IETCmonthly report

IETC monthly report
International Environmental Technology Centre
2015 年 6 月
水銀廃棄物管理
水銀は元素記号が Hg の重金属です。水銀は独自の特性を有し、その密
度は鉄(Fe)より重いです。常温・常圧で唯一の液体金属元素で、金や銀
など他の金属と簡単に溶解(アマルガム化)し、電池に用いれば一定の放
電レベルと安定した電圧を保ちます。
写真 1:水銀中に浮遊する鉄
これらの特性により、水銀は長年、蛍光灯、水銀温度計、水銀気圧計、
水銀スイッチ、歯科用アマルガム、薬剤など製品や産業用途に有用な金属
として認識されていました。現在、水銀は国際的な地球環境汚染物質とし
て認識されていますが、我々は生活の中でいくつかの水銀含有製品を未だ
に使用しています。
水銀は分解されることなく、大気中(水銀蒸気)、土壌(水銀イオン)、水中(メチル水銀)に残留し
ます。環境中の水銀の一部は、食物連鎖に取り込まれ、生物蓄積、生物濃縮 により最終的には人間によ
って摂取されます。
写真 2:歯科用アマルガム
人為的な水銀の排出や放出由来によるいくつかの水銀汚染例がありますが、
その中で最も深刻だったのが、半世紀以上前に発生した水俣病です。水俣市
においては、それまで見られなかった新しい病例の証拠が多数あったにもか
かわらず、ようやく 1956 年に水俣病が公式に確認されました。それから 10
年以上を経て、水銀が水俣病の原因物質として特定されました。水俣病は、
食物連鎖による深刻な水銀中毒が原因の神経疾患です。1956 年から半世紀以
上経過した 2013 年になり、国際社会は、水銀や水銀化合物の人為的排出と放
出から人の健康と環境を保護することを目的とし、新たな国際
条約として水銀に関する水俣条約を制定しました。
水銀を含む温度計や、通常 3~5 ミリグラムの水銀を含む蛍光灯を廃
棄物として処分する方法をご存知でしょうか?オープンダンプ処分地
(野積み)に水銀廃棄物を廃棄した場合、廃棄物に含まれる水銀は容
易に環境中に放出され、我々の暮らす環境に残留します。残留した水
銀は、人の健康と環境に悪影響を及ぼす恐れがあります。我々自身を
水銀から守るためには、環境上適正な方法で水銀廃棄物を処分しなけ
ればなりません。
IETC は、環境上適正な方法で水銀廃棄物を管理するための能力開発
を実施するために、水銀廃棄物問題に直面している国への支援とし
て、水銀廃棄物の環境上適正な管理(ESM)に関する活動を新たに開始
しました。IETC のプロジェクトでは、水銀の現状評価、水銀廃棄物に
おける ESM の開発に向けた課題特定、水銀のインベントリと水銀廃棄
物のマテリアルフローの作成、各国の廃棄物管理状況に適した水銀廃
棄物の ESM 構築に重点を置いています。
写真 1: 出典 国立水俣病総合研究センター
写真 2: 出典 水銀の保管および処分に関する資料集
(The Practical Sourcebook on Mercury Storage and Dispose)UNEP 2013
写真 3:蛍光灯
UNEP IETC/Honda
IETC
monthly report
2015 年 6 月
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大気汚染は持
続可能な開発に
とって障害とな
ります。大気質
UNEP 環境法条約局副局長 長井正治氏
(UNEP)
の改善は、公衆
衛生の保護や気
候、生態系サー
ビス、生物多様性、食料安全の保障のコベネフ
ィットを提供するための優先事項です。様々な
国からの国際的な専門家は、2015 年 6 月 23 日と
24 日に大阪で開催されたモンテビデオプログラ
2015 年 世界環境デー
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大阪市は IETC と協力し、2015 年 6 月 5 日に大阪市
の鶴見緑地公園において、一般市民を対象とした環境
セミナーを開催しました。国連は毎年 6 月 5 日を世界
環境デーとし、環境問題の意識向上を強化する活動を
促進しています。2015 年のテーマは、「70 億人の夢
。わたしたちの地球。資源を有効に活用しよう。」で
す。同セミナーでは、IETC のスレンドラ・シュレス
タ所長が 2015 年のテーマに基づき、持続可能なライ
出典:UNEP IETC/ Nishikawa
モンテビデオ環境法セミナー
ム環境法セミナー「大気汚染規制および地球大
気保護のた
めの法律」
において、
関連する情
報交換や実
践例の共有
を行いまし
た。同セミ
出典:UNEP IETC/Nishikawa
ナーは、モンテビデオプログラムⅣの中間レビ
ュープロセスの一環として開催され、2016 年 5
月に開催する第 2 回 UNEP 国連環境総会において
同プログラムの報告が行われる予定です。
フスタイルについて講演しました。続いて、JICA や
大阪市の環境専門家による講演も行われました。JICA
からは、民間企業との連携による環境分野の政府開発
援助(ODA)事業の取り組みについて、また大阪市か
らは、フロン排出抑制法における法改正ついての講演
がありました。IETC は、同セミナーを通じて、参加
者と世界環境デーを祝い、環境問題の意識を向上する
機会対し深く感謝しています。
水銀廃棄物ワークショップ
ネパール 地震災害廃棄物
2015 年 6 月 23 日と 24 日に大韓民国 済州島に
おいて 2015 年国際水銀会議の一環として、水銀
廃棄物国際ワークショップが開催されました。
同ワークショップは、水銀廃棄物管理に関する
情報共有を目的として開催されました。本多俊
一 IETC 企画官は、UNEP 化学物質部門と合同プレ
ゼンテーションとして、水銀廃棄物に関する国
際動向と UNEP の活動に関する発表を行いまし
た。本多企画官は現行の有害廃棄物管理体制に
基づいた国家戦略ならびに水銀廃棄物管理シス
テムの構築方法に関する説明も行いました。
UNEP は、災害復興支援ニーズ調査(PDNA)に貢献
し て い ま す 。 IETC は 、 UNEP 紛 争 ・ 災 害 後 管 理 部
(PCDMB)による現地調査団に参加し、災害廃棄物の
ワークショップを開催するためにネパール政府の支援
を行いました。ワークショップには、ネパールで支援
活動中の約 30 団体が出席しました。今後は日本政府
の援助のもと、IETC は廃棄物管理を担うネパール政
府の能力向上に関する支援を行います。
IETC フォローアップ活動:IETC は、廃棄物管理
に関するグローバル・パートナーシップ
(GPWM)の新たな重点活動として水銀廃棄物に
関するプロジェクト活動を実施します。また、
国内、地域、国際レベルにおける水銀廃棄物の
環境上適正な管理を構築するため、パートナー
機関との協力関係の強化を図ります。
IETC フォローアップ活動:
IETC は、ネパール政府と PCDMB との共同で、災害廃棄
物管理能力育成に関するプロジェクト文書を作成しま
した。日本政府と IETC は 7 月 21 日から 24 日にかけ
て専門家グループを派遣し、事業結果の普及や戦略と
計画を提案するための国内ワークショップを開催する
予定です。IETC コラボレーティングセンターの地球
環境戦略研究機関(IGES)は、適正な廃棄物管理に関
する能力育成の支援を実施する予定です。
国際環境技術センター(IETC)は、国連環境計画 (UNEP)技術・産業・経済局(DTIE)の一部門です。IETC は主に、開発途上国と移
行期の国における環境上適正な技術(ESTs)の普及促進に取り組んでいます。最近では廃棄物管理問題に重点を置き各種活動を実施
しています。
お問い合わせ先:〒538-0036 大阪市鶴見区緑地公園 2 番 110 号
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