他科の胃炎・各科の胃炎 プロスタグランジン欠乏による ∼SA−05起因性 胃 粘 膜 傷 害 荒 川 哲 男 小林絢 三* 治療のため通院している女性である。彼女はある 種のNSAID投与を受け、関節の腫脹と疹痛の 改善がみられた。しかし、NSAIDsの副作用 ︵胃粘膜傷害︶を予防する目的で制酸剤の投与を受 けていたにもかかわらず、NSAID投与二週間 後に心窩部に激痛が生じ、当科を紹介されてきた。 来院時、心窩部に著明な圧痛を認め、軽度の貧 ころ、幽門前庭部に発赤と浮腫を伴う多発性びら 血がみられた。上部消化管内視鏡検査を行ったと ぺージ参照︶。直ちにNSAIDの投与を中止し、 ん、いわゆるAGMLが認められた︵写真①・56 テプレノンの投与を開始した。二週間後の内視鏡 た消炎、鎮痛、解熱効果を有することから、臨床 の場において最も繁用されている薬剤のひとつで 検査では、病変は完全に消失していた︵写真②・ 非 ス テ ロイド系抗炎症剤 ︵ N S A I D s ﹀ は 優 れ ある。特に整形外科領域においては骨関節などの ぺージ参照︶。しかし、NSAIDの投与を中止 生させる副作用があることは周知のごとくである。 急性胃粘膜病変︵AGML︶などの胃粘膜傷害を発 IDsには 、 こ の よ う な 優 れ た 作 用 が あ る 反 面 、 めNSAIDsが頻繁に投与されている。NSA プレノンの投与を試みた。四週ごとに内視鏡検査 IDsによるAGML発生の予防を目的としてテ 儀なくされ、投与に踏み切ったが、今回はNSA 化してきた。そのため、NSAIDの再投与を余 していたため、再び慢性関節リウマチの症状が悪 疹痛を訴える患者が多く、その苦痛を取り除くた Mさんは慢性関節リウマチで当院の整形外科に CLINICIAN89No.38470 ラ 特集・胃炎とテプレノン 56 プロスタグランジンは炎症に関与するとともに ていない。 を行い、六ヵ月が経過するが病変の発生はみられ 抑制作用によらない作用である。ある程度プロス 害物質から消化管粘膜を保護する作用で、酸分泌 タグランジンはサイトプロテクション︵様々な傷 られている。一方、消化管粘膜においてはプロス 膜においてもプロスタグランジンの産生を抑制し てしまうため、胃粘膜傷害の発生原因となってい る。 ンを増加させることが証明されており︵図③︶、プ テプレノンは実験的に胃粘膜プロスタグランジ ロスタグランジンの欠乏がその機序と考えられる NSAIDs起因性胃粘膜傷害の予防および治療 においてテプレノンの使用はリーズナブルである といえよう。 ︵大阪市立大学 内科学︶ *︵大阪市立大学 教授 内科学︶ (869) 71 CLINICIAN 89 No.384 つ 疹痛を助長する作用があ る が 、 N S A I D s に は 7days 7days タグランジンに特有の作用と考えられている︶な × × プロスタグランジン合成酵素を阻害し、プロスタ 100mg/kg200mg/kg るユニークかつ重要な作用を消化管において発揮 on二66 56 76 control teprenone teprenone グランジンの産生を抑え る 作 用 が あ る た め 、 こ の ⊥ ︻①>Φ一 の︷︾﹂一 9︶ 0 0 p<0.05 __p<0.05 /5 0 0 田p<0.05 98 2 1 n G □PGE2 團PGI2 することが知られているが、NSAIDsは胃粘 (ラツト,in vivO) 作用がNSAIDsの消 炎 鎮 痛 作 用 の 機 序 と 考 え ③teprenoneの胃粘膜PGsにおよぽす影響 県 l I l ①NSAIDの内服が原因と考えられた胃 ②NSAIDを中止し、テプレノンによる 幽門前庭部の急性胃粘膜病変(AGML) 治療開始後2週間目の内視鏡写真 − 発赤と浮腫を伴う多発性び らんが主な内視鏡所見とし 病変は完全に消失している てとらえられる (854) CLINICIAN’89 No.38456
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