(2016 年 3 月号掲載) 群馬県における空き家問題への取り組み 一般財団法人群馬経済研究所 主任研究員 伊勢 和広 【 要 約 】 1 . 「 住 宅 ・ 土 地 統 計 調 査 」 に よ れ ば 、 本 県 の 空 き 家 数 は 5 年 毎 に 行 わ れ る 調 査 の 度に 増加し、2013 年には約 15 万戸となり、空き家率(16.6%)も上昇が続いている。空 き家増加の背景としては、①新築を促す住宅政策、②人口減少と核家族化の進展、 ③家屋存続が有利となる固定資産税制度や取り壊し費用負担の問題、④狭い道路に 面した住宅のように、建築当初は適法であっても、その後の建築関連法や条例の改 正により現在の法令の基準を満たしていないため、建て替えや増改築が困難な物件 の存在、等々が考えられる。 2. 空き家増加を受けて、「空家等対策の推進に関する特別措置法」が 2015 年5月に全 面施行された。前橋市が県内初の空き家対策計画を策定したほか、高崎市は手厚い 空き家関連補助金制度を実施するなど、県内市町村でも空き家関連施策を活発化す る動きが出ている。 3 . 群 馬 経 済 研 究 所 が 行 っ た 県 内 市 町 村 へ の ア ン ケ ー ト 調 査 に よ れ ば 、 空 き 家 に 関 して の住民等からの苦情・相談については、「空き家売却の相談」、「建物等倒壊(の 危険)」、「雑草等繁茂」が上位になっている。また、市町村が空き家問題対策と して行っていることでは、「空き家相談窓口設置」、「空き家バンクの設置」、 「所有者等への助言・指導等」が上位となった。 4 . 空 き 家 問 題 の 解 決 方 法 と し て は 、 今 後 も 所 有 者 に よ る 解 体 ・ 売 却 ・ 賃 貸 化 を 促 すこ とが基本となる。所有者には資金的な制約もあると思われることから、空き家の解 体や修繕に対する補助金を行政側が支給すれば大きな効果を生む可能性がある。ま た、空き家を増やさないためには、税制などで住宅新築よりも中古住宅購入のほう が明らかに有利となる制度をつくることも必要であろう。 5 . 公 営 住 宅 を 民 間 貸 家 の 家 賃 補 助 に 置 き 換 え る な ど 市 町 村 自 身 の 政 策 転 換 も 必 要 だと 思われる。また、市民が自分たちの住環境に関心を持つよう、市町村は啓蒙活動を さらに進める必要があろう。
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