[平成20年度参考となる技術] [技術名]花芽の間引き処理がカキの果実肥大等に及ぼす影響 [ 要 約 ]カ キ「 平 核 無 」成 木 に お い て 、発 芽 期 に 3 芽 に 1 芽 程 度 の 花 芽 を 間 引 く と 結 果 母枝あたりでの葉果比は低下するが収量、果実品質は低下しない。花芽を間引くこと により増加する遅れ花や不定芽を適切に処理すれば大玉生産が可能である。 [キーワード]カキ、平核無、結実管理 [ 担 当 ] 福 井 農 試 ・ 園 芸 ・バ イ テ ク 部 ・ 果 樹 研 究 グ ル ー プ [ 連 絡 先 ] 0776-54-5100 [email protected] --------------------------------------------------------------------------------------------------------------[背景・ねらい] カキの大玉生産のためには、摘らいや摘果などの結実管理を徹底する必要がある。な かでも摘らいは、貯蔵養分の浪費を抑え、大玉生産のための重要な作業であるが、作業 期 間 が 開 花 前 15~ 20 日 か ら 開 花 期 ま で に 限 ら れ る 。 そ こ で 、 発 芽 期 に 花 芽 を 間 引 く 処 理で従来の摘らい時期より早い時期からの結実管理を行い、収量品質に及ぼす効果を明 らかにする。 [技術の内容・特徴] 1 .「 平 核 無 」の 開 花 始 期 は 5月 中 旬 頃 で あ り 、摘 ら い の 作 業 時 期 は 5月 上 旬 以 降 と な る が 、 花 芽 の 間 引 き 処 理 は 発 芽 期 の 3月 下 旬 か ら 作 業 が 行 え る 。 2.間引き処理を行う花芽は、芽同士の間隔が狭いものや、樹冠の内側を向いているも の な ど を 優 先 し て 落 と す ( 図 1 )。 作 業 は 素 手 で 行 え る 。 3 .1本 の 結 果 枝 に は 複 数 の 蕾 が 着 く た め 、間 引 き 処 理 を 行 っ た 場 合 で も 摘 ら い 作 業 は 必 要であり、遅れ花の発生が増加すること等により摘らい作業の省力化の効果は低い ( 表 1 )。 4.間引き処理によって結果母枝1本あたりの結果枝数は減少するが、葉数も減少する た め ( 表 2 )、 摘 果 後 の 葉 果 比 は 低 下 す る 。 5 .成 木 に お い て 3芽 に 1芽 程 度 の 花 芽 を 間 引 い て も 収 量 は 低 下 せ ず 、果 実 品 質 も 同 等 で あ る ( 表 3 )。 間 引 き に よ っ て 不 定 芽 の 発 生 が 増 加 す る が 、 随 時 芽 か き を 行 う こ と で 大玉生産が可能である。 6 . 間 引 く 程 度 が 強 い 場 合 ( 1結 果 母 枝 に つ き 1芽 を 残 し て 間 引 く )、 大 玉 生 産 に 効 果 が 高 い が 収 量 は 低 下 す る ( 表 4 )。 [技術の活用面・留意点] 1.間引き処理を行った場合、遅れ花や不定芽の発生が増加する。貯蔵養分の浪費を防 ぐために遅れ花は摘蕾する。また、徒長枝になりそうな不定芽は芽かきや捻枝といっ た作業を行い養分の浪費を避ける。 2.本技術は「刀根早生」でも利用できる。 [具体的データ] 表 1 作 業 時 間 の比 較 (2007 年 、時 間 /10a) 芽の間隔が狭い 区 樹冠の内側を向いている 作 業 (時 期 ) 芽 の間 引 き 摘蕾 (4 月 上 旬 ) (5 月 中 旬 ) 間 引 き区 対照区 8.3 - 31.5 33.0 3芽に1芽を目安に間引く 表 2 結 果 母 枝 あたり新 梢 発 生 の比 較 (2007 年 ) 基部の芽は葉芽なので 間引かなくてよい 区 間 引 き区 対照区 図1 花芽の間引き方法 発 生 した うち 新梢数 3.8 5.8 結果枝数 3.2 4.4 葉数 32.0 46.7 表 3 花 芽 の間 引 きが収 量 、果 実 品 質 Z に及 ぼす影 響 年度 区 (樹 齢 ) 収量 樹冠面積 (kg/樹 ) (㎡) 122.2 112.7 37.4 32.8 樹冠面積 あたり収 量 (㎏/㎡) 3.3 3.4 果色Y 果重 糖度 (g) 果頂部 基部 (Brix%) 255.6 247.9 5.7 5.3 4.3 4.0 14.6 13.9 間 引 き区 150.6 38.3 3.9 249.3 6.0 4.5 2007 年 X (26 年 生 樹 ) 対照区 130.0 33.0 3.9 232.7 5.8 4.1 Z :脱 渋 後 の品 質 を調 査 Y :カラーチャート カキ(平 核 無 )使 用 X :2007 年 は発 生 した不 定 芽 を随 時 芽 かきした(2006 年 は芽 かきを実 施 せず) W :発 芽 後 に3芽 に1芽 を目 安 に間 引 き、摘 らい時 に1結 果 枝 に1蕾 とし、幹 の断 面 積 に応 じて 摘 果 で着 果 数 を調 整 した V :摘 らい時 に1結 果 枝 に1蕾 とし、幹 の断 面 積 に応 じて摘 果 で着 果 数 を調 整 した ※ 2007 年 の果 重 のみt検 定 で危 険 率 5%で有 意 差 があり、他 の項 目 では有 意 差 なし 14.8 14.4 2006 年 X (25 年 生 樹 ) 間 引 き区 W 対照区 V 表 4 強 度 の花 芽 の間 引 きが果 実 品 質 、収 量 に及 ぼす影 響 (2005 年 、7 年 生 樹 ) 品種 区 平核 無 間 引 き区 Z 対照区Y 収量 (㎏/樹 ) 35.7 38.5 果重 (g) 226.9 205.3 果色 果頂部 基部 5.2 4.7 5.1 4.4 糖度 (Brix%) 14.3 13.6 刀根 間 引 き区 25.8 227.3 5.9 5.0 14.4 早生 対照区 40.1 190.8 5.9 5.1 14.0 Z :発 芽 後 に1結 果 母 枝 あたり1芽 を残 して間 引 き、摘 らい時 に1結 果 枝 1蕾 とした Y :摘 らい時 に1結 果 枝 1蕾 とした [その他] 研究課題名:越前柿の大玉果生産・収穫期前進化技術の確立 研 究 期 間 : 2005~ 2007 年 度 研究担当者:坂川和也
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