201 5 年度数学基礎考究2 (落合) 前回 (11/19 の授業) の解説と補 足

201 5 年度 数学基礎考究2 (落合) 前回 (11/19 の授業) の解説と補
足
前回の課題の解説
[問1] α ∈ K とする. k = 1, k = 2, k = 3, k = 4 それぞれの場合に,
ΦA (X) = (X − α)4 かつ φA (X) = (X − α)k となる行列 A ∈ M4 (K) を
見つけよ. (この問題は証明なしで答えだけを記せばよい)
解答 A ∈ Mn (K) が上半三角行列であるとき, ΦA (X) = (X − a11 )(X −
a22 ) · · · (X − ann ) である. よって, A ∈ M4 (K) が上半三角行列で対角成
分が a11 = a22 = a33 = a44 = α のとき固有多項式は ΦA (X) = (X − α)4
となる. そのような行列の中で最小多項式が k = 1, k = 2, k = 3, k = 4
それぞれの場合に, φA (X) = (X − α)k となる行列 A ∈ M4 (K) を見つ
けたい
.

α 1 0 0
0 α 1 0


A=
 とすると, φA (X) = (X − α)4 となる.
0 0 α 1
0 0 0 α




α 1 0 0
α 0 0 0
0 α 1 0
0 α 1 0




A=
, A = 
 とすると,
0 0 α 0
0 0 α 1
0 0 0 α
0 0 0 α
φA (X)= (X − α)3 となる
.





α 1 0 0
α 0 0 0
α 0 0 0
0 α 0 0
0 α 1 0
0 α 0 0






A = 
, A = 
, A = 
,
0 0 α 0
0 0 α 0
0 0 α 1
0 0 0 α
0 0 0 α
0 0 0 α


α 1 0 0
0 α 0 0


A=
 とすると, φA (X) = (X − α)2 となる.
0 0 α 1
0 0 0 α


α 0 0 0
0 α 0 0


A=
 とすると, φA (X) = X − α となる.
0 0 α 0
0 0 0 α
 (i)

a1
∗


...
[問2] 1 ≤ i ≤ n なる各自然数 i において, 上半三角行列 Ai = 
∈
0
(i)
Mn (K) を考える. 各 i で i 番目の対角成分 ai は 0 であると仮定する.
(i)
an
このとき, A1 A2 · · · An = 0 を示せ.
証明 n に関する数学的帰納法で証明する. n = 1 のときは明らかに正
しい. n − 1 まで正しいとする. A1 A2 · · · An = A1 A2 · · · An−1 An である
が, 数学的帰納法の仮定を最初の
n − 1 × n − 1)ブロックに適用するこ
(
0n−1
∗
とで A1 A2 · · · An−1 =
を得る. よって
(n−1)
(n−1)
0
an
· · · an
(
)(
)
0
∗
∗
∗
n−1
n−1
A1 A2 · · · An−1 An =
=0
(n−1)
(n−1)
0
0
0
an
· · · an
となる.
[問3] A ∈ Mn (R) とする. 小テストで示した「正則行列 P ∈ Mn (C)
が存在して P −1 AP が上半三角行列となる」という事実を用いて, ケー
リーハミルトンの定理を証明せよ.
証明 P ∈ GL(C) とするとき, φA (X) = φP −1 AP (X), ΦA (X) = ΦP −1 AP (X)
が成り立つので, 上半三角行列 A′ = P −1 AP ∈ Mn (C) に対して, ケー


α1
∗


..
リーハミルトンの定理を示せばよい. A′ = 
.
 ∈ Mn (K)
0
αn
とすると, ΦA′ (X) = (X − α1 ) · · · (X − αn ) である. Bi = A′ − αi 1n と
おくと, Bi は上半三角行列で上から i 番目の対角成分が 0 である. 問2
の結果より,
(A′ − α1 1n ) · · · (A′ − αn 1n ) = B1 · · · Bn = 0
となる. よって, ΦA′ (A′ ) = 0 が示された.
(
)
A 0
[問4] A ∈ Mm (K), B ∈ Mn (K) に対して, C =
∈ Mm+n (K)
0 B
と定める.
(1) C の最小多項式 φC (X) を A の最小多項式 φA (X) と B の最小多項
式 φB (X) の言葉で記せ. (ヒント: ブロック分解された行列の積や和を
思い出すこと)
(
)
f (A)
0
解答 f (X) ∈ K[X] に対して, f (C) =
となる. f (C) =
0
f (B)
0 となるための必要十分条件は f (A) = 0 かつ f (B) = 0 となることで
ある. よって, 最小多項式の言葉を用いると, f (C) = 0 となるための必
要十分条件は f (X) が φA (X) と φB (X) で割り切れることである. よっ
て, φC (X) は φA (X) と φB (X) の最小公倍多項式となる.
(2) C の固有多項式 ΦC (X) を A の固有多項式 ΦA (X) と B の固有多項
式 ΦB (X) の言葉で記せ. (ヒント: ブロック分解された行列の行列式を
思い出すこと)
(
)
X1m − A
0
解答 X1m+n − C =
である. よって,
0
X1n − B
ΦC (X) = det(X1m+n − C)
= det(X1m − A) · det(X1n − B)
= ΦA (X)ΦB (X)
となる.
前回大きな問題点があった人へのレポート提出のお願い
前回の小テストが 4 点以下だった人
前回の課題が 4 点以下だった人
は, 次のレポート問題を解いて丁寧にレポートを作成して来週の授業前
に提出してください.
レポート問題 A, B ∈ Mn (K) とするとき, tr(AB) = tr(BA), det(AB) =
detA · detA を示せ.