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誰のためのデザイン D・Aノーマン
第3章 頭の中の知識と外界にある知識
□ 記憶は外界にある知識でもある
□ 外界の知識と頭の中の知識の間のトレードオフ
2006/06/15
菅野谷 順
記憶は外界にある知識でもある
目の前から消えてしまえば、頭からも消え去る
外界にある知識はきわめて価値があるが、まさに適切なその場所に
いるときしかその知識は使えない。
例えば・・・
図1 メモをとる
図2 とったメモを忘れる
思い出すこと(reminding)
これは頭の中の知識と外界の知識の相互作用の良い例である。
思い出すために使われる方法はたくさんある。
(1) 単に知識を頭の中においておく(リハーサル)
何度も繰り返し頭の中に思い浮かべ、知識を頭の中に持っ
ておく。その事柄が重要であるならば、覚えていることに何の
苦労も無い。
例)初めてのパリ旅行で飛行機に遅れないようにする
思い出すこと(reminding)
(2)覚える作業の一部を外界のほうに任せる
自分用のメモ、手帳、卓上のカレンダーや日記、日時を設定
できる目覚まし時計、またはそれらの作業を秘書に任せる。
図3 メモ帳
図4 コンポのタイマー
図5 ポストイット
思い出すこと(reminding)
(3)思い出すそのものに任せてしまう
強制的に目に付く状況を作ったりして思い出す。例えば車の
キーを明日もって行く本の上に置いたりする。
図6 ドアに車のキーを掛けておく
図7 玄関に本を置いておく
思い出させるもの(reminder)
思い出させるものには、二つの側面がある。シグナルとメッセージ
である。思い出す場合にも、
・ 何か思い出さなくてはならないことがあることを知ること
・ 一体何を思い出すかということ
の二つを区別しなくてはならない。思い出すための道具としてよく
使われるものは二つの重要な側面のうちの片方の役にしかたたな
い。理想的なのは、シグナルとメッセージの両者を含んでいるもの
である。
Ex:シグナルのみの例
携帯のメール着信を利用する
この場合、「いつそのメモを見たらいいのか」というシグナルの役割
は果たすが、「何をするのか」ということは思い出させてくれない。
Ex:メッセージのみの例
メモを残すという行為
この場合、「何をするのか」というメッセージの役割は果たすが、
「いつそのメモを見たらいいのか」ということは思い出させてくれ
ない。
必要なときに思い出させてくれる道具
ノーマンは賢い時計や小さな電卓サイズの思い出すための道具は、
需要があると考え、もう少しの努力、よりよい技術、よりよいデザイン
が必要だと述べている。
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ポケットサイズであること
フルサイズのタイプライターのキーボードと十分に大きな画面
強力なグラフィック機能
たくさんのメモリー
簡単に電話、コンピュータに接続できる
でも値段は高いと困る
ノーマンは10年後には前述したようなものが、完全な形で手に入る
だろうと述べている。
16年後の現在・・・
例えば携帯電話は・・・
携帯電話は前述の条件をほとんど満たしていると考えられる。しかし
あまり使い易いモノになっていない。
まだ実現は出来ていないのでは・・・?
自然な対応づけ
台所のコンロのつまみとバーナーの配置
ノーマンは台所のコンロのつまみとバーナーの配置は、自然な対応
づけさえすれば、記憶の中においておく情報を大幅に減らすことが
可能な良い例であると述べている。
大学のガスコンロ
ラベルを必要とするデザイン
自然な対応付けが出来てさえすれば、ラベルや説明書など必要
無い。しかし現在はまだまだラベルが多く使われている。
ラベルを必要としないデザイン
単純明快なデザインの原則
ラベルに頼らないといけないようなデザインは失格である。
ラベルは重要で、必要であることも多いけれども、
自然な対応づけが適切にされていれば、
ラベルはほとんど必要ない。
ラベルが必要に思える場面があれば、
他にデザインのやりようはないかを考えること。
コンロの場合、よりよいデザインにするのが容易であるにも関わらず、
改善されていないのが恥ずかしい点であると言っている。
判断しづらい使いやすさ
使いやすさというのは、そのものを買おうとしている段階では判断の
基準として考えられないことが多い。さらに、それを本当に使うような
環境で、典型的な作業をしてみるというテストを何種類もの対象に対
してやってみないと、使いやすさがよく分からない。
急いでいるときに、必要なディスクに録画できるのか?
込んでいる電車の中で、ポケットに入れたまま操作が出来るのか?
購入者 ≠ ユーザ
ノーマンは、購入者がすなわちユーザでないことが一番大きな問題で
あるとしている。例えば、オフィスでは経理が値段や業者のコネ、信頼
性で設備を発注する。ここで、使いやすさが考慮に入れられることは
めったにない。また、購入する人が現実の利用者である場合でも、あ
る望ましい特徴と引き換えに望ましくない特徴を受け入れえる必要が
ある。
大学のシステム類
デザインで選んだ使いづらい携帯電話