象牙の塔の住人 某大学のあるクラブの OB の懇親会がありました。110 名ほどが集まりました。歓談 や余興の観賞で楽しい一時を過ごしました。 閉会直前に会場に到着してスピーチをする予定になっていたこの懇親会に出席できる 資格のある、つまり同じクラブの OB が閉会後会場に現れました。 この OB が 12 月に母校で行われるホームカミング・デイの行事である講演会の宣伝を するのが現れた目的でした。 元駐米日本大使で現上智大学教授が講演するという紹介で是非参加してくださいとい う依頼でした。この OB がこの講演会主催の責任者ということです。 実を言うとこの OB は S さんが学生時代に英字新聞を編集していたときの 2 年後輩で す。その依頼しているときの彼の姿勢が、何とも民間では到底許されないものでした。 起立の姿勢ではなく、休めの姿勢で片手をポケットに突っ込んだまま先輩、同輩、後輩 に行事の内容を説明し参加を依頼したのです。 スピーチが終わったところで、その礼儀に悖る態度を注意しようと近づいたところ、 一人の参加者が近づいてきました。名誉教授はどこにいる(彼は母校の名誉教授になっ ていました)と血相変えて迫ってきました。 ”ここにいる参加者はあなたの教え子ではない。先輩もいる参加者にものを頼むのに その態度は何だ”とものすごい剣幕で名誉教授を難詰し始めました。名誉教授より 2 年 後輩でした。 これ以上の慷慨は見苦しいと思われたとき、S さんが二人の間に割って入って、抗議 する後輩に”これ以上の非難は見苦しい。もう止めた方がいい”と諭しました。まだ諦 めきれないという表情でしたが、”酒を飲み過ぎて口調が強くなりすぎた”と言いなが ら場を去って行きました。 何故このコラムの題を”象牙の塔の住人”としたのか、もう聡明な読者にはお分かり ですね。 -1-
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