などのミーティングの時間
●ユーチューブ
に見ている支店もあれば、従業員の休憩時間に見る
同グループのユーチューブ公式チャンネルでは、
ことを促している支店もある。ビデオの内容は、社
情報番組「りそなびげーしょん」や、コミュニケー
長からのメッセージやブランド表彰の月間賞の事例
ションキャラクターのりそにゃを使った動画を公開
の紹介、本社からの施策の奨励などだ。最近始めた
している。
「りそなびげーしょん」では、グループ各
「Cool Resona」という企画では、りそなのナンバー
社の様々な取り組みや商品サービスを、動画で分か
ワン、オンリーワンの事例を紹介している。例え
りやすく紹介している。例えば、インターネット上
ば、最近では「女性の年金数理人の数が最も多い銀
で横行しているフィッシング詐欺の予防策のひとつ
行である」「上期の保険販売実績が銀行の中で第1
である「ワンタイムパスワード」の設定方法を、りそ
位」
といったニュースが紹介された。
にゃが分かりやすく実演した動画などがある。そ
●グループ報
『Resona』
のほか、「相続できょうだいゲンカをしないために」
「知って得するお金の話~住宅ローンの借りかえ~」
などの役立つ情報を、りそにゃを使ってソフトタッ
チに伝えている。
●LINE
2014年12月より、LINEの公式アカウントを
設置した。LINEは20 ~ 30歳代の若い世代を
ターゲットに、ちょっとお得でちょっと気になる
“りそな”と“りそにゃ ”の情報を軽いタッチで配信し
ている。年末には、りそにゃのスタンプ配信も開始
し、LINEユーザーへの拡散を図っている。コ
同グループでは、紙媒体のグループ報『Resona』
ミュニケーションツールとしてLINEを活用し始
を年4回発行している。グループ報は自宅に持ち
めた背景には、若年層の新規口座開設数を伸ばした
帰って家族と楽しんでもらうために、男性の上着の
いという同社の狙いがある。ソーシャルメディアの
ポケットや、女性のかばんに入れられる手のひらサ
活用が実際のビジネスにどれほど結び付くのかを検
イズとなっている。グループ報では、参加型のグ
証しながら、今後は「新生活応援キャンペーン」など
ループ報を心掛けており、できる限り多くの従業員
の若年層をターゲットとしたキャンペーンなどとも
に登場してもらうようにしている。例えば、
「ようこ
連携を図っていく方針だ。
そ、私の職場へ」というコーナーでは、3銀行の各
インナーコミュニケーション
コーポレートコミュニケーション部の社内報担当
は、東京に2人、埼玉に1人、大阪に2人の計5人
支店を紹介するなど、必ず現場を取り上げるように
している。また、
「社長の東さんに聞きたい」
という、
従業員から寄せられた質問に、東社長が回答する
コーナーも人気だ。
k
の体制だ。インナーコミュニケーションのツール
は、主にビデオニュースと紙媒体のグループ報を活
12
〔経済広報〕2015年3月号
(文:国内広報部主任研究員 鈴木恵理)
経済広報センター活動報告
ASEANメディアと
どう付き合うか
~経済広報センター初のバンコクでのセミナーおよび
懇談会開催~
日系企業がASEANにおいて円滑な広報活動をすることを目的に、東京で広報セミナー、バンコクで
ASEANジャーナリストとの懇談会を行った。
開催の趣旨
海外広報セミナー(2014年12月3日)
日本の製造業が海外で稼ぐ経常利益の約3分
国別ブランドの調査では、日本のブランドのイ
の1をASEANが占めるなど、日系企業にとって
メージとして
「technology」
「respect」
「culture」
などが
ASEANはますます重要になりつつある。ASEAN
挙げられた。広報活動で発信するメッセージを開発
での事業活動においてはメディアとの円滑な関係が
する際、これらをブランド形成因子として留意しつ
重要となるが、ASEANのジャーナリストには、日
つ、会社の事業計画との整合性を取り、国内外で同
本企業の広報活動に課題を感じている者も少なくな
一のメッセージとすることが重要だ。そのための仕
い。
組みづくりとして、ASEAN数カ国での広報会議開
2014年7月14日には、ASEAN 3カ国からジャー
催やグローバル広報のワークステーション設置など
ナリスを講師として招き「ASEANにおける日本企
を通じ、各国の広報担当の間でのコミュニケーショ
業の広報活動」をテーマに国際広報シンポジウムを
ンを促進し、各国の成功事例、リスク因子、危機の
開催した。その際ジャーナリストは、日本企業に対
体験・対応などの共有化を図る必要がある。
し大きく3つの課題を指摘した。1点目は、聞きた
ASEANでの日本企業の広報活動について、ブラ
い時に早く答えが返ってくる体制、インタビューの
ンド広告を多く出している企業ほどPRを戦略的、
アポをすぐに取れる体制を整えてほしい、2点目
積極的に行っている。一方、日本本社との連携を密
は、製品の紹介だけでなく自分たちの考え方やビ
に取っているが故にメディア対応が遅れることも少
ジョンを分かりやすく発信してほしい、3点目は現
なくない。メディア側がアプローチしても日本企業
地ジャーナリストとのコミュニケーションをもっと
は対応をしないという批判もある。多くの日本企業
取ってほしい、ということだった。
には専任の広報担当のスタッフがいるが、言語の問
この指摘を踏まえ、2014年12月3日に経団連会
館にて、ウェーバー・シャンドウィックの西谷武夫
題もあり現地人スタッフであることが多い。
メディア対応に積極的なのは、欧米系の企業、韓
会長を講師に迎え「ASEANにおける社会広報体制
のあり方」をテーマに、広報部門関係者を対象とし
たセミナーを開催した。
次に2015年1月20日には、タイのセンタラグラ
ンド バンコク コンベンションセンターで、「タイ
ジャーナリストとよりよい関係を築くために」を
テーマに、3名のジャーナリストを講師に、ウェー
バー・シャンドウィック・バンコクの2名の専門家
をモデレーターとして、現地日系企業を対象とした
セミナーおよびパネルディスカッションを行った。
講演を行うウェーバー・シャンドウィックの西谷武夫会長
(12月3日、海外広報セミナー(東京))
2015年3月号〔経済広報〕
13
経済広報センター活動報告
国企業であり、既存媒体およびソーシャルメディア
を活用している。企業PRとマーケティングPRの
比率が高く、CSR(企業の社会的責任)がそれに次
ぐ。インドネシアなど行政上の問題がある国は、ロ
ビーイング活動でPR会社を起用している事例も多
い。
アジアのジャーナリストは新聞記事をデジタル版
にも投稿しているため、新聞記事を想定したリリー
ス発信だけでなく、画像を大きくする、動画も入れ
1月20日、海外広報セミナーの様子(バンコク)
るなど、デジタルも意識した情報発信が必要であ
る。アジアのメディアは企業のウェブサイトにアク
セスして記事を書くことも多く、77%の記者が質
次に、
「日本企業の広報活動をどう評価するか」
を
の高い説明・データ、面白いブランド情報・商品広
テーマに、3名のジャーナリストが次の通り説明し
告を有効と考えている。
た。
Q.各国の拠点には、マーケティングと広報活動を
『ネーションウィークエンド』
誌のソポン・オンガ
兼務している者がいるが、売り上げに目が行きが
ラ・アドバイザー・ライターは、「1970年代、反日
ちで販促に偏る傾向がある。マーケティングと広
感情が強い時期があった。また、円高で日本が海外
報をバランスよく行うためには何から始めたらい
への投資を加速させた時代には日本に傲慢さを感じ
いのか。
るタイ国民が多かった。その後、2011年の洪水の
A.企業広報のレピュテーションづくりとマーケ
際、日本はタイを支援し、2014年のクーデターで
ティング活動は、車の両輪。海外事業を持続的に
も日本企業はタイを見捨てなかった。日本のこのよ
成功させるためには、会社の信頼性が重要であ
うな態度により、タイ国民の対日好感度は高まっ
る。社長をはじめ海外営業本部にこの関係をしっ
た。大きな変化を乗り越え、これからが日本とタイ
かりと認識してもらい、現地責任者に伝えていた
との新しい時代の幕開けだ。日本企業はタイの文化
だくことである。他社、欧米企業の事例紹介が説
をしっかり理解するとともに、ジャーナリストと
得力あると考える。
しっかりコミュニケーションを取り、タイとの新た
広報セミナーおよびASEANジャーナリスト
との懇談会(2015年1月20日)
●プレゼンテーション
14
渡し役として役立ててほしい」
と説明した。
な関係構築を進めてほしい」
と説明した。
Now 26
(テレビ)
のノパクン・リムサマルンパン・
エグゼクティブティレクターは、
「現在日本は韓国や
中国との厳しい競争にさらされており、タイとの関
まず、ウェーバー・シャンドウィック・バンコク
係でも新しい段階に入った。タイでは、デジタルテ
のアプソーン・ベジュラジャティ・ディレクターが
レビのチャンネル数の増加、ソーシャルメディアの
「日本企業のタイにおける社会広報活動のあるべき
浸透などメディアにおいて大きな変化が起きてい
姿」をテーマに、アジア太平洋地域とタイのメディ
る。日本企業はCSR活動を積極的に推進している
ア事情を紹介した後、次の通り説明した。
「 現在は
一方、メディアへの対応が他国に比べて弱い。私か
ネット社会であり、一度ネットにニュースが流れる
ら見てメディア対応をうまくやっている日本企業は
と消えることはない。悪い例では、今から約40年
自動車メーカーだけなので、ほかの業界もこれを
前の日本製品の不買運動、10年前の日本車を破壊
参考にしてほしい。また、タイは世界でも有数のソー
する画像などがタイのネット上に掲載され残ってい
シャルメディアのユーザー数を誇り、特に若い世代と
る。良い例としては、日本企業が行うCSR活動が
接点を持つためには欠かすことのできないツールと
デジタルメディア上に残り、蓄積されている。日本
なっているという点にも留意が必要だ」
と説明した。
企業の現地メディアとのコミュニケーションは、ま
『マティチョン』紙のパイラット・ポンパニック・
だ不十分だ。現地の言語や文化を理解し、現地の状
フォーリン・エディター兼ITエディターは、
「タイ
況を把握しているPR会社を、現地メディアとの橋
では、40年前の反日感情があった時代でさえ日本
〔経済広報〕2015年3月号
経済広報センター活動報告
製品に対する信頼は高かった。同じブランド品で
ノパクン タイではデジタルテレビがスタートして
あっても
『メイド・イン・ジャパン』を望むほどだ。
チャンネルの数が非常に増え、従来のエンターテ
ただし今後は、
『どのような製品なのか、その製品は
インメント中心の情報発信から、より専門的なコ
何ができるのか、ユーザーにどのような便益をもた
ンテンツの配信が可能となった。
らすのか』など、ユーザーの視点で語ることが重要
だ」
と述べた。
アプソーン メディアとの関係で、今後日本企業は
何をすればよいか。
パイラット 日本企業はもっと積極的にジャーナリ
●パネルディスカッション
プ レ ゼ ン テ ー シ ョ ン の 4 名 の ス ピ ー カ ー に、
ウェーバー・シャンドウィック・バンコクのワンラ
ストとコミュニケーションを図ってほしい。現地
を理解するPR会社をうまく使うか、使わない場
合は広報担当者の教育をお勧めする。
パ・コムカイ・マネージャーも加わり、パネルディ
スカッションを行った。
ワンラパ 日本の文化はアニメを通じ、タイにとっ
て身近なものとなった。米国は自国のCSRや環
●懇談会
懇談会では、下記メディアが出席し、日系企業と
懇談を行った。
境に対する考え方をアジアに持ち込んで定着させ
た。文化やCSRなどは相手の国に何かを定着さ
せるツールとして戦略的に活用できると考えられ
るが、ジャーナリストの目から見てどのように考
えるか。
ソポン 1980年代日本音楽の人気が高かったが、
現地メディア
『マティチョン』紙、
『バンコク・
ポスト』紙、『ネイション』紙、
Now 26(テレビ)
ASEAN
メディア
『ストレイツ・タイムズ』紙(シ
ンガポール)
、
メディアコープ(シンガポール)
最近は韓国のものに人気が集まっている。エン
ターテインメントは、タイの一般の人々を引き付
けるのに有効なので、日本企業の認知度を高める
日系メディア
手段として、ぜひ活用してほしい。
ノパクン 日本の自動車メーカーがCSR活動の一
環として交通安全の教育を行ったが、タイ国民の
間で話題を呼び、ソーシャルメディアや既存メ
欧米メディア
読 売 新 聞、 東 京 新 聞・ 中 日 新
聞、西日本新聞社、日本放送協
会、テレビ朝日、テレビ西日本、
日本テレビ放送網、フジテレビ
ジョン、泰国時事通信社
『ウォール・ストリート・ジャー
ナル』
ディアなど、複数のメディア間で増幅し合い次第
日本企業の参加者から次のような声が聞かれた。
に大きなニュースとなった。市民の間に好印象が
・ローカルメディアとの接触はビジネスをする上で
強く残るとともに、次の世代を担う小さい子ども
避けて通れないが、広報担当にとってはリスクが
たちに、良いブランドイメージが定着したことは
大きな成果だと思う。
ワンラパ ソーシャルメディアやデジタルメディア
など、メディア業界をめぐる状況は大きく変わり
つつあるが、どのように捉えているか。
大きいため、接し方を日ごろから探っている。
・タイ語のメディアは、個人的なツテに頼らざるを
得ないこと、言語の問題があることから関係構築
のハードルが高い。
今後に向けた課題
ローカルメディア側、日本企業側が互いに相手と
の接触を図りたいと考えている一方、手探り状態が
続き進展していない状況が分かった。文化の違い
や、リリースに対する考え方に違いがあることが一
因と見られる。今後も引き続き、相互理解を深める
ことを目的としたシンポジウムや現地での懇談会開
催などを企画・検討したい。 1月20日、現地の記者との懇談会の様子(バンコク)
k
(文責:国際広報部主任研究員 土田進一)
2015年3月号〔経済広報〕
15
経済広報センター活動報告
国民を幸福にする
エネルギー政策を
考える
山 本 隆 三(やまもと・りゅうぞう)
常葉大学 経営学部教授
経済広報センターは1月26日、「国民を幸福にするエネルギー政策を考える」をテーマに、常葉大学の山本
隆三経営学部教授を講師とする講演会を開催した。出席者は、当センターの社会広聴会員や会員団体・企業
の広報・環境担当者など約120名。
安価で安定した電力供給が幸福感に繋がる
国民一人ひとりの「幸福」とエネルギー政策は密接
に関係している。
それは、日本の産業構造、所得構造から考えると、
1人当たりの付加価値額が高い製造業を成長させて
いくことが最も重要である。ここ20年間、経済成
幸福感は、私たちの給料、あるいは1人当たりの
長しなかった一番の原因は、労働の生産性が上がっ
GDP(国内総生産)に大きく左右される。GDPと
てこなかったことである。10年前、製造業で働いて
は、定期間内に国内で生み出された付加価値の総額
いた人は1200万人、さらに20年前は1500万人存在
のことであり、1人当たりのGDPが増えれば、幸
した。今は1000万人程度となり、介護、医療、福
福感は増す。
祉分野で働く人が10年間で300万人増えた。業種別
20年前、日本の1人当たりのGDPは、世界一
平均給料を比較すると、金融、製造業、建設業は平
を争っており、日本の総GDPは米国の2分の1に
均より高いのに対し、介護、医療、福祉などのサー
到達した。特に、日本の製造業の付加価値額は一
ビス業は平均より給料が安い。つまり、付加価値額
時、米国の85%にまで迫り、日本経済を牽引して
が高い業種から低い業種に人が移ってしまうと、1
きた。
人当たりのGDPは低下してしまうのだ。だからこ
しかし、バブル崩壊後は「失われた20年」と呼ば
そ、日本経済を成長させていくには、デフレを脱却
れ、世界各国の経済が順調に成長していく中で、日
し、積極的な設備投資を促進することで製造業を成
本は成長しなかった。企業の収益が落ち、個人の
長させることが必要となる。そのためには、安価で
給料が減り、消費は低迷するため、企業の収益は
安定的なエネルギー・電力を供給することが重要と
上がらないといったデフレスパイラルが20年間続
なってくる。
いた。その影響で、平均給料は1997年の約470万円
エネルギー政策は経済や私たちの生活に密接に関
をピークに、2012年は約410万円と13%近くも減少
わっており、国民の幸せに大きく関係しているので
し、物価下落率3%を差し引いても、実質の手取り
ある。
額は10%も減少したのだ。そして、給料が減って
しまったことにより、経済的な理由での自殺者数の
増加を招いたのである。
では、日本がこのような状況から脱却し、私たち
16
の生活を豊かにするためには、何をすべきなのか。
〔経済広報〕2015年3月号
エネルギーのオプションを持つことの重要性
エネルギー政策は3E+S、つまりエネルギー安
全保障
(Energy Security)
、経済性
(Economy)
、環
経済広報センター活動報告
境適合性(Environment)に安全性(Safety)を加えた
は将来的に何も生み出さない赤字である。さらに、
バランスの良い選択をする必要がある。
燃料費の大幅な増加から電気代は非常に高騰して
送電線が繋がっているEU(欧州連合)では、エネ
おり、全国平均で見ると家庭用中心の電灯料金が
ルギーの自給率は50%
(原子力含む)であり、パイ
19%、産業用が32%上がっており、製造業に大き
プライン網によって各国間で天然ガスの融通が可能
な影響を与えている。
である。ただし、天然ガス利用量の3分の1をロシ
つまり、世界のエネルギー情勢と各国の政策選択
アに依存しており、パイプラインが通るウクライナ
を見ても、エネルギーコスト上昇、エネルギー安全
問題には敏感だ。
保障と温暖化のリスクを総合的に考えると、多様な
ドイツは、エネルギー政策の大きな方向転換に踏
み切った。2013年に発電量の再生可能エネルギー
の占める割合は25%だったが、1kW時当たりの電
気料金が10年前に比べ約2倍に上昇した。また、
エネルギーのオプションを持つことが重要であると
分かる。
正しいリスク評価のもと冷静な選択を
地球温暖化を防止するために、再生可能エネルギー
世界には電気を十分に使えない国が今なお多くあ
を導入したものの、一方でコストの安い石炭火力が
り、これらの国が将来電気を使うようになると、温
増えてしまい、結果的に二酸化炭素は増えた。安全
暖化問題を考慮しつつ、貧困の問題を同時に解決し
保障、技術革新という観点からも貢献が見込めな
ていかなければならない。
かったので、再エネ普及のためのFIT政策を昨年
8月に原則廃止した。
ほとんどのエネルギーが自給可能な米国でさえ、
米国と中国が地球温暖化対策に取り組んでいくこ
とを表明した。その結果、品質の良い石炭を中国と
日本が奪い合い、将来的に安価で安定的に石炭を調
安全保障の問題を重要視している。石油や天然ガス
達できなくなる可能性もある。米国内の天然ガス需
という資源が自国にあり、石炭を輸出できる国が、
要増が世界のガス供給に与える影響も考える必要が
なぜ、新規に原子力発電所5基の建設を進めている
ある。
のか。それは、エネルギー政策において、オプショ
英国政府は、原子力には確かに事故のリスクはあ
ンを持つことが重要であると認識しているからであ
るが、原子力を利用しなければ、エネルギー価格が
る。昨年の大寒波による北東部地区での停電の危機
不安定化し、国民生活に大きな影響を与え、エネル
を救ったのは原子力だった。
ギー安全保障が脅かされ、温暖化対策にマイナスに
日本のエネルギー自給率は、東日本大震災以降、
なるというリスクの方が大きいと考え、新設に踏み
原子力発電所が停止し、わずか5~6%と低い上
切っている。世界でも、原子力は増えてきており、
に、送電線もパイプラインも、どの国とも繋がって
今後は2倍以上になる見込みだ。
いない。そして、石油の85%、天然ガスの30%を
エネルギーコスト、エネルギー安全保障と温暖化
中東から輸入している中で、米国のシェールガス革
リスクといった問題が複雑に絡み合う日本の状況を
命がリスク分散、価格低減のチャンスであると思っ
踏まえた上で、どのようなエネルギーを選択してい
ているが、この革命がもたらしたのは米国製造業の
くべきなのか。全てのものにはリスクがあり、どの
競争力強化であり、米国の独り勝ちである。
リスクがどの程度大きいのかを科学的事実やデータ
また中国は、山岳地帯にあるため、採掘コストは
高く、採取に必要な水源もなく、採掘後のガスを輸
に基づき、正当に評価した上で、エネルギー政策を
選択していくことが大切である。
送するためのパイプラインも不足しているといった
また、今後世界的には原子力が増加していく中
制限もある。さらに、米国では法律が変わり、環境
で、日本の原子力技術が大きく貢献するのは間違い
規制が今年1月からこれまで以上に厳しくなったこ
ない。日本の原子力技術を長期的な視点に立って継
とにより、一部地区ではシェールオイルの生産が今
承していくことは世界的に見ても重要である。日本
後減っていく可能性もある。
の置かれた立場、責任、役割を考えた上で、正しい
原子力発電所が全て停止している現在、化石燃
料比率がオイルショック当時に戻り、2013年度の
日本の貿易赤字は13兆円を超えた。しかも、これ
リスク評価のもと、冷静な選択をしていくことが重
要である。
k
(文責:国内広報部主任研究員 金子雄太)
2015年3月号〔経済広報〕
17
経団連ビジョン
「豊かで活力ある日本」の再生
~経団連ビジョン~
2015年1月1日、経団連は、ビジョン「『豊かで活力ある日本』の再生―Innovation & Globalization―」
を公表した。ビジョンでは、15年後の2030年を展望し、目指すべき国家像と、それを実現するための政策
課題を挙げている。特に、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年を、2030年に向けた
重要なマイルストーンと位置付け、それまでに政府、企業、国民などが集中的に取り組むべき課題を整理し
た。経団連としては、このビジョンの実現に向けて、今後の活動を展開していく。以下、ビジョンの章立て
に沿って、概要を紹介する。
はじめに
アベノミクスにより、経済再生への期待が高まり
つつあるなど、日本にとって最大の、そして最後と
こうした点を踏まえ、
「イノベーション」
と
「グロー
バリゼーション」が経済活力の源泉であるとの認識
の下、2030年のあるべき(2020年代に実現すべき)
日本の姿を描くこととした。
もいえる好機が到来している。一方で、先行きは、
企業の役割と経団連の使命
本格的な人口減少や、社会保障給付費の急速な増
加、原発停止に伴うエネルギー問題、経常収支赤字
●企業の役割
化への懸念など、課題が山積している。
明るい未来を切り拓き、活力ある経済・社会を次
代へ引き継いでいくためには、政府・企業・国民の
企業の持続的成長は、国民生活の向上と一体を成
している。このことを、財務省の
「法人企業統計」
を
用いて明らかにしたのが図表1である。
それぞれが、オールジャパンで日本再興を図る必要
がある。
政府は、企業活動が国民生活の豊かさを生み出す
図表1:企業活動の生み出す付加価値と
その使われ方
(2013年度)
原動力であるとの認識の下、事業環境の国際的なイ
コールフッティングの実現や経済連携の推進などに
取り組む。さらに、国民生活のセーフティネットで
ある社会保障制度の持続可能性を確保するととも
に、少子化対策などにも取り組み、
「自助」
「共助」
「公
助」によって国民が安心して暮らせる社会を構築す
る。
企業は、設備投資や研究開発投資を活発化させ、
「積極経営」を通じたイノベーションの推進や、新興
国をはじめとする世界の成長の積極的な取り込み、
大胆な事業再編などにより、次々に新たな成長機
会・雇用機会を国内で創出し、自ら経済の好循環を
生み出していく。
18
企業の経済活動によって生み出される年間の付加
価値は、2013年度の実績で276.3兆円。このうち6
一方、国民一人ひとりの不断の努力も求められ
割強の170.5兆円が給与に回り1、約4540万人の雇用
る。国民は、自らの権利・義務を認識し、
「自主」
「自
を維持・創出することで、約2670万世帯の日々の
立」
「自己責任」の原則の下に行動する必要がある。
暮らしを支えている2。さらに、企業による税・社
〔経済広報〕2015年3月号
経団連ビジョン
会保険料の負担額(計48.3兆円)は、国民生活の安
心・安全の基盤となっている。
国民生活を一層豊かなものとしていくため、企業
2030年までに目指すべき国家像
ビジョンでは、2030年までに目指すべき国家像を、
は、自ら主体的にリスクをとって、設備投資・研究
1.豊かで活力ある国民生活を実現する
開発投資などの事業拡大投資を行い、積極的に成長
2.人口1億人を維持し、魅力ある都市・地域を形
機会を創出することで、雇用機会・賃金の拡大に努
めることが求められる。
同時に、企業市民として、法と社会規範を遵守
し、顧客・消費者、従業員、株主、地域社会など幅
広いステークホルダーに対して貢献していく。
企業は、経営資源を効率的に配分し、持続的に付
加価値を高めていくための基盤として、健全なコー
ポレートガバナンスの向上に努める。
●経団連の使命とアクション
~ Policy & Action ~
経団連の使命は、日本の国益や将来を見据え、
「企
業と企業を支える個人や地域の活力を引き出し、経
済の自律的な発展と国民生活の向上に寄与する」こ
とである3。
成する
3.成長国家としての強い基盤を確立する
4.地球規模の課題を解決し世界の繁栄に貢献する
の4つに集約した。
日本としては、これら4つの国家像を目指す中
で、頑張った者が報われる社会を構築し、
(1)「 若者が日本国民であることに誇りを持ち、
チャレンジ精神を発揮し、希望ある未来を切
り拓いていける国」
(2)「世界から信頼され、尊敬される国」
を実現しなければならない。
目指すべき国家像の実現に向けた課題
ビジョンでは政府・企業・国民などが取り組むべ
経団連は、民主導の成長実現に向けて、経済界全
き課題として、3つの総合課題と、目指すべき国家
体の進むべき方向性を示し、企業の積極果敢な行動
像それぞれに対応する28の個別課題を整理した(図
を先導する。併せて、ボーダレスな経済活動を行う
表2)
。
上で必要となる各国経済団体との連携を図るととも
に、積極的な民間外交を展開する。その際、時代の
図表2:目指すべき国家像に向けた課題
潮流や国民意識の変化に合わせて、経団連自身の不
断の改革努力を行い、進化を続けていく。
また、日本経済の再生には地域経済の発展が不可
欠との認識の下、経団連は地域経済の発展に向け
て、日本商工会議所や地方経済団体などとの連携
をさらに深め、政治・行政に対して積極的に政策提
言・働き掛けを行う。
デフレからの脱却と日本再興に向けた正念場にあ
る今、経団連は、政治・行政との意思疎通を密に
し、現下の難局を乗り越えるべく、積極的に提言
し、豊かで活力ある国民生活の実現に向けて自らも
果敢に行動する。
2030年の日本経済・産業の姿
1 国税庁「民間給与実態統計調査」によれば、2013年の金
融・保険業を含む全産業の給与総額は200.4兆円。
2 世帯数は総務省「労働力調査」より概算。なお、金融・
保険業を含めた場合、雇用者数は約4690万人、世帯数は
約2840万世帯となる。
3 経団連の定款第3条より。
●現状を放置した場合のマクロ経済の姿
ビジョンでは、これらの改革を一切行わず、現状
を放置した場合の経済・財政の姿について、マクロ
経済モデルによる定量的試算を行った
(図表3)
。
2015年3月号〔経済広報〕
19
経団連ビジョン
図表3:現状を放置した場合のマクロ経済の姿
度の持続的成長が実現する。結果として、2030年
度時点の名目GDPは約830兆円、国民1人当たり
約700万円まで拡大する。
また、社会保障・税一体改革をはじめとする財政
再建への取り組みや、行政改革への取り組みを通じ
た歳出の効率化などにより、プライマリーバランス
は2020年度に黒字化し、長期債務残高の対GDP
比も緩やかに低下する。
●ビジョンを実現した場合の産業構造の姿
この試算では、国民生活を豊かにする飛躍的なイ
最後に、みずほ銀行産業調査部の協力を得て、ビ
ノベーションや、事業環境のイコールフッティング
ジョンを実現した場合の2030年の産業構造の姿を
は実現せず、グローバリゼーションによって世界経
描いた。
済の成長を取り込むこともできない。結果として、
既存産業は、イノベーションによる非連続的な生
2030年度時点の名目GDP(国内総生産)は615兆
産性の向上や、
「モノ」
と
「サービス」
といった業際間
円、国民1人当たりでは約530万円にとどまる。
の融合、さらには、グローバリゼーションによる海
また、社会保障・税一体改革は一向に進まず、財
外需要の獲得を通じて競争力を強化し、付加価値
政規律は悪化の一途を辿る。こうした状況を受け
(実質ベース、以下同様)を2013年度比で約110兆円
て、日本国債に対する市場の信認は失われ、長期金
拡大させる。さらに、イノベーションによる生産性
利は欧州債務危機に直面した南欧諸国並みの水準ま
の向上と、業際間の融合を通じて、新産業も国内で
で上昇する。プライマリーバランスの赤字額の対G
続々と生まれ、2030年には新たに約100兆円の付加
DP比は、▲6.5%まで悪化し、長期債務残高の対
価値を創出する。
GDP比も無限に増大を続ける危機的状況となる。
●ビジョンを実現した場合のマクロ経済の姿
現状を放置し、手をこまねいていては、明るい未
来を切り拓くことは到底できない。そこで、ビジョ
ンで掲げた改革の着実な実行により、どのような成
結果として、全産業の付加価値規模は、2013年
度比で約+210兆円となる。
結び ~「豊かで活力ある日本」
の
再生に向けた経団連の決意 ~
長経路が実現され、財政の持続可能性は確保される
日本経済は、長引くデフレによる縮小均衡から脱
のか、といった点について、一定の前提条件の下で
却できるか否かの正念場にある。こうした危機感を
試算を行った(図表4)。
国全体で共有し、旧来の制度や慣行と、その根底に
ある国民的な意識や社会的な通念をイノベートする
図表4:ビジョンを実現した場合のマクロ経済の姿
ことが必要である。
成熟した社会の改革には多大なエネルギーが必要
となる。本ビジョンに記した一つひとつの課題を乗
り越えていく上で、痛みや摩擦を厭わない勇気と挑
戦する行動力が求められる。
経団連は、
「豊かで活力ある日本」
の再生に向けて、
未来志向で積極果敢に行動し、経済界を先導してい
く。このため、榊原経団連会長による安倍総理への
ビジョン手交や講演(読売国際経済懇話会、日本記
この試算では、イノベーションによる生産性の向
者クラブ)のほか、政府・与党への説明、また今後
上や、グローバリゼーションによる海外需要の獲
は大学での講義なども含め、様々な機会を捉え、活
得、事業環境の国際的イコールフッティングなどの
動を展開していくこととしている。 改革を全て実行することで、名目3%、実質2%程
20
〔経済広報〕2015年3月号
k
(文:経団連 経済政策本部)
技 術 広 報
研 究
4
キリン(株)
ブランド価値の向上に繋げる技術広報
キリンの技術広報
や研究機関などの専門家にも伝えることを想定して
いる。従って、リリースを作っていく過程ではR&
キリンでは、キリンビール株式会社の時代から技
D部門だけでなく、コーポレートコミュニケーショ
術広報を行っていたが、2013年1月のキリン株式
ン部門の文系の社員も関わり、一般の人が読んでも
会社設立からは、R&D部門とコーポレートコミュ
分かるレベルまで表現をかみ砕いている。専門用語
ニケーション部のスタッフが連携した組織的な技術
には注釈を付け、できるだけ図表で説明するなどの配
広報体制を構築し、研究成果や技術開発の情報をお
慮をしているが、一方で、平易な表現を気にしすぎ
客さまに分かりやすく伝えていくよう心掛けてい
るあまり科学的に誤解を招きかねない不正確な説明
る。技術広報を行う目的は、同社の技術や研究成果
になる場合もあり、この点は非常に注意している。
が製品やサービス、活動にどう繋がっているかをお
例えば、乳酸菌の免疫への作用メカニズムのよう
客さまに伝えるとともに、それらの付加価値を示す
な専門的なリリースの場合は、技術広報の手法で
ことであり、ひいてはキリンのブランド価値向上に
は、その内容を伝えることが非常に難しい。絵と文
繋げることである。
字だけでは分かりやすく説明できないので、説明用
の動画を作成してメディアに詳しく解説した。ブラ
何をどのように伝えるか
ンド価値向上に繋げるため、強調したい部分が確実
に伝わり、かつ正確な情報を示すことを目的に動画
同社では、5つの研究所を束ねるR&D本部内に
を作成した。その結果、記者に理解してもらえる説
技術統括部があり、その中の3名が技術広報に携
明をスムーズにすることができ、記事の掲載にも繋
わっている。年初に技術統括部が各研究所にヒア
がり、非常に有効な手段だった。
リングをして、技術リリース案件を集約、その中か
キリンの技術広報について、同社R&D本部技術
ら取捨選択を行っている。その後、コーポレート
統括部の内田陽氏は、
「印象に残っている技術リリー
コミュニケーション部門の技術広報担当者を交え
スは、東日本大震災の復興支援活動の一環として、
て、各案件についてリリースの位置付けを含めて議
当社が2013年4月より、
『東北地方海岸林再生に向
論。製品の発売などとのタイミングを見つつ、会社
けたマツノザイセンチュウ抵抗性クロマツ種苗生産
として価値向上に繋がると最終的に判断したものを
の飛躍的向上』というプロジェクトに参画している
リリースしている。さらに、定期的に各研究所研究
ことを伝えるリリースである。長年培ってきた植物
員、技術統括部の担当とコーポレートコミュニケー
の研究成果を活用して、“クロマツ種子胚からの苗
ション部門でミーティングを行い、発表予定のリ
木大量増殖技術”の開発に着手することを示すこと
リースの進捗状況、公開方法など、密な情報交換や
で、当社の研究を商品だけでなくCSVの観点から
検討を欠かさない。
も企業ブランドの価値向上に繋げることができた」
技術広報の対象は、最終的には一般の消費者であ
るが、研究や技術の成果発表という観点から、大学
と語る。 k
(文:国内広報部主任研究員 磯部 勤)
2015年3月号〔経済広報〕
21
2014年11月21日~
5月17日~6月15日
12月8日
NEWS
Keizai Koho Center News
11
/
21
師:黒田 吉広 西日本電信電話 取
締役設備本部ネットワーク部長)
12
/
1
「企業広報講座
(第5回
東京会場)
」を経団連会館
で開催し、プラップジャパンの村
11
/
26
早稲田大学商学部で「企
清貴執行役員戦略企画部部長が
業 人 派 遣 講 座 」を 実 施 し
「危機管理広報~何故多くの企業
た。
(講師:細包 憲志 三菱地所 執
は謝罪会見に失敗するのか?~」
行役員丸の内開発部長)
をテーマに講演した。参加者は約
「企業と生活者懇談会」
100名。
岡県福岡市)で開催し、生活者17
11
/
27
名が参加した。
テレビ放送網の宮島香澄報道局解
早稲田大学理工学部で
12
/ 「企業人派遣講座」を実施
1
説委員が「人口減の日本と女性の
した。
(講師:森重 福一 日立シス
活躍推進」のテーマで講演した。
テムズ 公共事業グループ公共事
参加者は約60名。
業企画本部事業企画部チーフコン
を日清製粉の福岡工場(福
当センターが後援する
11
/ 「第40回産業教育シンポジ
23
「女性の活躍推進に関す
る講演会」を開催し、日本
ウム」
が東京都江東区で開催され、
サルタント)
約100名の教員が参加した。
11
/
28
11
/ 「企業人派遣講座」を実施
24
会」を開催した。日産自動車の志
12
/
1
賀俊之副会長が
「日産のグローバ
回産業施設見学会」をヤマトホー
した。
(講師:片岡 秀夫 東芝ライ
ル戦略における中国事業の位置付
ルディングスの羽田クロノゲート
フスタイル ビジュアルソリュー
け」と題して、学生、来賓者合わ
(東京都大田区)
で開催した。参加
ション事業本部VSクラウド&
せて約300名の聴講者を前に講演
サービス推進室室長)
した。
11
/
25
バー・ガイドライン説明
11
/ 「企業人派遣講座」を実施
29
師:三村 千鶴 中国放送 コンテン
会」を大阪市で開催した。参加者
した。
(講師:安田 誠 日立製作所
ツビジネス局コンテンツセンター
は約500名。
情報・通信システム社システム&
センター長)
早稲田大学理工学部で
「関西地区マイナン
中国広州市にある中山
大学で「中国有力大学講演
早稲田大学理工学部で
会 員 企 業 の 総 務・ 広 報
担当者を対象とする「第29
者は15名。
12
/
2
広島市立大学で「企業人
派遣講座」を実施した。
(講
サ ー ビ ス 部 門Senior Technology
11
/
25
22
広島市立大学で「企業人
派遣講座」を実施した。
(講
〔経済広報〕2015年3月号
Evangelist)
12
/
3
海外広報セミナー「AS
EANにおける社会広報
体制のあり方」を開催し、ウェー
で講演した。参加者は約40名。
当センターが後援する
12
/ 「第41回産業教育シンポジ
7
12
/
4
バー・シャンドウィックの西谷武夫
会長が講演した。
( 詳細は、本誌
13ページを参照)
12
/
3
講演会「メキシコ経済・
ウム」
「第60回最新環境教育
(CO₂
産業の現状~好調な自動
等)
に関わる教育セミナー」が大阪
車産業と動き出すエネルギー改革
市で開催され、約70名の教員が
早稲田大学商学部で「企
~」を開催し、日本貿易振興機構
参加した。
業 人 派 遣 講 座 」を 実 施 し
海外調査部中南米課の中畑貴雄課
た。
(講師:坂口 肇 豊田通商 執行
長代理が講演した。参加者は約
役員コーポレート本部本部長補佐
90名。 渉外広報部部長、新規事業開発部
12
/
3
東 京 工 業 大 学・ 大 学 院
で
「企業人派遣講座」を実
当センターの事業活動
代表取締役が「実践!緊急時のメ
ディア対応―ミニ演習と最新事例
に、ご意見を伺うことを目的に、
に学ぶ―」のテーマで講演した。
経団連会館で
「事業活動に関する
参加者は22名。
懇談会および講演会」を開催した。
燃料電池事業推進部長)
久保田政一理事長の挨拶の後、中
香川県高松市で「女性の
活躍推進に関する講演会」
山洋常務理事・事務局長が2014
早稲田大学理工学部で
12
/ 「企業人派遣講座」を実施
8
年度事業活動の中間報告と今後の
した。
(講師:須藤 博史 東日本電
予定について説明した。
信電話 東京事業部総務部人事部
を開催し、経済評論家/大阪経済
懇談に引き続き、国際大学の北
大学客員教授の岡田晃氏が「女性
岡伸一学長が
「日本のアジア外交」
を
の活躍促進と地方創生」のテーマ
テーマに講演した。参加者は約70名。
PR・IR・危機管理
4月号
定価:1300円
(税込)
編集・発行
株式会社宣伝会議
購読申込
月刊「広報会議」読者サービスセンター
TEL:03-6418-3328
インターネットからもお申し込みいただけます。
http://sendenkaigi.com/
名古屋会場)
」を名古屋で
を会員に説明するととも
施した。
(講師:穴水 孝 東京ガス
12
/
3
「企業広報講座
(第2回
開催し、エイレックスの江良俊郎
12
/
5
担当)
12
/
8
門担当部長)
k
(国内広報部 岡本清美)
[巻頭特集]相次ぐTwitterのネガティブ投稿
「ネット告発」
と広報対応
[特集]
ステークホルダー別 「伝わる」文章術
[シリーズ]
デジタル広報再入門
コンテンツ発想で顧客接点を最大化
2015年3月号〔経済広報〕
23
企業広報ニュース
ウェブ
サイト
ブリヂストンがウェブサイト
をリニューアル
ブリヂストンは、2014年12月に日本国内向けとグ
ローバル向けのウェブサイトをリニューアルした。
前回のリニューアル(2010年)以降大きく変化してき
たウェブを取り巻く環境に適応することを目的に、今
回のリニューアルでは、
「ユーザーの利便性向上」
「レス
ポンシブウェブデザインを採用したモバイルデバイス
への対応」「時代に即したデザインへの刷新」の3点を
実施。
http://www.bridgestone.co.jp/
さらに日本国内向けサイトは、当社の主力商品であ
るタイヤに関する情報を集約したタイヤサイトを新設
するなど、ユーザーが求める情報により早く的確にア
クセスできるよう、サイトの構造・導線を大幅に改良
した。例えば「タイヤ製品情報ページ」から「店舗検索
ページ」へスムーズに遷移できるようにメニューなど
を改良することで、商品の購入を希望するお客さまに
とっての使い勝手の向上を図った。
またグローバルサイトは、アクセス元の地域によっ
て表示内容をカスタマイズするなど、世界中の様々な
ユーザーが目的の情報や目的のウェブサイトに、より
スムーズにたどりつけるように構築。併せて、グルー
http://www.bridgestone.com/
プ全体の情報をビジュアルで分かりやすく伝えるコン
テンツを用意し、ブリヂストングループ全体の
「顔」
としての役割強化を図った。
今後も継続的な改善・改良を実施し、ウェブサイトを進化させることで、皆さまとのより一
層の信頼関係の構築を目指すとともに、ブランド価値のさらなる向上を図っていきたい。 k
(
(株)
ブリヂストン 広報部広報第3課長 馬場大輔)
「社会と向き合い要請に応えることも企業の役割」
教育支援
大和ハウス工業の出張授業
「 スクール」
D's
と考える大和ハウス工業では、2006年より地域社会
の持続的発展に貢献すべく、「地域共生活動」を全国
の拠点で積極的に行っている。特に近年では、
「豊か
でサステナブルな社会の構築には未来を担う子ども
たちの教育が重要」と捉え、
「次世代育成」
に関する活
動を充実させている。
小学校高学年を対象とした出張授業「D'sスクー
ル」では、主に「快適な住まいとは」をテーマに、ハ
ウスメーカーとして培ったノウハウを交えながら、夏に涼しく住まうコツ・冬に暖かく住まう
コツ、居室の採光計画や通風計画について、住宅のペーパークラフトを通して学んでもらう。
また、太陽光発電システムや家庭用リチウムイオン蓄電池、HEMS(ホーム・エネルギー・
マネジメント・システム)を用いた環境配慮型住宅の説明を通じ、深刻化する環境問題やエネ
ルギー問題への対応の必要性を伝えている。
2014年からは、東日本大震災以降に全国で強まった防災教育に対する要請に応え、安全・
安心な住まいを提供する企業として、「減災」
をテーマとした新たな授業プログラムを開始。地
震発生時の初動や災害時避難場所の標識に関するクイズ、建築物の耐震構造について学べる実
習キットなどを用いて、
「自助・共助・公助」
による自然災害への備えについて教えている。
また、住宅建築にとどまらない多彩な事業領域を生かすことで、上記以外の授業や職場体験
受け入れの要請にも応えることができ、地域社会の持続的発展に寄与している。
k
(大和ハウス工業
(株)
CSR部社会責任グループ主任 島田 学)
24
〔経済広報〕2015年3月号
企業広報ニュース
大手監査法人トーマツのリスクマネジメントなどの調査・研究を行うトーマツ企業リスク研
広 報
トピックス
究所が、
「企業のリスクマネジメントに関する調査
(2014年版)
」
の結果を1月に発表した。この
調査は2002年から始まり、今回で13回目。セミナー出席者(主に企業のリスク管理部門、コン
企業のリスクマネジメント
に関する調査結果
プライアンス部門、内部監査部門)に対して調査し、239社が回答。
潜在的リスクを識別・評価する「リスク評価を実施している」と回答した企業の割合は2009
年以降毎年80%超で推移し、リスクマネジメント体制について、
「拡大した」
と回答した企業が
2012年から12%→18%→33%と増加している。一方で、56%の企業が、自社グループのリス
クマネジメント体制が「適切に構築されているとは言えない」
と回答している。
優先すべきリスクのランキングは、
「情報漏えい」
(31%)
、
「子会社ガバナンスに係るリスク」
(29%)、「海外拠点の運営に係るリスク」
(28%)
、
「地震・風水害等、災害対策の不備」
(21%)
、
「製品、サービス品質のチェック体制の不備」
(16%)
、
「人材流出、人材獲得の困難による人材
不足」
(13%)、
「大規模システムダウン・情報逸失」
(13%)
、
「規制緩和、強化
(法改正、業界基準
等)への対応の遅れ」
(10%)、
「業務運用ミスによる多額損失の発生」
(9%)
、
「海外取引に係るリ
スク」
(9%)、
「役員・従業員の不正」
(9%)
、
「海外企業買収後の事業統合リスク」
(9%)
と続い
ている。 Book
k
(国内広報部主任研究員 伊藤貴範)
『情報倫理 ネット時代の
ソーシャル・リテラシー』
情報倫理を「コンピューターやインターネットの活用が不
可欠な情報通信社会における情報技術に関連するモラルや社
会的ルール」と同書では定義している。著者は、SNS(ソー
シャル・ネットワーキング・サービス)の充実やビッグデータ
の活用などにより、情報技術の利用者が拡大している現代に
おいて、
「情報倫理の理解と実践の重要性は増している」
と指摘
する。
同書では、様々な側面から情報倫理の基本を解説する。具
体的には、インターネットを使用する際に知っておきたい情
報セキュリティー、サイバー犯罪とその防止に向けた国の取
り組み、情報通信社会における個人情報の利用とプライバ
シー観、知的所有権の考え方などについて、過去の事例や関
連する法律を挙げながら分かりやすく説明している。
第10章「企業と情報倫理」では、社会の一員である企業には、 髙橋慈子、原田隆史、
佐藤 翔、岡部晋典 著、
企業が持つ多様な情報を適切に作成、管理し、必要に応じて
技術評論社
公開する透明性が求められていると指摘する。また、第14章
2015年1月発行、
「情報通信社会とリテラシー」では、情報リテラシー教育と並
1280円
(税別)
行して、情報の正誤を正しく把握し、多くの情報の中から必
要かつ正確な情報を収集するためのメディア・リテラシー教
育の必要性を強調する。
大学で情報学を教える著者が教科書としても使えるようにと執筆した同書は、情報リテラ
シーの基本を学ぶ上で役立つ一冊だ。 k
(国内広報部主任研究員 大野祥子)
2015年3月号〔経済広報〕
25
2015
3
企業・団体のCSR活動
豊田通商が事業と社会貢献でアフリカを支援
豊田通商(株)
お問い合わせ先
TEL:03-4306-8200(東京) 052-584-5011(名古屋)
HP
http://www.toyota-tsusho.com/
http://www.kkc.or.jp/
平成
昭和
年 月 日発行
(毎月 回 日発行)
第
年 月 日第 種郵便物認可
55 27
10 3
23 1
3
1
1
治安・事故対策のため、ケニアでは街灯の設置を推進
2014年7月、人材育成のための
「トヨタケニアアカデミー」
を開所
り、豊かな社会づくりに貢献する価値創造企業を目
に、国の将来を担う人材を育成するため、1990年
指す」ことを企業理念として、世界各国で事業を展
に
「トヨタケニア基金」を設立し、2014年までに累
開するとともに現地社会の発展に貢献している。
計387人の学生たちに奨学金を給付した。受給者か
いてきたアフリカ地域での取り組みだ。大小合わせ
専念でき、大学で得た知識を社会に還元できる立場
て54もの国が存在するアフリカは、急激な内需の
になった」
といった感謝の声が寄せられている。
拡大や豊富な天然資源などを背景に、各国の経済が
また、新興国では治安・事故対策も重要な社会的
急速に成長し市場として注目され始めている。一方
課題であることから、グループ会社のToyota Kenya
で、貧富の差や局地的な紛争など、依然問題を抱え
Limitedを通じて、2000年から街灯を整備する活動
ている。そこで同社では、現地社会に密着した事業
を開始。2014年までに累計1000本超の街灯を設置
投資を実施し、社会貢献活動にも力を入れている。
した。
ケニアでは、地域の発展に重要な役割を果たす自
2006年から継続的に実施している未開発地域の
動車の普及のため、中小企業や個人事業主などが自
自立支援では、2014年9月に南アフリカ共和国で、
動車を購入しやすくするよう、分割払い(割賦)や
孤児院施設や未開発地域農民を訪問した。孤児施設
リースを導入するなど、販売方法を工夫したり、現
にはジャングルジムをはじめ、食料、衣類、玩具を
地雇用の社員・役員の能力向上を支援するため、職
寄贈。20人の子どもたちが1つのコンテナで生活
種、階層ごとのトレーニングプログラムを整備した
しているという厳しい環境の中、プレゼントを手に
した子どもたちの笑顔を見ることができたという。
地域農民には、帽子、作業着、長靴などの農作業用
品一式を寄贈した。
同社は今後も、大きな成長が期待されるアフリカ
で、現地社会と一体になった事業創造をさらに進め
るとともに、各国の社会事情に応じた社会貢献活動
にも積極的に取り組んでいく考えだ。
南アフリカ クワズル・ナタール州の未開発地域農民を訪問
し、農作業用品の寄贈で自立を支援
発行:一般財団法人 経済広報センター
427
発行人/中山 洋 編集人/佐桑 徹 [ ISSN 0918–4600
]
東京都千代田区大手町一 三
(本体価格三〇〇円+税)
- 二
- 経団連会館 電話〇三 六
- 七四一 〇
- 〇 二 一 〒一〇〇 〇
- 〇〇四 ( 送料別、賛助会員の購読料は会費に含む)
らは「学費と寮費を給付いただいたおかげで学業に
3
号
そのひとつが、90年以上にわたり事業基盤を築
37
号通巻
りするなどのキャリアアップに注力している。同時
巻第
豊田通商は、
「人・社会・地球との共存共栄をはか
k (国内広報部主任研究員 杉山佳子)
Printed in Japan