善叙 - e-CLINICIAN

めまいとめまい検査の一致・
不一致をどうみるか
めまい臨床で心得ていたい五つの場合
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﹁めまいの訴え﹂ と﹁めまいの検査結果﹂とが
一致するとき、しないとき
めまいの検査は、実はめまいに伴う平衡障害の
検査で、めまいそのものの検査は存在しないとい
ってよい。急性内耳炎やメニエール病など、内耳
性に突発するめまいは、一般に激しい。そして、
激しい自発眼振を伴い、立っていることも困難、
すなわち随伴する平衡障害の程度も激しい。これ
は、めまいとそのめまい検査とがよく一致する例
であろう。
これに反して、中枢障害では、めまいはごく軽
いのに、著明な自発眼振を認め、失調性歩行も顕
著であるなど、めまいとめまい検査とが一致しな
い印象を与える。
図①にめまいの訴えと平衡障害との関係を示し
まいだけで平衡障害のない疾患︵a︶、平衡障害だ
た。円弧で仕切られた三つの部分は、それぞれめ
けでめまいのない疾患︵b︶、めまい・平衡障害が
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特集・臨床めまい学
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平衡障害を認めず、めまいの訴えだけの疾患は
共に存在 す る 疾 患 ︵ a b ︶ を 示 し て い る 。
う突発性難聴、内耳に達する側頭骨骨折、手術に
もに自発眼振が現れる。内耳前庭部分の障害を伴
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よる内耳障害などを想像すればLい・
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はたいへん異なることがわかる。
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②急性内耳障害による自発眼振の方向と強さの変移
不定愁訴のめまいなどで、他の二つの群の疾患と
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﹁自発眼振の強さ﹂と﹁内耳障害﹂とが
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一致するとき、しないとき
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内耳が突然に破壊されると、激しいめまいとと
①めまいの訴えと平衡障害
このとき、発症後、はじめ患側へ向かっていた
自発眼振は、時間の経過とともに激しくなり、次
﹁身体の平衡障害﹂と﹁眼球の平衡障害﹂とが
すなわち、内耳は、突発した病変により、はじ
くなり、最終的には完全に消失する︵図②︶。
が逆転し、だんだんに激しくなり、そしてまた弱
ば一側内耳障害では定方向性の自発眼振を認め、
一般的には、両者は並行することが多い。例え
が一致するかしないかの問題である。
歩行障害の種類・程度と自発眼振の性質・強さ
一致するとき、しないとき
め刺激状態にあり、障害が進むにつれて機能を失
その反対方向へ歩行は偏椅する。アーノルドキア
に徐々に弱くなる。眼振は一時消失し、次に方向
っていく。この経過に従って自発眼振は出没し、
の進展を推測するには、眼振発現の機序の理解が
には反映していないことがわかる。内耳機能障害
この場合、自発眼振の経過は内耳の状態を単純
は消失すると説明される。
ィードバックは、遮眼や閉眼で容易に遮断できる。
り、検査不一致の原因の一つになる。動眼系のフ
動系とは異なったフィードバックで支えられてお
ところで、図③に示すように、動眼系と脊髄運
査所見がよく一致する場合である。
安定なので両足を開いて歩く。これらは二つの検
ないとたいへん誤った判断に陥ることになる。
これは眼振検査が平衡障害の検査として重要視さ
リ症では下眼瞼向き垂直性眼振を認め、歩行が不
なお、内耳性自発眼振の観察には、遮眼ないし
れる一つの理由である。
−眼振の方向も変化する。最終的に、内耳が機能を
は暗所開眼状態で行うことが必要である。明所開
した疾患が存在すると、身体・眼球の平衡検査の
また、眼球運動系、脊髄運動系にそれぞれ独立
失った状態に対して中枢性代償が働き、自発眼振
しい。
眼状態では眼振の振幅が小さく、眼振の確認は難
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④振子様回転と一方向 回転急停止の違いをクプラ(ネコ)の動きにみる
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結果が不揃いになる場合がある。先天性眼振や眼
筋麻痺、また脊髄障害や関節異常は平衡機能検査
に影響す る の で 、 検 査 結 果 が 信 用 で き な い の で あ
る。
したがって、眼球と身体・四肢の平衡検査を行
うときには、それぞれの系の末端側に障害のない
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ことをまずすばやくみてとる必要がある。
③動眼系と脊髄運動系への入力と
フィードバックの違い
﹁温度眼振検査﹂ と﹁回転眼振検査﹂とが
︻致するとき、しないとき
このような検査を必要とするのは、先天性難聴
や内耳奇形の幼小児の内耳反応をみる場合、また
成人では内耳毒による障害などで内耳機能の検査
を急停止して回転後眼振をみるものと、振子様回
ご存知のように、回転眼振検査には一方向回転
を必要とする場合などである。
レ、もに眼振反応を認めないとき、すなわち﹁両耳
間題を絞,.てみる
転を用いて回転中眼振をみるものとがある︵図
水水を用いた大量注水で両耳
このテーマは簡申に答えるには大きすぎるので、
ともに温 度 眼 振 反 応 な し と 判 断 さ れ る と き 、 回 転
④︶。
これら両者が協力して眼を動かすの
は、ベーベキ⊥ 1口1転、すなわち、
寝返りをうつヒき
a l外側半規管膨大部稜、
b:卵形嚢斑
管を、必ず二個ずつペアにして検査する。頭位に
半規管の検査のうち回転検査は両耳六個の半規
一致するとき、しないとき
﹁半規管の検査﹂ と﹁耳石器の検査﹂とが
なくない。
別的に可能、しかし不明としかいえない場合も少
による眼振開発の機序が問題になるが、解答は個
中には、一方向回転にも反応する例がある。回転
に反応する場合はまれではない。内耳奇形症例の
まず、両側温度眼振反応廃絶者でも振子様回転
刺激による眼振反応が認められる場合と認められ
・善・』㌦△叢
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ない場合とがある ーこれについて考えてみた
⑤外側半規管と卵形嚢斑(ネコ)
耳石器と外側半規管とが同時に刺激される︵図⑤︶。
多い。しかし、いわゆるバーベキュー回転では、
でなく、垂直半規管を同時に検査していることが
は両耳を一緒に検査対象とし、さらに耳石器だけ
回旋の観察などが臨床で行われているが、これら
器の検査には、直立検査、重心動揺計、眼球反対
よっては、六個すべてが検査の対象となる。耳石
︵帝京大学 教授 耳鼻咽喉科学︶
かる。
不一致は、多くの場合外見上にすぎないことがわ
枢が代償する﹂など前庭系の特徴を思い出せば、
て表現される﹂﹁他の系と密に接続している﹂﹁中
すなわち、﹁前庭系の障害はバランスの変化とし
由について説明可能である。
これら二つの検査が一致するときとは、両側の
半規管系と耳石器系のいずれもが機能低下してい
るときである。一致しないときとは、例えば回転
に対する反応が不良なのに重心動揺検査が正常と
いった場 合 で 、 両 側 の 先 天 性 高 度 難 聴 児 な ど に 認
められる。また、動揺が小さいという結果がでて
も、深部知覚系の代償が小児では顕著なので、必
ずしも耳 石 器 の 正 常 を 意 味 し な い こ と に 留 意 す べ
きである。
めまいの検査の一致・不一致は、以上五つの場
合にみるように、ほとんどすべての場合、その理
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