2015 年後期統計力学2演習 (担当:吉岡) 本授業を受講する際の注意等 • 毎回出席をとります。 • 成績は (出席点 30 点)+(黒板で解いた問題やレポート、60 点)+(質問・コメントなど 議論への参加度、10 点) の合計で付けます。 • 本演習中に講義の補足をすることが多々あるので、対応する講義の「統計力学2」 を必ず同時に受講して下さい。 予定している内容 1. 統計力学1の復習 (a) ミクロカノニカル分布とカノニカル分布 (b) 古典統計力学 2. 低温と量子効果 3. 開いた系と化学ポテンシャル 4. フェルミ統計とボーズ統計 5. 2次の相転移 これからは、http://goofy.phys.nara-wu.ac.jp/˜yoshioka/education-15.html に演習問題を pdf ファイルでアップロードする予定です。 1 —統計力学1の復習— 1. 分配関数 Z を用いて、平均エネルギー ⟨E⟩ はどのように表されるか。また、以下の 式を証明せよ。 d ⟨E⟩ = −⟨(E − ⟨E⟩)2 ⟩ dβ d2 ⟨E⟩ = ⟨(E − ⟨E⟩)3 ⟩ dβ 2 (1) (2) ただし、β = 1/(kB T ) である。さらに、式 (1) を使って、熱容量 C をエネルギーの 揺らぎ ⟨(E − ⟨E⟩)2 ⟩ を用いて表せ。 2. N 個の独立な一次元調和振動子 (角振動数:ω) からなる系がある。一個の調和振動 子のエネルギー固有値は ( ) 1 En = n + h̄ω (n = 0, 1, 2, · · · ) (3) 2 で与えられる。以下の問いに答えよ。 (a) まずミクロカノニカル分布を使って、その熱的性質を議論する。 i. 系全体のエネルギーを E = M h̄ω + N h̄ω/2 とする。取りうる状態の数 WN (E) を求めよ。 ii. エントロピー S を求めよ。ただし、N ≫ 1、M ≫ 1 としてスターリング の公式を用いよ。 ∂S 1 iii. = を用いて、エネルギーを温度 T の関数として求めよ。また、その ∂E T 結果を用いて、エントロピー S を温度 T の関数として求めよ。 (b) 次に、カノニカル分布の方法を用いる。 i. 一個の調和振動子の分配関数 z1 を求めよ。 ii. 系全体の分配関数 Z が Z = z1N であることを用いて、ヘルムホルツの自由 エネルギー F を求めよ。 iii. エネルギー E を求め、ミクロカノニカル分布の方法を用いて得られた結果 と比較せよ。 ∂F iv. エントロピー S = − を温度 T の関数として求め、ミクロカノニカル分 ∂T 布の方法を用いて得られた結果と比較せよ。 2 3. 磁場の方向に磁気モーメント ±µ を持ち得る N 個の原子が、温度 T の熱浴と接して 熱平衡状態にある。磁場の大きさを B として以下の問いに答えよ。 (a) まずミクロカノニカル分布を使って、その熱的性質を議論する。 i. 磁気モーメントが +µ となっている原子の数を N+ 、−µ となっている原子 の数を N− とする。系全体のエネルギー E を N+ 、N− を用いて表せ。また 取りうる状態の数 WN (E) を求めよ。 ii. エントロピー S を求めよ。ただし、スターリングの公式を用いよ。 ∂S 1 iii. = を用いて、エネルギーを温度 T の関数として求めよ。 ∂E T (b) 次に、カノニカル分布の方法を用いる。 i. 一個の原子の分配関数 z1 を求めよ。 ii. 系全体の分配関数 Z が Z = z1N であることを用いて、ヘルムホルツの自由 エネルギー F を求めよ。 iii. エネルギー E を求め、ミクロカノニカル分布の方法を用いて得られた結果 と比較せよ。 (c) 磁化 M を磁場 B の関数としてもとめ、図示せよ。 (d) 磁化率 χ = ∂M/∂B|B=0 を求めよ。 4. ミクロカノニカル分布の方法を用いて、体積 V の容器の中に閉じ込められた N 個 の自由粒子からなる理想気体のエントロピー S がエネルギー E の関数として、 } { 4πmE V 5 3 S(E) = N kB log + log + (4) 2 3(2πh̄)2 N N 2 と表されることを示せ。必要ならば、以下の事項を用いよ。 • 半径 R の n 次元球の体積 Vn (R) = 1 2π n/2 n R n Γ(n/2) • ガンマ関数 Γ(z) の漸近展開 (|z| ≫ 1) Γ(z) ∼ z log z − z 3 5. 式 (4) で与えられる理想気体のエントロピーを用いて、以下の問いに答えよ。 (a) エネルギー E を温度 T の関数として求めよ。 (b) エントロピー S を温度 T の関数として求めよ。 (c) ヘルムホルツの自由エネルギーを求めよ。 (d) 上記の結果を用いて、状態方程式を得よ。 (e) (b) で求められた S は温度がある特徴的な温度に比べはるかに小さい場合には、 正しい値とはならない。そのような温度を求めよ。また、その結果を物理的に 解釈せよ。 (f) 以下の量を求めよ。 ⟨(E − ⟨E⟩)2 ⟩ ⟨E⟩2 ⟨(E − ⟨E⟩)3 ⟩ ⟨E⟩3 (5) (6) 6. ピストンのついた容器の中に理想気体が入っている。そのエントロピーは式 (4) で 与えられる。容器およびピストンは断熱材でできているものとする。 (a) ピストンを急に引いて体積を 2 倍にした。この過程では気体は仕事をしない。 エントロピーの変化量 ∆S を求めよ。 (b) 次にピストンをゆっくり動かして体積を元に戻した。この時、気体のエネル ギーはどうなるか。 7. マックスウエル−ボルツマンの分布則では、運動量 p を持つ粒子の平均の数 n(p) は 以下の式で与えられる。 ( ) p2 n(p) ∝ exp − (7) 2mkB T 以下の問いに答えよ。 (a) 以下の式を満たすように規格化せよ。 N= ∑ p V n(p) = (2πh̄)3 4 ∫∫∫ ∞ −∞ dpx dpy dpz n(p) (8) (b) 粒子一個あたりの平均エネルギーを求めよ。 8. 古典統計力学を用いて、以下の問いに答えよ。 (a) N 個の独立な調和振動子 (角振動数:ω) の分配関数 Z 、ヘルムホルツの自由エ ネルギー F 、エントロピー S 、内部エネルギー E 、熱容量 C を求めよ。 (b) 体積 V の容器に閉じ込められた N 個の原子 (質量:m) からなる理想気体の、 分配関数 Z 、ヘルムホルツの自由エネルギー F 、エントロピー S 、圧力 p を求 めよ。また、それらの結果を問題5の結果と比較せよ。 9. 自由度が f の系の運動エネルギーが K= f ∑ αi p2i (αi > 0) (9) i=1 と書けるとする。この結果と古典統計力学を用いて運動エネルギーの期待値 ⟨K⟩ を 計算することによって、エネルギー等分配則を証明せよ。ただし、ポテンシャルエ ネルギーは運動量に依存しないものとする。 10. 以下のようなポテンシャル u(x) 1 kx2 u(x) = 2 ∞ (|x| < a) (10) (|x| > a) の中を運動する質量 m の粒子 N 個からなる系がある。この系を古典統計力学を用 いて取扱い、比熱について論ぜよ。 11. 不完全気体のハミルトニアンは以下のように与えられる。 N ∑ ∑ p2i + v(Rij ) H= 2m i=1 (11) (i,j) ただし、v(R) は粒子間の相互作用を表すポテンシャルであり、図 1 で与えられる。 また、Rij = |ri − rj | である。以下の問いに答えよ。 5 1 v(R) 0 0 1 2 3 R 図 1: (a) N B/V ≪ 1 として、この系のヘルムホルツの自由エネルギーが N 2 kB T B V (12) ( ) d3 R e−v(R)/kB T − 1 (13) F = F0 + となることを示せ。ただし、 1 B=− 2 ∫ (b) 上で得られたヘルムホルツの自由エネルギーから、ファンデルワールスの状態 方程式 ( ) N2 P + 2 a (V − nb) = N kB T (14) V を導出せよ。 12. ファンデルワールスの状態方程式は、T < Tc で熱力学的に不安定になる。臨界温度 Tc は以下の式によって決定される。 ( ) ∂P =0 (15) ∂V T =Tc ( 2 ) ∂ P =0 (16) ∂V 2 T =Tc Tc とその時の圧力 Pc および Vc を求めよ。また、p = P/Pc 、v = V /Vc 、t = T /Tc を 用いて状態方程式を書き直せ。 6
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