7.3 マルコフ連鎖モデル

7.3 マルコフ連鎖モデル
Jarrow and Turnbull モデル
7.3.1 吸収マルコフ連鎖と格付けの推移
前述のとおり・・・
将来の確率的性質が現時点の状態にのみ依存すると
きマルコフ過程という。
条件付確率の公式とマルコフ性から
行列形式で表すと
吸収マルコフ連鎖
が吸収状態であるとは
が成立することであり、
このとき確率推移行列は
(7.34)
になる
(7.33)、(7.34)より
ここで、
斉時的な場合
このような吸収状態をもつマルコフ連鎖を
吸収マルコフ連鎖といい
さまざまな分野で応用されている。
吸収マルコフ連鎖では、
一度吸収されたら抜け出せないので
が成立する。
したがって一般に
となり
リスク中立確率に関する吸収マルコフ連鎖の推移確率
を計算することで、Jarrow Turnbullモデルの価格が
得られる。
7.3.2 リスクプレミアム調整率
格付けの推移
⇒観測
J-Tモデルで 時点で の格付けを持つ
満期 の割引社債の価格を
とする
この社債のデフォルト時点を
とすれば、
となる。
は確定的な回収率
価格式(7.36)における生存確率
を求めるために
をリスク中立確率P*のもとで
確率の推移を表す確率過程とする。
その推移確率は
であり
一般に
(7.37)
⇒観測された格付けの推移を表す斉時的マルコフ連
鎖の推移確率
はリスクプレミアム調整率。時点 までの全ての
履歴に依存してもかまわない
以上から
はマルコフ過程かどうかは分からない。
ただし、確実に斉時的ではない
J-Tモデルではリスク中立な確率過程
を
構築するために
①
は非斉時マルコフ連鎖
② リスクプレミアム調整率
は確率的な関数で
③ 現在の市場価格と整合的になるよう
決定する
仮定①より推移確率は
(7.39)
を満たす必要があるので
JLTではリスク調整後の推移確率を
と定義した。
次に(7.40)で定義されたリスクプレミアム調整率
満たすべき範囲を以下に示す
観測確率からリスク中立確率への変換は
同値である必要があるから
よって
(7.41)
の
次に、割引社債の市場価格から
リスクプレミアム調整率
を求める
で社債価格を
(7.36)より
とする
(7.42)
特に
のとき
より
(7.43)
いま
時点までの全てのリスクプレミアム調整率
が計算されているとする。
このとき推移確率
と(7.40)から推移確率行列
が得られる
また(7.35)から
だが
マルコフ連鎖では
が成立する
推移確率
は行列
の
第
成分であるから
この行列の逆行列の第
成分を
とかけば
が得られる。
よってリスクプレミアム調整率は昇順に
と決まる
これは
を満たす必要がある。
しかし高格付けのとき
はまず0なので
リスク調整率
が制約(7.41)を満たさないことが多い
次に上の問題を改善したモデルを紹介する。
Kijima-Komoribayashiによる改良