めまいとめまい検査の一致・ 不一致をどうみるか めまい臨床で心得ていたい五つの場合 仏“圃擬劔a’ 1’國〆 ㌦、一 善叙 … 罵騨一一 ■γ壁ふ・” ﹁めまいの訴え﹂ と﹁めまいの検査結果﹂とが 一致するとき、しないとき めまいの検査は、実はめまいに伴う平衡障害の 検査で、めまいそのものの検査は存在しないとい ってよい。急性内耳炎やメニエール病など、内耳 性に突発するめまいは、一般に激しい。そして、 激しい自発眼振を伴い、立っていることも困難、 すなわち随伴する平衡障害の程度も激しい。これ は、めまいとそのめまい検査とがよく一致する例 であろう。 これに反して、中枢障害では、めまいはごく軽 いのに、著明な自発眼振を認め、失調性歩行も顕 著であるなど、めまいとめまい検査とが一致しな い印象を与える。 図①にめまいの訴えと平衡障害との関係を示し まいだけで平衡障害のない疾患︵a︶、平衡障害だ た。円弧で仕切られた三つの部分は、それぞれめ けでめまいのない疾患︵b︶、めまい・平衡障害が CLINICIAN’90No.388 6 特集・臨床めまい学 一 ○麟勉 一 淳 木 鈴 平衡障害を認めず、めまいの訴えだけの疾患は 共に存在 す る 疾 患 ︵ a b ︶ を 示 し て い る 。 う突発性難聴、内耳に達する側頭骨骨折、手術に もに自発眼振が現れる。内耳前庭部分の障害を伴 、! ’ヤ、・ 租 一 よる内耳障害などを想像すればLい・ y,圭㌧・Lノ)子亡1正 はたいへん異なることがわかる。 、 Lし l1 ー 血 、 r「、1∼『lt5、皆i冥1 一 ②急性内耳障害による自発眼振の方向と強さの変移 不定愁訴のめまいなどで、他の二つの群の疾患と \ 1 健111:l fLn L\−、 〆 ロ ﹁自発眼振の強さ﹂と﹁内耳障害﹂とが 》一一(一 12q 7 CLINICIAN’90No.388 甲}→ 上 、く \− × b a1〕 a 霧、 一致するとき、しないとき レ獅昼丁陣書 ㌧ρ1知, 年 一開、 卿 」内耳・川+態 内耳が突然に破壊されると、激しいめまいとと ①めまいの訴えと平衡障害 このとき、発症後、はじめ患側へ向かっていた 自発眼振は、時間の経過とともに激しくなり、次 ﹁身体の平衡障害﹂と﹁眼球の平衡障害﹂とが すなわち、内耳は、突発した病変により、はじ くなり、最終的には完全に消失する︵図②︶。 が逆転し、だんだんに激しくなり、そしてまた弱 ば一側内耳障害では定方向性の自発眼振を認め、 一般的には、両者は並行することが多い。例え が一致するかしないかの問題である。 歩行障害の種類・程度と自発眼振の性質・強さ 一致するとき、しないとき め刺激状態にあり、障害が進むにつれて機能を失 その反対方向へ歩行は偏椅する。アーノルドキア に徐々に弱くなる。眼振は一時消失し、次に方向 っていく。この経過に従って自発眼振は出没し、 の進展を推測するには、眼振発現の機序の理解が には反映していないことがわかる。内耳機能障害 この場合、自発眼振の経過は内耳の状態を単純 は消失すると説明される。 ィードバックは、遮眼や閉眼で容易に遮断できる。 り、検査不一致の原因の一つになる。動眼系のフ 動系とは異なったフィードバックで支えられてお ところで、図③に示すように、動眼系と脊髄運 査所見がよく一致する場合である。 安定なので両足を開いて歩く。これらは二つの検 ないとたいへん誤った判断に陥ることになる。 これは眼振検査が平衡障害の検査として重要視さ リ症では下眼瞼向き垂直性眼振を認め、歩行が不 なお、内耳性自発眼振の観察には、遮眼ないし れる一つの理由である。 −眼振の方向も変化する。最終的に、内耳が機能を は暗所開眼状態で行うことが必要である。明所開 した疾患が存在すると、身体・眼球の平衡検査の また、眼球運動系、脊髄運動系にそれぞれ独立 失った状態に対して中枢性代償が働き、自発眼振 しい。 眼状態では眼振の振幅が小さく、眼振の確認は難 C:LINICIAN,90No.388 8 (130) ④振子様回転と一方向 回転急停止の違いをクプラ(ネコ)の動きにみる r \ 〆 1 1/ 憂 l ヲ ト r ^、 U ↓ レ1 ゴEI71入v 7 焔 9 CLINICIANマ90No.388 B 結果が不揃いになる場合がある。先天性眼振や眼 筋麻痺、また脊髄障害や関節異常は平衡機能検査 に影響す る の で 、 検 査 結 果 が 信 用 で き な い の で あ る。 したがって、眼球と身体・四肢の平衡検査を行 うときには、それぞれの系の末端側に障害のない 倉一ず/卜軒 ことをまずすばやくみてとる必要がある。 ③動眼系と脊髄運動系への入力と フィードバックの違い ﹁温度眼振検査﹂ と﹁回転眼振検査﹂とが ︻致するとき、しないとき このような検査を必要とするのは、先天性難聴 や内耳奇形の幼小児の内耳反応をみる場合、また 成人では内耳毒による障害などで内耳機能の検査 を急停止して回転後眼振をみるものと、振子様回 ご存知のように、回転眼振検査には一方向回転 を必要とする場合などである。 レ、もに眼振反応を認めないとき、すなわち﹁両耳 間題を絞,.てみる 転を用いて回転中眼振をみるものとがある︵図 水水を用いた大量注水で両耳 このテーマは簡申に答えるには大きすぎるので、 ともに温 度 眼 振 反 応 な し と 判 断 さ れ る と き 、 回 転 ④︶。 これら両者が協力して眼を動かすの は、ベーベキ⊥ 1口1転、すなわち、 寝返りをうつヒき a l外側半規管膨大部稜、 b:卵形嚢斑 管を、必ず二個ずつペアにして検査する。頭位に 半規管の検査のうち回転検査は両耳六個の半規 一致するとき、しないとき ﹁半規管の検査﹂ と﹁耳石器の検査﹂とが なくない。 別的に可能、しかし不明としかいえない場合も少 による眼振開発の機序が問題になるが、解答は個 中には、一方向回転にも反応する例がある。回転 に反応する場合はまれではない。内耳奇形症例の まず、両側温度眼振反応廃絶者でも振子様回転 刺激による眼振反応が認められる場合と認められ ・善・』㌦△叢 CLINICIAN’90No.388 10 (132〕 ない場合とがある ーこれについて考えてみた ⑤外側半規管と卵形嚢斑(ネコ) 耳石器と外側半規管とが同時に刺激される︵図⑤︶。 多い。しかし、いわゆるバーベキュー回転では、 でなく、垂直半規管を同時に検査していることが は両耳を一緒に検査対象とし、さらに耳石器だけ 回旋の観察などが臨床で行われているが、これら 器の検査には、直立検査、重心動揺計、眼球反対 よっては、六個すべてが検査の対象となる。耳石 ︵帝京大学 教授 耳鼻咽喉科学︶ かる。 不一致は、多くの場合外見上にすぎないことがわ 枢が代償する﹂など前庭系の特徴を思い出せば、 て表現される﹂﹁他の系と密に接続している﹂﹁中 すなわち、﹁前庭系の障害はバランスの変化とし 由について説明可能である。 これら二つの検査が一致するときとは、両側の 半規管系と耳石器系のいずれもが機能低下してい るときである。一致しないときとは、例えば回転 に対する反応が不良なのに重心動揺検査が正常と いった場 合 で 、 両 側 の 先 天 性 高 度 難 聴 児 な ど に 認 められる。また、動揺が小さいという結果がでて も、深部知覚系の代償が小児では顕著なので、必 ずしも耳 石 器 の 正 常 を 意 味 し な い こ と に 留 意 す べ きである。 めまいの検査の一致・不一致は、以上五つの場 合にみるように、ほとんどすべての場合、その理 (133) 11 CLINICIAN’90No.388
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