線形代数学・同演習 A 講義資料 11 お知らせ 演習問題 8 へのコメント

2015 年 7 月 8 日 (水) No.1
[email protected]
線形代数学・同演習 A 講義資料 11
お知らせ
• 定期試験予告 を行いました.欠席されたお友達がいらっしゃいましたら,持ち込み用紙の用意
をお忘れなきようお伝えください.定期試験にて持ち込み用紙が提出されていない答案は 採点
の対象外 となりますのでご注意ください.
• 7/22 定期試験終了後,授業アンケートをお配りします.アンケートは 7/29(講義最終日)に
回収 致します.なお本アンケートは九州大学が行っている「授業評価アンケート」とは 別物
です.そちらにも別途回答を宜しくお願い申し上げます.
このアンケートは,後期「線形代数学・同演習 B」の準備・進行にあたって,皆さんのご意見
をフィードバックするために行うものです.九大版のアンケートの結果が到着するのは随分先
で,恐らく後期開始までには間に合いません.そのための対策ということでご容赦願います.
なお,このアンケートに記入された内容が 成績に影響することは一切ありません.答案返却日
の 7/29 に回収するのもそのためですが,万一その疑いがありましたらお申し出下さい.
本アンケートの結果及び自由記述欄については 個人が特定出来ない形で公開 させて頂きます.
その際,横山からのコメントを付けます.何卒ご了承下さい.
演習問題 8 へのコメント
• 何か計算の跡があれば 1 点,正解していれば満点を与えています.
• 行列のカッコ ( ) と行列式のカッコ | | は区別して書きましょう.
• 行列式の計算は部分点を与えにくいので,定期試験では all or nothing で採点致します.
定期試験(7/22)についてのヒント
試験勉強の助けとなるかもしれないので,出題傾向を明かしておきます.どうぞ参考にして頂ければ
幸いです.予告した通り,計算問題のウェイトをかなり上げてあります.
• 問題 A [15 点] ヒント:行列の基本変形.闇雲に値を代入してもよい(部分点はもらえる)
が,満点を狙うのは難しいと思う.
• 問題 B [20 点] 中間試験の 問題 C のタイプ.4 題出題する.うち 2 つは中間までの範囲から,
残りは行列式・余因子行列の話題から.授業のノートをしっかり読み込んでおけば解ける問題.
• 問題 C [40 点] 行列式を求めよ,という計算問題を 5 題出題.1 問 8 点という高配点 につき,
計算ミスを犯さないよう慎重に挑むこと.ここで稼いでおかないと,高得点を狙うのは厳しい
と思われる.
• 問題 D [15 点] ほんの少しだけ変わり種の問題.といっても,問題文をよく読めば ただの計
算問題 であることに気付けるはず.行列の掛け算を間違わないように.
1
• 問題 E [20 点] 高得点を狙う方との差をつけるための証明問題.3 題のうち好きなものを 1 つ
選んで解答する選択方式 となっていて,自分が解けそうなものに取り組んでもらう,全て証明
問題に見えるかもしれないが,実は 本質的に計算問題 であることに気付けるかがカギ.
今日の内容
• 行列・ベクトルの幾何的意味(前回からの続き).
***
11.1
内積と行列式の意味
(
座標平面 R2 を考える.2 つのベクトル a =
a1
a2
)
(
,b=
b1
b2
)
a · b = a1 b1 + a2 b2
に対して

a1


b1





を a と b の 内積 inner product と呼ぶ.3 次元の場合も同様に a =  a2 , b =  b2  に対
a3
b3
して
a · b = a1 b1 + a2 b2 + a3 b3
と定義する1 .このとき次が成り立つ.
命題(Cauchy-Schwarz の不等式) |a · b| ≤ |a||b|.
命題(三角不等式) |a + b| ≤ |a| + |b|.
Cauchy-Schwarz の不等式から
−1 ≤
a·b
≤1
|a||b|
が成り立つ.従って,2 つのベクトル a と b のなす角を θ とすれば
cos θ =
a·b
|a||b|
と書ける.特に 2 つのベクトルが 直交 する(=なす角が π/2 となる)ためには
a·b=0
となればよいことが分かる.このように内積が 0 になる状態を「内積が消えている」と表現すること
もある.ここで,次の事実を述べよう.
命題 2 つのベクトル a, b の作る平行四辺形の面積 S は
√
S = |a|2 |b|2 − (a · b)2
(
)
(
)
a1
b1
で与えられる.特に a=
, b=
のとき
a2
b2
1n
次元ベクトル同士の内積も全く同様に定義出来る(後期終盤の「内積空間」のところで少し扱う).
2
2015 年 7 月 8 日 (水) No.2
[email protected]
S = |a1 b2 − a2 b1 |
となる.つまり S = |det(a b)|(2 つのベクトル a, b を並べた 2 次正方行列の行列式の絶対値)で
ある.
S は平行四辺形の面積であるから,常に 0 以上の実数値をとる.一方,行列式は負の値をとるこ
ともあるので,絶対値を付けておく必要がある.行列式の正負は,ベクトルのなす角が鋭角か鈍角か
を表している.
11.2
外積




a1
b1




座標平面 R3 を考える.2 つのベクトル a =  a2 , b =  b2  に対して
a3
b3
 a
2
 
  a3
 a2 b3 − a3 b2
 
  a1
a × b =  −(a1 b3 − a3 b1 )  =  −  a3
 a1 b2 − a2 b1
 a
 1
a2




b1 


b3 

b1 

b2
b2
b3
を a と b の 外積 outer product 2 と呼ぶ.内積とは異なり,外積はベクトル値で得られることに注
意である.これによって得られたベクトル c = a × b は次のような性質を持つ:
• c は a, b 共に直交する.
• c の向きは a から b に右ねじを回した時の進行方向(文章だと分かりづらいので板書で解説
する).
• |c| は a と b の作る平行四辺形の面積に等しい.
更に a × b = − b × a が成り立つことも容易に確かめられる.さて,2 次元の場合は平行四辺形の
面積が行列式と関連付けられたが,3 次元の場合も同様である.具体的には次が成り立つ.
命題 3 つの 3 次元ベクトル a, b, c の作る平行六面体の体積は V = |det(a b c)|(3 つのベクトル
a, b, c を並べた 3 次正方行列の行列式の絶対値)で得られる.
証明は V = (a × b) · c と書けることに気付けば容易である.上の命題において,行列式の正負は外
積 a × b と c が同じ側にあるかどうかを表している.
以上のような空間的理解は,一般の n 次元ベクトル空間を理解する上で重要となる.特に後期では
ベクトル空間の 基底 basis を学ぶが,普段使っている xy 座標のように直交していた方が計算しや
すい・理解しやすいといった事情もある.そのような際に内積・外積の考え方は非常に重要である.
2 または
exterior product とも呼ぶ.
3