安全な灯油ランプの製作

安全な灯油ランプの製作
12 班
1.はじめに
2009 年現在,電化されていない地域に住む人は全
世界で 11 億人を超えている.1)未電化地域では夜間
照明に電灯を用いることができないため,薪や灯油
ランプが代替照明として利用されている.中でも灯
油ランプを用いる場合には空き缶などに灯油を注い
で火を灯すため,倒したときには火災に直結するリ
スクを持つ.
以上より,灯油ランプに用いる空き缶を接続可能
な安全機構を製作すれば火災を防止し,また安心し
て作業を行えることから長期的に未電化地域での
QOL を向上させることができると考えた.
このため,本研究では開発途上国で使用される灯
油ランプが倒れ,火災が発生するリスクを最小化す
るために,灯油ランプのための水平保持装置を具現
化することを目的とする.
2.重力を利用した水平保持機構の考察
研究を進めるに当たっては倒れないような容器
を作ることを目的とした.本研究では,重心に生じ
る重力によるモーメントを利用して水平保持を実現
することとした.図1に示すように,回転軸と重心
がずれている場合,基盤には重力によって水平を保
つようにモーメントが生じる.その結果物体は青矢
印のように元に戻る方向に回転する.
長谷川智大
の外容器,さらに灰色のおもりにより構成されてい
る.実際の装置では基盤の中心部に灯油ランプを設
置する.照明器具はおもりとしての機能も兼ねてお
り,本実験においては空き缶製の灯油ランプの代わ
りとして金属のおもりを基盤に取り付けた.
また基盤と円環,円環と外容器はそれぞれ回転が
できるようピンで接続されている.
図 2 実験装置
2章で述べた通り,基盤平面が水平状態を保つた
めには二つの直交する回転軸をつくる必要がある上,
回転は滑らかに行われなければならない.さらに構
成部品が少ないほうがコストダウンにつながると考
えたため,外容器の形状に半球殻を採用した.加工
が容易であることから基盤と円環,外容器の材質に
はアクリルを採用した.
基盤,円環はともに厚さ5㎜のアクリル板を用
い,基盤の直径は110㎜とした.また円環の内径
は116㎜,外径は120㎜とした.基盤の側面に
対向する位置に直径2㎜で深さ10㎜の穴を二つ開
けた.円環は90度ごとに4か所の穴をあけた.さ
らに半球殻にも縁の部分に対向するように直径2ミ
リの穴をあけた.基盤と円環,円環と外容器を図3
のようにピンで支持した.おもりは基盤の中心部
に,その裏側に水準器を取り付けた.
図 1 傾いた際の動き
回転軸が直交するようにさらにもう一つこの構造
を追加すれば,つねに基盤が地面と水平になろうと
する構造を作ることができる.
3.設計と製作
3.1 設計
図2のような実験装置を設計した.本装置は,図
中赤で示されている基盤,そして黄色の円環,透明
図 3 ピン支持の位置
さらに図4のように直径2㎜,長さ20㎜のネジ
を円環の穴に通し,基盤の穴に差し込んだ.反対側
も同様の操作を行った.
図 8
図 4 ピン接続
続いて半球殻にあけた穴から直径2㎜,長さ10
㎜のねじを通し円環のもうひとセットの穴に通した.
ねじを止めるために先端にナットを通した.
3.2 製作
設計に基づいて製作を行った.製作したものを図5
に示す.
図 5
完成品
4.実験
4.1 方法
完成した模型を①半球殻と円環をつなぐピンの方
向,②円環と基盤をつなぐピンの方向,③その中間
の方向にそれぞれ約30度傾けた.これらの条件で
基盤の傾きを目視と水準器の気泡の位置からそれぞ
れ観測した.
4.2 結果
完成した模型を①から③のそれぞれの方向に傾け
たとき,基盤の傾きは図6から8のようになった.
①のときは基盤と円環をつなぐピンのみ,②のとき
は円環と外容器をつなぐピンのみ③のときはその両
方が回転した.①~③のいずれの場合も目視では水
平面が保たれているように見えたが水準器を確認す
ると気泡は中心からずれていた.
図 6
図 7
①の方向に傾けたとき
②の方向に傾けたとき
③の方向に傾けたとき
5.考察
4.2 の結果で目視による観測では,3つのいずれ
の方向に傾けても基盤は水平面と平行に保たれてい
た.しかしながら水準器を見ると気泡の位置は中心
部からずれていた.これは基盤と円環部分の接続が
ネジで通しているだけになっているため図9ように
動くようになったことが原因である.
図 9 ピン位置のずれ
このようなずれが生じると基盤と円環の距離が変わ
るため重心の位置はこの距離が近い側に移動する.
この結果,図10の緑の点に重心が移動し,回転軸
と重心の位置を結んだ緑の線が地面と鉛直になり,
基盤が傾いてしまう.
図 10
重心のずれ
6.おわりに
今回の実験から傾けた際もある程度円盤の水平は
保たれ,機構が機能するということは判明した.し
かしこれを実用化するためには木材や安価な金属を
利用してより生産コストを下げる必要がある.また
当初の目的である空き缶を接続できるような装置を
追加することも課題として残る.これは基盤の下に
もう一つ面を追加してそこを支えることが可能な機
構を作れば解決できる.
参考文献
1) IEA, World Energy Outlook 2011,
www.iea.org/publications/freepublications/publica
tion/weo2011_web.pdf (2015/01/17 アクセス)