基礎マクロ経済学(2015年前期) 7.景気変動のイントロダクション 担当:小塚匡文 1 景気変動とは・・・実質 実質GDP 実質GDPの変化率の動き GDP ※これは雇用の変動とも関連している 直近では(アメリカの場合)・・・2007年に後退・ 2009年に3月に失業率8.5%に →このような短期変動を景気循環 景気循環( 景気循環(ビジネスサ イクル) イクル)とよぶ(動きは不規則である) 2 7.1 事実( 事実(日本の 日本の例) <景気の山と谷> 山:景気後退の始まり、谷:景気後退の終わり • 景気後退の定義→2四半期(6カ月)連続で実 質GDPが減少すること <オークンの法則> • 実質GDPの変化率と失業率の変化率の相関 ※ただし短期のことであり、長期的には技術進 歩によるところが大きい 3 <先行指標> • 週当たり労働時間(製造業)、失業保険の申 請件数、新規注文件数、出荷指数、新規建 築許可件数、株価指数、M2残高、長短金利 差、・・・ 7.2 時間的視野 価格の硬直性を考える⇒短期であるので その代わり、生産・雇用など実体変数が調整 の一部を担う ※古典派の世界と異なり、名目→実体変数、の 効果があるとする:総需要 総需要-総供給分析 総需要 総供給分析 4 7.3 総需要 需要と価格の関係を見る d M M 1 = = kY k = → P P V であらわされる(MとVは一定)。PとYの関係は P AD Y • 総需要関数(AD)は右下がり • 価格Pが 価格 が上昇→貨幣を使うので名目貨幣需要 上昇 d ( ) M P ( のM)が増加・ただし名目貨幣供給 は増えていない →買える財の量・取引回数減少→産出 産出Y減少 産出 減少 • 産出Y上昇 産出 上昇→取引回数増加→実質貨幣需要 上昇 増加・貨幣供給は一定→価格 価格Pが 価格 が下落 • 貨幣供給の減少→名目産出(PY)減少→価格 一定ならば実質産出Yが減少:AD左シフト 6 7.4 総供給 供給と価格の関係 →価格の伸縮性(長期)・硬直性(短期)のどち らかによって形が変わる 7 <LRAS:長期 長期の 長期の総供給> 総供給> Y = Y = F K , L (産出・生産要素一定) ( ) は完全雇用水準・自然失業率の生産量 ⇒古典派モデル(長期では一定) ⇒そのため、垂直な総供給になる Y <SRAS:短期 短期の 短期の総供給> 総供給> 短期では P = P (物価が一定・硬直的) ⇒例えばコストゆえにカタログ改訂が困難、など ⇒水平な総供給になる 8 P LRAS Y Y =Y P P=P SRAS Y <SRASから からLRASへ へ> から 貨幣供給量の減少 P LRAS AD1 ①短期にはAからBへ ②長期にはBからCへ AD2 P=P A ① SRAS B ② C Y =Y M減少 Y 7.5 安定化政策 ショック:外生的変化のこと ⇒総需要ショックと総供給ショックがある ①このショックの効果がAD-AS分析でわかる ②安定化政策としてどのような対応をすべきか わかる <総需要ショック 総需要ショック> ショック> 例えばクレジット・カードの普及 ⇒貨幣の保有量が減少・貨幣供給 貨幣供給が 貨幣供給が過剰に 過剰 ・・・このときの変化は? 11 <SRASから からLRASへ へ> から P 貨幣供給は相対的に 過剰(多い)のでADは 右シフト(AD1→AD2) ①短期にはYが上昇 ②企業は生産増 ③やがて名目賃金や 物価が上昇(実質賃金 変わらず) ④LRAS上の点に移行 LRAS AD2 AD1 Mが 過剰 C ② P=P B SRAS A Y =Y ① Y ⑤結局、産出は増えずに、物価だけが上昇する ⇒この状況を解消するためには・・・ 貨幣供給を減らし、総需要の右シフトが発生しな いようにする <総供給ショック 総供給ショック> ショック> 価格ショック=総供給ショック (物価水準に影響する) 例えば・・・? 干ばつ 原油価格上昇 労働組合の交渉力増加による賃上げ などなど 13 <総供給ショック 総供給ショック> ショック> 価格上昇ショック発生 LRASはそのままと仮定 ①SRAS1からSRAS2へ P ②物価がP2に上昇 産出がY2に低下 AD P = P2 SRAS2 P = P1 SRAS1 Y2 Y Y1 ③産出減少し、物価は上昇する: ☛スタグフレーション ⇒この状況を解消するためには・・・ (ⅰ)総需要拡大策(貨幣供給量の増加など)を とり、総需要(AD)曲線が右シフトさせる ⇒ Y = Y1 となるように調整 ※ただし物価はP2で上昇したまま (ⅱ)何もしない ⇒「不景気の痛み」として産出・名目賃金が低下 ⇒物価は下落し、P1のレベルに調整される ※産出も Y = Y1 のレベルに調整される 15 補足: モデルの誕生 補足:IS-LMモデルの モデルの誕生 1930年代の大恐慌 ⇒失業率上昇、産出量減少 が観察される ⇒「 「古典派の 古典派の考え方は正しいのか?」 しいのか?」 古典派理論の考え方:総供給の側面 ⇒『雇用・利子および貨幣の一般理論』 (J. M. Keynese)で古典派を批判 2008年・2009年の欧米の景気後退期には、 ケインジアンの景気循環理論が注目される ⇒総需要を増加させるにはどうしたらよいか、 議論がなされた 16 ケインズの一般理論では・・・ • 総需要の低下 →国民所得は総供給だけは決まらない! さらにその後、古典派とケインズの考え方の扱 いとして・・・ • 総需要-総供給は長期・短期に分けることで 古典派とケインジアンの双方を示すことがで きる ⇒総需要をより厳密に見てみる ⇒IS-LMモデル モデルの登場 17 IS-LMモデル モデルでは、 • 所与の価格水準において国民所得を決める ものは何か? • 総需要のシフトをもたらすものは何か? を示すもの ⇒物価水準が一定のもとでは、総需要のシフト は国民所得の変化をもたらす 18
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