小学校 国語科 3年生

神奈川版:「読解力」向上のためのガイドブック
小学校 国語科
3年生
話の中心をとらえよう
国語科
3年生
話の中心をとらえよう
1 単元・題材の目標
2 児童について
教材文とともに、掲載されている写真もテキ
ストとし、それらを基に書かれている内容のお
およそをとらえ、教材文の段落を意識しなが
ら、書かれている内容を正しく読み取る力を育
てる。
また、昆虫や生き物について書かれた説明的
な文章や科学的な内容の本を読む楽しさを味
わわせる。
この時期の児童は、これまでの自己中心的な思
考から、しだいに論理的・客観的な思考ができる
ようになり、また、自然科学的な内容にも興味を
もち始める頃である。本単元では、児童にとって
身近な昆虫の生態について述べた説明的文章を取
り上げ、根拠を明確にしながら読むという基本的
な読解技能を習得することをねらいとしている。
一つ一つの言葉の意味を考えながら、まとまりご
とに内容を正しくとらえる力を身に付けさせた
い。さらに、物語とは異なる、説明的な文章や科
学的な内容の本を読むことの楽しさを知り、読書の
幅を広げる契機としたい。
3 評価規準
国語への
言語についての
読む能力
関心・意欲・態度
知識・理解・技能
一人ひとりの考えや感じ方の違い 教材文の段落ごとに、中心となる 文章全体における段落の役割を理
に気付いて読もうとしている。
語や文をとらえながら、書かれてい 解している。
る内容を正確に読み取っている。
語句の意味について、国語辞典を
必要に応じて活用している。
4 学習指導計画
各時間
付けたい力
学習活動
ほご色とは何 教材文「自然のかくし絵」を読み、内容
だろう
のおおよそをとらえさせる。
(3時間)
保護色について深く理解するための段
落に着目した計画を立てさせる。
ほご色につい 「自然のかくし絵」の意味とコノハチョ
て深く理かい ウの例から保護色の役割を根拠を明確に
しよう
して読み取らせる。
(3時間)
トノサマバッタ・ゴマダラチョウの幼虫
の保護色について根拠を明確にして読み
取らせる。
保護色が役立つ場合と役立たない場合
について読み取らせ、三つの保護色の例に
ついて、それぞれの特色を確認させる。
ほご色につい 各段落の要点をまとめ、文章全体の構成
ての分かった をとらえさせる。
ことや感想を 「自然のかくし絵」を読んで分かったこ
まとめよう
とや感想を文章にまとめて書く力を育て
(2時間)
る。
他のこん虫や 昆虫や生き物の身を守る工夫や生き続
生き物にかん けるための知恵について書かれた他の本
する本を読も を積極的に読む態度を育てる。
う
読んだ本を基に「自然の知恵カード」を
(2時間)
作成させる。
1
対象とするテキスト
教材文を通読し、写真を ・教科書(東京書籍3年
見る中で、記述の概要をと 上)「自然のかくし絵」
らえ、今後の学習計画を立 (教材文、カラー写真)
てる。
教材文を精読し、段落ご ・教科書
とに、書かれている内容を 「自然のかくし絵」
根拠を明確にして正しく読 (教材文、カラー写真)
み取る。
また、インタビューごっ
こをすることによって読み
取ったことを確認する。
【情報の取り出し】【解釈】
【熟考・評価】
文章全体の構成をとら ・教科書
え、これまでの学習を振り 「自然のかくし絵」
返り、分かったことや感想 (教材文、カラー写真)
を書く。
学習の発展として、他の ・図書室・図書館から借
昆虫や生き物の生態に関す りた本
る本を読み、「自然の知恵 ・児童がもち寄る本
カード」を作成し、ファイ ・過去に3年生児童が作
ルする。
成したカード
5
授 業 計 画 【ほご色について深く理かいしよう】(3時間)
時間
学習内容
テキスト
1
評価
評価規準
評価方法
学習活動
予想される児童の反応
○コノハチョウの例と保護色について書かれた
段落を読み、コノハチョウの二枚の写真を見
て、「ほご色は、自然のかくし絵」の意味を話
し合う。
「ほご色は、自然のか
くし絵」とはどういう意
味なのかを読み取る。
コノハチョウの
二枚の写真
教材文
「自然のかくし絵」
形式段落③④
・コノハチョウの羽は、かれ葉と見分け
がつかないね。
・「ほご色」って、まわりから身をかくす
ことと関係あるかな。
・国語辞典で「かくし絵」や「ほご色」の
意味を調べてみようよ。
○昆虫の保護色の役割について書かれた段落を
読み、ワークシートに取り組み、昆虫の保護色
の役割について話し合う。
昆虫の保護色の役割に
ついて読み取る。
教材文
「自然のかくし絵」
形式段落⑤
・こん虫のほご色は、てきの目をだまし
て身をかくすのに役立っているのか
な。
本時で読み取ったこと コノハチョウの保護 記述の確認 ○コノハチョウのどんなところが敵から身をか
くすのに役立っているのかを読み取り、
ノート
をまとめる。
色について読み取っ
に書き表す。また、感想も書き表す。
ている。
【読む能力】
2
トノサマバッタの保護
○トノサマバッタの二枚の写真を見比べて気付
色について読み取る。
いたことを発表する。
・トノサマバッタの色がちがうよ。
・虫の色と草むらの色がよく似ていて見
分けがつきにくいね。
トノサマバッタの
二枚の写真
教材文
「自然のかくし絵」
形式段落⑥
○トノサマバッタの保護色について書かれた段
落を読み、ワークシートに取り組み、トノサマ
バッタの保護色について話し合う。
・トノサマバッタは、自分の体の色がほ
ご色になるような場所をえらんです
んでいるのかな。
・コノハチョウの身のかくし方とどこが
ちがうかな。
ゴマダラチョウのよう ゴマダラチョウのよ 発言の分析 ○ゴマダラチョウのよう虫の二枚の写真を見比
虫の保護色について読み う虫の保護色につい
べて気付いたことを発表する。
取る。
て説明し、自分の考え
・ゴマダラチョウの色がちがうね。
をまとめている。
・虫の色と葉の色がよく似ていて見分け
ゴマダラチョウの
がつきにくいね。
【読む能力】
二枚の写真
2
「読解力」
スキル
指導上の留意点
情報の取り出し ○二つの写真を比較して、題の ◇昆虫を見失った体験を話させたり、図鑑にある他の昆
解釈
意味を読み取ることができ
虫の保護色の写真を紹介するのもよい。
(コノハチョウ
る。
◇「かれ葉のような色」「木の葉そっくり」「見分けが
の二枚の写真) ○自身の体験を話すことができ
つきません」「保護色によって上手に身をかくしてい
(教材文「自然
る。
るこん虫はたくさんいます」に着目させる。
のかくし絵」形 ○根拠(語句等)を挙げて説明
式段落③④)
することができる。
○難語句の意味を国語辞典で調
べることができる。
○写真と本文の関係を説明する
ことができる。
情報の取り出し ○接続語・指示語に注目するこ ◇「人間の目をだますのと同じくらいに」「てきの目を
解釈
とができる。
だまして身をかくすのに役立っている」に着目させる。
(教材文「自然 ○根拠(語句等)を挙げて説明
のかくし絵」形
することができる。
◇話し合いの後、該当段落をばらばらにした文(カード
式段落⑤)
を組み立てさせると、理解が一層深まる。
○本文の語句を用い、感想も交 ◇教科書・ワークシートに再度目を通させる。
えて表現をすることができ ◇コノハチョウへの一言メッセージを感想として書き加
る。
えるようにさせる。
○一文は短くして文章を書くこ
とができる。
熟考・評価
○二つの写真を一定の視点に立 ◇虫の様子、周りの様子に着目させる。
(トノサマバッ
って比較することができる。
タの二枚の写
◇「自分の体の色がほご色になるような場所をえらんで
真)
すんでいるようです」(空間的視点・個体間の違い)
(教材文「自然
に着目させる。
のかくし絵」
形
式段落⑥)
熟考・評価
(教材文「自然
のかくし絵」)
熟考・評価
○二つの写真を一定の視点に立 ◇虫の様子、周りの様子に着目させる。
(ゴマダラチョ
って比較することができる。
ウの二枚の写
真)
3
時間
学習内容
テキスト
2
評価
評価規準
評価方法
学習活動
予想される児童の反応
○ゴマダラチョウのよう虫の保護色について書
かれた段落をノートに視写し、
ワークシートに
取り組み、
ゴマダラチョウのよう虫の保護色に
ついて話し合う。
教材文
「自然のかくし絵」
形式段落⑦
・まわりの色が変化するにつれて、体の
色がかわっていくこん虫もいるんだ
ね。
・ゴマダラチョウのよう虫の体の色も、
だんだん黄色にかわっていくね。
・トノサマバッタの身のかくし方とどこ
がちがうかな。
3
本時で読み取ったこと
をまとめる。
教材文
「自然のかくし絵」
形式段落⑥⑦
トノサマバッタ・ゴマ 記述の点検 ○トノサマバッタ・ゴマダラチョウのよう虫のど
んなところが敵から身を隠すのに役だってい
ダラチョウのよう虫
るかをノートに書き表す。また、感想も書き表
の保護色について読
す。
み取っている。
【読む能力】
保護色が役立つ場合と
役立たない場合について
読み取る。
教材文
「自然のかくし絵」
形式段落⑧∼⑩
○保護色が役立つ場合と役立たない場合ににつ
いて書かれた段落を読み、
ワークシートに取り
組み、
保護色が役立つ条件と役立たない条件に
ついて話し合う。
国語辞典で「みのが 行動の観察
す」「するどい」の意
味を押さえることが
できる。
【言語事項】
・じっとしているかぎり、ほご色は、身
をかくすのに役立つんだね。
・鳥やトカゲなどは、ちょっとした動作を
みのがさないするどい目をもっているか
ら、動いたときなどには、鳥やトカゲに
食べられてしまうことがあるよ。
○今までの三つの保護色の例についてまとめた
ノートを見て、それぞれの特色を確認する。
今までの三つの保護色
の例について確認し、説
明することができる。
・コノハチョウ
木の葉の色や形にそっくりである。
・トノサマバッタ
自分の体の色がほご色になるような場
所を選んですむ。
・ゴマダラチョウのよう虫
周りの色が変化するにつれて、体の色
も変わっていく。トノサマバッタの色
がちがう。
教材文
「自然のかくし絵」
まとめたノート
昆虫博士とレポーターの役を
三つの昆虫(コノハチ 行動の観察 ○二人一組になり、
決め、インタビューごっこをする。
ョウ・トノサマバッタ
・ゴマダラチョウのよ
レ:コノハチョウのほご色はどんな役割
がありますか。
う虫)の保護色の特色
博:コノハチョウは、羽の裏が枯れ葉の
を説明できる。
ような色で、形も木の葉そっくりで
【読む能力】
す。ですから、木の枝にとまってい
ると、枯れ葉と見分けがつきませ
ん。
4
「読解力」
スキル
指導上の留意点
情報の取り出し ○指示語に注目する。
◇はじめにまとめの文があり、その後の文章で具体的な
解釈
○根拠(語句等)を挙げて説明
説明があることに着目させる。
(教材文「自然
する。
◇「まわりの色が変化するにつれて、体の色がかわって
のかくし絵」
いくこん虫もいます」(時間的視点・個体内の変化)
形式段落⑦)
に着目させる。
◇トノサマバッタの保護色とどう違うのかという点も話
題とする。
表現
○本文の語句を用い、感想も交 ◇教科書・ワークシートに再度目を通させる。
(教材文「自然の
えて表現をする。
◇トノサマバッタ・ゴマダラチョウのよう虫への一言メ
かくし絵」 形 ○一文は短くして文章を書く。
ッセージを感想として書き加えるようにさせる。
式段落⑥⑦)
情報の取り出し ○難語句の意味を国語辞典で調 ◇「見のがす」「するどい」の意味を国語辞典でおさえ
解釈
べる。
る。
(教材文「自然の ○接続語に注目する。
◇「ところが」「∼からです」「かぎりません」「ずい
かくし絵」 形 ○根拠(語句・自身の体験等)
ぶん」に着目させる。
式段落⑧∼
を挙げて説明する。
◇獲物の捕食を観察した体験を発表させると内容理解が
⑩)
ふくらむ。
◇保護色の果たす役割の限界を強調する。
◇鳥やトカゲが獲物を捕食する映像としてのインターネ
ット検索の写真や理科のビデオの利用も可能である。
熟考・評価
○文を比較しながら読み、それ ◇特徴を指摘できないようであれば、教科書本文(形式
(教材文「自然の
ぞれの特徴を指摘する。
段落③∼⑦)を黙読させる。
かくし絵」、ま ○人間の体や生活との違いを考 ◇黒板に三つの保護色の特色(カード)を掲示する。
とめたノート) えながら特徴をさがす。
◇保護色の不思議・すばらしさを強調する。
表現
○伝えたいことを選び、自分の ◇形式にこだわらず、楽しい雰囲気で、三つの保護色の
考えが分かるように筋道を立
特色について確認するようにさせる。
てて話す。
5
6 本単元・題材の学習と「読解力」
○ 本単元で扱う教材文「自然のかくし絵」は、東京書籍3年上に掲載されている説明文である。要旨は次のと
おりである。
まわりの色と見分けにくい体の色は、敵から身を隠すのに役立つ。そのような色を保護色という。自然の
中で保護色を使って身を隠している昆虫たちは、自然のかくし絵と言えるだろう。
保護色は、昆虫がじっとしている場合には身を守るのに役立つが、昆虫が動いたときなどは鳥やトカゲに
食べられてしまうので役に立たない。保護色は、どんな場合でも役立つとは限らないが、敵に囲まれながら
生きる昆虫にはずいぶんと役立っている。
○ 本単元で扱う説明文「自然のかくし絵」に児童が抵抗感なく入っていけるようにすることが大切である。そ
のためには、児童が日頃の学校生活の中で、各種の説明文と出会い、説明文を読み・聞き慣れておくことが肝
要となる。「学級通信を読む」「図工や理科の学習で作り方の説明文を読む」「学級レクのゲームのやり方や
係の仕事のやり方の説明を聞く」「読み語りで説明文を聞く」などの場が必要である。また、非連続型テキス
トである保護色の映像とインパクトのある形で出会っておくことも肝要となる。「昆虫の保護色が載っている
カラー写真を見て、ないしはビデオを見て、昆虫探しをする」「一人一枚、捕まえたことのある昆虫を背景の
様子と共に色鉛筆で描く」などの場を設定することが大切である。
○ 本単元では、小単元「保護色について深く理解しよう」の学習がメインとなる。児童は、ここでは保護色に
ついての本文を精読していくことになる。精読の学習は、児童にとっては、とかく受け身的で味気のないもの
となりやすい。そういった精読学習は、叙述内容の深い理解をもたらさない。そこで、本小単元の展開にあた
っては、次の点を大事にした指導を行う。そのことにより、児童が叙述と意欲的に向き合うことができ、また、
叙述についてイメージ豊かにとらえることができ、結果として、児童が深く本文を理解することができると考
えるからである。
* 児童にとって魅力ある必要感のある読みの目的(課題)や精読学習の成果の見通しが生まれるようにする。
前段の学習計画設定の中で、「昆虫の保護色ってすごい。そのすごさの中身をさぐっていこう!」とか「この
学習をすると、虫さがしがうまくなるだろう。」などといったことが、話し合いを通して生まれるようにする。
* 教材文の言葉に着目した学習の展開を図るとともに、展開の中で、児童が自身の体験や興味を語る場面を設
定する。「昆虫採集に出かけて、こういう昆虫を捕まえたよ。」「理科の青虫の観察でこういう発見をしたよ。」
「この昆虫のこういうところが好きだよ。」などの発表を引き出すようにしたい。また、教材文(連続型テキ
スト)を読む学習の展開の中で、そこに掲載されているカラー写真や教師が用意したカラー写真(非連続テキ
スト)について語る場面を設定する。「写真のこういう様子をこういう文・言葉で表しているんだ。」「この
文・言葉の一例がこの写真なんだ。」などの発表を引き出すようにする。
* 「音読練習をする」「視写をする」「ワークシートに取り組む」などの学習活動において、児童が学習活動
に楽しさ・手応えが実感できるよう、指導や資料に工夫をこらす。「音読パターンにバリエーションをもたせ
る」「声に出しながら視写をするようにさせる」「吹き出しや絵を多用したワークシートを作る」などに取り
組む。
* 読み取ったことをまとめる場面では、児童がクイズや質問に答える形やインタビューごっこを取り入れ、自
分の感想を交えながら読み取ったことを表現することができるように工夫をこらす。「∼の優れているところ
はどんなところでしょうか?それをどう思いますか?」「なぜ∼は∼なのでしょうか?それをどう思います
か?」「もしも∼がなかったら、∼はどうなると思いますか?」といったやりとりができるような場面を設定
する。
○ 本単元の最終小単元「他の昆虫や生き物の生態に関する本を読もう」では、次の場を設定し、意欲付けをす
る。
・昆虫や生き物の生態に関する本(連続型テキスト)やカラー写真(非連続型テキスト)の紹介。
・過去の3年生児童が作成したカード(自然の知恵本・自然の知恵カルタなど)の紹介。
6