量子力学 I 中間レポート問題

量子力学 I 中間レポート問題
2015.11.16 出題
提出期限:2015 年 12 月 1 日 (火) 17:00
提出場所:アドミニストレーション棟レポートボックス
以下の問題 1,問題 2 に答えよ.解答に際しては結果だけでなく途中の計算も示すこと.
[問題 1] 量子力学の枠組みでは,物理量は状態に作用する演算子 (オブザーバブル) として表される.演
算子は一般に非可換な量であり,特に位置を表す演算子 x̂ と運動量を表す演算子 p̂ は次の交換関
係を満たす.
[x̂, p̂] := x̂p̂ − p̂x̂ = iℏ.
(1)
系の状態は波動関数によって表すことができ,基底を位置座標 x にとれば波動関数の座標表示
ψ(x, t),運動量 p にとれば運動量表示 ψ̃(p, t) となる.これらの表示はそれぞれ演算子 x̂,p̂ の固
有関数になっており,次の関係を満たす.
x̂ψ(x, t) = xψ(x, t),
x̂ψ̃(p, t) = iℏ
∂
ψ̃(p, t),
∂p
p̂ψ(x, t) = −iℏ
∂
ψ(x, t),
∂x
p̂ψ̃(p, t) = pψ̃(p, t).
(2)
(3)
問 1 式 (2),(3) が交換関係 (1) を満たすこと,すなわち
[x̂, p̂]ψ(x, t) = iℏψ(x, t),
(4)
[x̂, p̂]ψ̃(p, t) = iℏψ̃(p, t)
(5)
が成り立つことを確認せよ.
量子力学では,波動関数 ψ(x, t) の時間発展は Schrödinger 方程式によって記述される.
iℏ
ここで演算子 Ĥ =
p̂2
2m
∂
ψ(x, t) = Ĥψ(x, t).
∂t
(6)
+ V (x̂, t) はハミルトニアンと呼ばれ,系を特徴づける物理量である.ハ
ミルトニアンの固有値は系のエネルギーを表す.
問 2 式 (6) について,ポテンシャル項 V (x̂, t) が時間に依存しない (V (x̂, t) = V (x̂) と書ける)
場合を考える.このとき波動関数 ψ(x, t) は x の関数 ϕ(x) と t の関数 f (t) の積で表せると仮定
すると,ϕ(x) と f (t) はそれぞれどのような方程式に従うか求めよ.
以下では具体的に質量 m の 1 次元自由粒子の運動を考えよう.自由粒子のハミルトニアンは
Ĥ =
p̂2
2m
とかけ,ϕ(x) に関する方程式の解は ϕk (x) =
√1 eikx
2π
と求められる (k は任意の実数).
これは平面波解と呼ばれるものである.それに対応して f (t) に関する方程式の解を fk (t) とお
けば,自由粒子の波動関数は ψk (x, t) = ϕk (x)fk (t) と求められる.
問 3 ϕ(x) に関する方程式の解を ϕk (x) =
√1 eikx
2π
とするとき,f (t) に関する方程式の解
fk (t) を求め,k を用いて表せ.
Schrödinger 方 程 式 は 線 型 で あ る た め ,異 な る k に 関 す る ψk (x, t) の 線 型 結 合 も ま た
Schrödinger 方程式の解となる.よって一般解は次のような形で表される.
∫ ∞
ψg (x, t) =
dkg(k)ψk (x, t).
(7)
−∞
重みを表す関数 g(k) をうまく選ぶことで様々な波動関数を表現することができる.
問 4 g(k) ∝ e−
σ2
2
(k−k0 )2
とするとき,積分を実行して ψg (x, t) の具体形を求めよ.ただし,
ψg (x, t) は規格化条件を満たすことに留意せよ.なおこの場合の ψg (x, t) は Gaussian 波束とよ
ばれる.また計算にあたっては以下の積分公式を利用してよい.
∫
√
∞
dxe
−a(x+c)2
=
−∞
π
, a, c ∈ C, Re(a) ≥ 0.
a
(8)
前問 (問 4) の波動関数で表される状態はどのような特徴を持つか確認しよう.その為に位置 x̂
と運動量 p̂ についての期待値と分散を求める.時刻 t における演算子 Â の状態 ψ(x, t) に関する
期待値と分散はそれぞれ
∫
∞
dxψ ∗ (x, t)Âψ(x, t),
−∞
⟨(
⟨
⟩
)2 ⟩
2
(∆A) :=
 − ⟨Â⟩
⟨Â⟩ :=
(9)
(10)
によって与えられる.ここで,ψ ∗ (x, t) は ψ(x, t) の複素共役である.
問 5 波動関数 ψg (x, t) について,時刻 t における演算子 x̂,p̂ の期待値と分散をそれぞれ求め,
時刻 t に従ってそれぞれどのように振る舞うか述べよ.
(ヒント:運動量 p は p = ℏk と表され,また波動関数の座標表示 ψ(x, t) と運動量表示 ψ̃(p, t) は
互いにフーリエ変換の関係にあることを上手く利用すると,運動量に関する計算は簡単になる.)
[問題 2] 3 次元のポテンシャル V (r) 中の Schrödinger 方程式は
[
]
∂
ℏ2
iℏ ψ(r, t) = Ĥψ(r, t) = −
∆ + V (r) ψ(r, t),
∂t
2m
(11)
である。
問 1 このとき、
ρ(r, t) :=|ψ(r, t)|2
iℏ ∗
[ψ (r, t)∇ψ(r, t) − (∇ψ ∗ (r, t))ψ(r, t)]
j(r, t) := −
2m
ℏ
= Im[ψ ∗ (r, t)∇ψ(r, t)]
m
(12)
(13)
と定義すると、連続の式
d
ρ(r, t) + ∇ · j(r, t) = 0
dt
(14)
を満たすことを示せ。ここで V ∗ (r) = V (r) に注意せよ。
問 2 ある時刻 t = t0 のときに、
∫
∞
−∞
dr|ψ(r, t0 )|2 = 1
(15)
を満たすとするとき、問 1 の結果から任意の時刻 t で ψ(r, t) が確率の保存
∫
∞
dr|ψ(r, t)|2 = 1
(16)
−∞
を自動的に満たすことを示せ。ここで無限遠方で波動関数がゼロになる (lim|r|→∞ ψ(r, t) = 0)
ことに注意せよ。