第 0 章 数学的準備 付録 0.B ベクトル積の 3 つの性質から,ベクトル積の成分表示を導出 担当: 荒井 正純 作成: 2015/4/15 2つのベクトル A = (A1 , A2 , A3 ), B = (B1 , B2 , B3 ) に対して,以下の 3 つの性質を満たすベクトル C = (C1 , C2 , C3 ) の成分 (0.10) を求める. (i) C は A にも B にも垂直である. (ii) C の大きさは,A, B で張られる平行四辺形の面積 AB sin θ に等しい. (iii) C の向きは,A から B に右ネジを回した時,ネジの進む向きで定義する. ここで, A = |A| = √ A21 + A22 + A23 , B = |B| = √ B12 + B22 + B32 (A0.2) はそれぞれ A, B の大きさで,θ は A と B のなす角である.このなす角の余弦は,スカラー積の定義より, A1 B1 + A2 B2 + A3 B3 A·B √ (A0.3) =√ 2 cos θ = |A| |B| A1 + A22 + A23 B12 + B22 + B32 である.仮に,ベクトル C の大きさを C とおく. √ C = |C| = C12 + C22 + C32 (A0.4) 性質 (i) の適用 性質 (i) は,スカラー積を用いて, A·C =B·C =0 と表される.これを成分を用いて表すと,以下の 2 式となる. A1 C1 + A2 C2 + A3 C3 = 0 (A0.5a) B1 C1 + B2 C2 + B3 C3 = 0 (A0.5b) 最初に,C2 , C3 を C1 及び A, B の成分で表すことにする.(A0.5a)×B3 − (A0.5b)×A3 より, C2 = A3 B1 − A1 B3 C1 A2 B3 − A3 B2 (A0.6) が得られる.同様に,(A0.5a)×B2 − (A0.5b)×A2 より, C3 = A1 B2 − A2 B1 C1 A2 B3 − A3 B2 (A0.7) が得られる.ここで,A2 B3 ̸= A3 B2 と仮定した. (A0.6), (A0.7) を (A0.4) の2乗に代入すると, [ )2 ( )2 ] ( A B − A B A B − A B 1 2 2 1 3 1 1 3 + C12 C2 = 1 + A2 B3 − A3 B2 A2 B3 − A3 B2 となる.これを C1 について解くと, C12 = (A2 B3 − A3 B2 )2 (A2 B3 − A3 B2 )2 C2 + (A3 B1 − A1 B3 )2 + (A1 B2 − A2 B1 )2 となる. A1 (A0.8) 性質 (ii) の適用 性質 (ii) は, C = AB sin θ と表される.この2乗 C 2 = A2 B 2 sin2 θ = A2 B 2 (1 − cos2 θ) に (A0.2), (A0.3) を代入すると, ( C 2 = (A21 + A22 + A23 )(B12 + B22 + B32 ) 1 − A1 B1 + A2 B2 + A3 B3 √ √ 2 A1 + A22 + A23 B12 + B22 + B32 )2 となる.これを整理すると, C 2 = (A2 B3 − A3 B2 )2 + (A3 B1 − A1 B3 )2 + (A1 B2 − A2 B1 )2 (A0.9) が得られる.(A0.9) を (A0.8) に代入すると, C12 = (A2 B3 − A3 B2 )2 が得られる.これの平方根を取る.符号は決まらないので,複号は残る. C1 = ±(A2 B3 − A3 B2 ) (A0.10) (A0.6), (A0.7) に (A0.10) を代入すると, C2 = ±(A3 B1 − A1 B3 ), C3 = ±(A1 B2 − A2 B1 ) が得られる.ここで複号同順である. 以上をまとめると,性質 (i), (ii) を満足する C の成分は, C = ±(A2 B3 − A3 B2 , A3 B1 − A1 B3 , A1 B2 − A2 B1 ) (複号同順) (A0.11) と表される. 性質 (iii) の適用 簡単のため,A は x 軸の正の向きを向く(即ち,A1 > 0, A2 = A3 = 0) y とする.又,B は xy 平面上にあり,第 1 象限を向く(即ち,B1 , B2 > 0, B3 = 0)とする.この場合,(A0.11) より得られる C の成分は, C = ±(0, 0, A1 B2 ) B (A0.12) となる.題意より,A1 B2 > 0 であるから,複号のうち + 符号を採用した 場合は +z 向きのベクトル,− 符号を採用した場合は −z 向きのベクトル となる.ところで,A から B に右ネジを回した時,A と B の位置関係よ O x A り,ネジは +z 向きに進む.これは (A0.12) の複号のうち + 符号を採用し た場合に対応する. 従って,性質 (i), (ii), (iii) を満足する C の成分は,(A0.11) の複号のうち + 符号を採用することで, C = (A2 B3 − A3 B2 , A3 B1 − A1 B3 , A1 B2 − A2 B1 ) と表される. A2 (0.10)
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