第6号 平成27年5月30日 東京都立三田高等学校長 笹 のぶえ 昨 年 度 か ら 、三 田 高 校 で は 、 「 主 体 的 な 学 び 」に つ い て 考 え て い ま す 。生 徒 が 自 ら 考 え て学習するには、教師はどのような授業改善や取組をしていけばいいかということにつ いてです。大学の先生を招いての校内研修や都内で実施される研究協議会への参加や地 方の先進校視察等を行って来ました。一つの手法としてのアクティブ・ラーニングにつ い て も 先 生 方 は 勉 強 を し て い ま す 。三 田 高 校 で も 、IC 機 器 を 活 用 し た り 、ペ ア ワ ー ク や グループ学習を授業に取り入れて学び合いや教え合いの手法を取ったりする先生が増え てきたのもその影響です。 ◆◆◆ 主体的な学び・活動 「主体的な学び」の姿勢は、いわゆる勉強といわれる授業の中だけではなく、日常の皆さ んの行動全てにおいても求められています。 5月21日に、避難訓練がありました。これまでは、火災や地震の発災を想定し、先生の 指示に従って、廊下に並んで順番に避難するという方法がとられていました。しかし、こう した避難訓練は現実的ではありません。そこで、今年は、副校長先生と生徒部の先生のアイ ディアで、まず、テニスコートでの整列隊形を変え、グラウンド側を先頭に一列縦隊で並ぶ ようにしました。その理由が分かりましたか?そして、避難の順番など決めずに、臨機応変 に、自分たちで各々が安全に速やかに避難経路を判断して、避難する方法に変更しました。 火 元 は 6 階 半 の 家 庭 科 室 で す 。発 災 の 時 、多 く の 生 徒 は 、6 階 以 下 の 教 室 に い た と 思 い ま す 。 煙と炎はどう流れますか?本校には、どの位置に階段がありますか?本校には、一時避難場 所のテニスコートに出る通路は何か所ありますか?瞬時に必要な情報を収集し、その時々に 自ら最も有効な避難経路を判断し、主体的に避難できた人はどれくらいいるでしょうか?こ れまでの訓練がこうだったからとか、前の人がこう避難したからという理由で、いつものよ うに、前の人につき従って何も考えずに、避難した人はいませんでしたか?副校長先生の講 話にあったように、災害に遭うのは学校にいる時に限ったわけではありません。あなたが一 人でいる時や家族・友達と一緒にいる時に、遭遇するかもしれません。訓練を訓練で終わら せず、応用する力を身に付けてください。そのためにも、訓練に主体的な意識をもって関わ ることが求められるのです。あなたは避難訓練の場で主体的に自分と仲間の命と安全を守る 避難活動ができましたか?避難訓練であっても「津波てんでんこ」を忘れてはなりません。 5 月 2 5 日 の 体 育 祭 の 開 会 式 の 挨 拶 で 、「 進 化 し た 三 田 高 校 の 体 育 祭 に 期 待 す る 。」 と 話 し ました。期待を大幅に裏切られるほどの大進化ぶりを見せてもらいとても嬉しく思っていま す。生徒が主体的に運営し、生徒が自主的に動いていた体育祭だったからです。今年の一番 大きな進化は、全ての放送による指示が生徒から出され、その指示や連絡で生徒たちが動い ていたという点です。昨年までの三田高生は、残念ながら、先生方に指示され、繰り返し注 意を受け、ようやく動けたという面が多分にありました。今年は、みんなで選んだ代表・主 体的に任に就いた係を軸に、一人一人の生徒が、体育祭に関わる意識を強く持ち、集まるこ とでも、競技することでも、片付けることでも、当事者意識を持って動いていることが見て 取れました。指示されて動かされる体育祭ではなく、主体的に関わる体育祭ができていまし た。例えば、当日は、4時30分を回っても、まだ最後の色別リレーは終わっていませんで し た 。 放 送 部 員 の 3 年 生 の 数 人 が 放 送 機 器 の 周 囲 に 集 ま り 、「 閉 会 式 は 予 定 通 り す る の か し ら?」 ( 閉 会 式 の プ ロ グ ラ ム 変 更 は 司 会 の 生 徒 に は 伝 わ っ て い ま し た が 、放 送 部 に は 知 ら さ れ て い ま せ ん で し た 。「 ) 5 時 完 全 撤 収 だ よ 。」 「 ワ イ ア レ ス 等 必 要 な 機 材 を 残 し て お け ば い い よ 。」 誰ともなく、状況判断し、マイクスタンドを片付け、ケーブルを巻き始めました。片付けに 要する時間はどれだけかかるか、最低限必要な機材は何か。ただ指示を待つのではなく、主 体的に判断し、自主的に行動に移し、結果として、他の部署より速やかに片付けを完了させ ました。本部席にいた私には、一番目についた生徒の主体的な活動でしたが、きっと、大井 競技場のいたるところで、総務も進行も競技も会場も保健も全ての部門の係が、応援も競技 も全ての参加者が、主体的に動けた体育祭だったのではないかと思っています。予定の時間 通 り に 進 行 で き な か っ た 点 に つ い て は 、十 分 に 見 直 し 対 策 を 立 て る こ と が 必 要 で す 。し か し 、 こ の 点 に お い て も 、解 散 時 に 実 行 委 員 の 方 か ら「 早 速 反 省 し て 改 善 策 を 考 え よ う 。」と 話 が 出 たと聞いています。そこには、先生に指摘されてから動きだすような指示待ち人間から脱却 した主体的な三田高生がいました。 学校行事は、みなさんが主体的な活動を体験し、失敗を通して様々な事を学ぶ大切な場面 です。 なぜ、このような「主体的な学び・活動」が必要なのか。それは皆さんが、これから答え のない時代を、自分で答えを作りながら生きていかねばならないからです。ジクソーパズル とレゴブロックを例にとって、今年の始業式でお話しした通りです。1 年生には、その話は 初めなので、次に一部を引用します。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 世の中が、大きく変化して、世の中から、正解が消えた、誰もが求めるべき正解が存在し ない世の中になったのです。これから、みんなが生きていく時代は、誰かが用意してくれて いる正解を探す時代ではなく、自分の手で新しい答えを作っていく時代です。知っている情 報、考える材料をつかって、自分で納得して、他の人も納得させられるような答えを作って いく時代になります。 たとえば、こんな風にイメージしてください。ジクソーパズルの能力を必要としていた時 代から、レゴブロックの能力を必要とする時代に変わったということです。 ジグソーパズルは、パッケージの表紙に描かれた完成した絵、つまり、最初から、与えら れた答があって、その正解を完成させるために、1000ピースの中から、これだという1 ピ ー ス を 探 し 出 し て 、そ の ピ ー ス が 、当 て は ま る 、決 ま っ た 場 所 に 配 置 し て い く ゲ ー ム で す 。 一方で、レゴブロックは、手持ちのブロックを自分で組み立てていきます。例えば、自分 なりの犬をイメージして、大きさも形も犬種も自分で考えて作ることができます。使うブロ ックの大きさも色も形も自分で選んで構いません。自分なりに完成させた犬を、周りの人が 犬であると納得してくれれば、いいのです。 つ ま り 、「 答 え る 」 と い う こ と は 、 は じ め か ら 誰 か に 与 え ら れ た 、「 正 解 」 を 探 す の で は な く、 「 自 分 が 納 得 で き て 、な お か つ 、周 り の 人 を 納 得 さ せ ら れ る 解 」=「 納 得 解 」を 求 め る こ となのです。これから、皆さんが生きていく時代の「答えを出す」という作業は、納得解を 作るということです。この納得解を作るということが、主体的に学ぶということの一つの形 であると思います。 主体的に学べる三田高生になってほしいと思います。 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 加えて、皆さんも知っている通り、公職選挙法等改正法案が提出され、5月28日から審 議 が 始 ま り ま し た 。選 挙 権 年 齢 が「 満 18 歳 以 上 」に 引 き 下 げ ら れ ま す 。施 行 さ れ れ ば 、来 年 の平成28年夏の参議院議員通常選挙から、今の3年生は全員が、今の2年生は選挙時点で 18歳になっている者は高校在学中に有権者になり、投票に行くことになります。立派な有 権者として、自分で情報を収集して思考し、自分でそのマニュフェストを判断し、自分で投 票という行動であなたの意見を表現していくことが求められます。親や先生をはじめとした 大人の指示を待っているわけにはいきません。 三 田 高 校 は 、 こ う し た 未 来 を 生 き て い く 皆 さ ん に 、「 主 体 的 な 学 び 」 に よ っ て 、「 思 考 力 ・ 判断力・表現力」すなわち「生きる力」を育んできたいと考えています。
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