固有関数

20090617
固有関数
The Superposition and Completeness of Eigenstate
固有関数というものが準備できたので、固有関数で構成されている状態を見ることにする。つまり、固
有関数の重ね合わせの状態
=
ci
(4.20)
i
i
ci は適当な係数 (重み) である。固有関数の正規直交性を用いると ci は
ci =
で求めることができる。右辺の
dr
∗
i
に固有関数の和を代入するとすぐに分かる。
(4.21)
の規格化条件に同様に
固有関数の和を代入すると
dr
∗
=
|ci | = 1
(4.22)
i
が得られる。これが係数に課せられる条件になる。Â の期待値を同じく計算すると
hAi =
Ai |ci |
(4.23)
f (Ai )|ci |
(4.24)
i
 に限らず f (Â) の場合も
hf (A)i =
i
が得られる。つまり ci が得られれば波動関数を用いずに期待値が計算できることになる。
では係数 ci とは何かを問うことにする。固有関数とは Â を測定すると必ずその固有値 Ai が測定され
る状態であった。ということは固有関数を重ね合わせた状態を観測すると、固有値のうちどれか 1 つが
測定され、それ以外の測定値を得ることはないと言える。(4.22) を見ると、それは確率の条件 (正の実
数で全ての確率を足すと 1 になる) を満たしている。また (4.23), (4.24) を眺めるとこの 2 式の右辺は期
待値の定義になっていると思う。従って |ci | は “Â の固有値 Ai を測定する確率” と解釈することができ
る。従って ci はその確率振幅 (複素数だし) である。
ci について
(
ci =
1 j 番目
0 それ以外
と係数をおいた場合、この状態は固有値 Aj を持つ固有状態である。|cj | = 1 より今の解釈では Aj を測
定する確率が 1、つまり必ず Aj を測定すると言っており固有状態の特徴とかみ合っている。
一般の状態がこのような固有関数の重ね合わせにより構成されているとは断言できない。しかし波動
関数に対してもう 1 つ重要な仮定を置くことにする。
Hermite 演算子の固有関数を用意することができれば、全ての物理的な状態はその重ね合わせで表す
ことができる。
=
ci
i
(4.25)
|ci |
(4.29)
i=
係数 ci については
d r| | =
i=
を満たす。(4.29) を完全性関係という。
Dirac は完全系をつくる固有関数の Hermitian 演算子を observable と呼んだ。