硬膜外持続注入麻酔 における投与法 と Mepivacaineの

臨 床 薬 理 Jpn
第7回
J Clin
Pharmacol
Ther
18(1)Mar
1987
203
日本 臨 床 薬 理 学 会1986年11月19日
∼20日
名古屋
硬 膜 外 持 続 注 入 麻 酔 に お け る投 与 法 と
Mepivacaineの
血 中濃度
可
知
茂
男*1西
川
三 喜
川
影
逸
郎*1藤
井
喜
北
見 善
一 郎*2高
田
持 続 硬 膜 外 麻 酔 時 の 局 麻 薬 の 投 与 で は,従
来 一
男*1鈴
木
一 郎*1〓
知
一
田
結 果:穿
刺 部 位 はT9-12が22例,L1-3が2例
平 均 麻 酔 時 間7.1±2.7hrで
用 い られ る.今
30mgで,初
用 い,持
回,著
者 らは局 麻 薬 の初 回量 を注
時 間 経 過 後,持
続 注 入 を 開 始 す る方 法 を
続 注 入 開 始 時 期 お よび注 入 速 度 に よる血
13.8±5.2min後
1.46μg/mlで
に 現 れ,そ
し な か っ た19例(変
察 し た.
体 重49.3±7.2kg)に
対 し,硬
挿 入 後,mepivacaine
と し て 約200mg注
HClを
膜 外 カ テー テ ル
初 回 投 与 量(D0)
は 性 別,年
齢,体
重,手
C群)と
麻薬の投与
術 内 容 な ど の 区 別 な く,
τ/k0を20/100,30/150お
よ び60/150(各
し た 投 与 法 で 行 っ た.血
濃 度 は 動 脈 血 を採 取 し,そ
々A,B,
除 い たA群
の平 均 血 中 濃 度 の 推 移
続 注 入 開 始 時 の 血 中 濃 度 はA群
で
群 で2.68±0.79μg/mlお
0.39μg/mlで
よ びC群
あ っ た.持
目 の 血 中 濃 度 はA群
中mepivacaine
の血 清 中 濃度 を測 定 し
お よ びC群
で2.00±
続 注 入 開 始 後4∼5hr
で6.09±2.09μg/ml(A':
で5.15±1.58μg/ml
で6.14±1.43μg/mlで
あ っ た.ま た,
麻 酔 終 了 時 の 血 中 濃 度 は5.72±1.81μg/mlで
測 定 はT.N。Appleyardら
定 法1)を 改 良 し た.内
のbupivacaineの
測
部 標 準 物 質 にcyprohepta
使 用 し,NaOHア
抽 出 し,0.1N塩
NaOHを
肝 切 除 術 患者 と低 体 重 患
5.08±1.11μg/ml),B群
た.
dineを
更 例 はB群1例,C群4例)
4.34±1.67μg/ml(A':3.91±0.81μg/ml),B
入 し,τ(min)後k0(mg/hr)
の 注 入 速 度 で 持 続 注 入 を 開 始 し た.局
者(*印)を
で あ る.持
の 血 中 濃 度 は4.90±
酔途 中で投与量 を変更
続 注 入 中 の 血 中 濃 度 の 推 移 をFig.
に 示 し た.Fig.中A'は
齢63±8.5,
あ っ た.D0は212±
あ っ た.麻
に つ い て,持
腹 術 患 者24例(年
で,
回量投 与 後 の血 中濃度 の ピーク は
中 局 麻 薬 濃 度 の 推 移 や 臨 床 効 果 に 対 す る 影 響 を観
対 象 ・方 法:開
功*2
季*2
回注 入 法 を ある 間 隔 を お い て繰 り返 す方 法 が よ く
入 し,τ
市*1
ル カ リ性 下 で エ ー テ ル
酸 で 逆 抽 出 を 行 っ た 後,5N
加 え再 び ア ル カ リ性 下 で エ ー テ ル 抽 出
を 行 っ た.測
定 に は ガ ス ク ロ マ トグ ラ フ ィ ー を 用
い た.
*1 浜 松 医 科 大 学 薬 剤 部
〓431-31浜
松 市 半 田 町3600
*2 聖 隷 三 方 原 病 院 麻 酔 科
あ っ た.全
例 に お い て 特 に 副 作 用 は 認 め られ な
か っ た が,A群
で 数 例 に 麻 酔 開 始3∼5hr目
か ら
血 圧 上 昇 の 傾 向 が 認 め ら れ た.
考 察:従
来 の 方 法 に よ る 局 麻 薬 の 血 中 濃 度 は投
与 ご と に 鋸 歯 状 に 増 加 し2),血 圧 の 変 動 も激 し い.
今 回 行 っ た 方 法 で は,持
続 注 入 中 の急 激 な血 圧 の
変 化 も見 ら れ ず,血 中 濃 度 も な だ らか に 増 加 し た.
こ の 方 法 は 従 来 の 方 法 に 較 べ,麻
酔 中 の血 圧 の 管
理 が 容 易 と な り,適
設 定 す れ ば,血
切 な τ,k0を
中濃 度 上昇 に伴 う中毒 の 危 険 性 を減 少 さ せ る こ と
が で き る と 考 え ら れ る.
204
一 般 演題
A
B
C
Mean
Fig. 持 続 注 入 中 の 血 中 濃 度.
Time:麻
肝 切 除術 患者 と低 体 重 患 者 の血 中濃 度 が 高 い の
は,前 者 で はmepivacaineが
肝 で代 謝 され る薬
酔 開 始 か らの 時 間
この 方法 で も同 一 の麻 酔 効 果 が得 られ る な らば,
4∼5hr目
以 降 の血 中 濃 度 の 上 昇 が あ ま り認 め ら
物 で あ り3)肝機 能 の低 下 に よ り消 失 が遅 れ た た め,
れ な い ことか ら,よ り有 用 な方法 と考 え られ る.
後 者 で は体重 あ た りの 投 与 量 が 多 い た め と考 え ら
しか し,数 例 にお い て血 圧 の 上昇 傾 向が 認 め られ
れ る.従 っ て群 間 の比 較 に は こ の2例 を除外 した.
た こ とか ら,麻 酔 効果 な どの 臨床 面 につ いて は今
持 続 注 入 開始 時 の血 中 濃 度 は τの延 長 と と もに
後 さ らに検 討 す る必要 が あ る.
そ の差 を生 じる が,持 続 注 入 が 開始 され る と時 間
文
の経 過 と と もに血 中濃 度 の 差 は減 少 す る傾 向 に あ
り,4∼5hr目
に は ほ とん ど認 め られ な い.そ の
血 中 濃 度 は5μg/ml前
後 で あ り,一 般 に 言 わ れ
る 中 毒 域(5∼6μg/ml以
上)3)か ら考 えれ ば許 容
範 囲 内 と い え よ う.こ の よ うに血 中濃 度 か ら見 れ
ば,5hr程
度 の 麻酔 にお い て はA,B,C群
のどの
投 与 法 を用 いて も問題 は ない と考 え られ る。
C群 に お い て9例 中4例
に持 続 注 入 開 始 前 後
で局 麻 薬 の 追 加投 与 が行 わ れ た こと を考 え る と,
D0200mg前
後 の 場 合 に は τを60minと
す る方
法 は臨床 上 特 に意義 を認 め な い.
A群 はB,C群
よ り少 な い持 続 注 入 量 の た め,
献
1 ) Appleyard, T. N. et al.:Bupivacaine
carbo
nate and bupivacaine hydrochrorid; A com
parison of brood concentration during epidural
blockade for vaginal surgery. Br. J. Anaesth.,
46:530-533 (1974).
2) 高 崎 真 弓 ほ か:持 続 硬 膜 外 麻 酔 中 の 血 中 メ ピ
バ カ イ ン 濃 度 の 推 移.麻 酔,XXXII3:298302(1983).
3) Tucker, G. T. et al.:Pharmacokinetics of local
anaesthetic agents. Br. J. Anaesth., 47:213224 (1975).