平成26年度研究協議会資料 都道府県・ 指定都市番号 1 都

平成26年度研究協議会資料
都道府県・
都道府県・
研究課題番号・校種名 2 小学校
指定都市番号 1 指定都市名 北海道 教科名
体育
研究課題
○新学習指導要領「体育」の目標にある「生涯にわたって運動に親しむ
資質や能力を育てる」を具現化するに当たり,本校児童において,「目
的意識をもって運動する」「主体的にねばり強く取り組む」という面に
課題がみられるため,以下の内容について研究を重ねた。
(イ)目的意識をもって主体的に運動に取り組み,ねばり強く活動す
るための運動領域における手立ての構築
(ロ)学習に目的意識をもって主体的に臨み,困難な状況においても
ねばり強く取り組む資質を育てるための保健授業における手立
ての構築
ふ り が な
か も え な い そんりつ か も え な い しょうがっこう
学校名 (児童数) 神恵内 村立 神恵内 小 学 校 (35 人)
所在地(電話番号)北海道古宇郡神恵内村大字神恵内村横澗 154 番地 0135-76-5206
研 究 内 容 等 掲 載 ウ ェ ブ サ イ ト http://www.vill.kamoenai.hokkaido.jp/education/e
URL
lementaryschool.html
研究のキーワード 少人数学習・学習カード・掲示物・問題解決的な学習
研究成果のポイント
・目的意識をもって運動や保健の授業に取り組む子供が増えてきた
・教師や友達とのきめ細かな関わりにより,自分に自信をもち主体的に運動できる子供
が増えてきた。
・保健の学習を自分のこととして捉え自分の体に目を向けさせることにより,ねばり強
く取り組むための資質を育むことができた。
1 研究主題等
(1)研究主題
運動や健康に対して目的意識をもち,主体的にねばり強く取り組み続ける子供の育成
~体育の授業における具体的な手立てを実践することを通して~
(2)研究主題設定の理由
現在の学校教育の中では生涯にわたって運動に親しむ資質や能力が求められている。
本校は全校児童が 35 名という大変小規模な学校であることや山と海に挟まれた地域環
境により運動する場が少ないため,集団スポーツに力を入れることが難しい状況にあった。
実際に数年前までは,子供たちの運動に対する意欲が低く,新体力テストの結果も全国平
均を大きく下回るものであった。ここ数年、体育に力を入れる取組を学校全体で実施する
ことにより,子供たちは運動に対する意欲を高め,体を動かすことの楽しさを体感してい
る様子がみられた。
一方で,運動や健康に対して指示されたことはしっかりできる反面,「自分で目的意識
をもって運動できない」「できないことに関してねばり強く取り組むことなくあきらめて
しまう」といった課題が明らかになってきており,生涯にわたり運動に取り組むための意
識や資質を高める必要があると考えた。
そこで今年度は運動領域の中で運動に対して目的意識をもち,主体的に活動できる体育
の授業の手立てを構築していこうと考えた。特に,高学年の子供が苦手意識をもつ器械運
動に焦点を当てて研究を進めることで研究主題に迫ることができると考えた。
また,生涯にわたって運動に親しむためにはその基礎となる「健康な体」も必要不可欠
である。子どもたちが自分の体に関心をもち目的意識をもちながら主体的に学習できる保
健の授業により,困難な状況においても粘り強く取り組むことのできる心と体が育まれ,
生涯にわたり運動しようとする資質や能力が育つと考えた。
(3)研究体制
・校内研究に位置づけ全教職員で共通理解を図りながら研究を推進する。
・北海道教育大学附属函館小学校と連携し,交流しながら研究を推進する。
・本校研究部担当者2名,管理職1名,後志教育局指導班体育科担当指導主事1名で研究
推進委員会を設置し,研究を推進する。
・北海道教育庁学校教育局指導主事から適宜助言を受ける。
(4)1年間の主な取組
平 ○研究主題具現化のための理論構築
成 ○児童アンケート様式の検討と実施(隔月)
26 ○年間指導計画の検討と改善
年 ○研究主題具現化のための授業の進め方の確認と全学年での効果的な体育授業の
度
実践
○校内研における授業実践と授業公開及び研究協議
○先進校研究大会への参加と報告
○神恵内小学校研究発表会の実施
○教科調査官を招聘した授業実践及び研究討議
○児童アンケート結果の考察と研究のまとめ
○研究集録の作成
2 研究内容及び具体的な研究活動
(1)研究内容
【運動領域 重点領域・・・器械運動】
①年間指導計画の工夫
②少人数学級体育授業における教師のきめ細かな指導の充実
ア)技能の向上
イ)活躍の場
ウ)子供の成長の確認
③場の設定の工夫
ア)運動技能獲得のための場
イ)子供が互いに関わる場
④学習カード・学習資料の活用
ア)技能目標のスモールステップ化
イ)学習カードにおける教師の関わり方
ウ)友達同士の関わりを促す学習資料
⑤掲示物の工夫
ア)1 時間の授業の流れがわかる掲示物
イ)技能向上のためのスモールステップ化した掲示物
ウ)子供たちの声を取り入れた掲示物
【保健領域】
①年間指導計画の工夫
②問題解決的な学習の充実
ア)主体的に学習する授業展開
イ)知識の活用の重視
③学習課題を自分のこととして捉える授業展開の工夫
ア)具体物からの課題提示
イ)子供の実態資料やアンケートの活用
④少人数学級における指導の充実
ア)体験・実験の活用
(2)具体的な研究活動
【運動領域 重点領域・・・器械運動】
①年間指導計画の工夫
・評価の場面を明確にした単元指導計画の策定
②少人数学級体育授業における教師のきめ細かな指導の充実
ア)技能の向上
・技能を向上のためのきめ細かな指導の実現
・複数指導体制による,より有効なアドバイス・評価の実現
・アドバイスカードの活用
イ)活躍の場
・全員が自分の考えを発表できる環境設定
・全員が自分の運動をみんなで確認する場の設定
ウ)子供の成長の確認
・複数指導体制の特性を生かした評価
・全員に励ましの言葉かけでき環境設定
③場の設定の工夫
ア)運動技能獲得のための場
・子供が十分に活動できる場を設定することによる技能の獲得の充実
イ)子供が互いに関わる場
・運動の場をコンパクトにまとめることによる,児童の関わりが生まれやす
い場の設定
④学習カード・学習資料の活用
ア)技能目標のスモールステップ化
・できる喜びや意欲をもたせることのできる学習カード
・確実な技能獲得の実現
イ)学習カードにおける教師の関わり方
・毎時間の励ましのコメントによる意欲向上
・効果的なアドバイスによる技能向上
ウ)友達同士の関わりを促す学習資料
・学習資料の充実による子供たちの思考判断の充実
⑤掲示物の工夫
ア)1 時間の授業の流れがわかる掲示物
・見通しをもって安心して運動することができる環境づくり
イ)技能向上のためのスモールステップ化した掲示物
・技能のスモールステップ化した掲示による安定した技能習得
・全学年を見通した掲示による意欲向上
ウ)子供たちの声を取り入れた掲示物
・自分たちの考えを掲示することによる主体的な活動
【保健領域】
①年間指導計画の充実
・養護教諭・栄養教諭を活用した年間指導計画の作成
②問題解決的な学習の充実
ア)主体的に学習する授業展開
・子供自身が課題解決する中で知識を習得・活用する授業の構築
イ)知識の活用の重視
・ケーススタディの実践
③学習課題を自分のこととしてとらえる授業展開の工夫
ア)具体物からの課題提示
・課題にイメージを持たせる工夫
イ)子供の実態資料やアンケートの活用
・自分のこととして学習をとらえる意識
④少人数学級における指導
ア)体験・実験の活用
・体験による課題意識の高まり
・実験による知識習得の充実
3 研究の成果と課題
(1)成果
本校では少人数学級の特色を生かし,研究主題の具現化のために体育の授業の中でどの
ような有効な手立てを取ることができるか検証をしてきた。
研究を通して様々な手立てを検証してきたが,運動領域における大きな成果として,「体
育に対する意欲」「技能」の向上がみられた。
これまで,「指示された運動を行う」ことの多かった体育の授業だが,今年度は「目的
意識をもつ」ということを授業全体の中ではもちろん,学習カードや掲示物を活用するこ
とで明確にさせてきた。
目的意識をもたせるため、目標をスモールステップ化することを重視して研究を推進し
た。段階を追って難易度の低いものから達成することができる目標を順次提示させること
により,子供たちの意欲を向上させることができた。また、学習カードや掲示物を工夫す
ることにより,子供たちは「今何のためにこの運動をしているか」ということを意識して
活動することもできていた。
技能の向上については,教師の関わりにより大きな効果がみられた。少人数指導が可能
な本校においては,子供たちの細かな動きの変化をしっかりと把握し,適切なアドバイス
を送ることができる。少人数学級においては器械運動のような器械器具を使用する運動で
順番を待つことなく,次々と運動ができるという利点も生かし子どもの運動量の確保に努
めることができた。また、運動の場をコンパクトにしたり掲示物に子供の声を書き入れた
りすることにより子供同士が励ますなどの関わりも増え,自分に自信をもって意欲的に運
動する姿が多く見られた。
保健領域においては,自分自身のこととして保健の学習をとらえる問題解決的な学習を
展開した。一般的な健康ではなく身近な内容としての健康の学習をすることにより,子供
たちは目的意識をもちながら学習に取り組むことができていた。
また,授業の中で養護教諭や栄養教諭と連携し体験・実験を充実させるといった手立て
をとることにより,子供たちは意欲的に学習に取り組むことができた。
学習の最後には保健の学習で学んだことを生活の中で活用できるように効果的なケース
スタディを取り入れることにより,子供たちは普段の生活から自分の健康や体を考える姿
がみられるようになった。
また、運動領域及び保健領域において,年間指導計画を見直し,少人数指導の利点を生
かした年間指導計画を策定した。その他,運動領域では単元の目標についてどの場面で中
心的な評価をするか明確に表す単元指導計画を策定した。保健領域においては,養護教諭
・栄養教諭にも積極的に授業の中には入ってもらう計画を立てて実践することで,よりき
め細かな指導を実現できた。
(2)課題
運動領域においては,子供たちに単元を通して同じ技に取り組ませるか,それぞれ自分
で取り組む技を考えて運動するべきか検討を重ねてきた。本校では、単元の前半部分では
全員で同一の技に取り組ませ,後半部分は子供たちが自分で取り組む技を考えさせ活動さ
せた。少人数指導であれば教師の目が届きやすく,子供たちがそれぞれ違う技を習得しよ
うとしていてもアドバイスしやすいという利点はあった。それでも同一の技を全員で練習
することでの利点は大きいため,どのような形で授業を構築していくべきか今後検討して
いく必要がある。
保健領域においては,少人数学級のためのサンプル数の少なさが課題として挙げられた。
自分たちの課題として子供自身のデータを提示した場合,一般的な成長と異なる傾向が出
てくることがある。実際に授業の中で子どもの身長の伸びやすい時期について傾向を調べ
た際,全国平均と違った傾向が学級で出てしまうこともあった。サンプルの範囲を広げる
などの手立てが必要であることが確認されている。
(3)指定期間終了後の取組
・研究収録の発行及び神恵内村ホームページにおいての研究成果の発表
・年間指導計画の検討の継続
・器械運動以外の領域における研究主題具現化のための手立ての構築