上腹部痛 - e-CLINICIAN

和夫・
・その他の刺激にもとづく内臓痛︵自律神経︶、壁側腹
出現するが、その発症機転は内臓平滑筋の伸展・攣縮
痛︵脳脊髄神経︶および内臓知覚反射による関連痛で
膜や腸問膜に炎症・機械的刺激が加わって起こる体性
あり、実際にはこれらの混合痛である。
二、診断の手順
上腹部痛については如何なる臓器の如何なる病変に
が緊急な外科的手術を必要とする急性腹症︵急性虫垂
起因するかを迅速かつできるだけ正確に判断し、症例
また、内科的適応患者であっても、治療の経過中に手
炎、穿孔、イレウス、重症胆嚢炎、重症膵炎、腸間膜
術を必要とする場合もあり、常に注意深い観察を忘れ
腹痛、とりわけ上腹部痛は臨床の実際においてしば
部 痛 、 右 季肋部痛、左季肋部 痛 に 分 類 さ れ る 。
てはならない。
一、上腹部痛の主要原因とその病態
上腹部痛をきたす疾患は 図 ① に 示 す ご と く 多 種 多 様
診断手順の概略を図②にまとめてある。その要点は
のかを鑑別の上、適切な処置をとることが第一である。
であるが、その多くは腹腔内臓器の器質的病変︵炎症、
血栓症など︶であるのか、内科的治療の適応例である
潰瘍、結石、腫瘍、穿孔、 血 行 障 害 、 閉 塞 な ど ︶ な い
深い診察、簡単にできる一般検査の施行により、診断
痙痛に関する正確な問診、一般状態把握のための注意
のアウトラインをつけた上、疑われる疾患に対しての
しは機能的異常に起因する。しかし場合によっては腹
部として出現することもある。
特殊検査を行い、総合的に判断する。したがって、必
腔外疾患︵心筋梗塞、肺炎など︶や全身系統疾患の一
しば遭遇する症候の一つであり、痙痛部位により心窩
野部
牧武
勲
痙痛は疵痛ないし鈍痛、断続性ないし持続性として
特集・よくみる症候と処方
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上腹部痛
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(704)
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簡便な上、胆石の有無、胆嚢胆道系病変、肝・膵・腎
法の有用性が認識されている。それは本検査の操作が
チグラフィー、血管造影を行うが、最近、超音波検査
要によりX線造影検査、内視鏡検査、CT、Rーシン
のが大部分であり︵ブスコパン、ダイピン、コリオパ
る鎮痙剤は副交感神経遮断により、効果を発揮するも
剤・鎮痛剤の併用が一般的である。現在使用されてい
上腹部痛は内臓痛が多いため、鎮痙剤あるいは鎮痙
るが、ここでは対症薬物療法について略述する。
法を行う。その治療は原因療法と対症療法に大別され
聴打診
触診(腹膜刺激症状,腫瘤)
2.一般検査
体温,血圧
末梢血
尿,便
血液生化学検査
胸部・腹部単純X線写真
心電図
ン︵ペンタジン、ソセゴン︶と麻薬系︵モルフィン系︶
ン、スメドリンなど︶、鎮痛剤は非麻薬系のペンタゾシ
・脾諸臓器の様相について相当量の情報を得ることが
視診(黄疸,ショック顔貌)
3.特殊検査
超音波検査
内視鏡
血管造影
C T
RIシンチグラフィー
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できるからである。
問診(纏灘生纏度)
があって、中枢神経系を介しての刺激伝導を抑制する。
消化管造影X線写真(経口,逆行性)
三、薬物療法の実際
1.診察
急性腹症を除外した残りの内科的適応例には薬物療
②上腹部痛診断の手順
鎮痙剤の副作用として視力障害、口渇、頻脈、排尿
ペンタジン系鎮痛剤では軽度のめまい、思考力低下、
ω内臓痛に対する処方
血圧下降または上昇の副作用をみることがある。
障害、便秘がみられることがあり、前立腺肥大症、緑
⑭ブスコパン︵一〇㎎︶ 三∼六錠 分三 毎食後
内障、重篤な心腎疾患には禁忌である。
胆道系疾患にはオッデイ括約筋の弛緩作用を有す
*︵弘前大学 内科学︶
︵弘前大学 助教授 内科学︶
ωコリオパン︵五㎎︶ 三∼六錠 分三 毎食後
るコスパノンもよく使用される。
処方例
㈹コスパノン︵四〇㎎︶ 三∼六錠 分三 毎食後
また心因性を加味した慢性上腹部痛には精神安定剤
速効的効果には注射を行う。ブスコパン一回一〇㎎、
の併用も有効なことをしばしば経験する。
コリオパン一回四㎎を皮下・筋・静注する。
痙痛が著しい場合、ペンタジン︵またはソセゴン︶
を一回一五∼三〇㎎皮下・筋注する。
㈲体性痛に対する処方
一般的には非麻薬系鎮痛剤を使用する。ペンタジン
︵またはソ セ ゴ ン ︶ 一 回 一 五 ∼ 三 〇 ㎎ 皮 下 ・ 筋 注 す る
が、﹄経口投与としてインダシン︵坐薬もある︶、ポンタ
ールなど、消炎鎮痛剤の頓用を行うこともある。また、
激痛の際にはモルフィン系 ︵ 鎮 痙 剤 と の 併 用 ︶ を 必 要
とする場合もある。
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