さまざまに変身する観音菩薩

さまざまに変身する観音菩薩
吉田 典代
観音菩薩は、人々の苦難を取り除き福を授ける菩薩として、また極楽に導く菩
薩として、古くから絶大な人気を集めてきました。相手に応じて変身し、最も
適切な姿で導くとされています。そのような変身した姿が三十三種類あるため、
いつしか「三十三」という数字が観音を象徴する数字となり、観音霊場を三十
三箇所めぐる巡礼なども組織されました。
○ 観音の三十三応現身
『法華経』では、観音菩薩が仏陀や僧侶、在家の男
女、阿修羅や毘沙門天など、三十三の姿に変身して
人々を助けると説いています。観音菩薩を女性的に
表す彫刻や絵画がありますが、それはこのような「女
性にも変身する」という意識が反映されているので
しょう。
○ 密教の変化観音
密教では、観音菩薩の力の強さが目で見てわ
かるように、顔や腕の数が多い観音菩薩が登
変
化
観
音
の
う
ち
十
一
面
観
音
場しました。十一面観音や千手観音などです。
顔が多いのは見る力の強さ、腕が多いのは救
い取る力の強さを示しています。
○ 三十三観音
禅宗では、水墨画の観音菩薩像が賞されまし
た。ゆったりしたポーズで水辺に坐ったり、
蓮の花びらの上に立っていたりする白い衣の
観音菩薩です。このような観音は中国におい
て唐代の末頃に現れ、後に三十三人分の観音
像が生まれました。
「三十三」という数字が共
通しているので紛らわしいですが、『法華経』
の三十三応現身とは違うものです。
三
十
三
観
音
の
う
ち
施
楽
観
音