(一社)建設コンサルタンツ協会 近畿支部 第48回(平成27年度)研究発表会 論集 プレゼンテーション発表アブストラクト №212 新旧コンクリート界面のせん断伝達機構に関する解析的検討 ジェイアール西日本コンサルタンツ(株) 1.はじめに 福田 圭祐 A 主桁間隔が狭い多主 PCI 形桁鉄道橋に外ケーブル補強を 適用する場合,従来法のように主桁ウェブ側面に定着体を 外ケーブル 支圧プレート 設けることが困難である。そこで,図-1 に示すように,桁 発泡 スチロール 間にコンクリート製の定着体を PC 鋼材で縦締めして構築 定着体 し,下フランジハンチ面の摩擦抵抗力により外ケーブルの 外ケーブル 緊張力に抵抗する定着体(以下,桁間定着方式)の開発を 推進している。縮小供試体を用いた実験 固定用PC鋼材 主桁 1) A により,桁間定 着方式の十分な定着耐力を確認した。さらに,図-2 に示す 反力プレート 固定用PC鋼材 A-A断面 図-1 桁間定着方式の適用イメージ 新旧コンクリート界面を有する供試体を作製して二面せん 断実験を行い,桁間定着方式の耐荷性能を評価する上で必 要となる新旧コンクリート界面のせん断伝達機構について 検討を行った 2) 。本稿は,桁間定着方式による定着体の解 析的検討を実施する前段の基礎検討として,二面せん断実 験の非線形有限要素法解析を実施し,新旧界面のせん断伝 達機構に関する解析手法の検証を行った。 2.解析概要 二面せん断実験の試験要因は,界面に作用させる垂直圧 縮応力,コンクリート圧縮強度,界面処理の有無と設定し ている。本稿では,その中から界面に作用する垂直圧縮応 力 σc=20N/mm2,コンクリートの目標圧縮強度 f’c=40N/mm2, 図-2 二面せん断実験供試体 2) 界面処理有とした供試体を解析対象とした。 載荷板 (ソリッド要素) 解析には,汎用有限要素法解析プログラム「DIANA」を 用いた。解析モデルは,図-3 に示すように 3 次元全体モデ 新旧界面 PC鋼棒 定着板 (ソリッド要素) ルとした。コンクリートと PC 鋼棒定着板,載荷板にはソ リッド要素,PC 鋼棒と鉄筋にはトラス要素を用いた。ま PC鋼棒緊張力 (ひずみで導入) た,新旧界面部にはインターフェイス要素を挿入した。 コンクリートのひび割れモデルは,固定ひび割れモデル とした。コンクリートの構成則に関して,圧縮側の応力- コンクリート (ソリッド要素) ひずみ関係には土木学会コンクリート標準示方書に基づく モデルを用いた。引張側の応力-ひずみ関係には引張限界 図-3 解析モデル 応力までは弾性勾配で,その後曲線軟化する Hordijk モデ ルを用いた。また,コンクリートの 3 軸応力状態を考慮す み関係は第 2 勾配が 1/1000 のバイリニアでモデル化した。 るために,コンクリートの破壊基準として圧縮側は 新旧界面にはインターフェイス要素を用いて,既往の文 Drucker-Prager モデル(内部摩擦角=10°),引張側には Rankine 図-4 に示す複合境界モデルでモデル化した。 献 3)と同様に, モデルを用いた。 複合境界モデルのパラメータを表-1 に示す。各パラメータ 鉄筋とコンクリートは完全付着とした。また,PC 鋼棒張 力はひずみにより導入した。鉄筋と PC 鋼棒の応力-ひず は,材料試験結果と実験結果および既往の文献 3)を参考に し,設定した。 - 171 - (一社)建設コンサルタンツ協会 近畿支部 第48回(平成27年度)研究発表会 論集 プレゼンテーション発表アブストラクト №212 τ 2000 クーロン摩擦 キャップ モード モード 1763kN 1794kN 1800 1600 Φ 荷重合計(kN) 1400 引張モード c ft fc 図-4 複合境界モデル σ 3) 1200 1000 800 実験 解析 600 400 200 0 表-1 複合境界モデルパラメータ 値 せん断方向 の初期剛性 25.0 N/mm 面垂直方向 の初期剛性 粘着力 3 0.00 0.50 文献 より引用 2 実験結果を参考 ダイレタンシー角 引張強度 3.69 N/mm 中ブロック材料試験結果より 引張破壊 エネルギー すべり破壊 エネルギー 0.10 N/mm 中ブロックの値を引用 1.00 N/mm 文献 より引用 実験結果を参考 実験結果を参考 2 1.50 2.00 図-5 荷重-中ブロック鉛直変位の関係 3) 3 100000 N/mm 1.00 鉛直方向変位(mm) 実験結果を参考 3.4 N/mm 35.5 ° 10 ° 摩擦角 ‐0.50 備考 荷重合計(kN) パラメータ 3) 3.解析結果 2000 1800 1600 1400 1200 1000 800 600 400 200 0 実験(上側平均) 実験(下側平均) 解析(上側平均) 解析(下側平均) 200 荷重-中ブロック鉛直方向変位関係を図-5 に示す。 220 240 260 280 300 320 340 360 PC鋼棒の緊張力(kN) 図-5 より,解析は実験の最大荷重を再現できている。 図-6 また,せん断剛性に関して,解析は実験結果の直線部 上段の 最大荷重時 せん断応力(N/mm2) 分の傾きを概ね再現できている。 次に,PC 鋼棒の張力変動を図-6 に示す。実験では, 載荷開始から破壊直前まで PC 鋼棒の張力は,上段は 減少し,下段は増加する傾向が見られ,曲げの影響を PC 鋼棒の張力変動 上段 中段 下段 すべり基準 30.0 25.0 20.0 15.0 5.0 向が見られ,曲げの影響を再現できている。 そして,新旧界面のインターフェイス要素のせん断 中段すべり基準到達 ( 荷重1459kN) 10.0 受けていると考えられる。解析においても,同様の傾 ‐35.0 上段すべり基準到達 ( 荷重1761kN) ‐25.0 ‐15.0 0.0 ‐5.0 下段すべり基準到達 ( 荷重1095kN) 5.0 15.0 面垂直応力(N/mm2) 応力と面垂直応力の関係を図-7 に示す。面垂直応力に 図-7 せん断応力と面垂直応力の関係 関しては,新旧界面上段では作用する圧縮応力が増加 (1)解析結果は,実験の最大荷重および新旧界面のせん断剛 し,中段と下段では低下していく傾向が見られ,曲げ 性を概ね再現することができ,解析により新旧界面のせ の影響を再現できていると考えられる。曲げの影響に ん断伝達機構を概ね再現できることがわかった。 (2)解析における終局の要因は,新旧界面の滑動と推察され, より,下段の圧縮応力の低下率が中段よりも大きいた め,下段のインターフェイス要素が最も早くすべり基 実験の破壊形式を再現していると考えられた。 準に至っており,その次に中段のインターフェイス要 【参考文献】 素がすべり基準に至っている。また,上段のインター 1) 湯淺,薗田,木戸,森川:主桁間隔の狭い PCI 形桁にお フェイス要素は,最大荷重前までは面垂直応力が増加 ける外ケーブルの桁間定着に関する実験的検討,第 22 しているが,最大荷重に達した後,面垂直応力が低下 回プレストレストコンクリートの発展に関するシンポジ し,すべり基準に至っている。以上より,解析におけ ウム論文集, pp.311-316,2013. 2) 湯淺,濱田,河村,森川:コンクリート新旧界面のせん る終局の要因は,新旧界面の滑動によるものと推察さ れ,実験の破壊形式を再現していると考えられる。 断伝達機構に関する実験的検討,第 23 回プレストレスト 4. まとめ コンクリートの発展に関するシンポジウム論文集, 二面せん断実験の非線形有限要素法解析を実施し,新旧 界面のせん断伝達機構に関する解析手法の検証を行った。 以下に,得られた知見を示す。 pp.35-40,2014. 3)中村,金子他:非線形有限要素解析法の利用に関する研 究委員会報告書,日本コンクリート工学会,2008. - 172 -
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